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異世界の闇軍師  作者: まさな
第三章 ジョブは冒険者?

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第十四話 ヒューズの街

2016/10/14 若干修正。

 ルドラからヒューズの街への行程、四日。


 その間の野営はスムーズに進み、俺たちはすでにヒューズの街へあと少しのところまで来ている。

 モンスターに何度か遭遇したものの、うちの前衛二人が優秀すぎるせいか、それとも、モンスターがスライムに毛が生えた程度の弱さだったからか、ノーダメージでクリアしている。

 夜は、きっちり三人で交代して見張っていたが、モンスターに襲われることも無く、ラッキーでスケベなハプニングも起きず、正直俺はほっとしている。

 だって、女の子二人と夜を共にするんだよ?

 うわ、こんな言い方をするだけで、何やら怪しげなピンク色の雰囲気と変なBGMが…


「ユーイチ」


「うひゃっ!」


 ティーナが唐突に呼ぶので、焦った。


「ううん、なんでそんなに驚くわけ?」


「い、いや、ななな、何でも無いぞ」


 決して、決して、あられもない二人の姿を妄想していたわけでは無いのだ。


「そ。凄く怪しいけど、いいわ、見えてきたわよ、ヒューズの街が」


「おお」


 ルドラの街と変わらない小さな規模の街だが、無事に目的地に辿り着けて、何よりだ。

 だってこの世界の交通機関って、馬車とか徒歩だものね。


「じゃ、街に着いたらすぐに宿を取って、それから、どうするか決めましょう。まだ昼前だしね」


 予定では今日の夕方までに街へ着ければと言うところだったが、予想以上に順調だった。


 なんだ、大きなトカゲ(ロドル)と荷台さえあれば、割と旅って楽勝なんじゃね?


 などと俺が思ったその時、カンカンカンカンと、けたたましい鐘の音が街から聞こえてきた。


「むっ! アレは!」


「大変ニャ! 何かあったニャ!」


 ティーナとリムが反応するなり、街に向けてダッシュ。


「え? あ、おい!」


 だからそう言うこの世界の重要な慣習で、俺に分からないことは先に教えておけとあれほど。

 しかも、このパーティー、ほうれんそうもなってない。

 結成したばかりだもんなあ。


「くそ、何なんだよ。急ぐぞ、ロドル」


 荷台から降りて、ロドルの手綱を引っ張り、二人の後を追う。

 前衛が後衛から離れるなんて、あり得ないことだ。後できつく叱っておかねば。


「ここはもういい、手の空いている者は、東門を固めろ! 急げ!」


 そう指示する男の声が街の方から聞こえた。

 街へ入る門の扉がギロチンのように降りてガコンと閉められ、入り口の外にいた男達が一斉に東へと走り始める。彼らは全員、剣や斧などで武装していた。


「おい、ティーナ! リム! 俺を置いていくんじゃ無い!」


 大声を上げて叫んだが、くそ、無視された。

 何なのよ。


 走るのが馬鹿らしくなり、歩いて門まで行く。

 そちらを見ると、門の前にはいつの間にか柵が置かれ、その後ろに武装した全身鎧(フルプレート)の兵と革鎧の男達が七人、陣取ってこちらを睨んでいる。

 さらにそのうちの四人は俺に狙いを付けて弓を引いて矢を構えていた。


 ええと?

 この世界で両手を挙げろ(ハンザップ)はマズいんだっけ?

  

 聞いとけば良かったよ、くっそ。俺の間抜け!


 とにかく、立ち止まって、待つ。


「おい、そこの魔術士。冒険者カードを持っているなら、見せろ」


「はい! すぐに」


 ヒュウ。持ってて安心、冒険者カード。

 多分、持ってなかったら、今頃俺、撃ち殺されてるよ。


 男達に掲げて見せつつ、友好的な笑顔を見せる。


「おい、あいつ歯を見せて威嚇してるぞ」


「やる気か? おもしれえ」


 慌てて口を閉じる。ちょっと緊張しちゃったからか。次から営業用スマイルのスキル練習もしておこう…。


「待て。アイツはカードを持っている。誰か、ちょっと見てこい」


「お前が行けよ」


「いや、お前が」


 押し付け合いで確認する者がなかなか決まらず、最後はじゃんけんで決まったようだ。

 ありがたいことに、この世界のじゃんけんも俺のいた現代日本と全く同じだ。これはすでに野営の時にティーナに教わっていた。

 これでじゃんけん勝負はハンデ無しで勝負できるぜ。俺、元からじゃんけん凄く弱いけどさ…。


「おかしな真似はするなよ」


「しませんよ」


 複数の弓矢で狙われていて、変なことが出来るはずもない。


 大きな斧を持った男は、その武器を構えつつ、慎重に俺のところまでやってきて、カードを見た。


「問題ない! ライト・ニュートラルの低カルマ、人族だ!」


 一同の緊張が一気に取れ、弓が下ろされた。

 なるほど、数値や記録は自動で切り替わるから、身分証として確かなのか。

 この世界ではかなり重宝しそうだけど。


「じゃ、魔法が使える冒険者なら、お前は東へ行け」


 斧を持った男が言う。


「あの、その前に、何があったのか、教えてもらえませんか?」


「鐘の音を聞いただろう。緊急事態だ。モンスターの大軍がこちらに向かっている」


 群れじゃなくて、大軍かよ。


「なんと! クロ、逃げるぞ」


「ニ、ニー?」


 ティーナとリムはどうするの、と言いたげなニーだ。


「二人はきっと無事だ、そう信じて、いててて、何するんですか、離して下さい!」


 斧の男が俺の腕をむんずと掴んでいる。


「いや、お前、レベル12もあれば戦えるだろうが。さっさと行け。ギルドに名前を報告しても良いんだぞ」


「ええ?」


 くそ、戦うのが義務なんて聞いてないよ? 

