表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の闇軍師  作者: まさな
第三章 ジョブは冒険者?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/287

第十話 エルフの少女

2016/10/28 若干修正。


  ダンジョンのボスを倒した。当分の間、ネコミミは要らないです…。


「さて、宝箱が有るわね」


「お宝を開けるニャー!」


「その前に、全員、回復させておこう」


 慎重な俺は言う。


「ええ? もう敵はこの部屋にはいないけど」


「それでもだ」


 薬草を食べて、全員回復。

 今日の消費、十五枚か。ポーション、使わなくても行けたなあ。まあいいか。あの時は回復量も分からなかったし。万が一、足りてなかったら悲惨だ。


 魔力切れのため、罠の探知魔法は使えないので、リムがそのまま開ける。だが、罠は無いようだ。


「お魚ー!」

 

 そうリムが叫んで中身を取りだしたが、まあ、無いよな。


「ムー、ニャんだコレ」


 白い羊皮紙の巻物。


「あっ! 俺に見せてくれ。呪文のスクロールかも」


 使える魔法だと良いなあ。


「呪文~? あたしは使えないから、要らないニャ。ふう」


 リムから巻物を受け取り、紐を解いて広げてみる。


「なになに? 三連突きの極意、む、まさか」


「あっ! それ、技の秘伝書よ。私が使えると思うから、見せて」


「ああ。俺はそんなの要らない。ふう」


 ティーナが羊皮紙を読む。


「へえ、なるほど、ここをこうして、一気に重ねるように、か。分かったかも」


 そう言ってティーナが立ち上がり、細剣を構え、気合いの声と共に突き出す。


「せいっ! わぁ、出来た!」


「よし、拍手ー、おめでとう」


 正直どうでも良いのだが、一応、パーティー組んでるし。


「おめっとさんニャ」


「ありがとう。あ、羊皮紙が」


 見ると、白い羊皮紙は黒くボロボロになっていた。


「ニャニャ? あ、あたしは触ってないニャ! 違うニャ!」


「分かってるわよ。リム。多分、これ、誰かが技を覚えたら、もう使えなくなるんだと思う。お父様から聞いたことがあるわ。秘伝書よ」


「つまり、宝箱を開けたり、それを手に入れた奴に、限定ってことか」


「ええ。中には強力な技もあるらしいけど…まあ、別に、一度習得した技なら、他人に教えられないって事は無いと思うけど、技って難しいのは何年もかかるって言うから」


 本当なら何度も真似て練習するところを、ゲーム的要素で一発で覚えられるというわけか。

 頭に入れておこう。


 他にお宝は無く、ちょっと拍子抜け。


「じゃあ、戻りましょうか」


「戻るニャ!」

「そうだな」

「ニー」


 みんなでボス部屋を出る。目の前にはまた迷路。


「ああ、そうか、ボスを倒した後も考えなきゃいけないのか…」


 ちょっと衝撃。ゲームによっては帰還魔法があるが、こういうリアルな世界では無さそうに思える。一応、聞いておくか。


「ティーナ、一発で街に飛んで帰る呪文とか、知ってる?」


「さあ、そんなの聞いたこと無いわね。有れば凄く便利そうだけど」


「有れば、便利だろうなあ」


 俺が発明してみようか。

 …いや…、テレポートは相当、高度な呪文だろうし、失敗したときが怖い。


「そうね。でも、無いものは仕方ないじゃない。歩いて帰るわよ」


「ああ。じゃ、敵が出てくるし、気を抜かないように行くか」


「ええ」

「ニャ!」

「ニー」


 階段へ直行する。


 その途中、高めの少女の声が聞こえてきた。


「…をもって天の裁きを示さん! 貫け! ライトニング!」


 バチバチっと、電気特有の音。

 これは!


「誰か魔法で戦ってるの?」


「行ってみよう!」


 あれは稲妻の呪文で間違いない。上手く行けば、教えてもらえるかも。 


「ええ? ちょっとユーイチ」


 声のした方向へ向かって走ると、広間に紺色のローブを着た金髪ツインテールの少女がいて、多数のビッグフロッグに囲まれていた。うち四匹が煙を上げて魔石に変わったが、金髪少女が魔法で倒したに違いない。


