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異世界の闇軍師  作者: まさな
第六章 錬金術師になりたいな

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第三話 魔術士ミオ

2016/9/28 若干修正。


「やったぁあああ!」


 ようやくゴーレムを倒し、全員が心の底から喜んだ。

 そりゃそうだ。みんな間違いなく、もういい加減に終わらせたいと思ってたはずだ。


「凄い凄い! ユーイチ、やったね!」

 

 ティーナが興奮した笑顔で俺に駆け寄り、右手でハイタッチ。続いて左手でと思ったら、リムが飛びかかるように抱きついてきた。


「やったニャー!」


「よくやった! こいつめ、こいつめ!」


 レーネも駆け寄ってきて、俺の頭をぐりぐりとかき回して、抱きついてくる。


「あはは、もう良いだろ。離せって」


 照れるな、おい。

 あと、レーネさん、マジで俺のHPが減ってるから、そんなに強くぐりぐりしないで。痛いって。


「うお」


 押し倒されそうになったところで、ティーナがさっと俺の体を支えてくれた。床はレンガだからね。本気でそれは危ない。


「ちょっと、そこまでにしなさい。まだ終わったわけじゃ無いわよ」


 リサが言うが、そうだった。


「むう、まだあるのか…」


 この次に出てくる敵は、俺たちじゃちょっと無理の気がする。


「でも、大丈夫やないかな? この上って多分、鋼の賢者さんの居住スペースやと思うけど」


 ミネアが言う。あ、最上階か。六階建てだったな。外から見る限りは。


「よし、じゃ、まずは挨拶と行くか。それにあれだけのゴーレムを用意できるのだ、これは楽しみだな」


 笑みを浮かべて上を見るレーネは、会ったら手合わせするつもりなのかね。俺はもう戦闘はお腹いっぱいなんだけどね…。


「そうね。これだけ大きな魔石を用意できたんだから、相当なものでしょう」


 リサが五センチほどの菱形の魔石を見せる。それがさっきのゴーレムの残した魔石なのだろう。この大きさは初めて見た。いつもは豆粒くらいなのに。色は薄紫で透き通っており、ほのかに中心が発光している感じだ。魔力も感じる。それもこの距離で。だから、かなり強いと見た。


「ほほう、それはレベル40くらいは行きそうだな。道理で強いはずだ」


 レーネが言うが、レベル40のゴーレムか。二度と戦いたくねぇ…。それに、確認もしておこう。


「レーネ、あれがノーマルのゴーレムなのか?」


「いや、さすがにあそこまでしぶとくなんか無いぞ。似ている色だったからそう思ったんだが、違ったようだ。すまんな」


 おい…。まあいいか。死人は出なかったんだし。

 だが、次は色々と考えないといけないし、高火力の魔法も絶対に必要だ。

 上級魔法、エイフォードさん、教えてくれないかなあ…。


「じゃ、汗を拭いたら行きましょう」

 

 少し休憩して、階段を上がる。


 塔の最上階は、これまでのモンスター部屋とは違い、手前に左右に伸びた廊下があり、その中央正面に頑丈そうな鉄扉があり、そこで行き止まりだった。


「さて、どんな剛の者が出てくるか、うん、腕が鳴るな」


 レーネが肩を回しながら前に出るが、俺とリサとティーナで待ったを掛ける。


「「「待った」」」


「ん?」


「ここはリーダーの私に任せてもらうわ。ちゃんとレーネの紹介もするから」


「うむ、そうか。なら、ここは譲るとしよう」


 ふう。あのまま突き進ませたら、全員で鋼の賢者と手合わせで戦闘みたいなことになりかねなかった。


「ええ。じゃ、おほん。我が名はティーナ=フォン=ラインシュバルト、白竜の紋章を持つ者。冒険者をしております。鋼の賢者と名高いダグラス=エイフォード様に会いにやって参りました。なにとぞ、面会のほどを」


 ティーナがドアの鉄輪でノックし、口上を述べた。

 間を置かずにキイと音を立てて鉄の扉が少し開き、中から頭一つ背の低い少女が顔を見せた。

 綺麗な水色の髪で、ショートカットにしている。種族は普通の人間だろう。青い目は可愛らしい。ただ、その顔に笑顔は無い。

 彼女は青のローブを着ており、エイフォードの弟子だろうか? ちょっと幼すぎる気もするけど、ああ、娘さん?

 でも、こんな場所に住まわせてるのかな? 塔の外はすぐモンスターがいたりする場所だよ?


