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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十一章 画家なんだな

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第十三話 本戦第一試合 『毒使い』 vs 『毒消し使い』

2016/10/3 誤字修正。

「さあ今年もやって参りました、熱き戦士達の闘い! 第127回、トリスティアーナ武闘大会! 数々の伝説を生み出してきたこの中央コロシアムで、今日はいったいどんなドラマが待ち受けているのか? 実況は私、フリオが務めさせて頂きます。そして私の隣にはこのお二人、まずは、生ける伝説、元S級冒険者にして過去二度の優勝を誇るアレクサンダーさん!」


「いやあ、随分と昔の話ですけどね」


「いえいえ、今日は解説、よろしくお願いします」


「ええ」


「そしてもうひとかたは特別ゲスト、諸国を旅し、戦士達をその美声で讃える吟遊詩人のイシーダさん!」


 ぬっ?


「きゃー! イシーダ~」「イシーダさーん」「こっち向いて~」


 おおっ? そこにいたか、イシーダさん!


「イシーダさーん、ユーイチです! 後で大事な話が!」


「やあ、どうもどうも。美声と言われると困っちゃうんですけども」


 俺の方を見て頷いたイシーダは、うん、気づいてくれてると思う。


「いえいえ、大変な人気で、羨ましいです。では、お二人とも今日はよろしくお願いします」


「「 よろしくお願いします 」」


「音声の方、魔道具の調子、大丈夫ですね? ハイ、オッケーです。では、今年の武闘大会、現在予選が全て終わり、各選手、出揃ったところで、注目選手を紹介していきたいと思います。最初はなんと言ってもこの人を挙げないわけには参りません。昨年の優勝者! 青き彗星、ランスロットぉ! この人が優勝候補で間違いないですよね? アレクサンダーさん」


「ええ、そうですねぇ、彼はまだ若いですし、試合前に私も少し話をしたんですが、体調も万全だそうです。色々、新しい技も覚えてきたみたいですよ」


「おお、さらなる成長を遂げてきたようですが、昨年の覇者がどんな強さを見せてくれるのか、今から楽しみです。続いてハンマーを振るわせたら右に出る者はいないハンマーマスター・ヴィー―――」


 実況席ではまだ選手の解説が続いているが、俺の名が審判に呼ばれた。むう、実況解説付きとか、緊張するなあ。イシーダさんも観てるし、格好悪い負け方はしたくないが。


「おっと、間もなく本戦第一試合が始まるようです。リングの端に立つ黒い魔術士、ユーイチ、十七歳。今回が初エントリー! ミッドランドの冒険者にして、あのラトゥール座において老魔導師役で衝撃デビューと、異色の存在でもあります。彼のパーティーのリーダーがですね、同じくラトゥールで主演女優を務め、百年に一度の逸材と絶賛されています。なんでも、イシーダさん、この二人とお知り合いだそうですね?」


「ええ、最近、私が歌わせてもらっている白き美少女仮面―――」


「ノー! ノー! アウトー! ストォーップ!」


「おーっと! これはどうしたことか、ユーイチ選手、我々実況席に向かっていきなり奇声を発し、両手を挙げて凄い剣幕で威嚇しております! これはいけません! さあ、ここで実況席へ乱入という危険すぎるパフォーマンスが炸裂してしまうのか?! 慌てて審判が止めに入ります!」


「はは、彼、悪役(ヒール)なんですか? 見た感じ、予選の戦い方も大人しそうだったんですが」


「ええっと、手元の資料では、ちょっと分かりませんね。エントリーシートのPRコメントでは『臆病な変態ドスケベです! 幼女・巨乳・ケモミミ・女の子なら何でも大好き!』 …だそうですが、うーん、これはそっち系なのか! この大観衆の中、カミングアウト・ユーイチ、恐るべし」


 ちょーっ! それリサが勝手に! あと、貧乳とエルフスキーが抜けてる!


