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異世界の闇軍師  作者: まさな
第六章 錬金術師になりたいな

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第一話 試練の塔

2016/11/22 若干修正。

 今、俺たちは六階建ての塔の前に立っている。


 白き剣士ティーナ。 

 残念なネコミミ、リム。

 しっかり者のシーフ、リサ。

 ツンツンエルフのエリカ。

 自分の身長ほどはあろうかという大剣使いのレーネ。

 盗賊風の親切なレンジャー、ミネア。

 魔法も使える子猫のクロ。

 漆黒のローブに身を包む薬師、ユーイチ。


 七人と一匹だ。


 人数を気にしたのは、この塔の入り口の石碑にこう書かれていたからだ。


『我に会いたくば、己が命を賭して試練を乗り越えてみせよ。

 ただし、挑戦者のパーティーは十人以下とし、

 挑戦者以外の面会は許可しない。

 ―――ダグラス=エイフォード』


 チッ、パーティー人数に問題なしか。


「はい、撤収~」


「「なんでよ!」」


 すぐさま声が挙がるので、俺もダメだろうなとは思いつつも、果敢に説得を試みる。


「命を賭けてまで会う必要がある人じゃないし、この塔、見た感じからして何匹もモンスターがいると思うぞ?」


 見るからにいかにもな塔だし。他にも罠が有ったら最悪。

 こんな街の外に住んでいる時点で、偏屈さも垣間見えようというものだ。

 

「まあ待て、こう言われて挑戦しないわけには行かぬだろう」


 などと余裕の笑みを浮かべるレーネは、実力のレベルも高いから厄介だ。


「それに、ここで引き返したら、何のためにここまで来たのか分からないわよ」


 リサの言い分も分かるし、俺が言い出しっぺなので、心苦しいのだが、命には代えられない。


「ニー、ニー、ニー」


 なんだか、行きたそうなクロ。

 意外だ。

 割と臆病なのにね、この子。


「心配しなくたって、鋼の賢者なんだから、そんなに厳しい試練じゃないと思うんだけど」


 楽観的なティーナ。いいか? お前は人を疑うところから入らないとダメだ。


「よし分かった。じゃあ、そこまで言うなら、もう止めないよ。俺はここで待ってるから、好きにしてくれ」


「別に良いけど、ここもモンスター、普通に来るはずよ」


 リサが言う。


「むっ? だ、誰も残らないの?」


「うちが残ってもええけど、モンスターがうろつく場所で、下手に分けん方が安全やと思うよ?」


「それに、ミネアだとアサシンの集団が寄ってくるかもね」


 リサが意地悪く言うが、確かに可能性がある。


「じゃあ…、リム! お前は行く必要ないだろ?」


 魚以外に興味の無いコイツなら!


「ええ? ちょっと面白そうニャ」


 くっ、ダメっぽい。


「むう、分かったよ。じゃ、前衛、しっかりモンスターを止めてくれよ。ティーナ、リム、レーネ、この辺ね」


 ミネアも前線で戦えるとは思うが、遊撃ポジションだと彼女が自分で言っていたので、そこは配慮している。


「ええ」

「分かったニャ」

「任せろ」


 返事は威勢が良いんだけどね。

 まあいいか。一度、中を見て、ヤバそうなら、撤退を進言しよう。

 レベル40超えのレーネがいるんだから、いきなり全滅って事は無いと思う。

 鋼の賢者の住居のはずだから、そこまで凶悪なモンスターが配置されてるとも思えない。


 ライトとバリアの呪文を唱えて、準備。

 欲を言えば、マジックバリアやコンセントレーターの呪文も使いたいところだが、ここに来るまでにも戦闘が有り、すでにMPを三分の二にまで減らしているので、節約で行く。帰りも有るんだよな。泊めてもらえなかったら、ここで野宿しないといけないし。

 なぜ安全な街中に住んでいないのか、理解に苦しむ。


「じゃ、準備は良さそうね」


 リサが俺がいつもの呪文を唱えたのを確認して言う。ステータスはすでにここに来る前から使っているのでHP表示は問題ない。


「トラップもリサが確認でええね?」


 ミネアが確認する。彼女はレンジャーでシーフのような事も出来るそうだ。こちらの世界での位置づけは、戦えるシーフと言った感じ。ただ、もちろん、個人の能力や装備、熟練度もあるので、全てのレンジャーが同じタイプとは限らない。

