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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十四章 貴族でおじゃる

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第十二話 総人類生存計画

2019/10/7 闇軍師の伏線回収を追加。

「ユーイチ、起きて」


 体が揺すられた。


「む…ああ、リサ。状況は?」


 周りを確認したが先ほどの部屋に戻っている。いや、俺の肉体はここから一歩も動いてはおらず、精神だけが飛ばされたか。


「終わりよ。アサシンギルドはもう壊滅させたわ」


「ええ? 早いな…」


「当然でしょ。レベル70オーバーの私達にその辺の暗殺者が敵うわけが無いわ」


「そうだろうが…潜伏は大丈夫なのか?」


 アサシンに潜伏されると面倒なので、ミネアがかつての伝手を辿って囮捜査みたいな作戦を考えたわけだが。


「長老に自白剤を使って吐かせたから間違い無いわ。人数もきっちり合致したから」


 おっかない薬もあったもんだ。俺が作ったのではなく、リサかミネアが手に入れた物だ。多分、アサシンギルドに有ったのだろう。


「う、うーん、ミネア、止めて…私達、仲間でしょう…むにゃむにゃ」


 ティーナが脇でちょっとうなされているが。

 リサがティーナを揺すって起こした。


「ああ、リサ。そっちは上手く行った?」


「ええ、完璧」


「そ。良かった。ふう、本当にミネアに裏切られたんじゃないかって私、焦ったー。ミネア、演技が凄く上手だったし…」


「フッ、演技…ねぇ? ま、本人は、アサシンに気づかれないように思い切り蹴ったから、ティーナに謝っておいてって頼んでたわよ」


「ああ、うん、まあ、そこまでじゃなかったけど。うう、なんか寒い」


 ティーナが身震いしたが、そう言えば部屋が寒くなってるな。


「仮死状態にする薬だそうだから、ユーイチ、一応、薬草と毒消し草、出しておいて」


「そうだな」


 俺とティーナで薬草を食べる。それで毒が完全に抜けたのか、すぐに体が温かくなった。


「さて、じゃあ、一度、館に戻って次の作戦を立てましょう」


 リサが言う。


「ああ」「ええ」



 俺の王都の別邸、ヒーラギ邸に戻ると、クロが笑顔で出迎えてくれた。


「ユーイチさん、ティーナさんも、ご無事で何よりでした」


「おお、クロ、目が見えるようになったか」


「はい、ほんの三十分前ですけど、何か、暖かい光が私を包み込んで…」


「クレアかしら? でも、良かった」


 ティーナが言うが、俺は女神ミルスの仕業だと知っている。俺が話の終わり際に頼んだからね。

 ま、薬や魔法でどうにか出来たかも知れないが、治療してくれたミルスにはまた借りが出来てしまった。

 正直、邪神退治は俺には荷が重すぎるが、準備と勇者育成だけは、きっちり役割を果たしておこうと思う。

 フフ、俺が勇者で無い世界もあるんだから、一定レベルの勇者さえ量産すれば、俺は戦わなくて済む。


「じゃ、俺はちょっと準備してるから、リサ、全員揃ったら呼んでくれ」


「分かった」


 さあ、ここからはタイムリミットとの戦いだ。

 未来を確率的に(・・・・)予測可能なミルスの啓示は受けられるが、のんびりやっていては勝利はおぼつかない。

 この世界が、何をどうやっても邪神を倒せない未来(ルート)になってしまった時点で、詰みだ。

 他の平行世界の結末はどうだっていい。

 俺の生きるこの世界を勝利させねば。

 そのためには効率良く各地のダンジョンをクリアし、軍備を整え、権力を握っておく必要がある。

 どのレベルまで上げればいいのかは未知数だが、上げられるだけ上げるのが当然。


 この世界(リアル)にセーブもロードも無いのだ。

 やり直しは出来ない。


 とある天才の思考方法を思い出し、


 何を考えるべきか(・・・・・・・・)を考える。


 まずは計画だろう。

 何をどうすべきか、行動する前にきちっと整理すべきだ。


 

