第六話 パスタ
2016/11/24 若干修正。
大工が一人もいなかったセルン村に、ついに大工がやってきた。
これで家やら家具やら、太古レベルかと思ってしまいそうな村を中世レベルに引き上げられる。
それに、風車。
人力で製粉とかやってたら、人手がいくらあっても足りないし。
ゴーレムは微妙な回転運動は苦手な上に、俺がスイッチのオンオフで立ち会わないといけないから面倒。
だが、ようやく、ゲーム要素が混じってきてちょっと村長が楽しくなってきたぜー。
最終的には快適さ向上施設をガンガン建てて、村人の満足度を上げまくりたいが、そのためにはまず確固たる財政が必要だ。
最優先で生産力を上げないと、食うにも困るし、人口を増やしても失業者だらけになって、にっちもさっちもいかなくなる。
仕事が無いとお給料が手に入らないし、お給料が無い人は消費行動をやらない。
持続可能な経済とは、お給料が一部の人間に偏らずにみんなに行き渡る状態だ。
もちろん、頑張って働いた人にはたくさんのボーナスで差を付けるけども。
金持ちからはしっかり税金を取る。
それから何ら労働・生産をしない虚業の金融屋は規制しないとな。銀行もダメだ。
移民と輸入も規制して地産地消で行く。
村の統計も作って、少子高齢化にも備えたいが、ま、それは当分先のことだろう。
さて、ヴァネッサには何を建ててもらおうかな。
記憶の呪文で、計画表を建てておくか。
セルン村の建設計画
スタート → 穀物庫 → 工房 → 風車 →
(生産UP)(労働効率)(労働効率)
→ ピラミッド → 図書館 → 大学 →
(文化遺産) (科学振興)(科学振興)
→ 市場 → 工場 → 鉄道 → 空港 →
(収益UP)(労働効率)(生産UP)(収益UP)
→ 闘技場 → スタジアム → H2Aロケット
(娯楽) (娯楽) (そして宇宙へ)
こんな感じで。
某ゲームを参考に。
村人は、俺の料理や猫の実に満足してる様子だから、当面は生産系の施設を優先しても反乱やストライキは起きないだろう。
起きないよね?
……むう。
支持率や村人の要望を把握するためにも世論調査の必要があるな…。
早急にやっておこう。
それと、風車の前に、穀物庫が必要だな。
ラインシュバルトの村の穀物庫は見たけど、この村の穀物庫はチェックしてなかった。
これでどう生産力や成長率が上がるのかは俺にもよく分からんが、穀物を腐らせないようにすれば損失が減るってことかな?
一応、リアル文明でも穀物庫はあるんだし、ちゃんとした保管庫を作ってもいいだろう。
ピラミッドはまあ、余裕があればってコトで。
何かのボーナスが付くかもしれないでしょ?
村人じゃ無しにゴーレムにやらせるし。
日本と違い、この世界の土地は余りまくってるから、そこを大いに利用しないと損だ。人里と人里がかなり離れてるからね。
宇宙計画は最終段階だが、村人の科学力や技術力をどこまで引き上げられるか、だろうなあ。
俺のいた元世界に無かった冷凍睡眠装置や反物質反応炉も作れるとは限らんし。
あ、その前に俺が不死化しないと、最終計画は無理だろうな。
ぬう、リッチに転職か…。
一応、方法を探っておこう。
空港もちょっと無理かもしれないが、他は割とすぐできそうだな。
あと、他にも必要な物は出てくるだろうし、大工のヴァネッサと長老のジーナおババ様に相談するか。
「じゃ、ヴァネッサさん、ここがあなたの仮住まいです。好きに使って下さい」
仮住まいというのは、大工なら自分の家は自分で作りたいだろうしね。別にすぐ追い出そうというつもりでは無い。
「………」
むう、初っ端からやっちまったなあ。
黙り込んで、機嫌、損ねちゃったみたいだよ。
だいたい、求人を出して、社員寮の用意が出来てないとか、どうなのよ。
迂闊!
