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異世界の闇軍師  作者: まさな
第十一章 画家なんだな

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第十一話 公演

2016/11/26 ティーナの好感度アップを狙って数行追加。

 トリスタンの国王に謁見するため、ラトゥール歌劇団に入団した俺とティーナ。

 練習は連日夜遅くまで行われ、あっと言う間に公演の日を迎えている。


「おお、美しき人よ~♪ 貴女をひと目見るだけで私の心は天に昇ってしまいそうです~♪」


「お世辞はおやめになって~♪ どうせ貴方は私の家にしか興味は無いのよ~♪」


 赤いドレスに身を包んだティーナは演技をしつつ、オーケストラに合わせて完璧な歌声を披露している。

 しかし、奴隷青年のマーク君の口説き文句が凄いです。いきなりヘブン状態とか。ま、お芝居なのであれこれ言うだけ野暮なのか。


「ユーイチ、次だぞ」


「おっと、はい」


 舞台の照明が暗くなったので準備する。

 俺の役柄は奴隷青年を惑わす老魔導師。スカーレットの指導を受け、演出用の魔法を使って派手にやる予定だ。


「そこが青年よ、我と契約を結べば、その願い、叶えてやろうぞ~♪」


 歌は代役の人が歌ってくれるので、それをスピーカーの呪文で俺の口元から聞こえるようにした。

 さらに、光と闇の呪文や浮遊(フロート)の呪文で魔導師っぽさを全開に。

 浮遊(フロート)の呪文だけでは空中に浮かんでいられないので、黒く塗ったロープで背中を吊ってるんだけども。



 これがまた、結構なスピードが出る。



 出さなくても良いと思うんだが、スカーレットは「派手に行きましょ!」と、こうなった。


「うひっ! ひいっ! ふおおうっ!」


 ぐいんぐいんと空中を振り回され生きた心地がしない。ドックさん! やり過ぎ! 練習より本気出しちゃダメ! ドーック! ドーック!!! 



