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異世界の闇軍師  作者: まさな
最終章 宮廷魔術師

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第二話 オリハルコン

2016/12/2 若干修正。

「ユーイチ君、氷の神殿で例の白い猿を見つけたので倒しておいたぞ」


 茶色のローブに茶色の中折れ帽をかぶったS級冒険者のアレクサンダーがやってきて言う。


「おお! さすがはアレクサンダーさん。第十三の使徒をたったお一人で探し出して倒すとは」


 やっぱりトリスティアーナ武闘大会で二度も優勝ってのは伊達じゃ無いな。


「いや、アレは使徒とは呼べないな。まだ育つ前のようだったから大して強くも無かったよ。それにそこにいると分かっていなければ、見つけるのも難しかっただろう」


 アレクサンダーが謙遜するが、普通の冒険者なら見つけたとしても返り討ちだっただろうな。

 女神ミルスの啓示により、通説とは異なる第十三の使徒が現れると聞いて俺達は古文書を漁りまくり、その出現場所も特定した。

 場所さえ分かっていれば、使徒が出てきて暴れる前に手を打つことも可能だ。

 俺達が出張って調査しても良かったのだが、各地のダンジョン周りや領地経営や趣味(・・)やら、色々と忙しかったので、冒険者ギルドに依頼(クエスト)として調査依頼を出していた。

 もちろん、レベル50以上の高レベル冒険者に限定して無駄死には避けてのことだ。


 各国の王宮にも邪神の復活の件を外交ルートを通じて正式に通達し、総人類生存計画への参加を呼びかけている。トリスタンのブンバルト大司祭が「調整はワシに任せろー!」と張り切っていたし、王宮よりも神殿関係者が中心になって動いた方がいいかもしれない。その件はやる気を見せているブンバルト大司祭に任せることとした。女神ミルスも必要な重要人物には啓示を与えているようだ。


 これで行方知れずのルーガウス、石仮面の使徒以外は全て倒した。

 使徒は全部で十三。これは未来を見通す女神ミルスの確定情報である。

 第十四の使徒が現れる確率は、いかなる平行世界においてもゼロという事だ。


 俺は使徒退治のお礼にアレクサンダーにフィギュアをプレゼントしようとしたが、彼は断って何も受け取らずに帰ってしまった。どうやら同好の士では無かったようである。残念だが、好き嫌いは人それぞれだからな。お互いの趣味は尊重し合わないと。


「ユーイチ様、見つけましたぞ!」


「うわっ! お、おう、マグスか、あー、びっくりした」


 その顔で急に出てこられると、ドキッとするから。俺が雇ったその道の専門家の一人、歩く植物博士だ。くわっと開いた目が特徴的すぎる奴。


「これがその珍しい鉱石です」

 

「ふむ…? あれっ? 君には役に立ちそうな薬草を集めるようにって指示を出してたと思うが」


「はい、それも見つけておりますが、何か他に、珍しい鉱石でもあれば、持ってくるようにと、そうご指示を頂きましたので」


「あー、そう? 良く覚えてないけど、うん、変わったモノがあれば、何でも良いからどんどん持って来て。じゃ、さっそく分析(アナライズ)っと」



【名称】 虹色の石

【種別】 鉱石

【材質】 ???

【耐久】  12528741 / 12528905

【重量】 1 

【総合評価】 S

【解説】 虹色に輝く綺麗な鉱石。

     凄まじく強靱で金剛石を超える硬さを持つ。

     また魔力を帯びる性質を持つ。

     融点や沸点は存在しない。



「うおっ! なんじゃこりゃあ! ダイヤモンドより硬くて、絶対に溶けないって…」


「ほう、そのような性質が。硬そうだとは思いましたが」


「マグス、こ、これはひょっとして大量に?」


「ええ、ハイランドの北の氷山で見かけましたが、虹色に光る部分はあちこちにありましたから、大量に有ると思われます」


「おおおお…! よし! すぐに回収部隊を編成するぞ!」


 これを石壁(ストーンウォール)鉄壁(アイアンウォール)の呪文で加工してやれば、鋼の鎧どころか、チタン合金の鎧より強いのが作れそう!