求人要項にも家付きって書いてたのに、これじゃ詐欺じゃん。
なので、慌ててゴーレムで石を運ばせて、ヴァネッサの家を作ったのだが。
「なあ村長」
「は、はいっ」
「これ、アタシがここに来る必要、あったのか?」
「え、ええと? も、もちろんですよ! 村人も待ちに待って…」
「でも、家も自分で、こんなあっという間に作れるなら、アタシが作る必要、無いんだが」
「ああ。いや、これ、石だけしか変形しない呪文なので、木造建築は無理なんですよ。だから、穀物庫や風車を作ってもらいたくて。それに私は建築に関してはド素人ですから」
「でも、普通に家になってるじゃねえか。しっかりした作りだし、あとはここに木の扉と窓を付ければ、上等だな」
「そうですね。木の扉と窓は申し訳ありませんが、ヴァネッサさんにお願いします」
「あのさ、普通の喋り方でいいぞ? 貴族の召使いに話しかけられてるようで気分が悪いんだが」
「お、おう。了解した、分かったぜ!」
ヴァネッサの気風を真似てみる。
「いや、アタシの真似をしろって言うんでもないんだが、まあいいか。じゃ、ドアから作るか」
「お願いします。あ、じゃあ、木材置き場へ案内します、いや、案内する」
「頼むぜ、村長」
木材置き場にヴァネッサを連れて行くと、エリカがウインドカッターの呪文で木を切り倒していた。
「むっ、エルフの魔法使いだと?」
「ええ。おい、エリカ、ちょっと」
「何よ。せっかく気分良く切り刻んでたのに」
ううん、まあ、木はたくさんあるし、ストレス発散になるなら、それでいいか。
板や支柱もちゃんと作ってくれてるし。
切り倒す前の木に俺の似顔絵が書いてあったりするけど、気にすまい。
「紹介する。こっちは大工のヴァネッサだ。今日からこの村で働いてもらうことになった」
「よう、よろしくな」
「む…」
エリカは警戒したようにヴァネッサを見る。
「で、こっちはエリカ。ちょっと人見知りで気難しいところはあるけど、エルフなんで気にしないで」
「フン」
あんまりなので、パーティーチャット呪文で叱っておく。
『態度、悪すぎだろ、オマエ』
『フン』
処置無しだな…。後でティーナかリサに叱ってもらうかなあ。
「ま、アタシを魔法で攻撃しなきゃ、それでいいよ」
ヴァネッサが大人で助かった。さっきティーナに突っかかったのは、ミッドランドの領主だったからか。
「ああ。エリカ、分かってると思うが、ヴァネッサを含めて村人に怪我をさせたら、相応のペナルティを与えるぞ」
「む。フン、村人と言うなら、村長は例外ね?」
屁理屈かよ。
「んな訳あるか。俺やお前も含めて、この村では暴力行為や魔法攻撃は禁止だ。これは村長命令だ。分かったな?」
「フン。勝手にすれば」
態度悪いなあ。
あと、やたら最近、フンフン言うようになったが、なんでかね。
「じゃ、この板は勝手にもらっていっていいのか?」
ヴァネッサがエリカを見ながら聞く。エリカはぷいっとそっぽを向いちゃうし。
「ああ。いいよ。あと、欲しい形があれば、エリカか俺に言って」
「分かった。じゃあ、これを何枚か、ああ、しまった。ロドルを連れてこないと」
「いや、このゴーレムに運ばせるから。運べ!」
ヴァネッサが見繕っていた板をゴーレムに持ち上げさせ、運ばせる。
簡単な作業であれば、一度教えてやれば、忘れないようなので単純労働には向いている。
ただし、複数の作業をセットで教え込もうとすると、一番昔に教えた作業を忘れるので、融通が利かない。
メモリー増設したいところだが、ミオもその辺は開発出来ていないそうで、まあ仕方ない。
農耕用ゴーレム、土木工事用ゴーレム、木材用ゴーレムと、用途に分けて作れば良い。