「ユーイチ! 頑張って! あなたの演技にこの公演の成功がかかってるのよ!」


 んなこと言われたって、怖い物は怖い。というか、このオペラ、どう見ても主役のティーナと奴隷青年で成り立ってるから俺はどうでもいい端役でしょと。


「黙れ! 黙れ! 黙れ! 僕はそんな力に頼らない~♪」


「それで叶わぬ恋と知ってもか~♪ よく考えておくのだな~♪ また会おう~♪」



「よしっ! よくやった、ユーイチ」


「凄いわ、観客も驚いてたわよ!」


「み、水をくれ…」


「ほら、しっかりしてユーイチ。凄い顔だったけど…」


 ティーナがコップを渡してくれるが、顔はどうしようもないっての。お面でも良かっただろうに。




「おお、マーク、私もすぐそちらに行きます~♪ 永久(とわ)の誓いを守って~♪」


 もう一度吊られた俺は完全にグロッキー状態だが、舞台の方はラストまで無事に終わり幕が下りた。


「ブラボー!」「ブラボー!」「エリック様~!」


 口笛と声援が飛び、割れんばかりの拍手に包まれる。


「みんな、最高だったわ! 厳しい練習によく耐えて、うう、グスッ!」


 スカーレットさんが泣いているが、化粧が崩れて、色々ヤバいことになっている。

 むう、ここはデスかクリアランスの呪文を……。


「泣くな、スカーレット、これで顔でも拭いとけ。化け物みたいになってるぞ」


「んまっ! バッジョ、失礼ね、レディに向かって」


「よし、じゃ、片付けは明日で良いだろう。一杯、やりに行くぞ!」


 打ち上げは良いのだが、俺とティーナは王妃に会わないと行けない。


「スカーレットさん」


 ティーナが奥で顔を拭いているスカーレットに声を掛ける。


「ええ、分かってるわ。楽屋の方で待ってて頂戴。私もすぐ行くわ」


「はい、分かりました」


 楽屋へティーナと二人で向かう。


「ユーイチ、ふふ、その顔、もうメイク落としたら?」


「ああ、そうだな」


 クリアランスの呪文を使って、特殊メイクを落とす。


「でも、上手く行って良かったわ。いくら王妃様に会うためだと言っても、劇団のみんなに迷惑は掛けられないし」


「ああ。しかし、よく緊張せずにやれたな。歌もとちらなかったし、やっぱり凄いよ、ティーナは」


「ふふ、ありがと。練習もしっかりやったし、褒めても何も出ないわよ。ユーイチの方は、うーん…」


「俺の方はどうでもいいんだ。だいたい、あんなに振り回すなんて聞いてないし」


「ふふ、そうね。大丈夫と分かってても、ちょっと私もヒヤヒヤしちゃった」


「だったら、止めてくれても良かったのに」


「ええ? そうね、ふふっ」


 スカーレットと王妃はまだ来ないようだ。


「上手く行くと良いが」


「うん…」


 沈黙。他の役者達はもう先に着替えたようでここにはいない。ティーナはラストシーンも演じたのでまだドレスのままだ。


「このドレス、どうかな?」


 ティーナが聞いてきた。


「ん、ああ…華やかで綺麗だと思うぞ」


 ティーナが好きな赤だし、着せてもらったときにテンション上げて喜んでたしな。コイツが着る分には俺も文句は無い。

 胸の谷間がかなり際どいが、この世界のドレスはだいたいがそんな感じらしくティーナもあまり気にしていない様子。


「うん。そうね。でも、それだけ…?」


「んん?」 


 ちょっと物足りなさそうな顔をするティーナに、俺はレディが求めるキーワードを思い出す。スカーレットさんから教わったのだが、細かい事は気にすまい。


「ああ、よく似合ってるよ、ティーナ」


 笑顔で俺は言ってやった。ま、実際、よく似合っている。元が本物の侯爵令嬢だしなぁ。


「う、うん。ありがとう」


 普通にティーナが照れた。 

 あれ? 何この雰囲気。この控え室には俺とティーナの二人だけ。


「ねえ、ユーイチ、結婚の約束だけど――」


「お、おう」



「お待たせー。王妃様もいらっしゃったわよ」


 スカーレットが約束通り、王妃を連れてきてくれた。

 俺もティーナもすぐに二人で跪く。


「いえ、そのままで良いわ。ティーナ、素晴らしい歌と演技だったわよ。私、感動しました」


 落ち着いた臙脂色のドレスに身を包んだ王妃が言う。


「ありがとうございます、王妃様」


「とても綺麗な声色で、心情も籠もってて。私が聞いた中では一番ね」


「いえそんな…きっとスカーレットさんの指導が良かったのでしょう」


「あらあ、嬉しいこと言ってくれるわね! でも、あなたは十年に一度、いえ、百年に一度の天才よ。あれだけ短い練習時間であそこまでの演技が出来るなんて、ねえ、本当にうちの主役でやって行かないの?」