 心得に、似たようなことが書いてあったけどさ。

 持たなきゃ良かった冒険者カード。とほほ。


「ホントに、レベル12で大丈夫なんですね?」


「心配するな。本当はレベル20は欲しいところだが、今は人数も要る。後衛ならやられることも無いだろう」


「レベルが8も足りないじゃないですか! 何言っちゃられ、ぐ」


 あう、舌噛んだ。落ち着こう俺。


「うるさい。ゴブリン相手なら、レベル1でもやれる。さっさと行けっ!」


 むう、気が立ってるようだし、ここは屁理屈をこねて怒らせない方が得策だろう。

 東へ向かう。

 ちなみに、西から俺たちはこの街にやってきたので、ここは西門だ。街の四方向に入り口が有り、他は石のブロックの塀でぐるっと周囲が囲ってある。ルドラの街もこんな感じだったのだが、今の今まで、ああ、中世っぽい建造物だなあとしか思ってなかった。

 

 迂闊(うかつ)

 明らかに、この街の造り、戦闘を想定して造られている。


 じゃないと、持ち運べる柵なんてその辺に置いてあるはず無いし。

 高さ二メートルのこの石壁は、そう簡単には乗り越えられないだろう。

 門を下ろしてそこを守れば、侵入者は防げるはず。


 少し行くと、南門が見えてきたので、そこから距離を取る。

 問答無用で弓矢を射かけられては嫌だもんね。


 角を曲がると、東門のあたりで、モンスターが集まっているのが見えてしまった。

 かなりの数だ。

 最低でも百はいるだろう。

 うわあ。

 普通のRPGロールプレイングゲームで、一度に百とか相手するようなゲームなんてそうは無いと思うが。

 困ったことに、これがリアル世界だ。


 俺はすぐに東門に向かった。

 激戦区域に近づきたくも無いのだが、ここで孤立している方がさらに危険だ。モンスター共に見つかって包囲されたら、後衛職の俺は軽く死ねる。装備が木綿のローブだし。

 あー、動きやすいからって、革の鎧、脱がなきゃ良かった。革の鎧の上にローブでも行けたんだが…。

 今更だ。


「ユーイチ、遅い、何してるのよ」


 ティーナが俺の側に駆け寄ってきて、カバーしてくれたが、あんまり嬉しくない。


「それはこっちの台詞だ。パーティーの後衛職を放置して行くとか、ありえねえぞ」


「む。あなたも付いてくると思ったのよ。何かあったの?」


「いいや。だが、西門で弓矢を向けられて、冒険者カードの提示を求められた」


「ああ。そんな服、着てるから」


「ぬう」


 黒色ローブがまずかったのかよ!


「とにかくユーイチ、数が数だから私たちも戦わないと。ちょうど良いわ。こっち側の敵とやるわよ?」


「えっ! 待て待て、主力と合流しておかないと、囲まれるぞ」


 東門の側に十数人ほどの冒険者と兵士が門を守るべく集結して戦っている。


「心配ないわ、ゴブリンぐらい」


 ま、ゴブリンなら楽勝だろうという意識は俺にもある。たいていのゲームで雑魚だ。


「敵はゴブリンで、間違いないんだな? 他の種族、混じってたりしない?」


「んー、それが、ちょっと大きいヤツもいるんだけど、気にしてる暇は無いわよ」


「いやいやいや、そこ大事でしょ。なんで敵の種別を確認しておかないのさ? オークとかだったら、しゃれにならなくなるかもよ?」


 気の強い女剣士と大量のオークの組み合わせ。

 …ひい、俺にそんな属性は無いから!


 それで無くとも、普通にオークはしぶとい体力のはずで、今のレベル20に届いてない俺たちが敵うのか心配だ。さっき西門の戦士もレベル20が一つの目安みたいな感じで言ってたし。


「ええ? でも、戦った感じ、弱かったわよ?」


 不確定名のまま戦う無謀なヤツ。

 相手が強かったらどうするんだと。ま、弱かったのか。


「それで、リムは?」


「分からない。向こう側にいると思うけど」


 敵が集中している門の北側か。ここからでは敵や街の戦士達が邪魔で向こう側は見えない。


「んもー、アイツも、単独行動はダメって教えておかないと」


 ハウスも教えておこうか、ついでに。


「そうね。でも、心配は要らないと思うわよ。あの子、強いし」


「そうだな」


 そこで俺たちは一度、話を止めて、構えた。ゴブリンの一群が俺たちを見つけてこちらに向かってきたからだ。


 やだねー、ああいう、数で群れてくるモンスターって。


 もうね、見た目が迫力出ちゃって、俺の足、震えてるし。


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