 リサとポジションがかぶる感じだが、リサの方は飛び道具のボウガンを主力の武器にして、距離を取って牽制や支援をすることが多い。索敵はきっちりやってくれているし、罠の確認、戦闘指揮もこなせるので、パーティーのサブリーダー的な存在だ。


「そう言ったはずだけど?」


 リサが無表情で返事をする。


「ん、ごめんな、ちょっと違う場所やし、変更があるかどうか確認しただけやから」


「ならいいけど、アンタ達は単なる同行者なんだから、出しゃばった真似はしないでよね。レベルもそう違わないし」


 ちょっと言い過ぎの気もするが、事実だ。いくらレベルが高かろうと、加入してすぐの人間に重要な仕事は任せられないだろう。しかも、レーネとミネアは正式な仲間でもない。


「ん、そうやね」


「でも、一緒にいる間は、パーティーを組んでる仲間でしょ。頼りにしてるわ、二人とも」


 ティーナが上手くまとめてくれ、ミネアとレーネも笑顔で応じる。ぎすぎすした空気にならずに済んだ。

 やはりリーダーはこうでなくっちゃな。

 コミュ力の無いリーダーなんて最悪だよ?


「じゃ、開けるわよ」


 両開きの扉をリサとミネアで鉄輪を掴んで引っ張る。


「行くぞ!」


 レーネが扉が開ききる前に突っ込んでしまう。


「中も確認してないのに、まだ早い!」


 リサが文句を言うが、後の祭りだ。リムとティーナも遅れずに突っ込む。続いてリサとミネア、エリカ、クロと続く。

 俺も中に入ろうと、正面に移動したが、むっ、アイツは。


「リサ! 目玉が弱点だ。さっさと一発頼む」


 本当に知っているわけでは無かったのだが、確信があったのでそう言った。

 だって、中にいたのはひょろ長いくせに目玉だけ異様にデカいモンスターだったし。

 もうこういう奴って、ゲームの定番として、目から特殊能力を使ってくるけど、目が弱点というタイプのモンスターだから。


「もう、索敵や罠の確認もあるのに。ミネア、任せた」


「了解!」


 扉の裏側や横にモンスターがいないか確認していたリサとミネアは用心深い。

 リサは渋い顔はしたが、俺の指示をすぐに聞いてくれ、左腕のボウガンを放った。

 サクッと、刺さると、モンスターがすぐに目を閉じて、ブルブルと震えた。確実に効いてるね。


「なんだ、それだけか」


 拍子抜けだと言わんばかりのレーネは、軽く大剣を振り下ろした。目玉のモンスターは一撃で真っ二つになり、すぐに緑の煙が出て魔石と化した。

 弱っ。


「むぅ」

「ニャニャ」


 突っ込もうとしていたティーナとリムがたたらを踏んで止まる。


「うん、クリアや」


 ミネアが笑顔で宣言する。


「クリア。それで、ユーイチ、そのモンスター、知ってたわけ?」


 ミネアをあまり信用していないのか、リサもきっちりクリアを宣言してから、俺に確認してきた。


「ああ、うーん、そうじゃないが、確信はあった」

 