 スカーレットがそう言うが、ティーナは冒険者志望だしな。


「ごめんなさい。私はまだやることがあるので」


「そう? 残念だわー」


「では、やることが終わったら、またラトゥールの舞台に立ってくれるかしら」


 王妃が約束を求めてくるが。


「ええと、それは…」


「ティーナちゃんはまだ若いんだから、すぐに決めなくてもいいわ。色々挑戦して恋もして輝かなきゃね!」


 スカーレットが答えを先延ばしにしてくれたが、王妃の願いを断る形になってもまずいだろうから、気を利かせてくれたのだろう。いい人だ。中身は。


「ふふ、それもそうね。それと、ユーイチだったかしら?」


「はい」


「魔法の演出、とても良く出来ていたわ。本当の魔法のようで」


「はい。苦労しました」


 本当の魔法だけどね。実戦用じゃないけど。


「それと、顔が、うふふっ」


 口元に手をやっておかしそうに笑う王妃。演技を褒められたわけじゃ無いようだが、まあ、楽しんでもらえたなら、それでいい。


「王妃様、そろそろ」


 お付きの者が言う。やはり忙しいようだ。


「ああ、ええ。では―――」


「お待ちになって下さい、王妃様、実は、ティーナが、お願いがあるのよね?」


 スカーレットが話を振ってくれた。


「ええ」


「何かしら?」


「実は、お聞き及びかもしれませんが、私はミッドランドの使節としてトリスティアーナにやって参りました。是非とも、国王陛下にお目通り願いたく」


「そう。ええ、私に外交の権限はありませんけど、陛下にお伝えしておきましょう」


「ありがとうございます」


 確約が得られたわけでは無いが、これでいいだろう。これ以上の要求はできないし。




 宿に戻って、首尾を皆に伝えた。


「そ。じゃ、あとは武闘大会ね」


 リサが言う。


「本当に出るのか?」


 聞く。


「当たり前でしょ。こっちが本命なんだから」


「え? マジで?」


「国王に会って話さねばならんのだろう? それなら、直接会う場の方が良い。私に任せておけ」


 レーネは自信満々だが、レベル的には厳しいと思う。


「後はティーナ、無理はしなくて良いけど、街の話を聞く限りだと、可能性があるのはレーネとあなたくらいだから」


 リサは武闘大会の下馬評を情報収集したようだ。


「うん、まあ、他のみんなもお願いね」


「任せるニャ!」


 リムが元気よく自分の胸を叩く。コイツは素早さや体力面、一撃の重さでも並外れた物があるが、駆け引きはてんでダメだからな。みんなもあまり期待していない。 


「ふふ、腕が鳴るわ。見てなさい、人族」


 エリカも気合いが入っているが、防御力が無い魔術士は、この一対一の大会では絶望的だ。命の危険もあるので凄い心配なのだが、本人は俺に負ける可能性を指摘されるのが癪に障るらしく言うことを聞いてくれない。

 せめて、初手で目潰しとか、電撃以外を使ってくれれば良いんだが。


「デスの呪文は禁止だからな?」


 そちらも念のため、言っておく。必殺攻撃はこの大会では、反則負けのルールだ。


「フン」


「頼むわよ、エリカ。勝たなきゃ、意味が無いんだから」


 リサも不安を感じたか、言う。


「分かってるわよ」


「じゃ、エントリーしてる子は遅れないように、会場に待機してなさいよ。私も注意はするけど、自分の番号や順番は各自できちんとやること」


 リサが注意するが、みんなで一緒に行けば大丈夫だろう。出場者は、俺、ティーナ、レーネ、エリカ、リサ、リムの六人だ。


「皆さん、頑張って下さいね。怪我をしたら私が治しますから」


 まあ、上級のさらに上、大司祭級の回復魔法が使えるクレアがいるので、死にさえしなければなんとかなると思うが。確認してみたが、呪文の階級は、初級、中級、上級、大魔導師級(大司祭級)、伝説級と区分があるらしい。上級より上は滅多に使う事もないので、曖昧だそうだが。

 上級魔法を覚えていい気になっていた俺は反省して、うん、ここはエントリーの辞退をすべきだと思うんだ。


「ん、骨は拾っておく」


「ミオ、冗談でもそれは止めてくれ。しゃれにならん」


 勘弁して欲しい。


「あはは、そやな。まあ、魔術士のエリカとユーイチは無理せんでええよ。これがダメでも、また別の方法を考えればええんやし」


「ダメよ、ミネア。そんな事を言うと、ユーイチがすぐ降参するから。言っておくけど、ユーイチ、アンタの降参は禁止ね」


 リサがそんな無茶なことを言う。


「は? いやいや、なんで俺だけ」


「自分の胸に手を当てて考えてみなさい。アンタの魂胆は見え見えだし」


「くっ。だが、本当に敵いそうに無い、ヤバい相手だったら、どうするんだと」


「その時はセコンドとして私か他のみんなが降参してあげるわよ」


「むう。本気で頼むぞ?」


「ええ、そこは冗談抜きでしっかりやるから、大丈夫よ。ね、ティーナ」


「ええ」


 クロが心配そうにこちらを見ているので、この場ではそれ以上ごねたりせず、翌朝を待つ。

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