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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十五章 大魔導師への道

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第十六話 崩壊

2016/12/2 若干修正。

 ミネアは驚いてるが、敵の強さもインフレーションしてくるのが当たり前だからな。

 女神ミルスも俺達のレベルと敵の強さを見て啓示を与えているはずだ。


「慌てるな。敵の動きをよく見て、パターンを掴んでいけ」


 俺は指示しつつ、前衛チームにハイポーションの瓶を投げつける。乱暴な回復のやり方だが、有効だ。もちろん、人知れず投げ込みもやってコントロールの練習もした。九分割でストライクを投げ分けられるぜー!

 回復は万全。後は敵の動きを見切れば、(おの)ずと勝てる。


「「 了解! 」」


 うちのパーティーも死線を何度もくぐり抜けただけあって、これしきのことで崩れたりはしない。


「漆黒なる闇の光よ、我らが敵の清き心を蝕め! ダークブラスト!」


 いつぞやの黒ローブの男が使っていた呪文を少し変えてアレンジしたモノをぶつけてみる。闇爆の呪文だ。


「EEEEEE!」


 んー、多少はダメージが行った感じだが、あんま効いてねえ。

 やっぱり魔法防御が高いな、コイツ。


「ユーイチ、妾を使うしか無いぞ」


「むう、分かった」


 漆黒の魔剣リーファを抜き放ち、俺は前に出る。あんまり出たくは無いんだが、回避だけなら自信はあるし、奴の槍術のパターンはだいたい掴んだ。


「これでッ!」


 レーネの剣を天使が躱したところに、俺が横からリーファで斬り込む。


「EEEEEE!」


 んー、惜しい、クリーンヒットでは無かったが、良い感じでダメージが入った。

 魔剣リーファは有効だ。

 なにせ、呪われた魔剣だもんな。


 天使は血を全く流さなかったが、傷口は開いたままで、よし、自動回復もしない。


 このまま時間を掛ければ余裕で行ける。


 ―――そう思ったのだが。


「EEEEEE――――!」


「きゃっ!」

「くっ!」

「ニャー、なんも見えないニャー!」


 くそう、フラッシュを使って来やがった。味な真似を。


「落ち着いて下さい! 今、解きます! 陣を払い、流れを戻さん。打ち破れ、ディスペル!」


 クロが解除の呪文を唱え、敵に掛けられたフラッシュの効果を消した。


「よし、いいぞ、クロ!」


 前衛チームが立ち直ったところで、俺は真後ろから天使に忍び寄る。


「あかん、ユーイチ、気を付けてや!」


「おう、俺の回避能力の高さを―――ぐべっ!?」


 見せつけてやろうと思ったのだが、槍の反対側で腹を突かれてしまった。

 くっそ、槍ってそう言う使い方も出来る訳ね…、おえええ。


 薬草をモグモグしていたので、びちゃっと緑色のペーストがリバースで床に落ちてしまう。

 でも大丈夫、新しい薬草をモグモグモグモグ。


 そして、次はきちんと見切って、体をグイングインと曲げて槍を避ける。

 見よ、この【柔軟 Lv 288】の凄さを!

 背中と足がくっつくぜー。

 あごとお尻もくっつくぜー。


「EEEEEE!?」


 なんか天使も俺の動きにはビビった様子。

 キモいと思ったのか、強敵と見たのか、俺から距離を取って構えた。

 うーん、コイツにそういう態度を取られると、なんか微妙に納得が行かないぞ?


「今!」


 逆に後ろを取ったティーナ達が斬りかかる。


「EEEEE―――」


 天使の攻撃パターンはそれで全てだったので、俺達は苦労はしたが、何とか勝利を収めた。



「フハハハハハ、愚か者め! 回復を怠る者に勝利無し! 我らの驚異の回復能力を見たか! ハーハハハ! この天使め!」


 転がった天使の鎧をげしげしと足蹴にする俺。


「……なんて言うか、悪の勝利を見せられてる気分になるわね」


 と、後ろでティーナがぼやくように言う。


「アタシもそれ思ったニャ」


 と、リムまで同意するし。


「そこっ! 俺達は女神ミルスが遣わした勇者ご一行だぞ? 正義は我らに有り!」


「じゃ、少しは勇者らしくしなさいよ」


 リサが言うが、もっともだ。


「オホン、では諸君、第十の使徒も無事に倒した事だ。お宝を頂くとしよう」


 ゲームの勇者とはこう言う者なり。


「そうね」


 これにはみんなも反対せず、すぐに城の探索を開始する。



「みんな、こっちや」


 ミネアが宝物庫を見つけ出し、黄金の宝箱を全部開けた。

 たくさんの金銀宝石の財宝や魔道具や美術品、貴重なマジックポーションも保存状態の良い物が手に入った。

 錬金術や薬草の素材もいくつか。

 リサやミネアの見立てでは総額三億ゴールドは行くだろうと言う。

 ウホッ!

