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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十五章 大魔導師への道

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第七話 潜水艇の試運転

2016/12/2 若干修正。

 魔法チーム全員で潜水艇のテストをしようと、ゴーレムに鉄の潜水艇を運ばせて海辺にやってきたが。


「ニャッハッハー、ほれほれー、進め進め~」


「ん? あれは?」


 リムが村の子供達と一緒に、大きな亀を取り囲んで、上に乗ったりしている。


「何してるんだ、アイツは」


「あれってモンスターかしら?」


 そうつぶやいたエリカは普通の亀を見た事が無かったようだ。

 それは別に良いのだが、ったく。


「おい、リム、モンスターでも無い生き物をいじめるんじゃあない」


「ニャ? でもコイツ、乗れるニャ」


「乗れるからって乗るんじゃないの。ウミガメは卵を産むために砂浜に上がってくるんだぞ。産卵は涙を流すほど大変なんだから、邪魔してやるな」


「ニャ、卵、じゅるり」


 ヨダレを拭うリム。困った奴だな。


「ええい、ワシはオスじゃ! 卵も産まんし、さっさと降りんか!」


「うおっ! 喋った!?」


 急にウミガメが喋るので俺はびっくりした。


「エー? 産んでくれないニャ?」


「産まぬ。女神ミルスの使いでやって来たと言うに、邪魔をするでない」


「むっ、それってまさか、黒ローブの冒険者一行を海底へ連れて行けとか…」


 ウミガメが気になることを言うので、俺は話を向ける。


「おお、よく見れば、お主がそうか! なら、ワシに付いてくるがいい。竜宮城へ案内してやろう」


「ふむ…ハッ! ひょっとしてそこには美しい姫達が?!」


「うむ。勇者歓迎の宴の準備をして待っておるぞ」


「おおお…! 全員、今すぐ出発するぞぉおおお!!!」


 俺は拡声器(スピーカー)の呪文でパーティー全員を集合させ、さっそくUボートで出発した。

 試運転も兼ねて移動すればいいよね!



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「おお…すっげ、マジで海底に潜ってる」


 Uボートの窓から外を見て俺は感動する。


「ええ? アンタが作ったんでしょ」


 リサが怪訝な顔をするが、作った俺も潜れるかどうかは未知数だったからな。

 推力は水玉(ウォーターボール)の呪文を使い、ストーンゴーレム達はのろのろと自力で歩いて付いてくる。



『ワシの力を使えば、そんなもんは要らんのじゃがのう…』


 念話で愚痴るウミガメ。

 ミルスも移動方法はしっかり考えてくれていたようだが、まあ、作っちゃったし、ね?

 使徒との戦闘でこのジジイ亀が使えるかどうかもちょっと怪しいし。



「ニャ、お魚がいっぱいニャ!」


「綺麗ですね!」


「潜らずに海の中に入るっちゅうんも、不思議やねぇ」


「うん、そうね」


「ああ、なかなか面白いな」


 みんなも初めて見る潜水艇からの眺めを楽しんでいる。


 そんな中、俺はこまめに水圧計を確認する。


 28気圧、水深270メートルくらいか。大気圧が1で、十メートル潜る度に水圧で1気圧が加算されていくはずだ。

 船内は変な音もしていないし、『しんかい6500』の強度の倍の計算で作ったからまだまだ余裕。

 酸素もエリカとクロが作り出す呪文を開発してくれたし、酸素残量も緑色のバーでステータスに表示できるようにしてある。


『着いたぞ。あれが竜宮城じゃ』


 水中にそびえ立つ城。形は日本の城にそっくりだな。名古屋城みたいな。

 翡翠色の屋根が何段にも規則的に重なり、美しい流線を描いている。

 その周囲を魚の群れが滑るように泳ぎ回り、下の方では海藻がたゆたっていた。


「変わったお城ね?」


「海の中だからじゃない?」


 みんなも違いが分かるようだが、海の中と言うことで納得した様子だ。


 先導するウミガメがそのまま城の窓から泳いで中に入るが。


「ん? 私達はどうやって中に入れば良いのかしら?」


 ティーナがその疑問を呈して俺も遅まきながら気がついたが、困ったね。

 気密室やドッキング用のハッチなんてモノはこの城には無いだろうし。


「ハッチは開けないぞ」


 俺は先に言う。怖いもんね。溺れたらしゃれにならん。


『さっさと来い。この城の中なら、溺れたりはせんぞ』


 などとウミガメが言い、


「じゃ、ミオ、開けて」


「ん」


「あっ! バカ!」


 俺が止める間もなく、ハッチを開けちゃうし。

 どうなるかとヒヤッとしたが、不思議と水は潜水艇の中に入ってこない。


「どれ、おお、息が出来るぞ」


 レーネが深呼吸して言うが。


「不思議ねえ。ユーイチ、早く来なさいよ。置いて行くわよ」


 ティーナがそんな事を言い始めるし。


「くそっ」


 これなら潜水艇、本当に要らなかったかも。

 まあいい。何かの役に立つときもあるさ。多分。


 俺は泳ぎは下手で、しかもローブを着込んでいるので不安だったが、適当にもがく(・・・)とスイスイと泳げる。

 城の窓から中に入ると、魚や魚人がたくさんいた。魚人は頭と胴体が魚でそこから生えた足だけ人間って、うわー、その逆パターンか。


「帰ろう」


「何言ってるのよ! ちゃんと、ほら、女の人がいるじゃない」


 ティーナが向こうを指差したが、おお、天女のような着物を着た麗しき女性達が何人も奥の扉から出てきてくれた。

 ふう、まともな竜宮城で安心した。


「ようこそ、竜宮城へ。ささ、食事をどうぞ」


 ホタテとわかめのスープや、カニ、サザエ、刺身など、色とりどりの品が出てきたが、他の魚は仲間が食われても平気なのか?