 俺は直ちに魔法チームに非常召集を掛け、天空の城を超特急でハイランドへ向かわせた。

 やー、拠点が自分で動いてくれるのって便利が良いわー。俺が歩かなくて済む。


 石壁(ストーンウォール)鉄壁(アイアンウォール)を駆使してその鉱石を集めたが、鉄壁(アイアンウォール)に強く反応するので、どうやら金属っぽい。要らない石の部分はその場に捨てて、金属だけを集めまくった。

 ハイランド国王には加工前の鉱石だけを献上し、採掘の許可を事後承認してもらった。冒険者という建前なら許可を得る必要も無い。だが、大量に採掘するし、どう見ても極めて重要な戦略物資、レアメタルだしな。

 ハイランド国王はさして興味も示さなかったが、まぁ、普通の方法では加工できないから、タダの綺麗な石でしかないもんな。 


 これに聖水の要領でクレアに祝福を与えてもらい、増強(リーンフォース)の魔法で永久強化(エンハンス)してやれば―――。



「じゃじゃーん、オリハルコンの剣~!」


 わざわざネコ型ロボットの声を出して、色つきライトの魔法とスピーカーの呪文で演出したというのに、みんなは変な顔をしているし。


「そこっ、拍手!」


 クロとクレアだけ拍手してくれた。チッ。


「オリハルコンって何なの?」


 ティーナが聞いてくる。


「えっ? 知らない? 伝説の最強金属だぞ? 本当は銅か金に似た色らしいが」


 俺もよく知らないので、適当に言うが、伝説の最強金属という点は間違い無い。

 この剣の色は銀にうっすらと虹色がかかっている。綺麗だ。


「聞いたことある?」


 ティーナがみんなに聞くが、肩をすくめたり首を横に振ったり。

 有名では無かったようだ。なんだかなぁ。


「ん、常識」


 ミオは頷いているが、コイツの常識が怪しいからな。ま、前にもコイツとオリハルコンについてちょっと話したことがあるし、ミオは知っていても不思議では無い。何せ鋼の賢者の弟子だもの。


「も、もちろん、常識よ!」


 多少声が怪しいエリカは、まあいい、エルフの間では常識と言うことにしておいてやろう。

 

「とにかくだ、鋼よりも強靱で、ダイヤモンドより硬く、熱にも溶けたりしないから、史上最強の金属と思っててくれ」


 俺は言う。アナライザーさんもSS評価を与えてくれ、名前も材質がオリハルコンになっていた。

 だから、誰がなんと言おうとコレがこの世界のオリハルコンである。異説異論は認めない。本物のオリハルコンを持って来てくれたら訂正するけど。


「へえ、凄いわね。じゃ、さっそく」


 ティーナが彼女用のレイピアを持って振るう。


「せいっ! うん! 重さも重心も長さも変わらないし、いいわね、コレ」


 武器は長さや重さが変わると勝手が変わるだろうから、そこはきちんと調べて同じにしてある。頼れるドワーフっ娘ミミにも手伝ってもらった。オリハルコンの比重はミスリルと同じだったので、同じ大きさにするだけで良かった。


