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異世界の闇軍師  作者: まさな
最終章 宮廷魔術師

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第七話 オートマタへの飽くなき挑戦

2016/9/17 あとがきを忘れてたので追加。誤字修正。

 動くお人形。

 オートマタ。

 どこか卑猥な響きである。

 俺が読んだ異世界モノのラノベでは意思を持った高度な美少女オートマタが活躍したりもするのだが。


 さすがに、AI付きの自律型ロボットは俺には製作不可能である。

 いくら熟練度システムがあっても、まず人工知能のプログラムやコンピューターを作らなければならず、そのためには半導体や真空管など、仕組みをよく知らないと作れないモノが多い。

 バッテリーは雇った錬金術師ヴォルターが開発してくれたが、小型電池にはまだまだ到達していない。

 モーターの小型化には成功しているのだが、充分な電気が無いと動かない。


 だが、諦めるのはまだ早い。

 日本でもからくり人形として、鯨のヒゲを動力に使った精巧なモノが江戸時代には登場していたのだ。


 そしてこちらには魔法という別系統のテクノロジーが存在する。不思議なアイテムや材料も数え切れないほどある。


 ウーツ鋼を組み合わせ、双方の振動を無限に増幅する機構を作れば、動力は解決するかも知れない。


 だが、そんな動力や知能をさておいて、最も重要なのは、『外側の形をどうするか?』であろう。



「モデルは、クロさんが良いと思うんだけど…」


 オルタがおずおずと言う。


「お前…! クロに手を出したら、八つ裂きだからな!」


 俺は本気で怒りを込めて言う。


「わ、分かってるよ。ただ、あのくらいの年齢の美少女で、しかも実在しているわけだから、その、さ、サイズは測りやすい…よね?」


 オルタを殴り飛ばしてやりたくなったが、オートマタ開発のためだ。俺はかろうじてその怒りを抑え込み、話を真面目に聞く。

 だが、オルタがクロの肉体に目を付けているとなると、どうにも不安である。絶対にコイツと二人きりにならないよう、後でクロに言い聞かせなくっちゃな。

 クロの護衛も増やしておこう。


「何もロリにこだわる必要は無い。有る程度成長した美少女の方が、内部が大きくなって、機構に余裕が出来るかもしれない」


 俺はそう言って、クロから別のモデルへと誘導を試みる。


「ティーナ様のこと? まあ、良いとは思うけど」


 オルタは消極的に賛成したが、ティーナはちょっとマズいんだよな。前回の事件で、しばらくほとぼりが冷めるまでは彼女をモデルにしない方がいいと俺の勘が言っている。


「ここは――そうだな、文句を言わないであろうエルで!」


 文句は言うかも知れないが、あまり怖くない相手が良い。うちのパーティーメンバーは怒らせたら怖い気もするし、止めておこう。リサは絶対にヤバい。クレアは自分から身体測定も進んで受けてくれそうな気もするが、ティーナが良い顔をしないだろうし。


「ああ、エルさん。いいね!」


 オルタもすぐに賛成するが、チッ、まあ、エルのフィギュアも本人に内緒でこっそり作ってリリースしちゃったからなぁ。やはり水色のお下げの髪の美少女は、作らずにはいられなかった。

 エルとオルタは接点が無いし、クロよりは安全だろう。エルも俺の勧めでレベル上げをやって、99になってるし。オルタもそれなりに上げてはいるようだが、同じレベルでも能力差でエルが勝つ。エルは優秀で基礎能力値でオルタを大きく引き離している。


