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異世界の闇軍師  作者: まさな
第五章 騎士

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第七話 炭鉱町ラジール

2016/10/14 若干修正。

 王都から東に徒歩で十日。

 ついに俺たちは目的地である炭鉱町に到着した。

 尾行は完全に撒いている。探知(ディテクト)の魔法も使って接近する人間を早めに把握して避けたので、割と余裕だった。


「あー、なるほど、ドワーフの街っぽいわねえ」


 街に入って、ティーナが町並みを眺めつつ感想を述べた。この街は彼女も初めてだという。

 鋼の生産国であるミッドランドは、他国への武器輸出も限定的にだが行っているそうで、近隣ではトレイダー帝国と並んで力を持っているらしい。

 その鋼の元となる鉄の生産量第一位を誇るのがここラジールだ。銅はフットリベットという別の鉱山で採れるらしいが、鍋などの生活用品より、今は武具、やはり鋼やミスリルだろう。

 ラジールでは、石炭と鉄、少量ながらミスリルも生産されるそうで、やはり人も集まり活気に満ちている。


 建物は王都とは一変していて、狭い道に傾斜のきつい屋根の家が乱雑に並んでいる。石造りと木造が半々。石造りの大きな建物の煙突からは大量に黒煙が上がっていて、街全体が少しくすんだ感じ。

 だが、暗い雰囲気では無い。

 屋台ではソーセージが売られ、人の往来も激しく、右を見てもドワーフ、左を見てもドワーフ、やたらドワーフ率が高い。バイキングみたいな兜をかぶって、ずんぐりした小柄な男達が豪快な笑い声を上げながら歩いているのを見ると、なんだか不思議な感覚に襲われる。


「野蛮」

 

 エリカがうんざりしたような感じで言うが、彼女のセンスとはかけ離れているのだろう。そこは我慢してもらうしか無い。そんなに長く滞在もしないだろうし。


 まずは宿を取り、旅の疲れを癒やす。体も洗う。


 翌日、さっそく武器屋から覗いて行くが、期待はあっさり裏切られた。置いてあるのは鋼の武具だけで、ミスリルは一つも無い。


「生憎だったなあ。ミスリルの鉱山が今は閉鎖中だからな。商人達があっという間に買い占めてったぞ。他の店も同じだ」


 武器屋のドワーフの親父が言う。


「ううん。なんで閉鎖になったんですか?」


 ティーナが聞く。


「モンスターが出てきてな。それも一匹や二匹じゃねえ。大量だ」


「ええ? ダンジョンになっちゃったのかしら」


「縁起でもねえ。そうなったら商売あがったりだ。この街じゃ鋼なんて珍しくも無いからな」


 鋼の装備は不要なので、ひとまず店を出る。


「何しに来たんだか、分からなくなっちゃったわね」


 リサが肩をすくめる。


「そうねえ。でもま、王都から離れればそれでいいんだけど」


 のんびり言うティーナ。


「で、どうするニャ? 他の店も行くの?」


「その前に、普通の鉱山が、ダンジョンになったケースって、これまでもあったのか?」


 俺は質問する。


「ああ、そんなに珍しくは無いわよ。私が生まれてからすぐの頃にも、そう言うことがあったらしいから」


 ティーナが答える。


「じゃ、しばらくしたら、モンスターが全滅して元通りに?」


「その辺はよく知らないけど、そうじゃないかしら?」


「あいつら、どこから湧いて来るのかしらねえ?」


 リサも疑問に思ったようだ。獣と違って、倒すと魔石が残ったりするが、魔力が変質して発生していると考えるのが自然だろう。ただ、どう言うメカニズムかは俺にもさっぱり分からない。 


「じゃ、防具屋と道具屋を覗いたら、冒険者ギルドに寄ってみましょ。討伐系のクエスト、募集してるかも」


 リサが言う。


「そうね」


 防具屋も同じく、ミスリルシリーズは売り切れ。道具屋では木彫りの小物や銀細工が目を引いたが、お土産用と言った感じで役立つ物は無かった。適当にポーションをいくつか買って、冒険者ギルドへ。


「やっぱり出てるわね」


 ギルドの掲示板にミスリル鉱山のモンスター討伐というクエストが貼り出されていた。


レッドバット    5G

オオハリネズミ  10G

ビッグモール   20G

ロックマイマイ  50G

レッドリザード  100G 

 