 「ゲームの知識で完璧だぜ!」とか、「ゲームでなら倒した事があるぜー!」なんて、ちょっと言えないよな。

 こっちはリアルだし、命も掛かってる。みんなには異世界のことについて話していないが、話したとしてもふざけるなと言われそうだ。


「ふうん? ま、間違ってなかったからいいけど。変わったモンスターだったわね」


 リサは見た事が無かったらしい。ま、明らかに魔法生物のカテゴリだな。口も無いのにどうやって食べ物を食うのやら。

 弱かったから、特殊能力も、睨み付けで麻痺程度だろう。

 ステータスの呪文、敵に掛けられなかったし、名前も不明だったが、ひとまずこの世界の様式美に従って、ビッグアイとでも名付けておくか。

 ひょろっとした足が付いていたから良かったが、これで空中にふよふよ浮いているタイプだったら、ロリコンの俺はやばかったかもしれない。


「じゃ、宝箱も無いみたいだし、さっさと上に行きましょう」


 リサがそう言って、らせん階段を先頭を切って上がっていく。

 塔の中は少し天井が高く、一階層が、五メートルくらいか。広さは二十メートル四方か。迷路にはなってはいなかった。


「よしっ!」


 レーネが続く。他のみんなも続くが、この階段、手すりが無いよ…。

 十分な幅があるからいいが、これから先、狭いダンジョンも有るんだろうな。

 落ちたら即死とか、ああ、ヤダヤダ。

 壁際を進もう…。


 二階も一階と全く同じ作りの部屋で、やはりモンスターがいた。

 すでに前衛組が戦闘を開始していて、レーネが一匹を消し去ったところなので、元が何匹のモンスターだったか不明だ。

 ただ、まだ一匹残っているので、複数登場も有りらしい。


「ふん、では、魔術士もいるのだし、後は任せたぞ。このような敵、倒してもスカッとしないからな」


 いやいやレーネさん、そんな選り好みしないで全部サクッと倒して欲しいんだがなあ。

 ただ、レーネが嫌がった理由も俺には何となく分かってしまった。

 この階のモンスター、見たまんま焚き火の炎のようで、物理攻撃がきっちり入るタイプにはとても見えない。


 しかも、炎のモンスターなのに電撃を撃つエリカは、四元素の相反とか、頭に入ってるのかね?

 炎に対しては水か氷が鉄板でしょ?


「むうう」


 一撃で仕留められなかったので不満そうなエリカ。

 クロが呪文を唱えているので、出来るグレート猫に期待して、俺はステータスを唱える。

 ちょっと、こいつの名前とか知りたかったしね。



 ファイアエレメント Lv 20 HP 18/40 MP 76/80


【弱点】 水、氷、窒息

【解説】 

 純粋なる魔法精霊。

 ダンジョンの生成または召喚魔法に応じて出現する。

 術者Lvや召喚Lvにより変化するものの、

 基本的に知能は低く、単純な命令のみを実行し、

 敵の殲滅を目的とする。

 エーテル体のため、物質的な干渉は困難である。



「ふぁっ!?」


「ユーイチ、どうしたの?」


 おかしな声を上げてしまったせいで、ティーナが聞いてくる。

 すでにクロのアイスアローでモンスターは全滅しているので良かったが、ちょっと解説に気を取られてしまった。

 だって、いきなりこんな解説がウインドウに新しく出てきたら、つい、確かめて読んじゃうし。


 しかも、弱点が出ましたよ!


「いや、問題ない。すまん。だが、これを見てくれ」


 自分のウインドウを意識して拡大し(念じるだけで一発だ)みんなの個別ウインドウも省略表示から詳細表示へ切り替えてやる。


「あっ、なるほど…」


 ティーナはすぐ理解してくれた様子。


「んん? なんだこれは。お前が書いたのか?」


「これって…」


 一方、レーネとミネアは、きちんと説明していなかったので疑問に思った様子。もう一度、きっちり説明しておくか。少なくとも、この塔は一緒のメンバーなんだし。


「ああ。どうやらステータスの個別熟練度が上昇して表示が進化してくれたらしい。モンスターの弱点と解説の参照が可能になった」


「ニャ? つまり、こいつは水と氷に弱いってことかニャ?」


「そうだ。あと、窒息な。酸欠のことだが…」


「三ケツ? 意味が分からないニャ。ふふん」


 そこでなぜ自慢げにする、リムよ…。


「ニー! ニー!」


 クロの方はこの呪文のありがたみや凄さが分かってくれたようで、ふふっ、そう褒めるな。

 

「むうう、この呪文、そういう風に変わるんだ…チッ」


 エリカは俺が教えてステータスの呪文は使えるようにはなっているものの、全然使い込んでいなかった。

 自称(・・)森の賢者としては人間に先を越されたようでちょっと屈辱だろう。

 ま、今から鍛えてくれても良いが、パーティーに一人いれば充分だろうし、コイツの性格からしてこういう補助呪文はまず鍛えないだろうな。


「ユーイチ、これは事実の表示なの? それともあなたの推測や経験?」


 リサが厳しいところを確認してくるが、おそらく事実で間違いないだろう。


「事実で間違いないと思うが、念のため確認はして行こう。ただし、相手のレベルが上だとまず掛からない」


「肝心なところで使えないわね、と言いたくなるけど、そんな物でしょうね」


 苦戦するようなボスで弱点がぱっと分かれば、かなり有効なんだがな…。厄介な敵ほど、レジストしたり、無効化してくるからなあ。


「でも、これ凄いよ。まあ、炎だから剣は効きにくいだろうし、水が弱点だろうとは思ったけど…」


 ティーナもこの弱点と解説の有効性は認めてくれたが、ま、解りやすい敵だったからな。


「じゃ、ユーイチ、これからも初見で強そうな敵だけは、頼むわね。他は使っちゃダメよ」


 リサが制限を掛けてくるが…。


「いや、なぜ禁止するし!?」


「当然でしょ。戦闘の度に使って遊んでたら、アンタのMP、すぐにすっからかんでしょうが」


 全くその通りで。

 でも、使いたいよう!