 オルタは追い返し、さっそく、俺一人でセルン村へ向かい、エルと面会。

 あくまで不自然にならないよう、毛皮のバッグとコートをプレゼントだ。


「ありがとうございます。でも、私も蓄えが出てきましたし、欲しいものは自分で買えますから」


 エルがそう言うが、水色のお下げを結ぶリボンも確かに少しおしゃれになっている。


「まあ、そう言わずに、いつも村長代理として頑張ってくれてるお礼みたいなモノだから」


「はあ。あ、それと、これ、ユーイチ様にお渡ししようと思ってたんですけど」


 エルが手編みのマフラーと手袋をくれた。


「おお、これは暖かいな」


「良かった、気に入ってもらえたようで。私の作った物より良い物をたくさんお持ちかも知れませんけど…」


「いやいや、何を言う。美少女の手編みってだけで凄い価値なんだぞ」


「ええ? 私はそんな美少女じゃないですけど…」


「いやいやいや。間違い無く美少女だ。俺の好みだ」


 親指を立てて、グッ。


「もう…。あ、今年はサヤエンドウを植えてみようと思うんです。またルキーノさんが種を持って来てくれて」


「ああ、サヤエンドウか。野菜炒めにすると美味いよな」


 ソラマメは塩茹でがいいが、サヤエンドウは皮ごと食える。


「そうですか。私はまだ食べたことが無いので、楽しみです。ふふっ」


 美少女の笑顔は素晴らしい。セルン村では、ほうれん草やカブ、ルッコラも植えるそうで、魔力草も育ててもらっているから、冬も結構忙しそうだな。


「エル、ちょっとそこに立ってくれるか」


「はい、これでいいですか?」


 俺の言葉に何の疑問も抱かずにエルは言われた通りにする。

 ここで服を脱いで、と言っても…いや、さすがにエルは賢いから、怒り出すか呆れてしまうだけだろう。止めておく。


「一回転」


「はい。これで?」


「ああ、また今度、君に似合いそうな服を持って来ようと思ってね」


「ああ、いいのに…あんまり持って来られても着ないんですが」


「まあまあ、そう言わずに。じゃ、また来るよ」


「はい」


 俺はしっかり透視(シースルー)の呪文でエルの体型を隅々まで把握し、それをメモリーの呪文で正確に3Dで記憶。

 これでオートマタの身体はバッチリだ。


 材質を何にするかが問題だったので、俺の家臣団を集めて真面目に話し合う。



 歩く植物博士こと、マグス。見開きすぎた目が怖い。だが、有能だ。世界中からいろんな役に立つモノを集めてくれている。マジックポーションの素となる魔力草も彼が見つけてくれた。


 錬金術師ヴォルター。温厚な性格だが、やってることはマッドサイエンティスト気味。工房を何度か爆発させてしまったが、バッテリーを開発してくれた。


 頑固な発明王トーマス。彼は製本用の活版印刷を見事自動化してくれ、他にも電気モーターを使って様々な機械を次々と開発してくれている。


 多才なピエール。優れた建築家や画家でありながら、機織(はたお)り機に改良を加えたりと、オールマイティな奴だ。ヘリコプターのアイディアを出してきたので、トーマスと共同で開発に取り組ませている。もう白髪のお爺さんだがエネルギッシュで当分死にそうには無い。


 空軍魔術士のロンメル。天才肌の若き魔法使いで、魔法学校の校長も務めている。ストーンウォールはついに教えてやった。アイアンウォールはまだまだだ。金髪のイケメンには俺は厳しいぞ?


 聡明なセリオス。読んだ本の数は底知れない。彼には俺が開発に勤しむ間、領地経営をお任せだ。方針と禁止事項だけはしっかり話し合っておくが。

 

