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異世界の闇軍師  作者: まさな
第八章 村長だべさ

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第八話 飲み水にこだわる村長

2016/6/25 むう修正。

 セルンの村の農業用水や飲料用水をどうするか、新任の村長(オレ)は悩んでいる。


 毒かどうかの判定にはティーナが持っている王の燭台を使う事にした。


「じゃ、私もちょっとセルンに行ってみるわ。ユーイチの村も見ておきたいし」


 と、ティーナや他のみんなも付いて来た。


「ああ、どこも似たり寄ったりやなあ」


 ミネアが見るなり、そんな感想を漏らしたが、ロフォールの他の村もここと似たような状況らしい。


「ユーイチ、んん? 誰だ、そいつら」


 ネルロがやってきたが、まあ、コイツが無礼なのは仕方ないか。ろくに教育を受けて無さそうだし。


「紹介しておこう。こちらが我らがお館様のティーナ子爵閣下だ」


「むっ。ははーっ!」


 ええーっ? 俺と態度違いすぎじゃん。まあ、こっちは上級騎士だけどさあ。


「そんなに畏まらなくて良いわ。今日は視察に来ただけだし」


「視察?」


「そ。見に来たと言えば良いかしらね」


「ああ」


「それで、問題の水は?」


「む? ああ、こちらです」


 ネルロが家に案内し、桶の水を持ってくる。

 濾過する前の水だ。

 分析(アナライズ)すると…



【名称】 泥水 

【種別】 液体

【材質】 土、水

【耐久】 -

【重量】 5 

【総合評価】 F

【解説】 泥が混じった水。

     病原菌も多いため、飲み水には適さない。



 わあ。Eより下のランクがあったのか。今のところ最低ランクの物質だな。

 ウインドウを意識して全員閲覧可能にする。 


「ううん、こんなのを飲んでたんだ…」


「病気になる訳ね」


「な、なんだ? 文字が浮かんでる!?」


 ネルロが驚いてるが、まあ、初めて見た奴は驚くだろうな。


「ネルロ、濾過した水も持ってきてくれ」


「あ、ああ、分かった」


 昨日、村から帰る前に、濾過するように頼んでおいたが、ちゃんとやってくれたようだ。

 それも分析。



【名称】 水 

【種別】 水

【材質】 水

【耐久】 -

【重量】 5 

【総合評価】 E

【解説】 病原菌が多いため、飲み水には適さない。



「綿と砂で濾過して、これなんだ。まあ、さっきよりは透き通ってるけど…」


「煮たら、飲める思うで?」


 ミネアも煮沸消毒は知っている様子。


「ああ。で、煮たヤツがこれだ」


 ネルロがさらに別の桶を持ってくる。


「ん? ああ」


 みんなが俺を見るので、分析の呪文を使う。

 結果は前と同じだ。


「これなら良いじゃない。濾過装置をたくさん作れば解決ね」


 ティーナがそう言うが。


「いちいち濾過して煮沸消毒って面倒だぞ?」


「それはそうかも知れないけど、水源は、他に無いんでしょ?」


「はい。この近くは全部探したんですが、どこにも…」


 クロがしょげかえって言う。


「ご苦労様。無い物は仕方ないわ」


「でも…」


「ま、別の方法を探そう。じゃ、ティーナ、例のアレを」


「ええ。でも、あなたの呪文でもう安全だと分かってるでしょう?」


「だから俺の呪文より、そっちの魔道具を信用してるんだって。ネルロ、木箱でも板でも何でも良いから持ってきてくれ」


「板で良いのか?」


「ああ」


 ネルロに板を持って来させ、そこに桶を置き、もう一方に王の燭台を置く。


「魔道具が拗ねないかしら?」


 そんな事を言い出すティーナ。


「えっ? いや、大丈夫だと思うが…」


 反応が無いし。今度は、桶を置き換えて、今度は泥水の桶を置く。


「あっ! 光った」


 ぼうっと赤く光る桶。それほど強くは無いが、まあ、毒と判断された。


「濾過して煮沸すれば、大丈夫そうだな。ありがとう、ティーナ」


「ええ」


 王の燭台を布に包んでリュックに戻すティーナ。

 飲み水の方は濾過装置をもっと増やせばいいか。とは言え、水源まで一時間半はきついんだよな。往復で三時間、労働力がそっちに取られちゃう訳で、近場に水場があれば、その分だけ村の収入も上がるはずだ。


