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異世界の闇軍師  作者: まさな
第三章 ジョブは冒険者?
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第四話 冒険者カード

2016/10/2 誤字修正。 



 盗賊団の一件が一段落したので、リムとティーナと俺で今後のことを話し合い、南東の街へ向かうことになった。

 お頭達にはちょっと申し訳ないが、囚われの身だった俺やリムが親しそうに牢屋に面会に行けば、せっかくの嘘がバレてしまう。会わない方が良い。


「じゃあ、まず、腕試しをする前に、冒険者カード、作らないとね」


 おや、聞き捨てならない言葉がティーナさんの口から出ましたが。


「賛成ニャ!」


「待った、腕試しって、なんだ?」


「うん、人数も増えたことだし、あなたたちの腕前も知っておいた方が良いと思うから、この街の近くのダンジョン、攻略しましょう」


 むう。


「短い間でしたが、お世話になりました」


 頭を下げて、回れ右。


「えっ?」


「ちょっと待つニャー!」


 くそ、リムに捕まえられてしまった。


「離せリム、俺はダンジョンにだけは行きたくないんだ!」


 敵は多いし、ボスは強いし。

 こちらも必死である。


「別に無理してまで潜らなくて良いけど、ダンジョンで何かあったの? あなたたち、クリアはしたんでしょう?」


「それが、聞くニャー。ユーイチの奴、ボスに体当たりされて、ビビったニャ」


「なんだそんな事」


「そんな事とは何だ、そんな事とは。下手したら死ぬんだぞ? お前らはダンジョンの恐ろしさが分かってない! ダンジョンを甘く見るな!」


「ええ? でも、ユーイチはそんなにダンジョン、潜ってるわけでも無いでしょう?」


「うん、一回だけニャ」


「よくそれでベテラン冒険者みたいな口が利けたわね…」


「くっ、なんと言われようと俺は行かん。邪魔はしないから、お前らは好きにしてくれ」


「じゃ、そうするけど、冒険者登録はやっぱりしておいた方が良いと思うわよ。宿屋で割引が利いたりするし、武器や防具も冒険者じゃないと売ってくれないものも多いから」


「ふうん? なら、登録だけはしておこうかな」

 

 マイホームが無い俺としては、この先も宿屋へ泊まるだろう。お金も無いので割引があった方が良い。


「決まりね」


 ティーナに連れられ、俺とリムはこの街の冒険者ギルドへ向かった。


「あ、ちなみに、登録料は?」


「10ゴールド。更新の時も10ゴールドかかるけど、それくらいよ」


 2000円か。ま、大銅貨5枚、500ゴールドを所持している今の俺にとっては余裕だ。


「更新は、いつ?」


「一年ごとよ。でも、このカード、不思議な魔法が掛かってて、自動で数字が変わるから」


「ああ」


「む、驚かないのね」


「俺は知ってるからな。そのくらいは、だけど」


「自動で数字が変わる…ってどういう意味ニャ?」


「ああ、勝手に変わるって言ったら分かるかな? 独りでに、いつの間にか、書き換わってるの」


「ニャ、ニャんと」


 うわ、猫族の女の子がその言葉を言うと、萌えるかも。


「ね、ねえ、リム、もう一回言って」


 ティーナもツボに入ったのか、そんな事をおねだりする。


「何を?」


「だから、ニャんとって」


「そんな事より、早くカードを作りに行くニャ。その魔法のカードを早く手に入れたいニャ!」


「あ、ちょっと、リムぅ」


 と、先に走っていったリムが戻って来た。


「冒険者ギルドはどこニャ?」


「ああ、その先を左だよ。たいてい、街の入り口か中心近くの目立つところにあるから。靴に翼の看板」


 果たして角を曲がると、ティーナの言葉通りに、その看板があった。

 翼だけ、白く塗られている。

 他に宿屋の看板はINN、武器屋は剣、防具屋は盾、道具屋は袋、分かりやすくて良い。

 識字率が低いせいか、今のところ文字だけの看板は宿屋の他に見た事が無い。

 

 冒険者ギルド。

 俺にはそれほど縁が無い施設だと思うが、ゲームだとその存在が割と明らかなのにあまり登場してこない施設なので、趣深い。


 開け放たれた両扉の建物の中は長椅子が二列あるだけで、狭い。カウンターの向こうには受付のお姉さんが一人いて、さらにその後ろに扉があるが、向こう側は見えない。関係者立ち入り禁止エリアなのだろう。ナントカの鍵を手に入れたとしても、この世界でそれを使って不法侵入を繰り返すのは止めた方が良い。確実に捕まるか、賞金首になる。

 そう言えば、今まで足下を【コマンド】→【調べる】ってやったこと無かったな。

 もしも今まで小さいメダルが落ちてたら、くそ、やられた。


 ユーイチは床を調べた。

 しかしそこには何も無かった…。


「ちょっと、ユーイチ、何してるの?」


「お、おう」


 すでに話はティーナが通したようで、受付のお姉さんはカウンターの上に羊皮紙と羽根ペンとインクの瓶を出して来た。俺たちの他には誰もいないので、何とも寂しいことだ。冒険者ギルドって、ほら、ベテランの冒険者がその辺にくつろいでたり、絡んでくる柄の悪い奴がいたりするじゃん?

 まあ、絡まれない方が良いに決まってるけど。


「こちらに、名前と種族、年齢、希望の職業(クラス)を記入して下さい」


 受付のお姉さんが言う。


「えっ! 職業(クラス)って自由に決めて良いんですか?」


 驚いた。早い話、クラスチェンジが自由って事だよね?