 俺は記憶(メモリー)の呪文を使いながら、ブレインストーミングで必要な項目を洗い出し、来たるべき決戦の為のプランの大骨子の作成に取りかかった。

 大目標は邪神の撃破、再封印。

 そのためには、各種の神器、武具、魔術、奥義、軍備、回復薬、勇者などを揃える必要がある。

 無論、俺一人ではとても手が回らないので、各国の要人にこの事実を話し、協力を要請する。

 要請に応じない国は滅ぼす。

 あるいは、国王をすげ替える。


 ……少し厳しいか。泥沼の戦争になって、人間側の戦力が落ちてしまっては本末転倒だ。

 勇者を育てることを優先し、応じない国は放置で。

 それで行くか。


 フローチャートで条件を視覚化して、まずは大まかな流れを把握しておく。


 (有望な戦士のスカウト)→(訓練(トレーニング))→(低レベルダンジョンへの投入)


 → 成功した場合は → (ラストダンジョン『ラタコンベ』第一層に挑戦)

 → 失敗した場合は → (訓練のやり直し、装備の見直し)


 ダンジョンは難易度順に攻略したいし、人員が揃っているなら、部隊を分散して同時に攻略させていく。

 何も俺が全てのダンジョンを回る必要はどこにも無いもんね。

 冒険者ギルドのクエストを使ったり、部下をキリキリ働かせてやる。

 ケインは勇者候補だな。うむ。

 あと、ティーナも。


 その気にさせるために、ティーナが勇者だと言ってしまおうか。

 いや、それだと無茶をやり始める気もするし、ケインを勇者に育てると言う話に疑問符を付けられるかも知れない。

 ここは正直に話した上で、可能性としてティーナやケインも勇者になり得るという前提で進めた方が良いだろう。


 予算も相当な額が必要だ。

 金策も現代知識のチートを無制限に使ってガンガンにやっていく。


 うん、そんな感じで。



 あと、タイムスケジュールも立てておかないとな。

 いついつまでにクリアしておかないと、攻略が不可になるダンジョンも有るかもしれない。

 そこまで厳しくなくとも、スレイダーンの侵攻など、国サイドの動きも計画に織り込んでおかないと、思うようには動けないだろう。


 そこで俺は、オペレーションズ・リサーチの手法の一つ、『アローダイアグラム』を用いて日程計画を立てる。

 これはフローチャートに似ているが、項目(ノード)項目(ノード)のネットワークの経路(アロー)に必要日数が付け加えられているのがミソ(・・)だ。


 (オリハルコンの入手)→ 30日 →(オリハルコンソードの作成)→ 14日 →(可能なら量産化)→ 90日 →(戦闘訓練)


 これにより一連の作業に必要な総日数が素早く計算でき、スケジュール管理が容易になる。

 必要経費も付け加えれば、総予算の割り出しも可能だ。



 使徒がどこに発生しても良いように、各拠点に軍隊と糧食を配置、そこからの最短経路とその掛かる日数も予め計算して最適な配置を決めれば良い。

 最短経路の求め方は以下のように記していく。


 ①王都 [拠点②へ、0日]

  → 7日 → 

 ②ヒューズの街 [③へ、合計7日]

  → 4日 → 

 ③ルドラの街[④へ、合計11日] ……


 これで振った番号順に見ていけば、その拠点から拠点までの必要日数や最短経路がすぐに分かる。



 やっべ、オラ、面倒なのになんだかワクワクしてきたぞ?



 とにかく、一人で考えるのは限界がある。

 考える頭脳(コア)をたくさん用意して、万が一、俺が死亡したとしても、計画が動くようにクラウド化するか。軍師とは表舞台で活躍するのがベストではない。孔明が死んだ蜀漢は柱を失ったように崩れていったが、個人に頼るシステムではダメなのだ。

