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異世界の闇軍師  作者: まさな
序章 奴隷から始まるホラーライフ
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第七話 夢が広がる熟練度

2016/10/2 誤字修正。

 一週間が経過した。


 分かってはいたが、奴隷生活は過酷だった。

 二日に一度は、(ムチ)が飛んでくる。

 畑仕事で毎日筋肉痛。

 

 飯は不味(マズ)い。


 日本へ帰る方法も未だに見つからず。


 美少女はいない。


 ネットもゲームも無い。


 友達は猫だけ。


「フフ、フフフフ、フハハハ!」



 そんな中で俺は不敵に笑っていた。

 ロブとクロが気遣わしそうな目をこちらに向けているが、

 俺は大丈夫です。



 ついに見つけたのだ。


 

 熟練度 制(スキル・システム)



 便利アイテムが存在し、スライムもいた。

 ならばここはそういう世界(・・・・・・)に違いないと、

 中二病を全開にし続けていたのが正解だった。


 初めはちょっとコツを掴んでそうなっただけなのかとも思っていたが、

 検証も行い、

 とある発見もあって、

 俺は確信した。


   

 この世界では(・・・・・・)行動を繰り返すと(・・・・・・・・)上手くなる(・・・・・)

 


 …いや、俺の元世界でもそれは同じかな?

 反復練習って大事だよね。


 だが、こちら側では、上達のスピードが全然違う。


 たった四、五日、猫の実を探し続けるだけで、

 俺は一日に六つの実をゲットできるようになった。


 森に入って、落ちている実をぱっと見分ける事が出来る。

 この辺に落ちていそうだなという感覚も分かるようになった。


 猫の実ハンターと呼んでくれ給へ


 ま、猫の実の成っている木を発見したのが大きいのだが、

 ロブやレダが驚くくらいだから、

 普通では無い。


 サロン草も、バルブの実も、すぐに見つけられるようになった。

 薪割りも上達した。


 検証のため、俺は夕食後の小屋で、藁で縄を作る作業を三日ほど行った。

 

 俺はどちらかというと器用な人間だと思うが、スポーツは全然ダメだし、何かで賞を取ったりしたこともないし、人並みの範囲だろう。


 一日目は当然、やり方すら分からず、苦戦した。


 二日目、藁と藁を組み合わせて、編むことはできるようになった。ロブが俺が何をしたいのかに気づいて、お手本を見せようとするので断った。


 三日目、小屋に元から有った縄とほぼ同等の縄を作ることに成功した。


 コツは滑らないよう手のひらに唾を付けて、束が二つ出来るようにしつつ、斜めに両手をこすって()り上げることなのだが、

 そこはあまり重要では無い。


 未経験者の俺が、この世界の熟練者と同等のレベルの物をたった三日で習得してしまったことが重要なのだ。


 ロブに確認すると、縄は子供の頃に習ったが、まともな物が出来るようになったのは大人になってからだそうだ。ロブが凄いぶきっちょな可能性は残るが、俺はロブより覚えが早いのは間違いないだろう。

 レダにも確認すると、どれくらいで出来るようになったかは覚えていないという。


 この検証だけなら、スキルシステムの存在を主張するには弱いかも知れない。


 

 しかし、さらに俺は、サロン草によく似た草が生えているのを発見した。


 色は薄い茶色で、初めはサロン草が枯れているのかとも思ったが、葉はそれなりに水分を含んでいた。

 俺の愛読書、イギリスの陸軍特殊部隊S○S編纂のサバイバルブックの教えに従い、植物の匂いをまず確かめ、

 少量を腕にくっつけて、時間を掛けてパッチテストを行い、毒物かどうかの判定を行った。

 いきなり、全量をくっつけたり、全部食べちゃうのはトーシローのすることだぜ? 坊や。


 そしてコイツはサロン草の仲間、親戚筋だろうと結論づけた。

 あの湿布によくある芳しい刺激臭が共通の特徴だ。


 実際に葉っぱを一枚、筋肉痛で苦悩している俺の太股に貼ってみた。

 サロン草に比べ、冷んやりクール感は乏しいものの、驚いたことに一時間もしないうちに痛みはすっかり取れてしまった。

 非常に強力だ。


「それは、打ち身に使う」


 ロブに聞くと(最初に彼に確認して毒物では無いことは確認済みでした、テヘ)

