第十四話 セルン村賢人会議で金策を練る
2016/12/1 若干修正。
その後、王宮での舞踏会を無事に乗り切った俺は、館に最低限の警備兵のみを残してロフォール領にあるセルン村へと引き上げた。
王都にいたらひっきりなしに暗殺者が来そうだし、セルン村の警備は強化したけど、ちょっと心配だったからな。
いずれ別の領地がもらえるはずだが、それでもやっぱり、村長として手塩に掛けた村だから、愛着もある。
ここは俺のもう一つの本拠地だ。
王都にいる間、金策も兼ねて屋台を開いた。屋台向きのハンバーガー、サンドイッチ、フランクフルト、フライドポテト、焼き鳥、アイス、炭酸ジュース各種、をロフォール名物として売りまくった。
パン職人や商人を集めて講習会も開いて、料理法も教えてある。
これでいつ王都を訪れても俺達は美味しいモノが食える寸法だ。
料理の元祖発祥の地ということで、ロフォール領に足を運ぶ人が増えれば、税収UPや経済的な波及効果も期待できるだろう。
衛生管理が微妙に心配だが、分析の呪文や魔道具を持つ人間はほとんどいないので、残念ながらU-HACCPは浸透できなかった。ただ、衛生管理の手法や概念、細菌や殺菌の基本的知識などは伝えたので、前よりは良くなったと思う。
いくら俺が高レベルで毒消しもあるから食中毒なんぞで死なないと言っても、お腹壊したり、まずい物は食いたくないからね!
しかし、そう言う商売をやると、必ずあくどいコネを作ろうとする貴族や悪徳商人がわんさかやってくる。それにうんざりしたというのもあるね。
悪徳商人の方は、賄賂を持ちかけてきた時点で斬り捨て、館の庭に看板を立ててその死体を防腐剤入りで飾ってやった。
それで悪徳商人の方はぱったり来なくなったのだが、貴族の方は斬り捨てるわけにも行かない。丁重に、いや、ぞんざいにお断りし続けた。そんな独占を持ちかけてくるせこい貴族の人脈なんていらんし。
庶民が買える値段で薄利多売してこそ、安定的に売り上げが得られる。別に超高級品グルメで貴族相手に商売しても儲かるのだろうが、俺が食いたいのはそっちじゃないし。着飾った堅苦しい高級レストランより、いつでも気軽に食べられるモノの方が俺は好きだ。
紙ギルドを壊滅させているので、紙も堂々と販売できる。もともと、公の国王側の利権の一つであるが、そこは紙の供給が止まってしまっては国王も困るので、しぶしぶながら許可はもらえた。税金さえしっかり納めれば、金のなる木である。しかも、本や手紙の流通を助け、生活や科学技術の発展に繋がるのだから、質が前より良くなると判れば悪い顔をするはずもない。
停止・封印していたセルン村の地下製紙工房を再び稼働させ、在庫も一気に放出。一万枚を一枚に付き百ゴールドで販売し、完売させた。
だが、これだけの金策をやっても、まだまだ足りない。
何せ、これから軍隊を作らねばならない。
百万や二百万の予算ではとても間に合わないし、セルン村やロフォール領の整備や防衛強化にも金が必要だから、うーん、どうしたものかね?