 つまり、俺は影や闇のように目立たず、人類陣営が勝てるシステム作りをすればいい。

 闇軍師だ。

 ネットワークを構築するためには、最終的に光ファイバーの埋設か、念話(チャット)の呪文の極大化かな。

 当面は早馬だろうけど。くそっ、科学技術も発展させないとなぁ。


 ただ、その場合、コアが一つ暴走してそこに権力が集中してしまうと、面倒になる。

 大まかな目標を全員で共有した上で、そこへ向けて各自が適宜協力しつつ動くというのが理想かな。

 細かなところは各自で考える。


 エルフやドワーフなど共存可能な知的生命体を含む人類すべての生存計画。

 その理念は『全てが生き残るために』


 名付けて、『総人類生存計画』

 スローガンは『ロリは世界を救う』で、うん。

 だって、アレでしょ? 子孫繁栄も大事だものね。

 俺のDTも捨てないと。


 ついでに、ハーレム権とか処女味見権なんて、作っちゃおうか。

 作っちゃう?


 生産資源を集中させるために、適齢期の女性は全裸で暮らさなくてはならない。服の節約のためだ。人類のためだ。

 なーんて法律を制定したり。

 神の啓示だと言えばこの世界の人間って逆らわないんじゃね?

 結婚可能年齢も引き下げて―――


「フヒ、ヒヒヒ、フハハハハハ―――ガッ!?」


「チッ、仕留め損ねたか。無駄にHPが上がってるわね、ユーイチ」


「ちょっ、リサ、冗談抜きでボウガンが俺の首に刺さってるんだが?!」


 慌てて矢にスリップの呪文を掛け、ヨモギ草ペーストで止血しながら、そうっと抜く。


「ええ。普通なら致命傷の傷でも余裕で喋れるレベルになってるから、ふう、今度、ミネアに猛毒を分けてもらうか」


「あのな。仲間を攻撃するとか、パーティーアタック禁止だろ、うちのパーティーは。しかも致命傷を狙うって」


「ええ、まあ、でも、何か良からぬ企みをしていたみたいだから、これも世の女性達のためよ」


「くっ。その勘の良さは敬服するが…誤解はしないでくれ。最後、ちょっとだけ暴走しちゃったけど、それまでは本当に真面目で崇高な計画を立ててたんだ」


「暴走する危険があるなら、早めに仕留めるべきなのかしらね」


「勘弁してくれ。今、俺が死んだら、世界は滅ぶぞ」


「ふうん。本気で言ってるの? ユーイチ」


「ああ、女神ミルスの啓示を受けた」


 俺は言う。


「えっ! そう…。ああ、それで全員を集めた訳ね?」


「そうだ。集まったか?」


「ええ、だから呼びに来たんだけど」


「ああ、分かった。だが、次からボウガン発射は禁止な」


「ええ、もっと強力な武器にしておくわ。閃光の矢筒なんかいいかもね」


「いやいや、リサ、そんなヤバい神器を使ったら、館ごと吹き飛ぶんだが…まあいい、冗談はそのくらいで」


「そうね」



 食堂に皆が集まっていたので、そちらに行き、まずは言う。


「リム、この金で好きなだけ魚を食ってきて良いぞ。今回のご褒美だ」


 俺は金貨を一枚、放り投げてリムに渡してやる。


「ニャ! き、金貨だと…! ユーイチ、大好きニャー!」


 リムは金貨一枚より数が多いからという理由で銀貨五枚を選んでしまう奴だ。その習性を利用して小銅貨百枚を毎月のお小遣いとし、リサが彼女の財布を管理してたりする。

 だからリムは普段、金貨を手にしていない。コイツに持たせたら全部、生魚になるからな。

 だが、今日は特別だ。


「はは、ほれ、じゃれついてないで、さっさと行ってこい」


「分かったニャ。じゃ、お魚がアタシを呼んでるニャー!」


 脱兎のごとく走って行くリム。


「よし、これで一時間は帰ってこないな。この場にいる全員は、心して聞いてくれ。パニックを防ぐ為、要人以外には機密とする」


 本当なら情報開示が一番なのだが、混乱して計画が進まなくなってしまったら人類が滅亡してしまう。

 それだけは避けねばならない。

 ただし、吟遊詩人に英雄王グランハードや使徒の伝承を歌わせて別の形で情報提供することを考えている。

 これについては、情報元のトリスタンとの調整は必要だが。

 邪神に対する問い合わせがあればそれに正直に答えるつもりであるし、隠蔽をやるつもりは一切無い。適切な情報管理だ。


「どういうこと?」


 ティーナが俺が本気だと察して、真剣な顔で問う。


「ああ、順を追って話すが、俺は女神ミルスの啓示を受けた」


 この場にいるのは、ティーナ、リサ、クロ、エリカ、ミオ、レーネ、ミネア、クレアの冒険者仲間(パーティーメンバー)と、ティーナの重臣リックス、俺の護衛のケイン、そして執事セバスチャンとメイドのメリッサ。

 ヒーラギ男爵に最も近い人物だ。

 そして、俺が最も信頼する者達だ。


 これまで行動を共にし、モンスターとの戦いを通して生死を共にしてきた分、絶対の信頼がある。 

 セバスチャンとメリッサはちょっと違うのだが、彼らはティーナや俺の配下として忠実だからな。リックスやケインもそうだ。


 ミミやエル、ニーナや大ババ様など、今、この場にいない者にも、後で伝えるつもりだけどね。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「うーん、そんな事が……」


