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異世界の闇軍師  作者: まさな
第五章 騎士

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第九話 ドワーフの鍛冶職人

描写は軽めですが、重度の骨折が出てきます。ちょっとグロかも。

ご注意下さい。


2016/6/25 リムの「むー」を修正。


 哀れ、(がら)の悪い金貸し屋に腕を掴まれたドワーフの娘。

 ティーナが止めようとしたのだが…。


「えい!」


 しかし、ドワーフの娘がチンピラに軽くパンチ。


「ギャッ!」


 うお、チンピラの男が! 

 五メートルくらい、後ろに吹っ飛んだぞ…。

 落ち方がヤバかったが、あれ大丈夫か?

 俺は心配になって倒れたチンピラの下へ薬草を出しながら走る。


「こ、このガキ! アニキに何てことを!」


 手下共が狼狽える。


「待ちなさい!」


 ティーナが颯爽と男達の前に立ちはだかった。


「なんだてめえは!」


「私は通りすがりの冒険者よ。事情はだいたい分かったけど、手荒な真似は止しなさい。相手はまだ子供じゃないの」


「うるせーよ、先に手を出したのは向こうだろうがッ!」


「ええ?」


 腕を握ったのを暴力と捉えるかどうかで意見が分かれそうだが、それよりも。


「オーケー、大丈夫だ。落ち着いて下さい、皆さん。首の骨が折れてたが、問題ないです。誰か、添え木を持ってきて下さい」


 ステータス呪文で確認したが、HPゲージはかろうじて残っていた。ただし文字表示がピンク色で危険だったので、高級(ハイ)ポーションを首に振りかけている。窒息するとまずいし、気絶していたので飲ませてはいない。骨折だと飲む方が多分、効きは良いんだけど。

 とにかく、ハイポーション、スゲえ。重傷でもHPは回復したぜ。


「あ、アニキ! しっかりしてくだせえ」


「アニキーッ! 死ぬなーっ!」


 いや、だから、死なないし、早く添え木を。


「じゃ、これを使って下さい」


 ドワーフの母親が、家の中に入って添え木と包帯を取ってきてくれた。

 ええと、あと、気道を確保して、気絶を直してやらないといけないんだが、どうしよう?

 気絶の回復薬持ってないんだよなあ。


「ちょっと良いですか」


 ドワーフの母親が、男の首を支えている俺と交代するつもりなのか、体を入れて割り込んでくる。


「あ、はい、でも、下手に動かすと…」


「大丈夫、私は昔、整体のバイトをしてたことがありますので」


「ああ」


 ま、俺がこうしててもどうしようも無いので、ドワーフの母親に任せることにする。


「ふんっ!」


 わお。豪快ですね。


「ふごっ!」


 チンピラの男が息を吹き返した。気絶も回復したようだ。良かったね。HPは半分だが、ここから先は、ハイポーションでも治せない気がする。骨折だものねえ。それにもったいない。どうせこいつら俺に代金、払ってくれないだろうし、完全復活して乱闘されても困る。

 

