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異世界の闇軍師  作者: まさな
第八章 村長だべさ

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第十五話 緊急会議!

2016/11/23 若干修正。

 よりによって古代竜の子供を拾ってきたミミ。

 どこから連れてきたのか問い質したが、村の近くを散歩している時に、丸い石を見つけて「溶かしてみたら良い感じになるかも!」と思って工房に持ってきたようだ。


 うん、その石、見つけたのはクロで、掘り出したのは俺だね。

 祭壇を作ったあの時だ。


 化石だと思っていたのに、まだ生きていたか。

 ミミの工房は火を使っていて暖かいから、それで(かえ)ったようだが…。

 それまで地中でほっぽらかしになってたのに、インスタントラーメンかよ。


 あの時、埋め戻しておくべきだったなあ。


「私が面倒見る!」


 ドラゴンの子供を背に、両手を広げて俺に通せんぼするミミ。

 強い決意を宿した目だ。


 俺も真面目に言う。


「ミミ、そいつは古代竜だ。成長したら、めっちゃ強くなって、俺たちにはとても手に負えないヤツなんだ。今は可愛らしいかもしれないが、育って暴れて、村の人や俺たちが死んだら、どうするつもりなんだ?」


「そ、それは…そんな事させないし、躾はちゃんとするから!」


「躾が上手く行かなかったら?」


「…その時は、私がやっつけるよ」


 ふむ。ミミはやっぱりしっかりしてるな。


 だが、ダメだ。

 今はまだミミの方が強いし、俺もフォローできるが、コイツが大人になった日には、誰も敵わない強さになる。


 ま、ここはいったん引き下がっておくか。

 いくらなんでも、一日や二日で成体にはならないだろうし。


「分かった。だが、領内でドラゴンを飼うとなると、領主様の許可がいる。それは分かるな?」


「うん。ティーナお姉ちゃんにも、お願いするから」


「ま、それは俺から話してみよう」


「ううん、私が言うよ」


「む、そうか。じゃ、屋敷の方へ行くぞ」


「分かった」


 ドラゴンを大事そうに抱きかかえて外に出るミミ。


「どうされるのですか?」


 クロが小声で聞いてくる。


「隙を見て奪って、どこか遠くに捨てに行く」


「…そうですか」


 沈んだ声のクロだが、反対はしなかった。

 ミミには恨まれるだろうが、これは譲れない一線だ。

 村長として村人の安全は守らなきゃけないし、俺たちのパーティーだってこの近くに住んでるんだからな。

 ミミの安全も第一だ。


 ティーナの屋敷に到着すると、門番が待ったを掛けてきた。


「お待ちを。それはドラゴンではないのですか?」


 よし、頑張れ門番兵士A。


「うん、でも、大人しいから大丈夫だよ!」


「ですが…ユーイチ様、これはさすがに」


 兵士が困り顔でこちらを見る。


「じゃ、仕方ないな。ミミ、ここで待ってろ。ティーナを呼んでくるから」


「分かった」


 ティーナの執務室に向かう。


 ノック。


「どうぞ」


 声は有ったが、メリッサの声だ。こりゃ、ティーナはバリム村の方だろうな。まだ一度もそちらには行ってないが、手広く開墾してるんだろうなあ。

 ま、着任前は俺も村を大きくしてやろうと野心に燃えていたんだが、今は生活水準を上げることで手一杯だ。


「失礼する。お館様は?」


 部屋の中には、思った通り、澄まし顔のメイドしかいなかった。


「バリム村の方へ視察に行っておられます」


「そうか。分かった」


 そう言って執務室を後にし、兵にティーナを含め関係者全員を呼びに行かせた。

 立場としては、俺がバリム村に出向くべきかも知れないが、重大事件だからね。


 門の外でミミと一緒に待つ。


「はい、お手!」


「キュッ!」


 お手をちゃんとするドラゴン。賢そうだ。


「よーし、良い子だね!」


 笑顔でそう言ってから、チラッと俺を見るミミ。


「じゃ、ご褒美だ」


 猫の実を出す。間違っても肉は食わせねえぞ?