 他にも医学を発展させたり、剣術を開発してもらっている家臣もいるのだが、畑違いなのでこの会議には呼んでいない。



「――と言うわけで、オートマタにどんな材質がふさわしいかを今日の議題とする」


 皆を前に宣言。


「ふむ…人形ですか」


 鼻で笑われるかと心配したが、皆、真剣な顔である。


「戦闘用であるならば、やはり、オリハルコンやミスリルでしょうね」


 セリオスが言う。軍事用か。


「ああ、ま、そっち方面も別途、考えていくが、プロトタイプはなるべく人間に近づけてみようと思っている」


 俺は方向を定めて言う。ゴツいオートマタなんてやる気が出ない。


「人間に近づけるとなると、世界樹の木ですかな。若い部分を使えば、肌触りは人肌に近づきますぞ」


 マグスが言う。


「ほほう、それはいいな!」


 俺はすぐに反応する。人肌に近いって…ヒヒヒ。


「どうせなら、実際の人間の肉を使ってみてはどうでしょうか。奴隷や罪人から取りだして」


 などと怖すぎる事をトーマスが言い出すが、それは却下で。

 血流が通わないと、肉体が保たないだろう。


「外側は世界樹の木でいいとして、動く人形ならば、動力を考えねばなりませんな」


 ピエールが言う。


「動力か…難しいが、電気モーターとバッテリー、それとゼンマイ、あとはウーツ鋼を組み合わせて出来ないか、考え中だ」


 俺が言う。


「残念ながら、ユーイチ様、現時点で体内に収められるバッテリーは作れていません。電力が低くてもいいなら、小型化は出来ますが…」


 ヴォルターが現状を述べる。


「だが、それだと歩くのも不可能になりそうだな」


 トーマスが言う。ヴォルターは肩をすくめるだけ。


 動力は考えられるモノを実際に作ってみて、試験してからと言うことになった。



 俺はウーツ鋼の超振動を動力に出来ないかと考え、歯車と組み合わせてみた。


「むう、動かないなぁ」


 二つのウーツ鋼をぶつけ合うと、思った通り増幅する超振動が長く続くのだが、それを動力に変換するのがなかなか難しい。

 超振動が一定の力で無いのと、左右に微細にブレる動きだからだ。

 もう少し大きく動くなら、エンジンのピストン運動と同じでどうにか出来そうなのだが。


 試行錯誤を繰り返しつつウンウン唸っていると、俺の工房にピエールがやってきた。


「お館様、上手く行きそうですかな?」


「いや、かなり苦戦中だ」


「そうでうすか。ではコレを用いてはどうでしょう?」


 ピエールが透明な水晶を見せた。


「ふうん? クリスタルか」


「はい。お館様のモーターやヴォルター殿のバッテリーを見て、私も何か出来ないかと思い、色々試しておったのですが、水晶に圧力を加えると微量ながら電気が発生します」


「おお! マジで?」


「ええ。実際にご覧になって下され」


 導線と魔石を繋いで、ゴーレムに水晶を握らせる。魔石に電気を通すと光るというのはヴォルターが発見した。

 そこまでの明るさでは無いので、ライトにするには効率が悪いが、電流確認のLEDの代わりには使える。


「よしいいぞ。ちょっとだけで良いからな、力を入れてみろ」


「GHAAA!」


 ゴーレムが水晶を握りしめる。ピシッと音がして壊しちゃった様子だが、まあいい、確かに魔石は光った。

 水晶を握ると電気が起きるなんて、俺は今まで知らなかったが。


「よし、コレを組み合わせてやれば……」


 石壁(ストーンウォール)の呪文で水晶を適切な形にしてウーツ鋼と組み合わせ、さらに導線も繋げる。


「行くぞ…」


 ピエールと二人で固唾を飲みつつ、ウーツ鋼をぶつけ合う。

 キィイイインと例の音が発せられ、ウーツ鋼が超振動を始める。


 すると―――


「おお、凄い、明るいな!」


「ええ、コレはかなりの電力が出ておりますな」


 魔石が光り輝き、充分な電力が発生していることも確認できた。

 モーターの小型化も出来ているので、それと組み合わせて腕や足の曲げの機構をピエールと共に作る。


「お館様、世界樹の木を持って来ました」


「おお、マグス、ご苦労さん。結構、大きいんだな」


「ええ、もっと大きなモノもございますが、人形なら、このくらいで良いでしょう」


 さっそくピエールにメモリーウインドウを参照してもらいながら、エルの肉体に模した形を彫り出してもらう。

 あっと言う間に美しいエルの曲線美が再現された。


「さすが一級の彫刻家だなあ」


 フィギュア作りには参加させていないのだが、ピエールにも今度作ってもらおうかな。


「では、お館様」


「うむ」


 完成したエルの木彫りを実際に触ってみる。


「おおお…こ、これは」


 予想以上に人肌に近い。ぷにぷにで、すべすべしている。

 自然と俺の手は二つの丘へと誘われ、その丘の頂上を征服した。

 なんと言うことであろう。この柔らかさと弾力はとても木とは思えないのだ。

 家臣団全員でその触り心地と揉み心地を満喫した後、俺は感動して言う。


「素晴らしいッ! マグス、今回の業績を称え、特別な褒美を与える」


「ありがとうございます」


「ですが、お館様、コレは作り直しが必要かと思われます」


 参謀のセリオスが言う。


「なぜだ? 最高の形と触り心地じゃないか」


 俺はセリオスを睨みつつ言う。


「いえ、実在の人物をそのまま模していると、おそらく本人から苦情が来ます。それにティーナ様も快く思われず、実験の中止を言い渡されるかも」


「なにっ!? むう、それはあり得るな…」


 ここまでリアルな触り心地で、見た目も人肌に近い色となると、そう言う問題も出てきそうだ。エルの不満は突っぱねられるとしても、ティーナの権力には逆らうことが出来ない。


「ですので、少し変更を加え、架空の人物としておいた方がよろしいでしょう」


「うむ、セリオスの言ももっともである。では、ピエール、悪いが少し改造を加えて、作り直しだ」


「ええ、こちらは構いませんぞ。面白い材料で創作意欲も湧いてきたところですじゃ」


「それと、この実験は他言無用とする。ティーナには知られないようにしないとな」


「ははっ!」


 フフフ、俺の子飼いの家臣団だから、ちゃんと言うことを聞いてくれるぜー。

 機密保持もバッチリだ。

あとがき

水晶に圧力を加えると圧電効果により電流が発生するらしいです。

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