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異世界の闇軍師  作者: まさな
第五章 騎士

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第十話 慎重に

2017/4/4 あとがきにターンについての解説を追加。

「誤解しないで。別に殴り込みに来たわけでも、暴れに来たわけでも無いから。取引しましょう」


 ティーナが言う。そうだ。俺たちは別に借金取りの店を潰すために来たわけではない。


「ほう? いくら借りたい?」


「いいえ、私が、ダルクさんの借金を返してあげるから、金輪際、あの家族には関わらないと、そうね、証文を一筆、書いてもらおうかしら」


「ハッ、それで、お嬢ちゃん達に何の得がある?」


「得は無いけど、小さな子供に手を振るったり脅すのは見過ごせないだけよ」


「てめえ! 怪我をさせられたのはアニキの方だぞ!」


「そうだそうだ。子供に手を振るったんじゃねえ、振るわれたんだ!」


「おかげでアニキは死にかけたんだぞ?」


 手下が一斉にいきり立ったが、なんか蒸し返すと、凄くアニキが格好悪い感じに聞こえるんですが…。


「やかましいぞ! 少し黙ってやがれ」

 

 そのアニキが一喝。


「うっす!」


 ぴたっと静かになったが、これはあれだ、交渉を有利に進めるための演出。ま、アニキに逆らったら、鉄拳制裁は本当にあるんだろうけどさ。

 そのアニキが間を置いて口を開く。

 

「話はわかった。だが、金貨二十枚だぞ?」


「ええ、じゃ、これで」


 予め、数えて別にしておいたか、ティーナが懐からさっと金貨を出した。


「む。確認させてもらう。アレを持って来い」


「へい」


 天秤が登場し、分銅と一枚一枚、釣り合わせていく。


「全部、本物です、アニキ」


「よし。じゃ、紙はこっちで用意する。羊皮紙とペンを持って来い」


「へい」


 さらさらっとアニキがサインして、ティーナに差し出す。


「ええ、確かに」


「よし、そこの黒ローブ」


 えっ、俺?


「この間の礼だ」


 ハイポーションを渡された。


「ああ。どうも」


 意外にまともな人みたいね。


「お帰りだ。丁重にお送りしろ」


「へい」


「必要ないわ。それじゃ」


 店を出る。


「ふう」


 何事も無く終わった。


「意外にあっさり、飲んだわね」


 ティーナが店を振り返る。


「そりゃそうよ。あのドワーフ一家をいじめても貸した金は戻って来ないんだし、あなたと取引した方が利子もまるまる回収できて万々歳じゃない。それに、金貨二十枚もぽんと出すような貴族を相手に事を構える度胸なんて、あいつらには無いわよ」