「キュ…」


 む、警戒しやがった。賢いなー。


「お兄ちゃん、変な物、仕込んでないよね?」


 ミミも疑ってくるし…。


「してない。ほれ、俺が食っても大丈夫だぞ」


 一口、かぶりつく。うん、美味しい。みずみずしい林檎(リンゴ)味。


「じゃ、頂戴」


 ミミが小さな手のひらを差し出してくるので、渡してやる。


「じゃ、アクア、上手く出来たご褒美! お食べ」


「キュッ! キュッ!」


 今度は喜んでパクついて、口をモグモグさせる竜。

 名前、もう付けちゃったみたいだし、まあいいけど。

 分析(アナライズ)のウインドウはミミにも見せたので、そこからアクアという名前にしたようだ。

 ゴクン、とアクアが飲み込んだ。


「キュッ!」


「ん? うおっ!」


 アクアは猫の実をもっと食べたかったのか、俺のローブに顔を突っ込んでくる。

 結構、力あるな、コイツ。

 あっ、いやんっ、ローブを脱がさないで!


「こら! ダメよ、アクア! めっ!」


 ミミがアクアを引っ張って引きはがす。まだミミの方が力が強いな。 


「キュー…」


 叱られて、うなだれるアクア。


「いい? アクア、そうやって人を襲ったら、アンタはここで暮らせないの。ご飯はちゃんとあげるから、大人しくする。いいわね?」


 ミミが人差し指を立てて、アクアの顔に自分の顔をぐっと近づけて言い聞かせた。


「キュッ!」


 返事をするアクア。返事は威勢が良いが……。


 ふむ、アクアは、まだ俺に期待している目を向けているが、ミミが手を離しても大人しくしている。

 おもむろに、もう一つ、猫の実を出した。

 ピクッと、アクアが反応する。


「ダメだよ。待て!」


 アクアがぴたっと止まった。むう、こいつ、人間の言葉が分かってるのかな。


「よし、良い子だ」


 待てが出来たので、俺も猫の実を出して食わせてやる。

 パクッ、モグモグ、ゴックン。


「キュッ!」


「む、まだ食いたいか。じゃ、ミミ、何か仕込むこと、無いか?」


「そうだね…伏せっ!」


「キュッ?」


「こうするんだ」


 言葉では分からないだろうから、地べたに俺が伏せて実演する。


「キュッ!」


 伏せた。コイツ、頭良いだろ。うーん、だが、余計に危険だなぁ。


「よし、良く出来ました。ご褒美だ」


 パクッ、モグモグ、ゴックン。


「キュッ!」


「ええ? まだ食べたいの?」


 普段よく食べるミミも聞き返す。結構大きいからな、この実は。


「じゃあ、さっき覚えた芸が出来るか、試そう。お手!」


 俺が手を出すと、アクアが手を載せてきた。むう、出来るでござるな、コイツ。

 爪は鋭くは無いが、三本大きいのが付いているので、気になる。残念ながら肉球は無し。


「よし、良く出来ました。ほれ、ご褒美だ」


 パクッ、モグモグ、ゴックン。


「キュッ!」


 む、まだ食うのか。この食いしん坊さんめ。


「じゃあ、次は、何にするかな…」


「ちょっと待って。お兄ちゃん、いったい、いくつ、持ってるの?」


「ああ、あと二つだけだよ。じゃ、残りはミミにもやろう」


「ありがと! じゃ、アクア、これで最後ね」


「キュー…」


 まだ足りないようだ。

 飼うつもりは無いが、飼うとしても、コイツの食費がバカにならないな。まあ、俺ならその辺を探し回れば猫の実を百個くらい、キノコ類も集められるし、余裕だが…。

 飢えて人を襲わないよう、食い物の取り方は教えておくかなあ。


「じゃ、ミミ、ちょっと森へ入って、食べ物を集めよう」


 伝令の兵がティーナを呼びに行って連れてくるまで、まだ時間はある。


「そうだね!」


 森に入って、ミミとアクアに一番簡単で安全なパンキノコを教えてやり、ま、これで腹は膨れるだろう。

 キノコを持てるだけ持ってティーナの屋敷に戻る。


「キュ~、ゲフ」


 直径四十センチほどのパンキノコを丸ごと一個食べたアクアはお腹いっぱいになったようで、その場で横になって寝てしまった。


「ふふ、可愛いねー」