 それぞれ懸賞金が掛けられているが、レッドリザードはこの中で一番強いのだろう。


「強いのか?」


 大事なことなので聞く。


「レッドバットは大したことないけど、ロックマイマイは硬くて強いわね。レッドリザードは知らないけど、強敵でしょうね」


 リサが答えた。


「じゃあ、止めとこう」


 命あっての物種だものね。


「ええ? レッドリザードはともかく、他は今の私達なら大丈夫だと思うけど」


 ティーナが言うが。


「根拠は?」


 当然、俺は問う。


「むっ…」


「このモンスター、どのくらいのレベルなの?」


 リサが受付のお姉さんに聞く。


「レベル20以上のパーティーなら、問題ないと思いますよ」


「決まりね」


「くっ」


「冒険者のくせして行きたがらないのはどうかと思うけど、悪魔も倒した私達なら余裕よ」


 リサが言うが、ホントかなあ。

 間違ってたら死人が出るでしょ?

 俺だって死にたくないし。


「大丈夫、少し戦ってみて苦戦するようなら、中止すれば良いわ。ここは逃げられる場所だと思うし」


 ティーナが言う。


「ふむ。じゃ、レッドリザード以外を狩って、ミスリル鉱山復活に協力するか」


 俺も同意しつつ、レッドリザードは外しておく。


「ええ」


 他に異論も出なかったので、準備を整えて、鉱山に入る。入り口には両手斧を持ったドワーフが門番をしていた。

 依頼(クエスト)を出してるんだから、入れないって事は無いと思うけど…。


「クエストを受けてきたんだけど、入って良いかしら?」


 リサが聞く。


「構わんぞ。地図も見せてやろう。これだ」


 ドワーフが羊皮紙の巻物を広げる。思った以上に広く、地下三階まであるようだ。

 記憶の呪文を無詠唱で使い、覚えた。


「よし、覚えた」

「私も」


 俺とリサがマップを覚えたので、いいだろう。


「む、もう少し…」


 ティーナとエリカが地図を睨む。


「全員が覚える必要なんて無いわよ。ユーイチがマッピングできるんだし、とっとと行くわよ」


「むぅ、そうね」


 マッパー、ステータス、ライト、それにバリアの呪文も唱えて、中に入る。

 ミスリル鉱山の中は、ごつごつした黒岩をくりぬいて幅三メートル縦二メートルの通路が奥まで延びている。崩落防止のためか、太い柱が補強するように組んであるが、ブルドーザーやダイナマイトも無しで良くこんな物、作ったもんだ。


「見た目は普通の鉱山って感じだけど…」


 ティーナが感想を述べるが、普通の鉱山も見た事が無い俺はこれが普通かどうかもよく分からん。異世界だしね。


「ニャー。ミスリルって、ティーナが持ってるヤツだよね? キラキラして無いニャ」

 

「そりゃそうよ。ミスリルと言っても、このまんま落ちてるわけじゃ無くて鉱石を溶かして精錬してようやくそれっぽくなるんだし」


 リサが説明。


「精錬?」


「不純物を取り除くってことだ」


 さらに説明してやる。


「ああ」


「じゃ、討伐が目的なんだし、ルートはしらみつぶしで行きましょう。左から」

 

