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異世界の闇軍師  作者: まさな
第五章 騎士

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第十三話 恐怖

2016/11/15 若干修正。

 ミスリル鉱山のボスモンスター、オーガ。

 対する俺たちは圧倒的優位に立って攻撃を仕掛けていたのだが、運悪くボス部屋からオーガを逃がしてしまった。


 必然的に坑道の中で戦わなければならないが、狭いところだと二メートル足らずで、回避する場所が無い。


 別に俺たちが仕留めなくても良いと思うんだが、みんなやる気です。


 大丈夫かなあ。


「まだ仕掛けないで。十字路に誘い出すわ」


 リサも考えてはいるようで、狭くて長い通路では仕掛けない。

 そのままオーガのすぐ側を走り抜け、距離を取ってからボウガンによる遠距離攻撃。


「グオオ!」


 オーガがそれに反応して釣られるようにリサを追いかける。


「追うわよ!」


 ティーナがそう言って、後を追う。


「ユーイチ、遅い!」


 エリカが振り向いて文句を言ってくるが、俺の電撃はあと一回分しかないし、前に出る必要は皆無なんだが。

 はああ。


「ここよ! ここで回り込みつつ、仕掛けるわよ」


 ループになっている場所。使うなと言われたが、マップウインドウを表示しておいた方が誤解も無くて良いだろう。唱える。


「ニャ? どうするニャ?」


 地図(マップ)を見ても分からない奴。いるよねー。


「私が指示してあげるから、リム、そこで待機してて」


 ティーナが言う。


「分かったニャ」


「グオオ!」


「行ったわよ!」


 向こうからリサが言う。


「ええ。任せて」


 いったん、三叉路の別の通路に引っ込んだティーナが剣を構えて応じる。

 俺も、オーガの突進先から離れて、別の通路でクロとエリカと一緒に三人で待機。


「来た!」


 オーガが端の壁まで突進してぶつかり、そこで止まる。


「今よ、リム。そこっ!」


「ニャ!」


 マップ上、東と南から、それぞれオーガを攻撃。


「離れて!」


 攻撃は長引かせず、すぐに離脱。


「グオオ!」


「南に行ったわ。リム、逃げて」


「ニャニャッ!」


「途中で分かれ道に入りなさい」


 リサがアドバイスする。


「ニャ、ニャるほど…、ふう」


 脇道に入ってやり過ごすリム。行けそうだ。


「でも、これだと、味方に当たるんだけど。当てても良い?」


「ダメだ、エリカ。上方向を狙って撃てば良い」


「ああ、それもそうね」


 背が高いオーガは、上に向けて電撃を撃てば、貫通しても、味方を巻き込むことは無い。


 エリカとクロが電撃を浴びせ、攻撃が続く。


「グオオ…」


 む、オーガが弱ったか、通路の途中で止まった。


「行ける! 三連突き(トリプル・ピアース)!」


 ティーナが走り込み、技を繰り出した。必殺技と言いたいが、とどめを刺せない技はそう呼んではいけないと思うんだ、うん。


「あたしも行くニャー!」


 リムも走り込んで飛びかかる。


「グオオッ! グオオッ!」


 その場で暴れるオーガ。満身創痍で、そろそろ落ちてもおかしくない。


「一気にたたみかけるわよ」


 リサも距離を詰めてボウガンを放つ。


 行けるか。


 そう思ったとき。


 オーガが闇雲に振るった腕が、鉱山の岩壁に当たり、大きく砕け散った。


「きゃっ!」


「ティーナッ!」


 拳大の石つぶてがティーナを襲い、至近距離だったため、避けきれずに当たってしまう。


「ぐっ」


 頭を打ったティーナが、そのまま倒れる。


「この。こっちよ!」


 リサがボウガンを撃ち込み、オーガを別の方向へ誘導してくれた。その間に、俺がティーナに駆け寄る。

 HPを確認するが、残っている。大丈夫だ。しかし、表示が黄色になっていて、ティーナも目を覚まさない。

 気絶したか。


「大丈夫ニャ?」


「多分大丈夫だ。こっちは良いぞ」


「分かったニャ」


 気付け薬をリュックから出して、寝ているティーナに嗅がせる。


「んっ!」


 目が開いた。


「ふう、良かった。じゃ、これ飲んで」


 HP的にポーションで充分だったので、それを渡す。


「ええと? あっ、オーガは?」


「大丈夫、リサが向こう側に誘導した」


「そう。ごめん、心配掛けた」


「いいって。あれは避けられないし」


「ええ」


 起き上がるティーナは、まだやるつもりらしい。


「無理はしないでくれよ」


「ええ」


 俺も、まだ電撃を一発分残してあるが、とっとと使い切ってしまおう。


 ティーナと共に、オーガを追いかけ、電撃を即座に放つ。


「グオー…!」


 だんだんと弱くなる咆哮を上げ、オーガがその場に倒れ込んだ。

 ズズンと、地響き。

 灰色の煙が巻き上がり、ふう、終わった。


「やったニャー!」


 飛び上がって喜ぶリム。


「なかなかしぶとかったわね」


 うんざりした様子のリサ。


「終わったみたいね」


 少し疲れた声のエリカ。


「ニー」


 ほっとしたようなクロ。


「む、美味しいところを持って行くなんて…」


 あれ? ティーナがちょっとムッとして俺を睨んでる。

 ハッ!