「そうだな」


「ユーイチ!」


「ああ、ティーナ」


 戻って来たか。


「む、それが例のドラゴンね?」


「そうだ。ちょっと、みんなで話し合おう。ミミはここでアクアを見ててくれ」


「分かった!」


 パーティー全員と、上級騎士のリックスとギブソン、それに俺の専属護衛みたいになっているケインが、執務室に集まった。


「じゃ、俺からまず、事情を説明する」


 祭壇を作るときに、化石の卵を見つけたこと。ミミが鉱石と勘違いして持って帰ったこと。

 今のところは、言うことを聞くし、大人しいこと。

 成長したら手に負えないこと。

 全部、包み隠さず話した。


「ううん、じゃあ、やっぱり、可哀想だけど…」


 渋い顔のティーナも、やはり、飼うという選択肢は無いようだ。ま、そうじゃなきゃ領主失格だよ。


「そうね。育ってしまってからじゃ、どうしようも無くなるから、今のうちに始末してしまいましょう」


 リサははっきり言うなあ。


「待って下さい。竜の幼生、それも古代竜となると、殺すと災いとなります」


 クレアが反対した。いつもの笑みが無い。


「ん、子竜を殺すと、成竜が怒り狂って襲ってくるから気を付けろと、師匠も言っていた。文献にも幼生を殺して滅びた王国の記録がいくつかある」


 ミオも言う。

 赤い目をした竜がわらわら来ちゃうのかね? これは迂闊(うかつ)な対応はできないな。


「長老もそんな事を言ってたわね。面倒な物、掘り起こすんだから」


 エリカも言う。

 …俺だって、あんな面倒な物とは思ってなかったんだい。


「すまんかった」


 頭を下げる。


「ユ、ユーイチ様は悪くありません、あれは私が」


 クロが俺をかばおうとするが。


「おい、今は誰が悪いとか、そう言う話じゃ無いだろう。それで、あの竜っころはどうするんだ?」


 レーネが話を戻す。そうだな、アイツをどうするか、それを決めないと。


「そうね。ううん…ユーイチは、育てる自信は無いの?」


 ティーナがそう聞いてくるが。


「無いな。今のところ、お手やら待てやら、指示は聞いたし、人を襲うのはダメだと教えて理解したようだが、基本、猛獣だろ? 大人になってから…」


「待つ。ドラゴンの性格は個体差や種族の差が大きい。古代竜の水竜なら、知能も高いし、大人しいと思う」


 ミオが言う。


「ユーイチ、その辺はどうなん? 分析の呪文で見たんやろ?」


「ああ。性格についての記述は無かったな。凶暴って出るモンスターもいるから、ま、今のところは大人しい性格なんだろう」


「大人しい性格なら、飼って、魚を獲らせるニャ!」


 ドラゴンに魚を獲ってこさせるなんて、普通は思いつかないぞ、リム。


「却下。そんな危なっかしいモノに頼らずに、自分で獲ってくる方が良いでしょ」


 リサが言うが、その通りだな。


「ニャ、それもそうニャ」


「じゃ、他に意見が無いなら、多数決を取るわよ」


 結論を急ぐリサ。


「ううん、そんなに急がなくても」


 ティーナが渋った。


「そんなに良いアイディアは出てこないと思うわよ。捨てるか育てるかのどっちかでしょう。ちょうど今、寝てるんでしょ。なら殺すのは無しにしても、捨てに行くなら都合が良いわ。人里離れたところにね」


 リサが言う。


「捨てに行くのは良いが、監視を置いておく必要があるんじゃないか? ドラゴンの目撃情報が冒険者ギルドに入れば、倒しに行く奴も出てくるだろう」


 レーネが重要な事を言った。そこまでは考えてなかったが、無責任だった…。


「そうね。私としては、ユーイチが面倒を見てくれるなら、しばらく様子見で良いと思うけど」


 ティーナが言うが、不安だなあ。


「デスの呪文は効くの?」


 エリカが聞いてくるが。


「いや、俺の分析結果では、耐性があった」


「む、幼生の頃からボスレベルなんて、生意気」


「エリカ、殺すのはダメよ。さっき、色々と危険な話が出てきたでしょう」


 ティーナが言うが、エリカも聞いてみただけだろう。 

 