 リサが言う。


「ええ」


 前衛のティーナとリムが先頭、続いてリサ、それから俺とエリカとクロ。


「その先に何かいるわ」


 リサが言い、ティーナが鞘から剣を抜き、皆も構える。


「キキッ!」


 体長五十センチくらいの赤黒い蝙蝠が四匹。レッドバットで間違いないだろう。ステータスを唱えて見たいところだが、多分雑魚だし、呪文は節約で行く。


「はっ!」

「とりゃっ!」


 襲いかかってきたレッドバットをティーナとリムがそれぞれ一撃で叩き落とす。やはり余裕だな。エリカが電撃、クロがファイアボールを唱えて、残りの二匹も仕留めた。


「楽勝じゃない。誰かさんがビビってたけど」


 リサが俺に当てつけるように言う。


「まだだ、まだ分からんよ」


 序の口の敵だものな。


「どうかしらね」


 リサとリムが魔石と羽を拾う。


「じゃ、次ね」


 ティーナが言い、また進む。


 続いて、デカいモグラが三匹。こいつらは手の爪が結構危なそうだ。

 体力もありそうだし、ステータスの呪文を使ってみる。


「お、成功した」


ビッグモールA Lv 12 HP 88

ビッグモールB Lv 13 HP 92

ビッグモールC Lv 11 HP 85


 ふむ、見た目よりHPは少ないし、俺たちよりレベルはずっと下だ。ページ切り替えが出ないし、詳細ステータスは失敗した模様。


「ちょっと! こんな雑魚に無駄な呪文、使わないでよ」


 リサが怒る。


「いや、強いかも知れないと思ったんだ。それに、攻撃力、有りそうな感じだぞ」


「ニャ、大したことないニャ」


 盾で爪を受け止めたリムが余裕の表情で言い、斧で攻撃。一撃では仕留められず、もう一撃を振り下ろして、仕留めた。

 ティーナも右の一匹を片付け、残りもエリカとクロがあっさりと。

 となると、二番目に懸賞金が安かったオオハリネズミも楽勝だろう。


「終わったわね」


「ええ、良い感じじゃない」


「ま、まだ油断は禁物なんだからねっ!」


 大事なことなので言っておく。みんながチラッとこちらを見て無言でスルーしたが、いいんだ。俺はあえて嫌われ役となろう。

 探索を再開。


「…何かいる」


 ティーナが身構えつつもそのまま歩く。

 体長五十センチほどの岩を背中に乗せたナメクジが三匹。

 こいつがロックマイマイだろう。


「ニャ、美味しそうニャ」


「ええ?」


 リムの変な感想にティーナが引くが、本気で食べたりはしないだろう。しないよね?

 

 リサが先手を取り、ボウガンをナメクジの頭に撃ち込んだ。頭の触角が引っ込み、岩の中に隠れるナメクジ。まんまカタツムリだな。ただ、岩のお家は見るからに硬そうだ。


「チッ」


 舌打ちするリサ。

 キンッと音がして、ティーナのレイピアも岩の殻には通用しなかった。


「硬い!」


「岩は無視して、体を狙うのよ!」


 リサが妥当な作戦を出す。ま、呪文なら行けそうな気がするが、まずはステータス。


ロックマイマイA Lv15 HP 24

ロックマイマイB Lv16 HP 36

ロックマイマイC Lv15 HP 35


 HP、低いなあ。


「弱いニャ。あうっ!」


 いやいや、リム、防御力が強いんだから、気を付けてくれ。しかし、カタツムリが殻をぶつけてくる攻撃って、意外だったな。こいつらにその他の攻撃方法はちょっと無さそうなんだけど。やはりモンスター、人間に対して攻撃的だ。


「強いわよ。ほら、薬草、食べて」


「ありがとニャ」


 リムのHPが攻撃を受けて24ほど減ったが、すぐに満タンに戻る。一人で囲まれたらヤバいだろうけど、パーティーで対峙する分には問題無さそうだ。


「雨よ凍れ、風よ上がれ、雷獣の咆哮をもって天の裁きを示さん! 貫け! ライトニング! よしっ!」


 エリカが電撃の呪文で一撃で仕留めた。やはり魔法が有効だな。


「雪の精霊よ、集まりて、凍てつく針となれ! アイスニードル!」


 俺も氷の初級呪文を使い、HPが減っていたカタツムリをやっつけた。

 クロも炎の呪文で仕留めたが、こいつらには属性は特に関係ないようだ。


「ふう、魔術士がいてくれて助かるわね。剣だけだと、苦労しそう」


 ティーナが剣を収めて言うが、その通りだろう。


「ええ。そうね。MPもまだまだあるし、どんどん狩りましょう。ロックマイマイを中心に」


 リサが言う。ステータス呪文で、魔法組だけだがMPも合わせて表示させてある。


 ユーイチ MP 84 / 96

 エリカ  MP 92 / 104

 クロ   MP 84 / 92


 魔法を覚え初めのころは数回使っただけで魔力切れになっていたが、毎日魔力を鍛えてレベルも上がってきたので、初級呪文なら40回は余裕で行ける。


「エリカ、ここの敵は電撃より、炎にしておいた方がいいぞ」


 中級魔法は消費が倍だし。


「フン、指図しないで。私はこれで行くわ」


 まあ、好きにしてくれ。同じ呪文を使い続けた方が、得意魔法の熟練度も上がりやすいし。


「じゃ、次、行きましょう」


 ティーナが言い、俺たちは頷いた。


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