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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十五章 大魔導師への道

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第十二話 エルフの里の村興し計画

「エリカ、君のことは一生、大切にするよ」


 俺は彼女の両手を握って、キリッとして言う。


「なっ―――!」


 エリカは顔を真っ赤にして、アワアワしているが、フフ、コイツのこの反応も面白いな。


「オホン、ユーイチ、それはどう言う意味かしら? 私はあなたの婚約者として聞くのだけれど」


 ティーナが咳払いするが、ここは俺も声を大にして言わせてもらう。


「いいか! エルフの里に! 年頃の美少女が一人もいないなんてのは! 俺は! 絶対に認めない!」


「ええ? ああ、そう言うことね。いいじゃない、フッ、エリカが一人いてくれて」


 ティーナが半笑いで言うが。

 くそっ。


「バカね。アンタが認めなくたって、ここに美少女が現れるわけでも無いのに」

「ユーイチは時々、本当に訳の分からん事を言い出すな」

「まあ、気持ちは分からんでもないかな」

「ええ、そうですね。うふふ」

「ユーイチさん…」



「若いもんは刺激を求めて、出て行ったきり、なかなか戻ってこんからのう」


 エルザが諦め気味に言うが、真剣に村興しをやれと。

 少子高齢化対策を怠るなと。


「よろしい、ならば、私が何とかしましょう」


 俺は立ち上がった。

 この寂れた村を、世界一の大都会にしてエルフの美少女達でいっぱいにしてやるッ!



「エルザ様、これを」


 俺は紙に行動計画書をまとめて、まずは長老衆の一人であるエルザに見せる。

 いきなり村長のオーラフではハードルが高いからな。


「ふむ?」




 『エルフの里 村興し行動計画』


 創案者 ユーイチ(元セルン村村長、現ヒーラギ男爵、タウンプランナー、芸術家) 



一、村の名前の策定



 最初に村の名前を変える。

 邪道かも知れないが、『世界樹の木の南の麓の村』『トリスタンのエルフの里』――コレではエルフの若者も魅力を感じるはずが無い。


「候補はそこから村人に決めて頂きますが、若者に興味を持ってもらう、その方向を大切にして頂ければと」


「ふうむ、『ニュータウン・さいたま』『ツーリング・シティ・カワサキ』『お台場』『六本木』『ワールド・ウッド・シティ』……ワールドウッドは分かるが、後はピンと来ないねえ」


 エルザが首をひねるが、ま、異世界の名前が入ってるから当然だな。

 だが、こちらの世界のエルフにとっては、目新しさはあるはずだ。

 それが一番大事。


「名前はきちんと固有名を決めた方が良いと思うけど、こんな訳の分からない名前は嫌よ!」


 この村の出身者であるエリカが言う。

 チッ、目新しさに飛びつくかと思ったが、どうも受けが悪いな。

 エリカも性格は残念だが、エルフの若者には間違い無いので、重要な意見だ。


「じゃ、エリカはどんな名前が良いんだ?」


「そうね…うーん…」


「何でも良いから、言ってみてくれ」


「そう言われても、すぐには出てこないし、私、名前を付けるのは苦手なのよ」


「じゃ、みんなでもいいぞ」


 その場でまだ食事しているパーティーメンバーに言う。


「うーん、エルフの村かぁ…」


 ティーナも真面目に考えてくれるようだが、すぐには思いつかない様子だ。


「お婆ちゃん、世界樹の木の別の名前ってなんかないんかな?」


 ミネアが聞いてみるが。


「そうさね、あの木はユグドラシルとも言うね。その上の枝の方にはアルブヘイムの街があるそうだが、ワシは行ったことが無い」


「そうですか。もう有る街の名前は使えんとして、ユグドラシルか。ちょっと言いにくいな」


「そうね」


 エリカも頷くが、呼びにくい名前の街はダメだ。


「ユグドラシル、ユグドラシル、グドラ、ラシール、ルシーグ、うーん…」


 クロがユグドラシルの名を口に出して繰り返し、そこから少し言いやすい名前を試行錯誤しているが、良いのが出てこない感じだ。

 

「どなたか、エルフの英雄の名前はどうですか? 人族の方では、街に英雄の名前を付けることもありますから」


 クレアが言う。


「うちではそう言うことはやらないよ」


 エルザが渋い顔をして首を横に振ったが、気に入らない様子だな。


「この村の特産品か何かはどう?」


 リサが聞く。


「珍しいモノは特に無いねぇ」


 エルザはあっさりと答えたが。

 そうなると厳しいな。


 結局、良い名前は出ず、後回しにして次のプランに移る。




二、社交場を作る



 アクティブな若者向けに、クラブやディスコなど、ちょっと雰囲気の違う社交場を用意してやる。

 それが評判になれば、エルフの美少女も集まってくるに違いない。


「クラブやディスコって何?」


 エリカが聞いて来るが、当然の質問だな。


「YO! YO! チェケラッチョ! こんな感じで音楽を楽しみながら飲み食いしたり、踊ったり、美人のお姉さんが隣に座ってお酌してくれる場所だ」


「エー…」


「あれっ? おや?」


 エリカだけで無く、みんな怪訝な顔。全然食いつかない。

 

「ちょっと見せて」


 ティーナが俺の持っている予備の計画書の紙を一枚取って見る。


「社交の場なら、そんな変な事しなくたって、レストランや酒場でいいじゃない」


「いやいやいや、それだと他の街と差別化が図れないだろ」


「何を言ってるの、私達にはアレがあるでしょ?」


 ティーナがにっこり笑ってウインクしてくるが。え? 何かあったか?