「やるとなれば、俺とギブソンでなんとかなるだろう。炎は吐くのか?」


 リックスが聞く。


「いや、ブレスは今のところ、見せてないが、ちょっと出させてみるかな」


 言う。敵の手の内は、知っておかないとな。


「じゃ、ティーナ、仮決定でいいから、方針の確認を」


 リサが言う。


「ええ? 分かったわ。じゃ、育てるか、捨てるかで二択ね。育てたい人、挙手」


 クロ、リム、ティーナ、ミオ、クレアの五人。


「じゃ、捨てると言う人」


 俺、リサ、エリカ、ミネア、レーネ、リックス、ギブソン。


「ケインもどっちか言って」


 俺が促す。


「あ、はい。では、捨てる方に」


「多数決では、捨てる方が多いけど、アンタ達、分かってるの? タダのドラゴンじゃ無いわよ?」


 リサが渋い顔で言う。


「それは分かってるけど…。捨てに行くにしても、場所を決めてからじゃないと」


 ティーナの言うことももっともだ。


「そうね」


「よし、捨てる場所を決めるまで、ちょいとそのドラゴンを見てみようじゃないか」


 ギブソンが言う。みんな好奇心は有るようで全員で、階下に降りる。


「あっ!」


 門の外で待っていたミミが、話し合いの結果を気にしたようだ。ドラゴンのアクアはもう目が覚めたようで、立って一緒にいる。


「ほう、まだ小さいな」


「可愛い!」


「これが本当に古代竜?」


「キュ…」


 人が大勢出てきたせいか、ミミの後ろに隠れるアクア。人見知りのドラゴンなのか、それとも俺たちを警戒したか。


「大丈夫よ。襲ったりしないから。私はティーナ、よろしくね」


 笑顔を見せるティーナ。コミュ力高いよなあ。


「キュッ!」


 安心したか、ミミの後ろから出てくるアクア。チョロいな、お前。


「わあ、よしよし」


 ティーナが近づいてきたアクアを屈んで撫でる。


「ちょっと、ティーナ、気を付けなさいよ」


 何人かに緊張が走ったが、アクアは気持ち良さそうに目を閉じ、大人しくしている。


「なんだ、良い子じゃない」


「ふうん、ドラゴンや言うから、もうちょっと気性が荒いんか思うたけど、ほんまに大人しいな。よしよし」


 ミネアも撫でる。


「あ、私も…」


 クロも撫でてみたかったらしく、チラッと俺を見て確認してきたので、頷く。今のところは大丈夫だろう。


「ふふ、この竜は、良い気にあふれていますね。良かった」


 クレアも撫でてほっとした様子。


「ふむ、そんなに固い鱗でも無さそうだが」


 レーネは撫でつつも、剣で斬れるかどうかを確認中。


「どれ」


「キュッ!」


 ギブソンが手を伸ばしたが、アクアがさっと警戒してミミの後ろに隠れてしまった。


「はっはっ、ギブソン、殺気を出しただろう」


 リックスが言う。


「いや、そんなことはしてないが」


「こうするんだ。おいでおいで」


「キュー…」


 リックスは笑顔だが、アクアはまだ警戒中。


「高位な竜は人の心が読めるとも言います。気を付けて下さいね?」


 と、クレア。あー、そう言うの有るよね。


「むむ。それは手強い」


「おじさん達、変なことするなら、アクアは見せないよ!」


 ミミも通せんぼ。


「や、そんなつもりは無かったが、悪かった」


 リックスが笑顔で謝る。


「ニャ、お前に魚の獲り方、教えてやるニャ」


 リムがアクアに言ってるが、魚、食うのかね? 食いそうだなあ。


「リム、出来ればコイツは、草食で育てたいんだ」


 肉食にしたら、色々、後がヤバいものね。


「ええ? ニャー、残念ニャ」


 捨てる場所が選定されるまでは、俺とミミで責任を持って面倒を見ることにした。

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