「いえいえ、彼はそんな人物ではありませんよ。きっと何かの間違いでしょう」


 さらりと笑顔で否定するイシーダさん、ステキ! 持つべきは裏金の黒い関係だな!


「そうですね。また情報が入り次第、お届けしたいと思います。さて、一方の対戦者、この突然のアクシデントにも落ち着き払いリング中央で微動だにしない! 昨年、優勝候補の一角を毒で追い詰め、会場を阿鼻叫喚に包んだこの男! ポイズン~、リザード、ゲーリック~! 早くも会場にブーイングが巻き起こっております!」


「まぁ、ルールとしては有りなんですがね、彼くらいの実力があれば、もっと…こうね、前面にファイトを出して欲しいなぁと思いますよね」


「始め!」


「さあ試合開始です! おっとゲーリック選手、間合いを詰めません。その場から投げナイフの連投! ユーイチ選手、躱していく! 当たりません。アレクサンダーさん、魔術士のユーイチ選手に対して、この攻め方はどうなんでしょう?」


「んー、ま、ゲーリック選手のスタイルがヒット&アウェイで、元々前衛という感じじゃありませんから。でも、魔術士相手なら、やはり間合いを開けていてはダメですね。飛び道具も全部躱されてますし。ユーイチ選手も予選を生き残ってきた魔術士だけあって、ただの魔法使いではないですねえ」


「しかし、ゲーリック選手、いったい何本のナイフを隠し持っているのか! すでに十本以上は投げています。ユーイチ選手、これをひらりひらりと躱して当たりそうで当たらない!」


「いや、驚きましたねえ。隠し球の多い選手ですけど、これだけナイフを投げたのは初めてでしょう。今、28本ですね。器用に両手で二本ずつ投げてます。どこに隠し持ってたんだか。投げナイフは鞘がありませんから、収納も工夫が要るんですよ。まして彼のナイフは全て毒塗りですからね」


「自らも危ういゲーリック選手、あーっと! ユーイチ選手、ナイフが途切れたところで反撃に出ました。青い稲妻が飛んだぁ! しかし、これを躱します、ゲーリック選手!」


「中級の電撃呪文、ライトニングですね。敵を貫通していきますから、多数の敵が直列に並んでいるときは効果抜群ですよ。この呪文に当たると軽い痺れも起きて動きが鈍りますから、動きの速いゲーリック選手も油断は禁物です」


「さあ、お互い、攻撃が当たらないが、おっと、ここでようやくゲーリック選手が間合いを詰めます。今度は両腕のかぎ爪でユーイチ選手に襲いかかったぁ! これも躱します! もはや魔術士とは思えぬ機敏な動き、いや、アレクサンダーさん、私、ここまで躱す魔術士は初めて見ましたよ」


「私も、そんなには見た事は無いですね。彼は魔法剣士なのかな。きちんと剣術の見切りを会得してる感じです。それに、やたら体が柔軟ですね。これはゲーリック選手の攻撃はなかなか当たらないですよ」


「ええ、私も今、言おう言おうとしてたんですが、ユーイチ選手、体が色々おかしな方向へ曲がっています。これは軟体動物かゴム人間か! あーっと!」


「おっと、あれは!」

「あー、モロに食らってしまいましたね、大丈夫かな」


「出ましたぁ! ゲーリック選手の奥の手、毒霧! 口から紫の霧を吹き出したこの男、もはや人間とは思えない! 観客も落胆のため息に包まれます。さあ、ここからあの悪夢、ゲーリック劇場が再び始まってしまうのか! のたうち回るユーイチ選手、目もやられたようだ。これは苦しい。ゲーリック選手、ここで追い打ちを掛けず、余裕の腕組みポーズです。さあ、審判がTKOの判断を窺います。ここで無情にも右手が挙がってしまうのか!」