「ふむ、ううむ、私はコレは軽すぎて、どうも好かんな」


 レーネ用に作った大剣だが、重さが彼女の好みに合わなかった様子。


「そうかぁ…ま、仕方ない。別の金属でも試してみるよ」


「ああ、そうしてくれ」


「ニャ、アタシはどっちでもいいニャ」


 リムの手斧は、これで良いようだ。軽いと威力が出ない気もするのだが、試し切りでは鉄も簡単に切れたからな。異常な切れ味と威力だ。

 ミネアのショートソードや、リサのダガーとボウガン、クレアの錫杖もオリハルコン製に更新。


「あと、こっちの鎧も試着してみてくれ。これもオリハルコン製だから」


「ええ、分かったわ――なっ! ちょっと! この形はおかしいでしょ!」


 ティーナが鎧を手に取ろうとして怒り出す。俺は慌てて説明をした。


「い、いや、あくまで、動きやすさを追求するとそうなるのであって…」


「嫌よ。こんなイヤらしい鎧。こっちの方が良いわ」


 そう言うだろうと思ってティーナが好みそうなデザインも作っておいた。ハイレグビキニアーマーは誰か別の女の子にプレゼントするとしよう。ちぇっ。


「うん、軽いし、コレも今の鎧と同じ感じだから良いわね。でも、色がちょっと…」


「ええ? 赤が良いのか?」


「うん」


「じゃ、着色してやろう、ほれ」


 メモランダムの呪文で真っ赤な鎧に変えてやった。簡単だ。この呪文は前は黒色だけだったが、今では色のヴァリエーションが増えている。

 もちろんフィギュアもコレで着色し、色むらが無くなった。俺の顧客にもすこぶる評判が良い。黒色はニーソで大量に使いまくって熟練度を上げまくったからなぁ。

 だが、ここで成長を止めるつもりは無い。もっともっと色塗りを極めてやるッ!


「わあ、ありがとう、ユーイチ。チュッ」


「おお! ぬほっ、フヒヒヒヒ、ヒヒ」


 ほっぺにティーナの抱きつきチューを頂きました。


「ちょっと、ティーナ。ユーイチが使い物にならなくなるから、そういうのは後にしてくれないかしら、ったく」


 リサが不機嫌そうに言うが、まあいいじゃないの、急ぎの用事なんて無いからね!


「ああ、ごめん。でもユーイチ、今日呼んでくれたのは、コレを配るためでしょ?」


「ああ、そうだ。他に何か有った気もしないでもないが、そんなの大したことじゃ無いさ、ははは」


「ええ?」


「ホラ見なさい。ユーイチは効率重視だから、私達を呼ぶにしても、ひとまとめに何か用事を済ませるつもりだったはずなんだから」


 リサが言うが、ま、いくら飛空艇であちこち高速移動できて、リニア鉄道も開通したとは言え、ロフォールとヴァルディスを行き来するのに一時間は掛かっちゃうからな。


「あ、そうそう、スケジュールはメモってたんだった。ちょっと待ってくれ」


 俺はそう言ってメモリーの呪文でスケジュール帳を呼び出す。


「ああ、そうだった、ティーナはこれから俺と一緒に王宮へ付いて来てくれ。造幣局として宰相と相談する必要がある」


「ええ、いいわ」


 二つ返事でティーナは引き受けてくれた。


「それから、みんなには各地のダンジョンを回って、伝説の武具やアイテムを集めて欲しいんだ」


 俺は続けて言う。


「それは構わんが、このオリハルコンとやらでは足りないのか?」


 レーネが聞くが。


「ああ、多分、足りないな。兵士の装備はこれでいいとしても、強いだけの武器じゃダメだ。例えばケルベロスにはアイス・ファルシオンが必要だったし、サイクロプスには真実の鏡が必要だった。その敵その敵に応じた武具が欲しいからな。何も邪神が(・・・・・)一匹だけとは(・・・・・・)限らない(・・・・)


「なんだと?」


「ええ? そんな」


「ま、可能性としての話だ」


 あんまり不安がらせてもアレなのでこの話はそこでやめておく。


「それに、レーネの大剣の材料も必要だから」


「そうか、ま、いいだろう。少し冒険に行ってくるか」


 他にも冒険者ギルドに依頼(クエスト)を出したり、大商人達に話を通して俺は必要な武具とアイテムを必死に集めた。

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