 リサが言うが、その通りだろう。この世界で平民が貴族に逆らえるはずも無い。


「ああ。ま、それならそれでいいんだけど」


「それと、ティーナ、あなたのお小遣いでボランティアをやる分には止めないけど、パーティーのお金は手を付けないでね。それは約束して頂戴」


「わかったわ。じゃあ、パーティーのお金はあなたが管理して、リサ」


「いいの?」


 周りを見回すリサだが、反対する者はいない。


「一番、安全そうだし」


「そ。わかったわ。じゃ、これからは私がお金の出し入れを管理するわね」


「じゃあ」


 ティーナが財布を出そうとするが。


「いいえ、ティーナ、それはあなたのお金よ。これから、パーティーで入る分は私がもらうから」


「わかった。じゃ、よろしくね」


「ええ」


「じゃ、ダンジョンに行きましょうか」


「あ、その前に、道具屋に寄りたいんだけど」


 言う。


「いいけど、買う物なんてあるの? ユーイチ」


「気絶の回復薬が欲しいんだ」


「ああ」


 店に行き、店主に尋ねると、琥珀色の液体が入った小瓶を渡された。軽い気絶なら、匂いを嗅がせるだけで、効果があるという。それでダメなら口に含ませる。

 試しにコルク栓を抜いて嗅いでみると、強い酒の匂いがした。


「酒だね」


 言う。


「あー」


 そんな物で良かったのかと思うが、ま、気付け薬だ。使うこともあるだろう。


 ミスリル鉱山に潜る。


「じゃ、今日は下の階に行くわよ」


 リーダーが宣言するが異論は無い。この鉱山の第一階層はもう昨日調べ尽くしたし、敵の分布も把握している。


 地下一階にメタリックスライムがいればいいんだが。

 一階は難なく移動して、下へ勾配した通路を降りる。


「む、レッドリザードがいるわ」


 降りた先に、四つん這いの大きなトカゲがいた。真っ赤なトカゲ。一匹だけだが、ちょっと強そうだなあ。

 まだ少し距離があるので、まずはステータス。



レッドリザード Lv 24 HP 344



「あ、強いわ」


 今までの敵とは一線を画している。


「でも、私達とそう変わらないレベルじゃない。行けると思う」


 そう言って、ティーナが突っ込む。


「あっ、もう…仕方ないなあ」


 俺も諦めて構える。見た目、炎属性なので、氷中心で行くか。だが、まずはこれで。

 

「閃光よ来たれ! フラッシュ!」


 光属性の目潰し呪文を使う。俺の手から、真っ直ぐ指向性の強い光がトカゲ目指して飛び、バフッと音を立てる。


「シャーッ!」


 効いた。


「ナイス!」


 そのままティーナがトカゲに一撃。


「む、ちょっと硬い」


 防御力は有りそう。続いてリムが手斧を振り下ろすと、トカゲが暴れて突進。


「ニャッ!」


 盾で受け損ねたリムが32のダメージを受けた。攻撃力も高めだなあ。ま、あれくらいなら、俺やエリカが食らっても一撃で落ちることは無い。

 なら、戦えるだろう。


「雨よ凍れ、風よ上がれ、雷獣の咆哮をもって天の裁きを示さん! 貫け! ライトニング!」


 エリカが電撃の呪文を完成させ、一撃を浴びせる。

 トカゲに入ったダメージは、31。悪くは無いが、エリカの攻撃力から考えると、若干、効きが悪いか。


「チッ。一人だと12回か…」


 舌打ちするエリカだが、一対一だと、彼女に勝ち目は無いだろう。最初に目潰し攻撃が上手く決まれば、行けるかも知れないが、まあ、俺たちはパーティーだし。


「ボウガンも今ひとつね」


 腹を狙ったリサの攻撃は、12ポイント。矢は刺さるには刺さったが、浅いし、ダメージはあまり行っていない。


「いや、リサ、君は無理に前に出るな」


 ダガーで牽制しようと前に出る彼女に言う。無理をしなくても、俺たちなら倒せる。


「分かったわ」


「ニャッハッハッ、どこを攻撃してる、ウニャッ!?」


 リムが攻撃しようとして、しっぽの一撃を受けてしまった。


「バカ、喋ったら声で位置が分かるでしょ」


「あー」


 耳を封じる呪文も必要か。ついでに臭いも。

 後で開発しておこうっと。


 攻防が続き、ダメージを受けるものの、順調に相手のHPを削って行く。最初に目潰し攻撃が効いたのが大きかった。向こうの攻撃はミスが多い。ノーマルの状態のレッドリザードと戦って具合を確かめたいところだが、下手に苦戦したくは無い。


「む、気を付けて、何かやってくるかも」


 リサが言う。見ると、赤トカゲは口を上に向けて、思い切り息を吸い込んで腹を膨らませている。何だろ?