 スライムの解説とか、見たいなぁ…。


「そうね。じゃ、次、行きましょう。まあでも、この塔の敵は使い慣れるって意味でも、使っていいんじゃないかな?」


 俺の気持ちを考えて、さりげなく許可を出してくれるリーダー。ありがたい。

 ま、次にいつ休憩が取れるか不明だし、無駄遣いは止めておこうか。

 もちろん、ここの塔の敵は全部、使って分析するけど。

 

「甘いわね。ま、リーダーの言うことだし、ひっくり返さないけど」


 リサが軽く批判したが、これくらいは言い合った方が良いだろう。


 ここも宝箱などは見当たらないので、次の階へ。


 三階のモンスターは、一匹だけだが、体長二メートルはあろうかというゴツい鳥。色は焦げ茶と白。ばっさばっさと羽ばたいてホバリングしているが、普通の物理法則ではなさそう。

 俺は階段を上りきらない位置、パーティーの一番後列から、即座にステータス呪文を唱えた。



人食い鳥 Lv 30 HP 422/422 MP 21/21


【弱点】 風、地、窒息

【解説】

 人を食らう魔鳥。

 極めて凶暴だが、知能は低い。

 足の爪とくちばしが武器。

 羽ばたきで相手を威嚇し、

 傷ついても逃げる事は無い。

 群れは作らず、日中に活動。

 遠方からでも獲物を捉える目を持つ。



「レベル30、HP400台、足とくちばしに注意! 風と地が弱点だ」


 ちょっと強いモンスターなので読み上げておく。一応、パーティー全員が参照可能だし、ウインドウの見方も説明しているが、戦闘中にあれこれつついている余裕は無いだろう。


「レベル30か、弱いな」


 レーネはレベルが高いせいか、そんな感想を漏らして斬りかかる。鳥は避けようともせず攻撃姿勢を取ったが、大剣をもろにくらって、吹っ飛ばされる。

 うお…120ちょいのダメージを出せるのか。ライトニング4発分ありそう。


「はぁっ!」


 羽ばたいて戻って来たところを、ティーナが横からレイピアで突き刺す。

 ダメージは30ちょい。レーネの攻撃力とは大きく差が付いてしまっているが、攻撃間隔はティーナの方が早いので、トータルのダメージ量はそこまでの差は無い。


「ニャ!」


 続いてリムがティーナの逆方向から一撃。少しタイミングが狂い浅く入ったが、ダメージは50ちょっと出た。

 さらにエリカとクロの呪文、ウインドカッターが連続で決まり、それぞれ90と80ちょいのダメージポイントを叩きだした。中級の風呪文のベースのダメージは40前後なので、弱点を突くと二倍のダメージが行く。これは予想通り。

 

「取った!」


 最後はミネアが後方からショートソードで斬り下ろし、俺が攻撃に移る間もなく、一ターンで終わらせた。


「クリア。羽根、ねえ?」


 リサがドロップアイテムの羽根一枚を拾い上げて微妙だと言うように品定めする。羽根ペンにするにはちょっと大きすぎるか。いくらで売れるか知らないが、使い道、あるのかね?


「次だ、次。こんな敵じゃ肩慣らしにもならないじゃないか」

 

 不満げにそう言うレーネは、歯ごたえが無くてつまらないと思ったのだろう。俺も少し拍子抜けの感はあるけど、ここはダンジョンでは無いし、楽勝でクリアして鋼の賢者に会えるならそれに越したことは無い。

 一応、まだ階層はあるので、もう一匹か二匹は、モンスターがいそうだし、上に行くほど強くなるのはお約束みたいなものだろう。


「ああ、そうだ、次からは私一人で相手をするから、お前らは手を出すなよ」


 大きく出たが、ここまでの敵なら、レーネ一人でも問題あるまい。


「ご自由に。ただし、危なそうなら手を貸すわ」


 リサが言い、ティーナはちょっと残念だという顔。俺としては呪文も節約できるし楽ちんなのでありがたい。敵の解析だけやっておこうか。


 ここまでは楽勝ムードが漂っていた。

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