第十四話 仲間が増えた
2016/10/5 スキルレベルに記憶 Lv43 を追加。
俺たちは商隊と別れ、さらに南東へと向かった。
元々、そちらに向かう予定だったが、金髪ツインテールのエルフ、エリカが重要な情報を持っていた。
町娘を攫って大規模な召喚術の企てに、子爵だけで無く、オズワード侯爵も絡んでいると言う話だ。
…なんて言うかさ、これ以上背後を探ると、国王とか出てきてヤバいんじゃないかと思うんだが、俺たちのリーダーのティーナは全く恐れた様子も無くやる気だ。
なんで一介の冒険者がそこまで首を突っ込むのかという問いは、
「ミッドランドの騎士として当然の義務よ」
という言葉で一蹴された。
次の転職先を探した方が良いかもしれない。
でも、ティーナ・カンパニーは、衣食住が完璧に保障されて、鞭打ちも無いし、ノルマみたいなのも無いから、居心地が凄く良いのよね。おまけに美少女だらけ。
うーん。
とにかく、良さそうな転職先があれば、要チェックってことで。
今は、何とかティーナの暴走を抑えつつ、防御系スキルを鍛えるとしよう。
生き残りが第一だ。
あと、大事なことだが、パーティーが二人増えた。
アンタ達だけじゃ見てられないからと言って、リサが今回の件を片付けるまで同行してくれるという。
レベル22の盗賊と来れば、こちらとしても大歓迎。
これで宝箱や鍵の掛かった部屋も開け放題、フヒッ。ただ、リサはカルマが増えるようなことはしないそうで、ま、その方が良い。賞金首なんかにはなりたくない。
金髪ツーサイドアップのロリっ娘だが、俺の求めているロリっ娘とは性格が全然違う…。
もう一人は、エリカ。
こちらは足を引っ張ってくれそうな感じだが、渋るパーティーのメンバーをよそに、ティーナが加入を承認してしまった。
自分を攫った黒幕に復讐するのが目的だそうだが、トラブルの予感有り有りです…。
最初からトラブり気味だったしね。
自分、ツンデレキャラは大好物だったのですが、なんかリアルにツンツンはダメだね。萎えるね。
このメンバーだとティーナが本当に女神に見えてくるから不思議だ。いや、クロの方が可愛いな。危険なことはしないし、俺に従順だし。
クロを虐めたら承知しないぞと二人の新入りにはきつく言って約束させておいた。
あと、エリカのHPが俺よりも低い34なので、リムに冗談でも殴らないように厳しく言っておいた。リムもレベルが上がっているし、下手したら一撃で殺しかねない。
でも、MPは俺より多かった。
なんか悔しい。
でもエルフだしね。俺は人族だし、負けて当たり前。
気にして無いっすよ。
くそう…。
魔法攻撃力なども見ようとしたのだが、リサもエリカも抵抗しやがった。
なので、詳細パラメータはお預けだ。いつか覗き見てやるぜ、ぐへへ。
…ふむ。
エリカの後ろに回り、背後からこっそり無詠唱でステータス。
「ちょっと! 勝手に私の能力を見ないでって言ったでしょ!」
気づかれた。しかもレジストされた。二回連続とはやるな、エルフ。
「悪かった。もうしないから」
「ふん」
「ユーイチ、それ、マナー違反だから、やめてね」
「お、おう」
ティーナにやんわりとだが、真顔で注意された。もう止めておこう。
ただ、索敵はティーナとリサがやってくれるし、魔法攻撃はエリカとクロで充分だろうから、俺は割と暇になっている。
道中は、この辺りはモンスターも少ないし、MPを気にしなくても大丈夫か。
なら、魔法開発だ。
「マナよ、我らに時を示せ! タイム!」
時間が分かる呪文が欲しいなーと思っていたので、試してみる。
キッとエリカがこちらを振り向いて睨んだが、すぐさまその顔が驚愕に変わった。
「お、まさか一発で成功するとは」
聖暦 246年 5月 8日 火曜日 午前 9時 22分 35秒
別ウインドウにこのようにリアルタイム表示された。秒数が進んでいく。
これだと一年が何日で一日が何時間か不明なのだが、ま、それはティーナに聞けば教えてくれる。どんなに基本的なことでも馬鹿にせずに教えてくれるからティーナはありがたい。
「へえ、時間がみんなに分かるって便利ね」
とティーナ。
「そうね」
とリサ。
リムは秒数に向かって猫パンチしている。止めなさいっての。無駄だから。
パーティーがバラバラになっても有効なのかが問題だが、そこをクリアすれば、待ち合わせも随分と楽になる。
「そ、そんな、蛮族の人間が、私も知らない魔法を使うなんて」
妙にショックを受けているエリカ。
「んん? エリカ、お前、ステータスの呪文も知らないって言っただろ?」
「それは呪文を、似たような呪文は長老達も使えてたのよ。能力だけ示すとか、体の状態だけ示すとか」
「ふむ。例えばどんな呪文?」
「覚えてないわ」