「ブレス!」


 気づいたときには、赤い炎がぶわっとティーナに襲いかかった。


「きゃっ!」


「ティーナ!」


 ヒヤリとしたが、ダメージは24、低い。


「ええ、大丈夫よ。このぉ」


 お返しとばかりに、口の中を突き刺すティーナ。


「こっちもニャ!」


 リムが一撃。あと残り104。


「氷の精霊よ、集まりて、凍てつく矢となれ! アイスアロー!」


 氷属性の中級呪文を決めるが、一気に83も減った。やはり弱点は氷だ。倍のダメージが入っている。

 クロも同じ呪文を唱えて、レッドリザードを倒した。


「やったわね」


「ええ。だけど、ブレスはちょっと気を付けた方が良いわ。ティーナはミスリルの装備だから、炎にも効果があると思うけど」


「ああ。そんなに範囲は広くなかったし、避けようと思えば、避けられそうだけど」


「そうね」


 だが、もっと大きな炎を吐くモンスターであれば、範囲攻撃の対処も必要になりそうだ。

 む。


「おうっ、シット!」


「どうしたの? ユーイチ」


「すまん、マジックバリアを使ってれば、効果があったかも」


「ああ、なんだ、もう、ダメージでも受けてたのかと焦ったじゃない」


「ああ。とにかく、唱えたから」


「ええ」


 ダメージを受けている前衛二人に薬草を食べてもらい、落ちている素材、赤い皮を回収して探索を再開。


「あ」


 途中、思いついて、レッドリザードをイメージしながら、探知(ディテクト)の呪文。


「おお。その先の通路に、もう一匹、レッドリザードがいるぞ」


「じゃ、倒しに行きましょ。でも、ユーイチ、呪文が微妙に無駄遣いになるから、わざわざ探さなくても良いよ、今は」


「分かった」


 ティーナの言うとおりだが、特定のモンスターを呪文で探し出せる意味は大きい。他にも、敵と会いたくないときにも使えてるし。役に立つなあ。ルザリック先生、天才!

 メタリックスライムをイメージして、探知。


 …いないみたいだ。とほほ。


「ユーイチ。ミスリルスライムの探知は、禁止ね」


「うっ。ティーナ、な、なぜ分かったでござる」


「いや、MPの数値が私にも見えてるんだけど」


 ああ、ステータスを常時表示してたね、そう言えば。


 レッドリザードは、中級のアイスアローを三発に前衛二人の攻撃で、二ターンあれば片が付く。フラッシュの呪文を使わなくても大してダメージが変わらないと分かったので、最初から攻撃呪文で行くことにした。エリカも、氷系呪文の方が倍近いダメージが行くと分かって、レッドリザードにはそちらを使うようになった。


「じゃ、とっとと下の階に行くわよ」


 リサが言う。


「ああ」


 まだ、MPは半分以上残っている。マップは全て把握しているので、少なくなったら、即引き返しも可能だ。

 問題無さそうなので、俺も同意。


 地下二階は、レッドリザードにロックマイマイの群れがくっつき、ちょっとだけ、厄介。だがそれでも、魔法攻撃の一ターンが増えるだけで、余裕で倒せた。


「むっ、何か走ってくる」


 リサがそう言って、ボウガンを構える。


「えっ?」 


「どいてくれ!」


 モンスターの襲来かと思ったが、向こうから声が掛かり、ドワーフのパーティーだった。

 ただ、怪我をしたのか、一人、背負われていて、俺たちの横をドタドタと駆け抜けて行った。


「向こうに強い敵がいるみたいね」


 リサが言う。


「どうしようか?」


 ティーナが聞く。


「一度引き返すか、反対側で狩りを続けるに一票。あの丈夫なドワーフがやられるんだから、敵の情報を集めてからの方が良いと思うぞ」


 ここは言っておく。

 

「そうね。私もユーイチに賛成」


 おっと、リサが賛成してくれた。


「そう。じゃ、先に南側を探索しましょう。で、一度、酒場かギルドで話を聞いて、それからね」


 ティーナがそう言って俺たちは安全策を採った。


あとがき


ユーイチが言ってる「ターン」とは『ターン制』のことですが、パーティーが全員攻撃し終わったら1ターンという数え方です。

2ターンなら、ユーイチが2回呪文を唱えたことになります。

5人パーティーで1ターンが1分~3分くらいかな…と。


ターン数が多いと、長い戦闘時間だと考えてもらえればなと。

最近のMMORPGは『リアルタイム制』が多いと思うので、昔のファミコン時代のドラクエをやってない人には分かりにくいかもしれません。ポケモンもターン制なのかな?

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