 そこはアレだ、ボスのラストキルは格好良くリーダーが必殺技で片付けないと。

 うん、ちょっと空気が読めてなかったね、俺。


「なんてね! ふふっ」


 ティーナが一転して笑顔になり、片手を上げてくるので、樫の杖を持ち替え右手で応じてパンと叩く。


 俺たちは無事、ダンジョンボスを倒した。


「どう? ユーイチ」


「ああ、モンスターはいないみたいだ」


 あれだけいた雑魚モンスターが、綺麗さっぱりいなくなっている。探知の呪文で三階すべてを調べた。端まではさすがに範囲外だが、この感じなら平気だろう。


「じゃ、ギルドに凱旋報告ね」


 ティーナが頷いて誇らしげな笑顔になる。


「じゃ、帰りましょ」


 リサが言い、俺たちは鉱山を出た。


「むっ、オーガはどうなった?」


 鉱山の入り口の外には大勢のドワーフが集まっていた。オーガの咆哮を聞いて、俺たちがやり合っているのを察したのだろう。


「ええ、倒しました」


「おおおおっ!」


 ティーナが答えると、どよめきが上がる。


「なんと、ダニエルのパーティーで倒せなかった奴を、細長族が」


「もやしもやるでねえか」


「モンスターはどうなった?」


「ざっと見た感じでは、消えたようです」


 ティーナが答える。


「おお! よし、これで鉱山が再開できるぞ!」


「酒じゃ! 祝いの酒じゃ!」


「待て、ギルドと領主に報告するのが先じゃろうが。調査隊も組まねば…」


「そんな物は後だ、後! パーッとやるぞ!」


「応!」

 

 嬉しいのは分かるんだが、色々、運営が不安になるドワーフ達だ。


「ほれ、ユーイチ、食え」


「いや、もうお腹いっぱい…」


 酒は丁重にお断りしたのだが、ならその分食えと、大量の料理を出されてしまった。

 味はそこそこだったのだが、ジャガイモとソーセージだけではさすがに飽きる。


 この世界にもっと食文化を広めねば…。


「ちょっとトイレ」


「おう、行ってこい」


 酒を飲んでご機嫌のドワーフ達から抜けだし、そのまま宿屋に戻る。


「ふう」


「ニー…」


「クロ、大丈夫か? なんかお腹が膨らんでるぞ?」


「ニー。ウプッ」


 食い過ぎだっての。断るなり逃げれば良いのに。胃薬の開発も必要か。


 ひとまず、休む。


「あ、やっぱり帰ってた。もう、一声掛けてからにしなさい。心配したでしょ」


 しばらくしてティーナ達も戻って来た。


「悪かった。逃げ切れないような気がしてな」


「ああ。ま、そこまでしつこくは無かったけどね。明日、鉱山の責任者の人と、鍛冶屋ギルドの人が会いたいって」


「そうか。ま、お礼だろうな」


「ええ。じゃ、今日はもう休みましょう」


「そうだな」


 翌日、責任者からお礼を言われた。ドワーフの腕力でバシバシ叩いてくるので、背中が痛かった。

 特別報酬は金貨一枚。

 それっぽっちかと思ってしまうが、ヒューズの街では大銅貨四枚、それから比べるとずっと良い。


「おお、これはこれは、ユーイチ殿。良かった。ここにおられましたか」


 緑のとんがり帽子の吟遊詩人、イシーダが顔を見せたので、ここでの滞在はしばらく内緒にするという条件で、これまでの冒険譚を取引。

 俺のポケットマネーが増えた。うへへ。

 あ、みんなには内緒だよ!


「では、今後とも、よしなに」


「ええ。あっ、イシーダさん、ちょっと聞いてみたいんですが」


「ええ、私が知っている事でしたら、なんなりと。諸国を回っておりますので、お役に立てるかも知れません」


「ええ。高名な魔道師に弟子入りしたいんです。特に錬金術や召喚術に詳しい人が良いのですが、ご存じありませんか」


「錬金と召喚の魔導師ですか…この国の方がよろしいのですよね?」


「いえ? 別に他国の人でも構わないですが」


「そうですか? ですが、高名な魔導師は大抵、宮廷魔導師としてお抱えになっているのが普通です。王宮直属の騎士となられたユーイチ様、それに、ラインシュバルト侯爵令嬢であらせられるティーナ様のお付きとなれば、差し障りもあるかと」


「ああ、そうだった。じゃあ、この国でお願いします」


「でしたら、鋼の賢者ダグラス=エイフォードか、宮廷魔導師のバルシアン侯爵、この二人を置いて、他にはおりますまい」


「ううん、その二人だけですか…」


 鋼の賢者ってムキムキそうで嫌なんだけど、宮廷魔導師の方も位の高い貴族、下級騎士の俺がのこのこ押しかけて門を叩いても、弟子入りさせてくれないかもしれない。


「何か問題が?」


「ああいや、まあ、検討してみます。どうも。それで、その二人はどちらに?」


「バルシアン侯爵は王都におられます。エイフォード殿は、確かここより南、フルーレの森に塔を作って住んでいると聞いたことがあります」


「へえ」


「何にせよ、会ってご自分の目で確かめられた方がよろしいかと。いくら高名であろうと、最良の師とは限りませんからな」


「そうでしょうねえ…師匠として優秀な魔導師はご存じないですか?」


「ううん、トリスタンに多くの有能な弟子を育てた大魔導師がいると聞いておりますが、この国となると…ああ、ですが、ファーベル侯爵の師もエイフォード殿だったはずです」


「ああ、ファーベル侯爵ですか」


「ご存じで?」


「ええ。王都で騎士任命の代官を務めて下さったのが、その御方で」


「おお、下級騎士の任命に侯爵とは、よほど期待の星と見えますね、ユーイチ様は」


「いやいや、おだてないで下さい、ハッハッハッ」


 気分良いね。


「いえいえ。では、魔導師の情報も次にお目に掛かるまでには仕入れておきましょう」


「お願いします」

 

 ミスリル装備が揃うまではこの街で滞在することにして、魔導師の情報も集めていかないとな。


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