「きゃっ!」


 だが、敵は多数、一人で戦うのは無茶だ。

 金髪少女はビッグフロッグの舌の攻撃を受けて転んだ。


 なら迷うことは無い。

 モンスターのカエルと、ツインテールの金髪美少女なら、たとえ世界を敵に回したとしても、俺はツインテールを取る。


「これを食べて。薬草だ」


 駆け寄り、少女を助け起こし、アロエ草を三枚渡す。


「む、ポーションは無いの?」


「生憎と切らしてる」


「ええ? 仕方ないわねえ…」


 俺の手からぶんどるようにして薬草を取ると、その小さな口に放り込む少女。耳がとんがっていて、おおお、エルフだ…。

 ややつり目の瞳の色は深めのブルー。鼻が低いのと下あごが小さいので幼く見える。 

 体格は華奢。


 薬草を一枚、食べ終わったのを確認して、彼女の手を引っ張る。


「こっちへ」


「ちょっと! 触らないで!」


 振り払われてしまった。だが、敵に囲まれている状態は、危険なんだけど。


「くっ、いって!」


 案の定、一匹が舌を飛ばしてきて、俺に命中。


「ユーイチ、早く、こっちへ!」


 入り口近くでティーナとリムがカエルを牽制している。あそこだと少数の人数でも囲まれずに済む。良い防衛ラインだ。


「あそこへ行けば、安全だ。移動しよう」


「嫌よ」


 なぜですか…。


「いて!」


 むう、カエル共め、ちょっとタンマ! 空気読んで!


「何してるのよ、もう」


 ティーナが見かねてやってきてくれた。


「すまん。この子が、動こうとしないんだ」


「怪我をしてるの?」


「そうじゃないけど、人間共の力なんて借りるつもりは無いわ」


 そう言って立ち上がるエルフ。


「ええ? これだけの数よ? あなただって一人じゃ危ないんじゃないの?」


「それがどうしたのよ。雨よ凍れ、風よ上がれ、雷獣の咆哮を持って天の裁きを示さん! 貫け! ライトニング!」


 呪文を唱えたエルフの杖から、青白い閃光がほとばしり、直線上にいた三匹のカエルが感電すると、煙を吐いて魔石へと変わった。


 凄い。アレを一撃か。しかも複数。


「いたっ!」


 だが、別のカエルの舌攻撃を受け、のけぞるエルフ。

 

 ううん、俺が何か魔法を使えればいいんだが、ボスで使い切っていて、今すぐは無理だ。


「仕方ない、リム、こっちへ来てくれ」


「いいけど、広すぎるニャ。防ぎきれニャい」


「それでもいい。この子が魔法でなんとかしてくれるだろう」


「む。そう言うアンタも魔法使いでしょ。何か使いなさいよ」


 エルフの子がそう言うのも当然だろうけど。


「それが、今、切らしちゃっててね」


「ええ? 使えない…」


 俺もやる気だけはあるんですけどね。

 何もしないよりはと思って、カエルを樫の杖で叩く。


「うおっ!」


 カエルが一斉に俺を狙って、舌を飛ばしてくるし。


「ちょっと、危ないでしょ。ユーイチはいいから下がってて」


「むう」


 下がって、薬草をもぐもぐ。

 何だろう? 俺だけ、妙に狙われてる感じだよね。


 戦闘はしばらく続いたが、リムとティーナがカエルを全て片付けてくれた。エルフの子は呪文を唱えなかったが、魔力切れかも。


「ふう、ようやく終わったわ」


「疲れたニャー」


「じゃ、これとこれは私の魔石だから」


 そう言って礼も言わずに魔石を拾い始めるエルフ。

 ううん、人間嫌いなのかなあ。


「礼儀知らずな奴ニャ、助けてやったのに」


「フン、誰も助けてくれなんて頼んでないけど」


「ええ? 何よ、あれ…」


 さすがのティーナも不快に思った様子。


 自分の魔石だけ拾い終えた彼女は、こちらをちらっと見て、ぷいっと顔を背け、去って行った。


 一応、人間のカテゴリーだろうし、人助けをしたのは間違いないと思うが、なんだかなあ。


「すまん、俺の判断ミスだ」


「いいわよ。別に。でも、お礼の一つくらい、有っても良さそうなものだけど」


「そうニャ。魔石の一つくらい、くれても良さそうなもんニャ」


 愚痴を言っていても仕方ないので、全員で手分けして魔石を拾い集め、ダンジョンを出た。


「エルフって、人間が嫌いなのか?」


「さあ? でも、彼らの里には入れたがらないって聞いたことがあるわ。迷いの森に住んでて、普通の人間は入れないの」


 なら、普通に嫌ってそうだ。その理由。


「あれか? エルフの血が錬金術に使えるとか、そう言う理由?」


「それはデマだって聞いたけど。三百年前にエルフと人間が戦争をやって、多分、それでじゃないかしら」


「それか。まあ、仕方ないか」


 俺には関係の無いことだが、それを主張しても仕方ない。

 うん、前向きに行こう。あのエルフはダメだったけど、友好的で親切で甘えてくるエルフも探せばいるかも知れないし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