「うーん、見切りは良かったんですが、初見だとゲーリック選手の攻撃はちょっと予測が付かないでしょうしね。お、回復したようですよ? 毒消しを持ってましたね」


「立ち上がりました! ユーイチ選手、完全復活! 目も大丈夫そうです。観客席から拍手と歓声がわき起こります。やあ、一時はどうなるかと思いましたね、イシーダさん」


「ええ。ゲーリック選手の攻撃にも驚きましたが、ただ、ユーイチ選手のパーティーはミッドランドで悪魔を倒してますし、人外の敵にはむしろ慣れていると思いますよ」


「デーモンバスターですか、それはなかなかのパーティーですね。あっとぉ! また毒霧だ! ユーイチ選手、下がって避けようとしましたが、これは毒にやられたか。いや、立っています。躱し切りましたかね?」


「いえ、食らってますね。毒消しで回復させたようです。今もモグモグしてるし、毒消しの服用でしょう」


「備えあれば憂い無し、複数の毒消しを持っていたユーイチ選手、うわーっと、また毒霧! いや、アレクサンダーさん、この男、どこに毒を隠し持ってるんでしょう?」


「うーん、普通、瓶から口に含んでそれからなんですけど、上手く隠してますね。おっと、それより、審判が下がりましたが、これはユーイチ選手、まずいですよ?」


「と言うと?」


「毒の霧が広がって残ってるんです。おそらくゲーリック選手は無効化アイテムを装備しているはずですが、これでは常時毒に攻撃される感じになって、毒消し草がいくらあっても足りなくなります」


「なんと、復活したユーイチ選手、これは厳しい。毒リングはもはや完全アウェイ! 毒の牢獄だぁ! 審判もとうとう場外へ逃れます。うっすらと紫の霧に包まれるが、大丈夫か、ユーイチ選手、無理はしないで欲しい! 君はここまで良く闘った!」


 フフフ、甘いわ! この薬草マスター・ユーイチの辞書に『毒消し切れ』などという陳腐な言葉は無いのだよ!

 でも、毒攻撃は目もヒリヒリするし、ここは。


「風です! 竜巻が起こって毒霧を一気に上空へと消し去りました! これは、魔術ですよね? アレクサンダーさん」


「ええ、魔術です。魔術士の本領発揮というところでしょう。トルネード、上級の風呪文ですね」


 アレクサンダーさんって、魔法にもやたら詳しそうだな。


「そして! これはゲーリック選手の体も切り裂く攻防一体の攻撃だぁ! 鎧の隙間に傷を負ったゲーリック選手、堪らず片膝を突きます。形勢逆転!」


「いえ、まだですよ」


「おっと、ゲーリック選手、右手に縦笛のようなものを持って、ユーイチ選手が顔を両手でかばう! 出たー! ゲーリック選手の多彩な毒攻撃の一つ、吹き矢だぁ! アレクサンダーさん、もうこの人、毒の魔術士と呼んでいいんじゃないですか?」


「はは、そうですね。他にも、戦士系に対して撒―――お、アイスウォールで防御しましたね。詠唱無しのようですが、ユーイチ選手は実戦慣れしてる感じだなあ」


「悪魔との戦闘でも、アイスウォールを上手く使っていたそうですよ」


「なるほど、対悪魔戦術、ここで活きたか! しかし、毒針は食らってしまっている。そちらの方は大丈夫なのか! それにしても、ユーイチ選手、意外にと言っては失礼ですが、かなりしぶといですね?」


「ええ。薬草、アロエ草も使ってるみたいですね。ずっとモグモグやってますし。これはゲーリック選手が負けるかな」


「さあ、ポイズン・リザード・ゲーリック、苦しくなって参りました。なおも吹き矢で攻撃しますが、あーっと、上から大岩が落ちてきたぁ! 気づいて見上げたゲーリック選手、避けきれません! ここで! 審判がテクニカルノックアウトを宣言! 試合終了です! なんと言う幕切れ! ゲーリック選手の怒濤の毒攻撃をここまで食らって生き延びるとは! ユーイチ選手、見事な逆転勝ちだぁ!」


 勝利の後、体中に刺さった毒針を、探知の魔法も使いつつ、みんなに手伝ってもらって抜く。イテテ、酷い目に遭った。

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