おまけに、王都の別荘、ヒーラギ邸のローンもまだ160万ゴールドくらい、残ってるんだよねぇ。
俺の秘密の内職のおかげで百万ゴールド近くさらに浮かせているが、まだ足りない。
「と、言うわけで、第一回、セルン村賢人会議を始めたいと思います」
ここはジーナ大ババ様の家の一室。前は土間だったが、木造建築の床板に変わっている。
「………」
クロだけが拍手してくれたが、フゥ、みんなノリが悪いなぁ。
「賢人って、賢者とかのことだろ? 何でアタシをここに呼んでるんだ?」
そう言ってきたのは赤毛のポニーテールの大工、ヴァネッサ。彼女もタールに嫌気が差してヘイグ男爵領で働いていたが、俺が呼び戻した。
腕の良い大工だしな。あと美人だし。
「建築の技術者としての意見が欲しいからだ」
はっきりと言う。ま、こう言えば納得するだろう。
「ふうん? 技術者なんて言うほどのもんは持っちゃいないがね」
「あの、私も、こんな大役は」
エルが困った顔で言う。水色の髪のお下げの美少女。俺があの手この手で説得し、ついに事実上の村長だ。彼女には俺の留守中の村長代理と言っているが。
「シャラップ! 村長代理としての意見を言えば良いだけだ」
「むぅ。意地悪」
おっと、エルちゃんが拗ねてしまった。ここは後でプレゼントを何か。
「言っておきますが、もうプレゼントは要りませんからね」
なんと、先を読まれた!? しかもちょっと態度が反抗的になってるぞ……まずいなぁ。
「ぼ、僕も、賢者様のような知恵はとても…」
金髪のナイーブ美少年のトゥーレが小さい声で言う。
「分かった分かった、じゃあ、セルン村の会議、それでいいだろ?」
格好良く行きたかったのに、これでは話が進まない。妥協することにした。名目だけはな!
「フン、最初からそう言えば良いのよ」
ついに森の賢者の自称は返上してしまったらしいエリカが鼻を鳴らす。魔法使いとしては優秀だが、知恵袋としてはいまいちなエルフ。見た目は金髪ツインテールの完璧な美形エルフなのだが…。まあ、俺と同い年だから、仕方ないか。
「それで、ユーイチや、何を話し合いたいのかい?」
ジーナ大ババ様が本題に入ってくれた。
「は、この村の防備を固めるため、大金が必要です。みんなには儲け話を考えてもらいたいのです」
村の長老には真摯に敬意を払っておく。俺はネルロとは違うからな。
「それなら、タールにでも話を持って行くがええ」
皮肉を言われちゃったよ…とほほ。
「そうしたいところですが、死人に口なし……ふむ、ここはロバートかなぁ」
金儲けの話なら、大商人のロバートでもいいかもしれない。
「はい、決まりですね。では、私は仕事がありますので」
エルがさっさと話をまとめて立ち上がるし。
「まあまあ、もうちょっとだけ」
肩を掴んでやや強引に座らせる。
「ええ?」
「しかし、金儲けと言ってもよ、この村で採れるのは麦や野菜、キルトや絹糸も作り始めたが、そのくらいのもんだろ? ああ、ピラミッドの屋台でも儲けてたか」
ヴァネッサが言うが、前よりは儲ける手段も増えてるんだが、まだまだなんだよね。
麦の収穫も倍になっているが、品種改良や肥料改良と言うより、開墾の効果がほとんど。なぜだ…。冬作だからかな、うん、そういうことにしておこう。
「ハイハイハーイ! アタシとエルで踊り子をやりまーす。んで、お酒を売ってボロ儲け! どーよ?」
呼んでないアホが入ってくるし。
「ケインッ! この部外者をつまみ出せ」
親指でクイッと合図。
「はっ!」
「あっ、こら、ケインッ! アンタ、そんな真似して許されると―――こらー、なんでアタシが部外者なのよー! 放せ、痴漢、えっちー!」
ベリルは叫いて暴れていたが、そこはプロフェッショナル、ケインも怯まずにつまみ出してくれた。
だが、なんか気が抜けてしまったな。
「では、また後でミーティングするので、各自、何か考えておいて」
俺はそう言って、いったん会議を打ち切ることにする。
「そう言われても……お金なんて金山でも掘り当てない限り、この村ではとても」
エルが匙を投げた感じで言うが。
「むっ! それだッ! エル!」
俺はビシッと指差す。
「ええ?」
「クロ!」
