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異世界の闇軍師  作者: まさな
第四章 侯爵令嬢

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第十一話 魔法合戦

2016/11/11 若干修正。

 そこでは、鎧を着ていない兵士が剣だけでエルフに斬りかかろうとして、魔法で返り討ちに遭っていた。


「この! この! この! よくもこの私に!」


 よほど腹が立っているのか、倒れている兵士をさらに足蹴にするエルフ。

 金髪のツインテールがその度に揺れるが、容赦ないなあ。全力蹴りとか。


 ううん、なんだろ。俺の中のエルフ像は理知的でミステリアスで、もうちょっと…アレだ、上品な感じだったんだけど。

 この世界には肉弾戦を得意とするエルフもいたりするんだろうか?

 いても別にダメって訳じゃ無いけど、少しがっかりだわ…。

 顔はかなり好みだったりするけどね。


「くっ! 体が動かん」


 兵士はまだ生きているが、雷の電流で体が麻痺しているらしい。バッドステータスが付くとは地味に良いなこの呪文。


「ちょっと、逃げるわよ、そこのバカエルフ」


 リサが呼びかける。廊下の向こうから、わらわらと武装した兵士が出てきちゃったし。


「全員、殺してやるわ」


「ううん、気持ちは分かるけど、ちょっと数が多いわよ?」


 そう言ったティーナは前に出て兵士達を防ぐが、八人はいるだろう。抑えきれるか?


「あ」


 俺ものんきに眺めてる場合じゃ無かった。


「マナよ、我が呼びかけに応えて、各々の防壁と化せ! バリア!」


 防御の呪文を味方全員に掛ける。

 これまた迂闊(うかつ)だったが、防御力アップのポーション、事前に飲んでおけば良かった。

 今は出して配ってる暇も無い。


「ニーニーニー、ニーニー、ニッ!」


 クロもファイアの呪文で兵士を攻撃。


「曲者め、覚悟! ぐあっ!」


 リサもボウガンで支援。兵士達はティーナで足止めされたままで、これなら行けそうだ。

 狭い廊下で助かった。ここでなければ、囲まれていたところだろう。


「四大精霊がサラマンダーの御名の下に、我がマナの供物をもってその爪を借りん。ファイアボール!」


 げえ、兵士の後ろから赤いローブを着た男が呪文を唱えてきた。

 拳大の火の玉が俺の顔めがけて飛んできたし!

 剛速球で避ける間もなく直撃。


「ぶべっ、あつっ!」


 ひい、燃える!


「ユーイチ!」


 炎を叩いて慌てて消す。ふう、消えた。


「心配要らないわ、魔法使いなら一発や二発じゃ死なない」


 リサが言うが、ホントだろうな?

 俺の体力は普通よりずっと低いんだぞ?

 

「我らが体力を様式に従って常に示せ、ステータス!」


 ステータス呪文を唱えて、俺の体力をチェック。


 HP 36/ 42


 お、ホントだ。あと五発くらいまでは耐えられそう。

 もちろん、速攻でアロエ草を口に含んで、火傷した顔にもぺたぺた。


 HP 42/ 42


 ふっふっふっ、これであと五十発くらいは耐えられるぜ。


「ダメだ、後ろの魔法使いは魔法防御が高い。剣士を狙え!」


 敵の魔法使いがそう言って、むう、いつのまにか、ローブ男が三人になってるし。しかも呪文を唱え始めちゃった。前衛の兵士が邪魔だなあ。


「きゃっ!」


「ティーナ!」


 ティーナに炎の玉が同時に二つぶつかってヒヤリとしたが、


 HP 106/ 116


 ん? 一発分のダメージが5ポイントなら、俺より魔法防御、高くない?