「ええ、構いません。ただし、冒険者ギルドに認定されているクラスだけですけどね」


「ちなみにどんなのがあるんですか」


「ええと、それは数が多いので…」


 受付のお姉さんが困った顔をする。


「適当に戦士でいいでしょ。どうせあなた、ダンジョンに潜らないんだし」


 と、ティーナがとんでもないことを言ってくれる。


「いやいやいや、何を言ってる。ここは大魔導師とか勇者とか」


「ちょっと、それ、本気で言ってるの?」


 もちろんですけど、ティーナの反応からすると、なんかまずそうだ。


「そう言う称号については、初心者はダメなんですよ。協会(ギルド)の認定が必要になりますので」


 お姉さんが優しく笑って言う。そう言えば、聖騎士は神殿に功績を認められた人だけだったか。いわゆる上級職ってヤツだ。


「あと、王様とかもダメよ」


 ティーナが俺が痛い奴とでも思ったのか、そんな余計な注意をしてきた。


「そんなの当たり前だろ」


「それから、このクラスは、パーティーを組むときに相手に見せて使ったりするので、なるべく、自分のスタイルに合っている方が良いと思いますよ」


 受付のお姉さんがアドバイスしてくれる。


「なるほど」


「じゃ、私は漁師ニャ!」


 リムが天職を言うが…。


「ごめんなさい、漁師は冒険者のクラスには入ってないの」


「ニャんと!」


「でも、狩人(ハンター)がそれに近いかしら?」


「じゃ、それニャ」


 弓矢命中に補正が掛かったり、各パラメータの成長度合いが変わったりしそうだが、ま、他人のだから好きにしてもらおう。


「では、僕は魔法使い(スペルユーザー)で」


「あのねえ、ユーイチ、気持ちは分かるんだけど、使えないのに魔法使いって名乗っても格好悪いだけよ」


 などとティーナが哀れみの目を向けてくるし。


「いやいやいや、本当にそれは使えるから。星々のかけらとなりて、我の道を照らせ、ライト!」


 実演して明かりの呪文を唱えて天井を明るくする。


「あ、本当に魔法が使えたんだ…」


「そうニャ! ユーイチは凄いニャ!」


 ふっふっふっ。


「では、魔法使いというのは、ひとまとめにした分類の方になりますので、魔術士(マジシャン)ですね」


 受付のお姉さんが言う。


「他には何かあるんですか?」


 聞いてみる。


「魔法使い系なら、精霊使い(サモナー)符術士(エンチャンター)賢者(ウィザード)が有りますね」


 うおっ! 何それ何それ、色々知りたい!

 俺が目を輝かせたのが分かったか、受付のお姉さんは順に説明してくれた。


「サモナーは、精霊を召喚して使役するクラスです。エンチャンターは補助魔法や魔法陣や御札を使いこなします。ウィザードはそれら全部を使いこなすマルチプレイヤーですね。ただ、成長に時間が掛かります」


「おおー。じゃあ、今は魔術士で」


 後で召喚術や魔法陣も勉強しよう。記入事項を小さめの羊皮紙に書き込んで提出。


「はい。記入漏れも無いですね。では、カードを発行しますので、少々お待ち下さい。それと、これが冒険者の心得です。目を通しておいて下さい」


 羊皮紙の巻物を渡された。広げてみると、ちっちゃい文字で色々、説明が書いてある。


「ウニャー、こんなのいちいち読んでられないニャ」


「大丈夫よ。私が教えてあげるから。そんなに気にしなくても、普通に生活してれば大丈夫」


 ティーナがそう言うが、俺は真面目に読む。


 冒険者の心得


 一つ、冒険者は各国の法令を守り、現地の慣習に敬意を払うこと。

 一つ、冒険者は冒険者同士、助け合うこと。

 一つ、冒険者は怪我人や病人、行き倒れを見つけたら助けること。

 一つ、冒険者は他人の家に無断で入らないこと。

 一つ、冒険者は街や城で攻撃魔法を使わないこと。

 一つ、冒険者は街や城に罠を仕掛けないこと。

 一つ、冒険者は他人を取引で騙さないこと。

 一つ、冒険者は商人や職人や聖職者を大事にすること。

 一つ、冒険者は兵士に逆らわないこと。

 一つ、冒険者は賞金首を見つけたら、冒険者ギルドに速やかに報告すること。

 一つ、冒険者は冒険者ギルドの依頼を積極的にこなすこと。

 一つ、冒険者は自分のレベルに見合う依頼をこなすこと。

 一つ、冒険者はなるべく借金をしないこと。

 一つ、冒険者は勝てないと思ったら逃げること。

 一つ、冒険者は魔物の群れを引き連れて逃げないこと。

 一つ、冒険者は回復アイテムを常に持ち歩くこと。

 一つ、冒険者は年に一度は冒険者ギルドでカードの更新を受けること。

 一つ、冒険者は生き残ることを優先すること。

  

 当たり前のことが書いてある。

 冒険者で無くても大事だと思う。


「お待たせしました」

 

 冒険者の心得を読んでいると、受付のお姉さんがカウンターに戻ってきた。

 手のひらサイズのカードに、いつの間にか撮られた顔写真とともに、俺の名が書き込まれていた。

 顔写真は黒目黒髪で向こうの世界の俺とそっくりだったので、少しほっとする。

 別人だったら、違和感あるだろうしね。



[冒険者カード]


【 氏名 】 ユーイチ

【 種族 】 人

【 年齢 】 16

【クラス】 魔術士

【 Lv 】 10

【 属性 】 ライト D

     ニュートラル 

【カルマ】 29

【特記事項】奴隷



 …奴隷って。

 ひんひん…。



[冒険者カード]


【氏名 】 リム

【種族 】 猫族

【年齢 】 15

【クラス】 狩人

【 Lv 】 14

【属性】 ノーマル

     カオス E 

【カルマ】 55

【特記事項】特になし


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