「ええ? ちょっとでも良いから、思い出してくれ」
魔法の呪文は独特の癖があるので、自然言語では起動してくれないことが多い。なので、多くの呪文に触れれば、それだけ応用が利き、自由度も上がると言うわけだ。一部そのままコピーしてもいいし。
「むう。汝の才能を示せとかなんとか、そんな魔法文字だったと思うけど」
「よし。汝の才能を示せ! スキル!」
むっ、発動したけど、レジストされた。
「だから、私の能力を見るなって言ってるでしょ!」
「おう、ごめん、今のはわざとじゃ無いんだ。ホント、ごめん」
対象を我に指定するのを忘れてた。エリカが樫の杖を振り上げたので、殴られるかと怖かった。樫の杖と財布袋とリュックはロバートが用立ててくれ、ティーナがお支払い。エリカもさすがに「ありがとう…」とボソッと横を見ながら言っていた。
「次は、我でやるから。我の才能を示せ! スキル!」
採取 Lv 62
調合 Lv 44
栽培 Lv 29
釣り Lv 11
魔法 Lv 43
剣術 Lv 8
隷属 Lv 44
思考 Lv 89
記憶 Lv 43
連携 Lv 32
罠 Lv 20
操獣 Lv 38
交渉 Lv 21
探索 Lv 18
発明 Lv 37
解読 Lv 26
逃亡 Lv 28
鑑定 Lv 17
反省 Lv 42
ぬお。ずらっと出たが、こうじゃ無いんだよなあ。俺が欲してる能力表示は。
詳細ステータスの方に出てくる優秀スキルのアレで一覧が見たかったんだけど。
でも、この感じだと、一覧が膨大な量になりそうで、面倒だ。今のこれでも、結構見にくい。
俺の意識も反映される気がするから、見落としとか出そうだし。
気になる能力は、【隷属 Lv 44】と【操獣 Lv 38】と【反省 Lv 42】か。
【隷属】は奴隷精神って事だと思うが、むう、早くこのジョブをなんとかしたい…。
【操獣】って、子猫のクロを可愛がったり、獣人のリムを構ったりしてるせいか。高くなると、モンスターでも行けるのか? そこが気になるね。
あと、【反省】…ううん、まあ、高い方が、改善率が良くなると思いたい…。
「な、何このレベル。汝の能力を様式に従って示せ、ステータス!」
「むお!?」
エリカが呪文を唱え、なんだか裸を見られてるような感覚がして恥ずかしかったので、とっさにレジストした。
「ちょっと! レジストしないでよ」
「いや、そう言われても、ついな。それより、何が知りたいんだ?」
「総合レベル」
「ああ。15だけど」
「ええ?」
「ほれ」
冒険者カードを見せてやる。それでエリカも一応は納得したようだ。
「ううん、このレベルとこの年齢で、あそこまで高い才能は出てこないと思うんだけど」
「そうか? ま、俺には熟練度成長速度69倍というイカしたスキルがあるからな」
この成長促進スキル自体をさらに成長させるという面白い事も出来ている。最初に見たときは56倍だったから13ほどスキルレベルが上がってるね。
「はぁああああ?」
やたら反応が良いエリカ。ふっふっふっ。
「それ、ホントなの?」
ティーナが冗談と思ったらしい。
「ふむ。覚えが早い人間もいるし、早熟のコツが分かれば、可能なのかしら…? でもねえ…」
リサが良いところを突くが、半信半疑の様子。
「じゃ、ついでだ。スキルレベルを手っ取り早く上げるコツを伝授しよう」
「む。お願いします」
ティーナは学ぶ姿勢が真摯だ。しかも、こういうチャンスを逃さない。成長は早いだろうな。事実、剣術はなんだか凄いことになってそうだし。
「良いわね。私もお願いするわ」
リサもコツは何となく掴んでいそうだが、そこまで貪欲というか、真摯さは無い。そこそこの成長だろうか。まだ付き合いが短いので、この子のスキルはほとんど知らない。ボウガンの扱いはなかなかのレベル。あと二刀流と。
「そんなのがあるとは思えないんだけど」
信じていなさそうなエリカは、ダメだな。スキルレベルを実際に目にしているのに、まあ、俺が手品かインチキをやったと思ったか。
「ニッ!」
真剣な眼差しのクロは、ひたすら解除の呪文を反復してるし、俺より努力家だ。俺より成長速度、早いと思う。
「おなか空いたニャー」
興味すら示さないリムは論外。ただ、好きなことに関しては労力を惜しまないので、偏った成長をしそうだ。
「おほん、リム、魚がもっと上手く取れるようになるかもしれないぞ」
ニンジンをぶら下げておく。どうせこいつの魚獲りのレベル、99か999のマックスでカンストしてるだろうけどね!
「ニャ! 教えてニャ!」
「よろしい。では、まず、この世界のスキルと熟練度について、説明したいと思います」
真面目な講義をやった。リムは退屈そうにしていたが、例えを使ってかみ砕いて教えてやったら、理解は出来たようだ。