「ああ、そやね、ユーイチの料理を出せば、みんな集まってくるな」


 ミネアが言ってようやく俺も理解した。

 ま、食い物で釣るのは悪くない。


 だが、遊び場としては…ま、ここは女性陣ばかり、俺の腹案は伏せておくか。




三、イベントを定期的に催す



「ああ、なるほどねえ」


 ラトゥール歌劇団の出張公演や、のど自慢大会、吟遊詩人の弾き語りなど、これはエルザも納得の様子。

 多少の金は掛かるが、何もやらないよりはマシだ。

 ラウルの絵も販売できるようになると良いね!

 



四、子育て支援



 若者ではなく、まず夫婦を集め、子供を産ませ、やがて美少女へと育てる。

 気の長い作戦ではあるが、少子高齢化対策としては確実な効果が望めるだろう。

 保育園を作れば、共働きで忙しい夫婦も生活にゆとりが出来る。

 ゆとり有る生活、それは子育てで苦労する夫婦が移住したいと思える村だ。



 

五、キャンプ場やロッジなどの宿泊施設を作る


 何も定住してもらわなくても、リゾート地として美少女を集めれば俺の勝ちだ。

 エルフの里の周りは森だらけで、少し手を加えるだけで、立派なキャンプ場だ。

 掘っ建て小屋ではなく、大工を雇って立派な建物にすれば、エルフの若者達も泊まってみようかと言う気分になるに違いない。




六、GO婚活動


 村でお見合いパーティーを主催する。

 独身の若者は強制参加! 俺もゲストで参加!


「は?」


 チャッとティーナがレイピアを掴むので、俺は黙って六番の紙は抜き取り、丸めて捨てる。

 とほほ。




七、送迎


 この世界では、旅行が命懸けなので、高レベル冒険者を雇って、送迎を行う。

 そうすれば、か弱いエルフちゃんでもこの村に遊びに来れる。

 ま、エルフはたいてい魔法が使えるようだから、前衛戦士を適当に揃えるだけでも良いだろう。




八、宣伝


 村が新しくなった、という情報を知ってもらわないと、次の行動も起きない。

 定番の『ゆるキャラ』の着ぐるみも作って人気のマスコットキャラになれば、「きゃー! カワイイ!」「ヤダー」と言って美少女達の興味を引くのは確実! 

 後はその着ぐるみの中に俺が入って……うへへ。





「ま、いいんじゃないかね。持って行ってごらんよ」


 本当は長老衆のエルザから提案してもらいたかったのだが、賛同は得たと告げても大丈夫だろう。

 満を持して俺はエリカと一緒にオーラフの家に行き、行動計画書を手渡す。


「むっ! この羊皮紙は随分と質が良いな」


「ああ、これはパルプ紙と言って木材や植物を潰して作ってるんですが、そんな事より、中身を見て下さい」


「………」


「………」


 ドキドキ。


「フン、こんな変更は長老として絶対に認めるわけにはいかん!」


「あっ!」


 投げ返された。


「えー? でも、長老衆のエルザさんも賛同してくれましたよ?」


「長老衆の一人でも反対すれば、この村では通らん。それが掟だ」


 全会一致が原則かよ…キツいな……。このジジイが一人で反対してもダメじゃないか。

 いっそのこと、ジジイをサクッとやっちゃう?


「せっかく村のことを考えて出したのに、頭が固いんだから。どうせ人族の案だから、ダメなんでしょ?」


 エリカが言う。


「そうではない。見るべき案かもしれぬが、この村は昔からしきたりに従い、森と共にある。それが我らの生き方じゃ」


「……ええ、分かった。私はもうここには戻らないわ」


 エリカが言う。


「好きにしろ」


 俺はエリカと共に家を出た。



「エリカ、別に、帰りたいときに里帰りしても良いと思うぞ。売り言葉に買い言葉ってこともあるし…」


 俺は言う。


「いいわよ、そんなの。みんなには話さないで欲しいけど、私、拾われた子なのよ。育ててくれたマリアももう死んじゃっていないし、他に親しい人なんていないから、未練も無いわ」


「そうか…」


 エリカは新しいモノを求めて外に出たのでは無く、この村の孤独に嫌気が差して出てきたのかもな。

 ま、そこはあれこれ言ったところで、エリカの為にはならないし、楽しい話でも無い。


「じゃ、エリカ、セルン村やロフォール領に若者エルフを集めるの、手伝ってくれよな」


 俺は言う。


「ええ。いいわ。ただし、やってきた女の子に手を出したり結婚するのはダメ。それが条件よ」


「な、なんだと…」


「ふふ、どうするの?」


「くっ、いや、結婚はともかく、手を出すのもダメって酷くないか?」


「全然。別に嫌ならいいわ。勝手にしてよ。でも私が協力しないと、エルフは絶対に来ないと思うけどね、ふふっ」


「くそう…」


 やはりエリカ、一筋縄では行かない奴。

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