 天使も意外と俗物なのね。

 いや、奴はタダの番人か。


「この鎧は良い感じだな」


 レーネが一目で業物と分かるプレートメイルを着込んで気に入った様子。


「それ、天空の鎧な」


 俺が命名しておく。分析(アナライズ)したら違う名前だったけど、ここは気分だ。


「ほう、なるほどな。それは良い名だ」


 レーネも納得し気に入ってくれた様子。


「じゃ、飛空艇に積み込んでみるな。重量がオーバーやったら―――」


「また往復して運べば良い」


 俺が言う。積載量には安全のためかなり余裕を持たせてあるが、無理して一度で運ぶ必要も無いからね。


「そやね」


 リサやミネアが宝物を運ぶ間、俺はティーナに付き添ってもらい、地下を目指す。


「どこへ行くつもりなの?」


「この城の中枢、最も重要な部分だ」


「んん? 玉座や宝物庫でなくて?」


「当然だろ。ティーナ、君はこの城がどうやって浮いているのか、気にならないのか?」


「ああ、そうね」


 この城の動力部分。それを確かめないと。

 俺とティーナは二人で城の地下、中央部へと向かった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「む、ここだ」


 俺は上を見て立ち止まる。


「ええ? 何か、不思議な部屋ね」


 飛空石の影響だろう。そのまま二メートル四方もあるような石のブロックが空中に浮かんでいる。


 動いている石ブロックに順番に乗っていき、さらに中枢を目指す。


 ―――そして。


「こ、これが飛空石なの?」


「ああ、間違い無い。これがこの城を浮かせている石だ」


 八十センチほどの、大きさはそれほどでも無かったが、内側から強い光を放つ飛空石。

 外側は群青色だが中心部は白に近い色だ。透き通っていて内部までよく見える。

 飛空石は一つでは無く、小さいモノが他にいくつも浮かんでいた。


「さて、これをどうやって持ち帰ったものか…」


 俺はあごに手を当てて考え込む。難問だ。


「ええ? 持ち帰るのはまずいと思うけど」


 ティーナはそう言うが。


「なぜ?」


「いや、うーん…」


 答えられない彼女だが、ま、普通、取ったりはしないよね。


 だが、俺は取るぜ?


 明らかにこれは重要なアイテムだからな。

 これさえ有れば、アレやコレやいろんな物が作れそう。


「どれ、妾が手伝ってやろうかの」


「おお、リーファ様。さすがは千年の時を生きる魔剣」


「フン、こういうときだけ様を付けおって。ま、よかろう。ではさっそく―――」


「あー、待って待って、みんなに報せて、準備もしてからじゃないと」


 いきなりコレの魔力や機能を止めてぶっこぬいたら、この城は崩れ落ちるだろうし。


「ふむ。では、早く準備を済ませるのじゃ」


 飛空艇のところまで戻って、皆に事情を話し、準備を進める。


「よし、いいぞ」


 飛空艇で一度往復して宝物をアルヴヘイムまで運び、続いてリーファに飛空石の魔力を少しずつ減衰させる。


「どうだ、そっちは?」


 外の様子をミネアに確認。


「うん、ええ感じや。城の高度がゆっくり下がってるで」


 よし。あとは地上まで着地させてやれば、オーケー。

 さすがに空で崩壊させたら、地上が大変な事になっちゃうからな。

 それはやらない。


「ふう、ようやく終わったか」


 結構時間が掛かってしまったが、天空の城を地上に降ろすことに成功した。

 降ろす場所は平地の何も無い場所を選んだ。

 多少、東にずらさないとダメだったが、そこはリーファが飛空石に半分だけ干渉するやり方で乗り切った。


「これ、問題になる気がするんだけど…」


 ティーナが言う。


「ならないよ。報告は入れておくけどな」


 トリスタンの高官、アイネちゃんにでも報せておけばいい。

 もちろん、城を見つけたと言うだけで、飛空石については黙りだ。ヒヒ。

 この世界の慣習では、冒険者が見つけた宝物は冒険者の物だし。


「ううん…」


 なおもティーナは納得がいかない様子だが、これも邪神を倒す為だ、と説得して、飛空艇でアルヴヘイムまで戻った。


「あっ、ユーイチ! みんな! 良かった!」


 ペーターが俺達を見るなりほっとしたが、心配してくれていたようだ。


「ペーター、天空の城は確かにあったぞ!」


「やっぱり!」


 ペーターには真実を話しておく。それは飛空艇の開発者に対する敬意と感謝でもある。

 ま、天空の城が存在するということと、地上に新しく城が発見されたと言うことは、矛盾しないし、関連づけて考える者も少ないと思われる。

 それ以外の情報は伏せることとする。

 これで天空の城について、ペーターが街の人に本当の話だったと分かってもらう事は出来なくなったが、本人は俺達が見つけてくれたのでもう充分だと言ってくれた。


 俺達は手に入れた拳大の飛空石の一つを使い、さらに大きな飛空艇を作った。輸送船だ。

 コレに天空の城から持ち帰った宝物と世界樹の葉を満載し、アルヴヘイムの町長にも無事任務が終了したことを告げて、この街を飛空艇で去ることにする。


「ペーター、元気でな」


「ああ、そっちも元気で! 飛空石、ありがとう!」


 俺達はたくさん手に入れたので、いくつかペーターにもタダで分けてやった。飛空艇の使用許諾料(ロイヤリティー)だ。


「さて、間に合うと良いが…」


「そうね…」


 もちろん、目指すのは一路、ロフォール領だ。

 ミルスは何も教えてくれなかったが、今、スレイダーンが攻勢をすでに仕掛けているはずだ。


 俺達は飛空艇のスピードを可能な限り上げて、自分達の領地に向かった。

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