 筋肉痛には使わないのだという。

 理由はロブも知らないと言うが、こういう慣習は軽視しない方が良いだろう。

 筋肉痛が全快したのではなく、この薬草が痛み止めでしかなかった場合、無理をすると足を壊してしまう可能性がある。


 俺はこの草の名前を第六感でロキソ草と識別した。

 ロブにも確認したが、当たりだった。



 つまり、俺が薬草を採って使いまくっていたために、その系統の熟練度が劇的に上がり、

 ついには未知の薬草の識別さえ可能になったのだ。



「ロブさん、今日から僕のことはリーフ・マイスター・ユーイチと呼んで下さい」


 出来る男の雰囲気をぷんぷん漂わせて、言う。


「リー、マス…?」


「ノン、リーフ・マイスター。リピート、アフタ、ミー。リーフ・マイスター!」


「リ、リーフ・マイスター」


「よろしい。グッジョブ! グッボーイ。 

 さあクロ、あなたもですよ、リピート、アフタ、ミー。

 リーフ・マイスター!」


 巻き舌で格好良く発音する。leafなのにrの発音だから、これは間違いだけどネ。


「ニ、ニー、ニー、ニー!」


 ま、猫はいくら反復させたところで喋れないか。



 さて、今日の畑仕事である。

 ノルマだ。

 やりたくは無いんだけど、鞭は食らいたくない。


 そこで俺は工夫した。

 どうせ筋肉痛になるのであれば、予めサロン草を体に貼っておけばいいではないか、と!

 天才だね!

 特許取れるかも。


「やあ、みんな、元気してるかい? ボクはとっても元気でハッピーさ。

 今日みんなに紹介したいのはボクが発明した新兵器、

 リーフ・プロテクト・アーマー・スーツ・オメガだ!

 ジャジャン!


 ハーイ、ボブ! なんだかとっても凄そうね! 


 やあ、サラ、今日は一段と魅力的(キュート)だね。ハハッ


 やだ、ありがとう。

 で、あなたが身につけてる、その葉っぱの鎧みたいなのは何なのかしら?


 そう! 良いところに気がついたね、サラ。その通り! こいつはサロン草の鎧さ。

 なんと! 26枚を効果的なポイントに配置することで、

 あらゆる場所の痛みにフレキシブルに対応できるんだ。

 おかげで鍬を振ってもちょっとしか痛くなーい。

 しかも! 痛みを自動ですぐに回復しようとしてくれる優れた鎧なんだ。


 まあ、そんなことが? でも…お高いんでしょう?


 いやいや、サラ、こいつはそこら辺に生えてるから元手はタダなんだ。

 さらにさらに今ならお得、もうワンセット、おまけに付いてくる。

 小口注文は受け付けないよ! いつだって倍額の半額表示だから同じ値段さ!


 どうです、そこのお兄さん、お一つ」


「いらない。ユーイチ、遊んでないで仕事しろ」


「はーい…」


 怒られちった。



「おい、見ろよ、葉っぱのお化けがいるぞ」


「ホントだ。ぎゃはは、だっせ」


 子供の群れが現れた!


 おおっと、子供の群れはユーイチが身構えるより早く襲いかかってきた。


 子供Aはユーイチの鎧を馬鹿にした!


 子供Bはユーイチの鎧を馬鹿にした!


 ユーイチは精神的ダメージを受けた!


「やっつけろ!」


 子供Cは石ころを投げてきた!


「うわっ、危なっ!」


 ユーイチはかろうじて石ころを(かわ)した。


「それ!」


 子供Aも石ころを投げてきた!


「いてっ!」


 ユーイチは太股にダメージを受けた!

 いや、マジで痛かったから。


「やった! 命中~!」


「よし、どんどん当てろ!」


「こいつ。ふっざけんな! 人に向けて石を投げてはいけませんって教わらなかったのかよ。当たり所が悪かったら死ぬかも知れないんだぞ。馬鹿にしてる間はいいが、石を投げたら、そりゃ戦争だろうが!」


 小学生くらいだろうし、捕まえてお尻ペンペンしてやる。

 教育的指導だ。


「うわ、逃げろー、あははは」


「待てやコラァ!」


「よせ! ユーイチ、ダメだ!」


 普段、怒鳴ったりしないロブが、叫ぶ。

 むう。


「でも、ああいうのはきちんと躾けないと。危ないですよ? 仕事はちゃんと後でやりますって」


「ダメだ。そうじゃない。奴隷が、奴隷でない奴、殴る、絶対、ダメ」


 む、身分制か。

 あのガキ共、腕には焼き印は無いようだ。

 木の向こうでニヤニヤ笑っていやがる。

 ムカつく!


 だが、ロブが怒鳴ったからには、注意が必要だろう。


「ロブさん、殴るだけでもダメなんですか?」


「ダメだ。怪我をさせたら、奴隷は死罪だ」


「えっ! えー…」


 それって、人を襲った熊やイノシシが猟友会の皆さんに射殺される扱いと変わらなくない?

 くそ、奴隷って、畜生扱いなのかよ…

 チクショウ!

 チクショオオオ!


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