 俺たちを用心深くじいっと見回した彼女が口を開いた。


「お師匠様は現在、留守。当分帰ってこない。以上」


 ボソッとそう言うなり、バタンと鉄扉を閉める少女。


「えっ!」


「おい、こっちは試練とやらを乗り越えてきたんだ、茶くらい出せ、茶」


 レーネが前に出て鉄扉を叩くが、止めなさい。いくら何でも失礼だし、お留守じゃしょうがないでしょ。


「ちょっと、レーネ」


 ティーナも止めに入る。


「構うものか。留守なら留守で、塔の下の扉にメモ書きでも看板でも出しておくのが筋というものだろう」


 そこまでする義務は無いと思うが、さすがにあのゴーレムを必死こいて倒した俺たちとしては、それくらいの配慮はしてくれとも思う。

 下手したら死人が出てたよ。


 また扉が開き、さっきの少女が顔を見せた。


「じゃ、お茶だけ」


「よし! あと、今日はここに泊まらせてもらうぞ!」


「ちょっ、レーネ」


「そこの廊下なら敵は来ない。好きにして」


 少女が後ろも見ずに答えた。部屋には入れないか。ま、見ず知らずの冒険者を入れるのも危険だろう。


「ふん、まあいいか」


 ぞろぞろと連れだって中に入る。


「おお…」

  

 そこは魔術士の工房と言った感じの部屋で、かなり散らかっている。床には研究の成果をメモしたものか、羊皮紙があちこちに散らばり、魔術書も適当に積んである。部屋の左中央には直径二メートルはある黒い大釜があり、あれで錬金術をやるのだろう。部屋の右側には棚があり、様々な色のポーションや薬品類が置かれていた。


「じゃ、そこで待つ」


「椅子も無いのか、ここは」


 レーネが見回してあからさまに文句を言うが、ソファーなんて上等なものは見当たらない。


「そこの木箱、使って」


 少女が右隅を指差して言う。その右隅に積み上げられた木箱は、何かを運搬したあとの空箱だろう。ちょうど座るのに良さそうなので、レーネがいくつも持ってきて、みんなの椅子代わりにする。その間、俺とティーナとミネアとリサで散らばった羊皮紙を片付け、ひとまとめにして置いた。羊皮紙に書かれているメモは残念ながら、俺には判別不能な文字で書いてあり、読めない。


「はい、お茶」


「むう、もっとマシな入れ物はないのか」


 レーネがそれを見て嫌そうな顔で言う。

 少女が持ってきたのは、目盛りの付いた透明ガラスのビーカー。右の棚には蛍光色の薬品も置いてあったりするので、これを飲むのは結構勇気が要りそうだ。


「文句言うなら、自分のを出す」


「おお、それもそうだな」


 レーネは自分の腰にぶら下げている水筒とセットの木のコップを取りだし、ビーカーからコップに茶を移し替えた。

 他の皆もビーカーは気が引けたか、同様にして、ミネアが要らなくなったビーカーを回収して机に返した。


 お茶を味わい、一息ついて落ち着いたところで、ティーナが問う。


「突然、押しかけてごめんなさい。それで、エイフォード様は留守と聞いたけれど…今、どちらに?」


「む。それは、教えられない」


「そう。いつ頃お帰りになるのかな?」


 ティーナが優しく聞く。


「それも教えられない。ただ、当分、一年や二年では戻って来ない」


「ええっ? そんなに」


「むう、そんなに長く不在にするのなら、看板でも立てておけと」


 レーネの言う通りだな。


「ん、確かに。じゃ、ちょっと待つ」


 水色の髪の少女は、箒を掴むと、窓を開けた。何をするのかと思ったら、次の瞬間、それで飛び降りた。


「おいっ!」


 慌てて、レーネやティーナが窓を覗き込む。


「ああ、良かった。でも、凄い、飛んでるわ」


「いや、飛ぶと言うよりは降りるという感じだな。あれでは飛んで上には戻って来れまい」


 レーネが言うが、事実そうだったようで、鉄の扉の方から少女が戻ってきた。


「ご苦労様」


 ティーナが声を掛ける。


「ん」


「リム、勝手につついちゃダメだぞ」


 退屈したリムが、右の棚の薬品類に興味を示して臭いを嗅いでいたので、注意しておく。


「ニャ、でも、お腹空いたニャー…」


「じゃ、干し魚でも食べてなさい」


 リサが言い、リムも頷いて自分のリュックから魚を取り出す。


「炙ってもらって良いニャ?」


「ん」


 少女はリムから干し魚を受け取ると、その場で手から炎を出した。


「むっ、コイツも無詠唱で…?」


 エリカの目が驚きで見開かれた後、険しくなる。


「はい」


「ニャ、ありがとニャー。良い焼き加減ニャ」


「あなたも、魔術を?」


 ティーナが聞く。


「ん。私はお師匠様の弟子、ミオ」

 