「はい、これで、安静にしていれば、多分大丈夫」


 添え木を首の両側に当てて、包帯を器用に巻いたドワーフのおっかさんが言う。


「アニキぃ!」


「そっとだぞ、お前ら、そっとだぞ」


「へい!」


 アニキを手下達が支えて起こし、うん、何とか帰れそう。良かったね。


「この礼は、必ずしてやるからな。覚えてやがれ! アイタタタタ」


「アニキ! ダメです、動かしたら、首が曲がったままくっついちまいますぜ」


「くそっ。帰るぞ。神殿、いや、医者のところへ連れてけ」


「へい!」


 うん、まあ、変な感じになったけど、上手いこと、退場してくれた。


「危ないところを、本当にありがとうございました」


 ドワーフの母親が俺に頭を下げる。ま、あれでアニキが死んでたら、ちょっとまずかっただろうしね。


「全然、危なくなかったじゃない」


 ドワーフの娘が解ってなさそうで、言う。ま、お前は平気だろうけどな。


「ミミ! 細長族、おほん、人族は、骨が弱いんだから、殴ったりしちゃダメよ? この人が助けてくれなかったら、あの人、死んじゃってたかも」


 ああ、人間は、ドワーフから見たらひょろ長に見えるのか。なるほどねえ。


「えっ! そうなの?」


 驚いた様子のミミは、幼いせいか、細長族の事をよく知らないようだ。おっかないなあ。


「そうよ。だから、ドワーフ以外の種族を殴っちゃダメよ。ドワーフのお友達も殴っちゃダメだけど」


「わかった。気を付ける」


 神妙な顔になったミミちゃんは、割と賢そうだ。


「ええ。あ、どうぞ、家の中へ入って下さいな。助けて頂いたお礼に、お茶でも」


「ああいえ、そんなつもりでは。ちなみに、借金はおいくらくらいで…」


 ティーナが聞く。


「ああ、それが、利子もあって、今は金貨二十枚だそうで」


 20万ゴールドか。結構な額だなあ。


「ああ」


「ま、そこは自業自得ね」


「リサ!」


 ティーナが咎めるが、リサはティーナの財布を心配して厳しく言ったのだろう。

 ほっとくと、コイツ、必ず肩代わりしちゃうだろうし。残金があるならいいんだが。まあ、百枚くらい持ってた感じだしなあ。


「何よ。気の毒だとは思うけど、あんな柄の悪い連中に借りたのも自己責任よ。利子をちょろまかすにしても、ちょっと金額がデカすぎるわ。じゃ、帰るわよ」


「む。お茶をご馳走になります」


「ティーナ!」


「いいでしょ。お礼をしてくれるって言うんだし。それに、二十枚なら、問題ないわ」


「ううん、あなたにとっては端金かも知れないけれど…ふう、じゃ、好きにしなさい」


「ええ」


「すみません。じゃ、ミミ、コップを並べて頂戴」


「わかった!」


 石造りの家の中は、きちんと板床が敷いてあり、ちょっと天井が低い他は、快適そうな住まいだ。

 俺たちは大きな丸テーブルのある部屋に通され、小さめの椅子に腰掛けた。


「今、沸かしますので、少し待ってて下さいね」


「ああいえ、お構いなく」


「皆さんは、冒険者とお見受けしますが」


「ええ。その通りです。あ、私はティーナ、こっちはユーイチ、リム、リサ、エリカ、それにクロちゃんです」


 ティーナが全員を紹介する。


「そうですか。ユーイチさん、薬をありがとうございました。本当なら、私がお返ししないといけないところですが…」


「いいえ、気にしないで下さい。筋から言えば、命の恩人に返すのはあのアニキさんの方でしょうしね」


「はあ」


「いつも、ああ言う嫌がらせを?」


 ティーナが話を向ける。


「ああ、いえ、いつもは、家の前で騒がれる程度だったのですが…だんだん酷くなっていまして。夫にはああ言う人達に借りるのは止めた方が良いと言ったんですが、他に当てもなくて」