「便利だな。アレはアタシの命令は聞くのか?」
「いや、作った本人しかダメだから。そこも、どうにかしたいんだけど」
「ふうん。まあ、一人で運ぶのがダメそうなら、頼むぞ」
「分かった」
板をヴァネッサの家の前に置き、あとは彼女が道具を出しているから、一人でも大丈夫だろう。
こちらも俺の工房の棚にしまってあるミスリルのノコギリを持っていく。
「これ、使ってくれ。ミスリル製だ」
「なっ! 本当か?」
まあ、ミスリル製品ってほとんど出回ってない貴重品だもんな。驚くのも無理はない。
「ラジールの街のドワーフと知り合いなんだ。この村にまだ一本しかないから、ヴァネッサ専用って訳にはいかないが、数が揃ったら、君にプレゼントするよ」
「むう、でも、そんな大金、アタシは持ってないぞ」
「いや、まあ、タダで良いよ。仕事、ちゃんとやってくれればね」
「むう、本当か?」
「嘘はつかないけど。ほら、作業作業」
「ああ。急かさないでくれ。大工の仕事は焦ってやると怪我をするからな」
「それもそうだな。じゃあ、何かあれば、そこの工房にいるから」
「工房? 分かった」
ひとまず、生産計画はまた夕ご飯が終わった後でもいいだろう。おっと、ヴァネッサは領主の屋敷なんて行きたがらないか。なら、彼女の夕食も作らないと。
「何作ろうっかなー♪」
メニューを考えつつ、ルンルン気分で工房に戻る。
何せ、初大工、技術者が来てくれたからね。
これで出来る事が大幅に増えるぜー。
「さて、今日の俺の食いたいものは…うどん!」
日本人にとって、小麦粉でなじみが深いのはやはり、うどんかラーメンだろう。
昆布だしと醤油のシンプルなのに深い味わいが体を温めてくれるのだ。
って! ああ、醤油が無いんだった。
くそう…。
「うあー…うどんが食えねえって、へこむわぁ」
まあいい。ティーナの屋敷の料理も美味しいし。俺も美味しいハンバーグやフライを作れるようになったし。
「小麦粉で作る料理で、なんかないかな…稲も探したいけど」
米があれば、レパートリーが一気に広がる気がする。
とんかつと組み合わせてカツ丼! カツドゥーン!
焼きめし!
バターピラフもいいな。あ、バターが無いや…。
あとは、カレーライス! あ、カレーが無いや…。
く、アレもコレも材料不足かよ。
まあいい、今ある材料で、一つ一つ地道に、だ。
「うーん…」
思いつかん…。
焼き肉がパッと頭に浮かんだが、それ、開発するような料理じゃないし。
ああ、焼き肉のタレとポン酢が開発要素だな。
それも醤油ベースじゃねえの?
醤油、どうにかしないと。
商人のルキーノに探してもらうよう頼んであるし、味噌を自作中だ。
今は待つしか無い。
「くそ、醤油から離れよう。とすると、洋食か…。洋食の小麦系でパンじゃ無いヤツというと…おお!」
大事なのがあったね。
パスタだ。
イタリアンの筆頭と言っても良い料理を忘れていたとは…パンにこだわりすぎたな。
「ええと、どうやって作るんだろ…あ」
パスタの茹で方は知ってるが、パスタの麺の作り方は知らないや…。
だ、大丈夫。
小麦粉ベースなのは間違いない。
ライ麦や大麦でどこまで行けるか知らんが、似たようなモノは作れるはずだ。
なんなら街から小麦、買ってくればいいし。
小麦系はあるんだ。
とにかく、試作だ。
ボウルにライ麦粉と水を適量入れ(どうせ失敗するだろうから最初は少なめにしておく)手で混ぜる。
コネコネ。
次に、石のテーブルの上にもライ麦粉を少しまぶして、その上で細長くしていく。
「ああ、ローラーっぽいあの棒が必要だな」
名称が分からなかったが、形は覚えているので、ストーンウォールで直径五センチ、長さ四十センチの丸い細長い棒を作る。