「ほう、その歳で弟子か。先ほどの魔術と言い、それなりにやれるようだ。これはますます、師匠の奴と手合わせせなばな」


 レーネが言う。ミオの方はレーネをじっと見たまま、何も言わない。


「じゃ、一年も二年も帰ってこないようなら、出直した方が良さそうね。そこの外の廊下、一泊させてもらうわ」


 リサが言うが、まあ、他にどうしようも無いか。


「ん」


「あっ、魔術本、見せてもらっても…」


 俺がそう頼もうとしたとき、ぐらっときた。


「むっ?」

「な、なに?」


 これは地震。しかもデカい! ばらばらと天井からブロックの継ぎ目のモルタルか何かが崩れ落ちてくる。


「こ、この建物の耐震は?」


 とっさだったので聞いた。


「むぅ、そう言う設計になってない。開放(オープン)! 全員、そこから飛び降りる。早く!」


 ミオが開いた窓を指差して言う。


「ええ?」


「ここ、六階でしょ? 無理よ」


「心配ない。浮遊(フロート)の呪文をかける。早く。ここはもう持たない」


 ミオがそう言ったが、向こうの天井のブロックが落ちてきた。

 おいぃ。


「ニャ! ニャー! 死にたく無いニャー!」


「いいから行きなさい! 大丈夫、アンタなら呪文が無くても多分死にゃしないわよ」


 などと言いつつ、リサが窓際にリムを押し込んで、蹴った。酷いな。


「よし、じゃ、お前もだ」


「えっ! ちょっ!」


 レーネが俺の腰を掴んで、ぶん投げる。


「マジですかー! ひい!」


 窓の外に出た俺は必死でもがくが、空を切るし。

 しかも、下の地面が近づいて…!?


「おや? ほう、これがフロートか。おおー、使えるな」


 すーっとゆっくりのスピードで降りていく。


「ぶべっ!」


 最後は減速が無かったので、着地に失敗して転んだ。


「まだよ! 離れて。塔が!」


 リサの声に振り向くと、塔が崩壊し、大きなブロックが落ちてくるのが見えた。

 ヤバい!


 必死で離れる方向へ四つん()いのまま逃げるが、ドスンドスンと、右脇や左脇に落ちてくるものだから、生きた心地がしない。


「ユーイチ、もういいわ。大丈夫よ」


「お、おう」


 気がつくと、もう塔は崩れ去った後だった。地面ももう揺れていない。

 

 ふう、助かった…。


「あっ! クロ!」


 他のみんなも無事だろうか?

 慌てて見回す。


 ティーナとレーネはその場に立っていて、他のメンバーに手を貸してやっている。

 リムはひっくり返っているが、HPを確認すると満タンなので、目を回しただけらしい。


「クロ!」


 クロを見つけて、抱き上げてやる。


「ニ、ニ~…」


 可哀想に、震えてしまって。


「よしよし、怖かったな。もう大丈夫だぞ」


「クリア。全員、怪我は無いみたいね」


 リサが宣言する。


「し、死ぬかと思った。もぉっ、なんなのよ! 何かの攻撃なの?」


 エリカが周囲を見回す。


「いや、今のは地震…んん? 襲撃なのか?」


 俺も周囲を見回して警戒するが、俺たちの他には誰もいない様子。


「ユーイチ、探知(ディテクト)の呪文を」


 リサが言い、おお、忘れてた。

 敵や危険をイメージして周囲を探るが、問題ない、と思う。もっと調べたいところだが、MP切れだ。


「多分大丈夫だと思うが、もうMPが切れた」


「むう」


「問題ない。周囲は確認した。それより、これを」


 ミオが無色透明のポーションの瓶を懐から出して、俺に振りかける。


「んん? 俺はダメージ無いけど、なんだこれ」


 少し変わった魔力を感じた。あと、ちょっと冷たい。


「ん、聖水。すぐモンスターに襲われると面倒」


「ああ。へえ」


 ミオは落ち着いた様子で行動し、全員に聖水を振りかけて回った。さすがは、鋼の賢者の弟子というところか。

正妻の子で次女の侯爵令嬢が自分で名乗るときって、どうなるんでしょう?

「令嬢」が相手を尊敬して言う尊敬語の性質があると思うので、「侯爵が娘」あたりでしょうか。王族なら「○○第二王女なり!」と言える気がしますが、「第二侯女」という一般に使われていない単語を作るのもどうかなあと悩みました。

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