「はいっ、金山を探知で探すのですね?」
「その通り。エリカも手伝ってもらうぞ」
「ま、いいけど。でも、あの赤邪鉄の鉱山は、採れないって分かってるんじゃなかった?」
「いいや、駄目元でもいいから、この一帯は全部、探索するぞ」
「面倒臭っ」
「嫌なら別に良いぞ、俺達だけでやるから。ケイン、伝令を出してミオも呼んでくれるか」
「分かりました!」
家を出る。
「あっ、お兄ちゃん!」
「ミミか、どうした?」
「聖水を入れる瓶、作ってみたんだけど、見に来てよ」
そう言えば、クレアに聖水を作ってもらい、ミミにはガラス瓶を加工してもらって販売しよう!という計画も立ててたんだった。
「あー、そうか、うーん…」
「私は先に探しに行きますね」
「ああクロ、頼んだ」
俺はミミの工房へ向かう。
「どう? いいでしょー」
透明なガラス瓶と、青いガラス瓶、それぞれに綺麗な装飾が施され、いかにもな高級品の形に仕上がっている。
「ほほう、さすがはドワーフ、名工ダルクさんの娘だな!」
「エッヘン!」
十歳児とはとても思えん。これでもうちょっと体がすらっとしていれば、いやいやいや、オホン。
「じゃ、お兄ちゃん、透明と青、どっちが良いかな?」
ミミが俺にそう聞いてくるが。
「そうだなぁ。手間の掛かるのはどっちだ?」
「別に一緒だよ。青はすり潰した銅をちょびっと入れるだけでいいし」
銅を入れてこんな綺麗な青になるのも不思議だが、青銅と言うくらいだし、錆、つまり酸化が関係するのかな。
「じゃあ、こっちの方が見栄えが綺麗だし、青で行こう」
「うん! 分かった!」
「一応、材料の代金はメモっておいてくれよ?」
赤字になるとは思えないが、原材料より安く売ってもまずいからな。
「はーい」
後はミミとその弟子達(タールがミミに見習いを付けていた)に任せるとしよう。
さあ、金山探しだ。
「我が呼びかけに応じよ、探し物はいずこや、ディテクト!」
金属のゴールドの延べ棒を頭に思い浮かべながら、呪文を唱え、エリアを虱潰しに回っていく。
可能な限り範囲を広げるため、詠唱付きだ。
……五時間後。
「くそっ! 水の時もそうだったが、今ひとつ引きが悪いな!」
結局、水はかなり離れた水源から無理矢理に石のパイプとモーターを繋げまくって水道方式にしているが、ルザリック先生の万能呪文も限界があるのか、運が悪いのか。
…いや?
だいたい、これ、初級呪文だし。
しまった、俺としたことが、最近は術式の開発を怠ってたな。
金山探しには金山探し専門の術式を使った方が発見率が良いに決まってるじゃないか!
ならば、試すしか有るまい。
今の俺の魔法発明ランクはすでにAに達しているし、まあ、上はSSランクまであるんだろうけど、Aなら充分上級と言えるはず。
「フフフ、今こそ、世界最大級の未知の金山を見つけてやるッ!」
まず、この手の探索は、ダウジングと相場が決まってる。
いや、それはかなり偏見なのかもしれないが、やってみたいもんね!
「お兄ちゃん、これでいいの?」
「おう、バッチリ!」
ミミにL字型の細い鉄のロッドを二本作ってもらい、それを軽く握って、少し傾けたり揺らしたり。
「むむむ、こっちか!」
「キュッ! キュッ!」
「いや、アクア、コレは遊んでるんじゃないんだ。ちょっとあっち行っててくれ」
ドラゴンのアクアが勘違いしてじゃれてくるし。見た目は確かに興味を引く遊びに見えるかもしれないが、俺は真剣なのだ。
「キュー?」
賢い奴なので、俺がそう言うと、すぐ離れてくれた。
「さて。むむむ…」
意識を集中し、ロッドの向かう方向へ移動。
「キュッ!」
アクアが付いて来てるが、まあ、散歩ということで、邪魔しないんだから好きにさせてやろう。
「ここかッ!?」
「キューッ!?」
今、ロッドが反応した気がする。
とにかく、掘ってみるか。
アースウォールやストーンウォールを駆使して、穴を掘ってみる。
「うーん、ダメだな。日が暮れて来たし、今日は諦めるか」
「キュー…」
クロ達も空振りだったようで、まあ、一日ですぐに見つかるとは思ってないさ。ふうぅ。
詳しい事は分かりませんが、ダウジングは実際に中世の鉱山探しに使われていたようです。