「ちょっとくらい待ってくれても良いのにね」


 娘のミミが言うが、金貨二十枚ともなると、そうも行くまい。


 沈黙が降りる。


「あ、お茶が沸きました。どうぞ」


「あ、はい、ありがとうございます。ん? これ、お酒ですか?」


「ああ、弱いお酒ですから、安心して下さい」


「いえ、私達はお酒はちょっと」


「ああ。じゃ、お酒で無いお茶を入れますね」


「すみません」


 お茶を入れ直してもらい、今度は普通に飲む。紅茶では無く麦茶みたいな味だが、まあ、普通に飲める。


「帰ったぞ、べらんべえ」


「あなた」


「おっとう!」


 赤ら顔の、酔っ払いのドワーフが帰ってきた。ダメ親父臭いなあ。


「お? なんでえ、お客さんか?」


「ええ、借金取りと揉めそうになったところを助けてもらったの。恩人よ」


「ム、あいつら…そうか、じゃあ、恩人なら、酒だ。一番上等な酒を持ってこい!」


 ドワーフは飲みにケーションが好きそうだな。お断りしたいです。


「ダメですよ。この方達は飲めないそうで」


「何だと? ふん、もやし族はこれだから」


「あなた、娘の前ですし、お客様に失礼でしょ」


「おう、悪かった」


 ふむ、ドワーフから見て俺たちがひ弱なもやしっ子に見えるなら、さらに華奢なエルフのエリカには俺は頼もしいマッチョに見えるのだろうか?


「どう? エリカ」

 

 ムキムキポーズを決めてアピール。


「は? 頭に何か湧いてんの?」


「すみません…」


 余計な事しなきゃ良かった。


「じゃ、私達はこれで失礼しますね」


「おう、妻と娘が世話になったようで、礼を言う。俺はダルク。鍛冶屋の親方をやってる。ミスリルさえ持ってくれば、剣だろうが盾だろうが、打ってやるぞ」


「ありがとうございます。じゃ、帰りましょ」


 ティーナは金を肩代わりせず、あっさり引き下がった。


「お金、良かったの?」


 リサが聞く。


「あの場で出しても、どうせ受け取ってくれないわよ、あの人達。だから、アニキさんの方へ直接ね」


「ふん、お人好しねえ。ま、あなたのお金だしね」


「ええ。じゃ、明日、探すとして、今日はもう宿に戻りましょう」


「賛成! 飯ニャー!」


 翌日、街の人達に聞き込みして、金貸し業者、ターフル一家の店の場所も聞き出した。


「うーん、悪党かと思ったら、利子は高いし取り立ては厳しいけど、それだけのようね」


 ティーナが言う。


「評判はね。あんまり派手にやれば、ギルドや領主に睨まれるでしょうし」


「ええ。まあいいわ。話を付けに行きましょう」


 店に行くと、大きな金貨の図柄の看板が有り、すぐに分かった。店の中は衝立で仕切られており、テーブルと椅子がそれぞれ有って、相談を受け付けている様子。今も客が何人かいた。


「いらっしゃいませ。初めての方ですか?」


 店員は普通のお姉さん。ま、いきなり世紀末の男達が現れたら、客も逃げ出すだろう。


「ええ、そうだけど、客ではないわ」


「え、ええと…」


「ターフルさんに用事が有って来たの。昨日の女剣士が挨拶に来たと言ってもらえば、わかると思うから」


「わかりました。こちらに掛けて、少々お待ち下さい」


 笑顔は崩さなかったが、緊張した様子で店の奥に引っ込む店員。


「いいの? あれだと、どこかの姉御が殴り込みに来たって感じで伝わるんじゃないか心配なんだけど」


 とリサが言うが。


「ええ? そ、そうかな?」


「ま、奇襲はしてこないでしょうけど、してきたらしてきたで、潰してやれば良いわ、こんな店」


「うーん」


「やるなら、任せるニャ。壊すのは得意ニャ」


 不穏な発言をするリム。前科が無きゃいいんだが。 


「お前な。大人しくしてろ」


 注意しておく。


「ムー、つまんないニャ」


「お待たせしました、お客様。店長がお会いになるそうです。奥へどうぞ」


 先程の店員が戻ってきて、俺たちを案内する。奥の部屋には、強面の手下をずらっと背後に並べて、ソファーにふんぞり返ったアニキさんがいた。


「で? 挨拶ってのは、どう言う挨拶なんだ? 事と次第によっちゃ、ここから生きては帰れねえぞ?」


 わあ。正直、怖いです。

 HPの感じだと、レベルは多分、俺の方が上なんだけどね。詳細に見ようとすると失敗することが多いので、あの時はHPしか見ていない。

 今も、迂闊(うかつ)な動きはしない方が良い。


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