ピザもこれで伸ばせば良かったが、あの時は普通に手で伸ばしてしまった。
「これで、細長く…むう、平べったくなるなあ」
なかなか上手く行かないが、俺には熟練度成長速度126倍という切り札があるからな。
三桁に突入するとは思わなかったが、上限は何倍なのやら。
一時間くらい頑張っていると、それなりに細長い麺が出来た。
「ふう。あとは鍋に水を入れてと」
沼から汲んだ水を濾過装置を通して、いったん煮沸したものだ。
俺付きの護衛の兵士に汲んできてもらっているが、なんだか申し訳ない気分。
井戸が掘れないし、水ももうちょっとどうにかしたいんだけどね。
そして、塩をひとつまみ入れて、煮る。
………。
アシスタントのクロちゃんは、今日は木の実集めにお出かけしているのでお休みです。
彼女が側にいてくれるだけで、癒やしだからなあ。
「よし、そろそろいいな」
沸騰したお湯に、先ほどこねて伸ばした麺を箸で掴んで投入。
「んー、煮るのは十五分くらいかな?」
この辺はもう試行錯誤で判断していくしか無い。
「む、まだ生っぽいか…」
五分経過したところで、一本、掬って食べてみたが、生っぽかった。
あと、なんか鍋の水が白く濁って、むう、いけません、これ、溶けてきてるよね?
どうしろと…。
煮えたところで、皿に移して本格的に味わってみるが、何だろ。そばとそうめんの中間みたいな。
これに味を付ければ、パスタっぽくなるんかね?
…いやいや。認めよう。これは完全な失敗だ。
本物と、何が違うのか…。
まず、色が違うな。パスタは黄色だが、これ灰色だし。
黄色?
ハッ!
卵の黄身じゃね?
さっそく、卵を混ぜて作り直す。
「お、今度は溶けないぞ。んんー、香りもそれっぽくなってきた」
七分ほど煮込んだところで、そろそろだろうと、味見してみるが。
「惜しい! でも、これはこれで食えるな」
卵の味が少し強いし、パサパサ感があるのだが、次は卵を減らしてみよう。
「あと、ソースだが、たらこパスタとか、ナポリタンとか、カルボナーラとか、あああ、どれも良いなあ」
海産物のたらこは無いので、ナポリタンかカルボナーラだろう。
トマトソース系は美味しそうだけど煮込む時間が掛かるので、また今度にするか。
消去法で今回はカルボナーラに決定だ。
「材料は…卵、黒胡椒、ベーコン、生クリームかな」
味を思い出しながら考える。
材料だが、卵は村に鶏がいるので問題無い。もちろんブロイラーではなく天然放し飼いだ。
こう言うと高品質に聞こえるから不思議だ。
ブロイラーが何かは俺、知らないけどね!
次に黒胡椒も街で売っているので問題無い。地球の歴史では金と同等の価値があったが、産地が近いせいか、そこまで高くない。
ベーコン…塩漬けの干し肉はあるんだが…むう、この際だ、燻製肉を作ってしまおう。
生クリームも、この際だ、乳牛を飼っちゃえ。
名付けてパスタ・プロジェクト、始まります。
私用メモ
ブロイラー
食肉用の品種のこと。
鶏を二ヶ月半の短期間で成長させる。
歩行困難で、百羽に一羽は心臓麻痺で
死ぬそうです。
デュラム・セモリナ
デュラムと言う小麦の品種。
セモリナとはの粗挽きのこと。
元々黄色で、卵が入っているわけでは無い。
生パスタでは卵を混ぜて作るやり方もある。
薄力粉 …… グルテンの量が少ない(タンパク質7%前後)
パンやケーキや天ぷらなどに用いられる。
強力粉 …… グルテンの量が多い(タンパク質12%戦後)
パスタや餃子の皮などに用いられる。
ライ麦 …… 小麦粉と混ぜてもグルテンの効果が少なく
膨らまない性質だそうで。
パスタには適さないようですが、
ひとまず大目に見て下さい(´Д`;)
新料理長がなんとかします。