 疑問に思ったが、すでに出されている料理はもう元には戻らないだろうし、ありがたく頂いておく。


「あ、美味しい!」


「ふうん? 変わった味ねえ? でも行けるわ」


「ふむ、これは初めて食べたな。面白い」


「旨いニャー!」


 みんなも普段はあまり食べない海の幸だからか、舌鼓を打つ。


 俺も、たらこは久しぶりに食べたな。白いご飯が欲しくなるが、残念ながらご飯は無さそう。


 天女達?がゆらゆらと踊りを披露してくれ、チッ、水着じゃ無いのが少し残念だが、これはこれで楽しめる。


「では、ユーイチ、これを」


 踊りを終えた天女の一人が、三十センチほどの黒い箱を差し出してくる。どう見てもアレだ。玉手箱だ。


「いえっ、要りません」


 その手には引っかからんぞ。


「ええ?」


 天女達が困ったように顔を見合わせる。


「じゃ、私が受け取っておきますね」


 ティーナが横から受け取ってしまった。


「あっ、バカ、ティーナ、それを開けたら一気に歳を取るんだぞ? しわくちゃのお婆ちゃんになっちゃうぞ?」


「ええっ?」


「違います。これはそんなモノではなく、水の力を封じた宝珠なのです。アクア・クリスタルと私達は呼んでいます」


「アクア・クリスタル?」


「はい。女神ミルスより、勇者に授けるよう、仰せつかりました」


「ああ…開けても、煙が出たりしない?」


 念のために俺は確認する。


「ええ、何を心配されているのかは分かりかねますが、そのようなことは決して」


「よし、じゃあ」


 赤い紐を解いて蓋を開けてみる。

 すると―――


「わぁ、綺麗…」


 ティーナが思わず感嘆のため息を漏らす。透き通った真球の水晶玉が布の上に置かれていた。


「ふうむ、凄い魔力量だな」


 箱を開けるまでは分からなかったが、魔力の波動をひしひしと感じる。


「この玉の力を使えば、あの大王烏賊(ダイオウイカ)も倒せることでしょう」


「イカですか…クラーケン!?」


「はい」


「むう…」


 分が悪い。地上での戦いならば、レベル70オーバーの俺達だ。炎の呪文さえ効果があるなら、戦えると思うが。

 水中だと炎の威力は絶対に落ちる。出せるかどうかも怪しい。

 それに、水生生物のホームグラウンド、メイルシュトロームなんかを使ってきそうだ。


「では、頼みましたよ」


 天女がそう言うが、俺としてはミッションの難易度を考えると、二つ返事で引き受けるわけにはいかない。


「うーん…」


「はい、お任せを」


 ティーナが渋る俺の代わりに勝手に返事をして安請け合いしてしまうし。


「ティーナ、マジな話、俺は海では戦うつもりは無いぞ」


 言っておく。


「もう、またそんな事を言って…」


「いやいや、クラーケンは倒さなくちゃ行けないが、海中でやり合ったらダメだ。いくら不思議な力でスイスイ泳げると言っても、地上のように素早く斬り込んだりは出来ないだろ?」


「あ…そうね。せいっ!」


 ティーナが踏み込みからの突きを試すが。


「ふう、全然ダメね。水が邪魔して、思うようにスピードが出ないわ」


「で、海で戦わないって、どうするわけ?」


 リサが腕組みをして俺の考えを聞く。


「地上へ誘い出す。―――なあ、ウミガメの爺さん、囮を引き受けてくれないか?」


 その場にいたウミガメに話を持ちかけてみる。


「あいたたた…腰の調子が最近、どうも悪いでのう」


「お前に腰が、……あるんだろうなあ」


「あるわい。それに、いくらワシでも大王烏賊(クラーケン)は相手に出来ん。あっと言う間に追いつかれて倒されてしまうわい」


「では、この中で最も泳ぎの早い者を」


 俺は城の中の皆に言う。

 だが、さっと凄い速さで逃げる小魚とかいるし。

 その速さを活かせと言うに。


「ここは、お前が」

「いや、お前の方が速いだろ」


 などとこれは、なかなか決まらないか?


「どうやらそれがしの出番のようでござるな」


 すっと奥から出てきた魚。


 大きい。体長は八メートルはあるだろうか?

 口の先が異様に尖って一メートル以上も細長く伸びており、ええと、なんだっけ、この特徴的な魚、チラッと図鑑で見た覚えがあるんだが。


「ソードフィッシュ! ええ、あなたなら、大王烏賊(クラーケン)に追いつかれることも無いでしょう」


 天女がその名を呼んで頷く。納得の速さらしい。


「では、囮役、頼みましたよ?」


「お任せあれ」


「あっ、思い出した。メカジキだ」


 俺はポンと手を打つ。


「それがしの名はソードフィッシュ、貴殿とは初対面のはずだが」


「ああ、いや、こっちの話で。それより、貴殿のスピードはどのくらいで? 時速何キロとか、分かる?」


「競争をやったときに測ったことがあるが、それがし、120キロで優勝したことがあるぞ」


「おお、スゲーな」


 水中の中でそれとか、化け物だと思う。地上でも120キロも出せる奴はそうはいないはず。


「じゃ、決まりね」


 リサが言い、ソードフィッシュに大王烏賊(クラーケン)を浜辺まで誘い出してもらうことにした。

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