 ティーナが呻くようにそう言い、他の者達も押し黙る。


「ま、すぐに信じろと言っても無理かもしれないが」


「ううん、それは信じてるよ。ユーイチが自分が戦う羽目になるようなことで嘘を言うなんて、それこそ信じられないもの」


 ティーナが逆説的なことを言って信じてくれたが、まあ、そうだよな。

 何を好き好んで、ラスボスだの邪神だのと戦いたがるってんだ。

 そりゃ、ゲームなら燃える展開だろう。


 だが、リアルは違うから。


 最も死ぬ危険が高い戦闘や敵なんて、避けられるなら避けるに越したことはない。


 だから、俺は準備は死ぬ気でやるが、最後の最後は逃げるチャンスを探し続けるだろう。


 そのためにも、特にティーナとレーネには、勇者になってもらわねば困る。


「それで、その勇者とやらは、一定のレベルを超えた者なのか? それとも、神に選ばれし者なのか?」


 レーネが質問する。


「それはちょっとはっきりしないけど、一定のレベルを超えれば要件をクリアできるはずだ。どちらにしろ、俺を含めてだが、みんなには極限までレベルを上げてもらう」


「分かった。元々、剣術は極めるつもりでいたし、強い敵とやり合うつもりで出てきたのだ。最高の相手が用意されるとなれば、断る道理もないな」


 戦いや人生のレーネなりの美学があるんだろうが、まあ、人それぞれだね。


「うん、私も、世界を救うためなら、全力でやるわ」


 ティーナも頷く。もっと自分を大切にして欲しいんだが、これがティーナなんだろうな。彼女が死なないよう、手は尽くさないと。


「し、仕方ないわね。エルフの代表として、協力してやってもいいわよ?」


「うん、まあ、エリカには個人として協力してもらえばいいから。どうせお前にエルフを代表できる権限なんて無いだろ?」


「む…そうだけど」


 しかも、微妙にビビってるよな、コイツ。ま、それが普通だけど。


「神殿の方に、この話は通してもいいのでしょうか?」


 クレアが真顔で聞いてくる。


「クレアが良いと思った人物なら、構わない。そこは各自、自分で判断してくれ。ただ、あまり信用できない人物には話さない方が良いだろう」


「ええ。では、この国の大司祭と、フランジェの大司祭、それとブンバルト様、その辺りに」


「ああ。頼む」


「でも、ダンジョン攻略にスレイダーンとの戦か。忙しゅうなりそうやね」


 ミネアが言うが、その通り。


「ああ。ま、無理しない範囲で頼むよ。割と長丁場になるかも知れない」


 ミルスは猶予は無いとは言っていたが、時間的な期限は教えてくれなかったんだよな。

 未来予測が『揺らぐ』―――それは多分、観測者が観測を行う度に、未来自体が影響を受けるせいだと思うのだが、そうなると、観測の回数は少ない方が良いかもしれない。

 ミルスは最適のタイミングで俺に啓示をもたらしてくれるはずだから、そこはこちらからは要求しない方が良い。


「頑張ります!」


 クロが両手の拳を握りしめて気合いを入れまくってるが……ま、数日して寝込んだときにお説教する方が効果的だろう。



「じゃ、俺からは以上だ。リサ、紙ギルドの報告を頼む」


「ええ。もうアサシンギルドの壊滅はみんな知ってると思うけど、そこに依頼した紙ギルドはヒーラギ男爵家にとって完全な敵性よ。証拠も押さえたわ。これで法的にも、うちの流儀としても、見逃すわけにはいかない。そうよね? ティーナ」