 ああ、ミスリル装備か。

 いいないいなー。


「なんだ、思ったより大したことないのね。よし、行ける!」


 などとティーナが反撃に出始めたが、いやいや、ここは速やかに撤退だろうに。


「雨よ凍れ、風よ上がれ、雷獣の咆哮をもって天の裁きを示さん! 貫け! ライトニング!」


 エルフが呪文を使ったが、ティーナも巻き込んだ。


「なっ!」


 おいぃ。

 確かに廊下に敵が密集しているから、それをやりたくなるのは分かるが、味方を撃っちゃダメでしょ。

 すぐティーナのHPを確認するが、


 HP 74/ 116


 三割ほど減っていた。俺が食らうと瀕死だな。やはり中級魔法、威力があるぜ。


「くっ、魔力が」


 そこでエルフは力尽きたか、倒れる。彼女のHPは満タンなので、MP切れだろう。

 だが、助かった。あのままティーナに向けて連発されてたらヤバかったし。


「引くわよ!」


 リサがそう言って、煙玉を投げた。


「ぐおっ! ゲホッ、ゲホッ」


 すぐに黒い煙が吹き出して兵士達を包み込む。


「ユーイチ、手伝って!」


 リサがエルフを肩で担ごうとしているので、俺も反対側から担いで支える。

 体ほっそ。

 それに体重も軽め。俺のおんぶでも行けそうだが、もうリサが進んでいるので、このままの方が良いだろう。二人で引きずって行く。

 エルフの子は気を失っているようで、目を閉じたままだ。HPは問題無いのがステータスで分かっているので、このまま連れて行くことにする。

 裸足なので足に怪我しそうだが、靴を見繕ってる暇なんてないし、後で薬草を使ってやれば良い。


 それにしても、女の子を抱きかかえてるって緊張するね。

 変なところは触らないよう、細心の注意を払ってるが。

 

「少し支えてなさい」


 リサがそう言って、廊下を曲がってその先に兵士がいないかを確認する。

 そこに兵士がいたら、俺達完全に挟み撃ちなんだけど。袋のネズミは勘弁。


「いいわ」


 ほっとした。

 戻って来て抱え直すリサ。


「どさくさに(まぎ)れて変なところ触ってないでしょうね」


「触ってねえよ! それで目を覚ましたら、どうするんだ」


 そうなったら俺の命が危ないわ。


「覚まさなきゃ触るみたいな言い方ねえ。むっ!」


 リサが廊下を曲がった直後、立ち止まる。俺も止まって先を見るが、三叉路になっている廊下の合流地点で、左の方からガチャガチャという金属音とドスドスと木の床を踏みならす音が聞こえてきた。

 うえ、マズいな。先に右に曲がらないと、やっぱり挟み撃ちじゃん。


「数は二人か。やれる?」


 聞いてくるリサだが。


「いや、無理です」


「ええ?」


「任せて!」


 後ろから追いついてきたティーナが俺達の脇を走って追い抜いていく。

 さすが頼れる前衛、頼れるリーダー!


「貴様、何や…ぐあっ!」


 ヒュウ、出てきた兵士に問答無用で機先を制したティーナ。

 だが、もう一人いる。 


「曲者が!」


 兵士が上段から剣を振り下ろす。


「くっ!」


 ティーナが細剣で相手の剣を受け流すが、支えきれずに体勢が崩れる。


 まずい。


「もらった!」


 兵士が再び上段に振りかぶった。

 

 いけない!


 ヒヤッとした瞬間、兵士の腕に矢が刺さった。


「ぐっ! くそっ!」


 兵士が顔を痛みに歪ませ、剣を落とす。


「ありがと、助かったわ」


 こちらを見て言うティーナだが、おう、ボウガンの矢か。


「お互い様でしょ。早く外に」


 リサはそう言うと促した。


「ええ」


 ようやく屋敷を出てほっとしたのも束の間、後ろの方で、出会え! 出会え! と騒がしくなってるし。


「ニャ、早く行くニャ!」


「きゃっ!」


 リムが塀の向こうへ女の子を突き落としてるが、もうちょっと、どうにかならんのか。


「みんな、急いで! すぐに追っ手が来るわ」


 ティーナが急かして女の子達が塀を上がるのを手伝い始める。


「じゃ、ここはいいから、アンタは足止めよろしく」


 リサが言うが。


「はっ? えっ? いや、俺が運ぶから、君が…」


「いいから早くしなさい、男でしょ」


 男女差別反対! だいたい、リサの方がボウガンで攻撃力がある感じじゃんね?