 リサがティーナに問う。


「ええ、もちろん。クロをあんな目に遭わせておいて、全員、生かしておかないわ」


 ヒュウ。ティーナも結構、過激だね。

 ま、自分たちの独占を維持するためだけに、人殺しまでやろうとする連中だ。先に手を出したのが向こうである以上、容赦はしない。

 このまま放置していても、ろくな事にはならないだろうし、芽は完全に摘み取っておくとするか。その上で、紙の利権をこちらが握ってしまえば、予算もかなり浮くだろう。

 この世界の識字率向上にも役立つ。


「じゃ、ティーナ、ラインシュバルト侯爵にこの件を連絡して、事後承諾でも良いから探部(この国の検察、または公正取引委員会か)としての権限をもらって動いてくれ」


 それも大事だと思ったので俺は指示を出しておく。


「ええ、そうね、もらえると思う。でも、もらえなくてもやるわよね?」


「ああ。だが、形式は整えておきたい」


「分かったわ」


「いつまで待つの?」


 リサが聞く。


「十五分で良いわ。私が事後承諾を依頼する手紙を出した時点で、形式は充分よ」


 ティーナが言う。現代日本の法体系から見ればそれはちょっと…と思うのだが、こちらは領主が司法機関や行政機関であり、即断即決の裁量が大きいからな。俺より格上の子爵であるティーナ様がこう言った以上、男爵としては従うしかない。ま、そういう保身も必要無いんだが。


「そ。じゃあ、実行部隊は、私達と、うちの騎士団でいいかしらね?」


 リサがそう言ったが、うちの騎士団とは、ケインを総隊長とするヒーラギ騎士団のこと。転んでもすぐ自力で起き上がれる軽装鎧を標準とし、礼儀と規律を重んじる方針とした。数はまだ五十人ちょっと。ケインがしっかり面接して決めているので、まだそれだけしか揃っていない。披露宴の外の警備については、それではとても足りなかったので、百人程度をロフォール子爵から借りている。

 この五十人は将来の幹部候補生で、小隊長、百騎長、と昇進させて隊長クラスを務めさせる予定だ。人員も合わせて増やす。


「いやいや、うちの騎士団も入れてもらわねば、形式が整わんぞ」


 リックスが苦笑して口を挟む。リックスが言ううちの騎士団とは、ロフォール騎士団のことだ。


「じゃ、それでいいわ」


 リサもそれで了承し、決まったな。


『ついでだけど、ユーイチ、パンギルドもおかしな動きがあるから、この際、一網打尽にしたらどうかしら?』


 個人指定の念話(チャット)を使い、リサが俺に言う。冒険者仲間(パーティーメンバー)なら、魔術チームが側にいれば自動で呪文が起動するようになっている。MP消費は一分喋って1ポイントとかなので、今の俺達のMPと回復量なら無視できるレベルだ。


『証拠は揃ってるのか?』


『まだよ。一部は押さえたけれど』


『じゃあ、揃ってからでも…』


『またクロが襲われるより、先手を打って、それで他のギルドにも牽制にしたらどう?』


 微妙だな。だが、これからスレイダーンとの戦もある。有事で混乱しているときに乗じられても面倒だ。


「分かった。じゃあ、パンギルドにも不正と敵性の傾向がある。こちらについては責任者の拘束としたいが」


 俺が皆に言う。


「ええ、それも許可をもらうわ。実行しましょう」


 ティーナが応じて、これもすぐに決定した。

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