 リサは小柄だし、俺の方がエルフを()げる力が有る……はずだ。


「ニャ! 来たニャ!」


「くっ! ああもう」


 我先にと逃げ出したいが、まだ塀のこっち側に人質だった女の子が何人か残ってるし、エルフも気絶したまんま。


「四大精霊がサラマンダーの御名の下に、我がマナの供物をもってその息吹を借りん。ファイア!」


 とにかく俺に出来ることと言えば、魔法と薬草だけだからな。


「ぐあっ! くそっ、魔法使いめ!」


 兵士が怒りの声を上げるが、それなりに足止めの効果は有る様子。

 この調子なら、行けるか?

 長くは持たないと思うが、少しでも時間を稼ごう。


 兵士は俺の魔法に恐れをなしたか、すぐには斬りかかってこない。

 いいぞぉ、そのままじっとしてろ、臆病者め!


 てか、何ニヤついてんの?


 理由はすぐに分かった。


「あそこだ! 逃がすな」


 庭の左から、松明を持った増援の兵士がやってきた。さらに、屋敷の中からも追っ手が。


 やっべ!


 これは無理よ。

 うん、俺は良くやった。

 これ以上の足止めは無理。


「ユーイチ! 早くあなたも」


 ティーナの声に振り向くと、いつの間にかもうみんな塀を乗り越えて、残ってるの俺だけだった。


「えっ!? ちょっ、それはねえよ」


 いや、早く行って欲しいとは思ったけど、早すぎ!


 お、置いてかないでぇ!


 慌てて塀によじ登ろうとするが、追いかけてきた兵士に足を掴まれた。


「よし! 捕まえた」


 ひい!


「よくもやりやがったな、こいつめ」


 引きずり落とされて、蹴られた。


「ぐうっ!」


 痛い…。


「で、こいつはどうする?」


「殺すに決まってんだろ」


 あああ…なんで俺だけこんな目に。

 リサの言う事なんて無視して、人質の女の子なんかに気を取られず、我先にと逃げるべきだった。

 格好付けて良いのは物語の主人公だけだよね!


 リアルだと捕まったらお終いだもの。

 分かってたけど、行けるんじゃないかってちらっと思ってしまった。

 浅はかだった。


「おい、何してる! 他にもいただろう。外を探すぞ」


 後からやってきた兵士が言う。


「だが、こいつは…」


「早くしろ! 取り逃がしたら俺達はお館様に叱られるだけじゃすまんぞ。いいか、攫ってきた女は絶対に生きて帰すな! いいな!」


「わ、分かった!」


 はい、子爵が黒幕確定。やっぱり組織的犯行だ。でも、捕まった俺の運命はここまでだし。


「ふん、ネズミが。死ね」


 一人残った兵士が剣を振り上げる。

 俺は恐怖で反射的に目をギュッと閉じた。

 現実はこんなモノよね。

 ティーナ達も俺が付いて来てないのを見たら、助けに戻って来るぐらいしろよと。

 それでもパーティーかよ。ま、出会ってほんのちょっとしか経ってないし、押しかけたの俺の方だけどさ。


「ぐっ、くそっ!」


 兵士の悲鳴が聞こえ、ハッとして見ると、腕をまたしてもボウガンが。


「ユーイチ! 早く!」


「リサ! ティーナ!」


 うわあ、二人とも見捨てずに戻って来てくれたのか。

 ちょっと胸熱だよ、こんちくしょう。

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