「じゃ、もういいぞ」


「む。何か手伝えることがあれば、手伝うけど」


 ティーナがそう言ってくれるが。


「うーん、あ、じゃあ、ラジールのダルクに、ミスリル製のノコギリが作れないか、手紙で聞いてくれないかな?」


 切れ味抜群のノコギリが有れば、楽に板を作れるかも。こんな時、ミスリルを扱うドワーフの鍛冶職人と知り合いだというのはありがたい。ミスリルなら錆びないし。


「ああ、なるほどね。じゃ、街と他の村の分も合わせて、百本くらい、頼んでみましょうか」


「ええ? 代金がもの凄いことになるんじゃないのか?」


「そう? 一本が十万ゴールドとして、金貨千枚でしょ?」


 誰かこの女の金銭感覚をどうにかしてくれ…。


「ちょっとティーナ、アンタのお金は元々、領民の税金なんだから、無駄に使うの止めなさいよ」


 ナイス、リサ。良いこと言った。


「むっ、そ、そうね…」


「街はともかく、村はノコギリは一本もあれば充分だろう。共有して、使いたい家が順に使えば良いんだし」


「じゃあ、二十二本かしら?」


「お館様の分も含めて二十三本よ」


 リサが修正する。


「分かったわ。他に何か頼む物はないの?」


「うん? そうだなあ。金槌は別に鉄製でいいし、耐久力が必要となると、鎌や(かんな)くらいかな」


「じゃ、それもワンセットずつ頼みましょう。後で手紙を書くわ」


「ああ、頼んだ。じゃ、俺はミオと一緒に、板作りをするから」


「木こりがいないんだったわね。一応、町長や村長に、余ってる木こりがいたら、こちらに連れてくるようには頼んでおいたから」


 屋敷で夕食を取るときに、この村の問題点はみんなに話している。他のみんなも薬を持って行った時に親しくなったそれぞれの村の問題点を報告している。


「ありがたいが、木こりが余るって事は無いと思うぞ」


 自分で生計を立てられるし、余った木材は商人に売れる。


「そうね…」


「じゃ、ミオ」


「ん」


「あ、私もお手伝いします」


「おお、ありがとな、クロ」


 良い子良い子。


「フン、私も手伝ってやるわ」


 などとエリカが言い出すが。


「えっ、お、おう」


「何よ?」


「いや別に…」


「ふふ、いいじゃない、エリカが手伝ってくれるって言うんだから」


「まあ、そうだが、どんな風の吹き回しなんだか」


 当のエリカはプイッとそっぽを向いた。ま、暇なんだろうし、コイツの魔法の腕は確かだから、邪険にすることも無い。


 昨日、途中まで切った木のところへ行く。


「あっ! ゴーレム。ぬう、そんな卑怯な手を使うなんて」


 昨日作ったゴーレムがそのままで待機していたが、それを見るなり顔を険しくするティーナ。卑怯って。


「ええ? ああ…別に、ティーナが必要なら、俺かミオで作ってやるぞ? なあ?」


「ん。任せる。ユーイチと勝負」


 ああ、村の税収アップを俺と競ってたんだった。でも、この世界は魔法が普通にあるんだから、使えるモノは使うのが当たり前だよな。


「ホント!? じゃ、開墾に使うから、そうね、千体くらい、用意して」


「おい…」


 地の果てまで開墾するつもりかよ!?


「む、ティーナ、それ、かなり大変」


 ミオもやんわり抗議。


「え? そう? ああ、時間が掛かってたわね。じゃあ、十体でもいいから」


「ん、じゃあ、バリム村に行って、作ってくる」


「おう」


 ミオがティーナと一緒に向かった。

 開墾するのは良いが、種籾も必要だから足りるのかね。ああ、今年は無税だから、やるとしたら今年中がいいのか。後で俺もゴーレムを量産しようっと。やり方はもうミオに教わってるし。…俺の血液で動かなかったら、誰かに頼むか。


 残ったクロとエリカに説明。


「じゃ、この木をまずは半分に割ろうとしてるんだ。こうやって」


 ウインドカッターを唱えて、手本を見せる。


「分かりました」


「簡単じゃない」


 クロとエリカもすぐに唱えて、木を縦に半分に割ることに成功した。


「あとはこうだな」


 メモの呪文で、線を入れていく。

 

「む、綺麗に行かない…!」


 エリカが少し失敗してイラつくが、家の床にする板でも無いし、適当で良い。


「適当で良いぞ。柵を作るための杭板だから」


「ああ。それを早く言いなさいよ」


 途端に乱雑に呪文を浴びせまくるエリカ。一方、左の木に、丁寧にちょっとずつ当てていくクロ。


「こう言うのって、性格がもろに出るよなあ」


「サボってないで、アンタもやりなさいよ」


「おう」


「ユーイチ」


 しばらくして、リサとミネアがやってきた。


「ああ、なんだ?」


「ゴブリンが出たって言う森を索敵して、三十匹近く、掃除してきたわよ」


「ああ、助かるよ」


「でも、こんなに人里近くであれだけの数となると、ちょっとヤバい気がするで?」


「む、そうなのか。まあ、ヒューズの街とか襲われてたよなあ。うえ、この村、守るのは厳しいぞ?」


 塀とかそんな上等なの無いし。冒険者も俺たちしかいない。


「そうだろうけど、昨日、クレアが結界を調べてみるって言ってたでしょ」


「ああ、言ってたな」


 夕食の時に、ゴブリンの話もしたが、それなら、この村の結界を調べると言って、今、クレアは別行動だ。

 通常、神殿や街の四隅や門などに、聖職者が魔石を封じて、魔除けの結界を作るそうだ。結界と言っても、モンスターが全く入れないバリアのようなものでは無く、近づきにくくなるという程度。強いモンスターには効果が無いという。


「それでモンスターが近寄って来んのやったら、ええんやけどな。兵士を常駐させるか、巡回も強化した方がええかも」


「ああ。それは、ティーナに言っておいてくれるか」


「ん、そやね。分かった。じゃ、バリム村かな」


「じゃ、私は他の村も回ってみるわ」


「ああ。リサ、念のため、リムかレーネか兵士、連れてけよ」


 この近くに強いモンスターはいないはずだが、一人で強敵に囲まれでもしたら大変だ。


「分かったわよ」


 リサとミネアが立ち去り、入れ替わりにクレアがやってきた。


「ユーイチさん」


「ああ。クレア、どうだった?」


「それが、この村の結界は、かなり弱っているみたいで。元々、強い結界でも無かったと思います」


「うーん…。クレアは、結界、作れるのか?」


「ええ、大丈夫ですよ。少し、準備が要りますけど。なので、ユーイチさん、明日から手伝って頂けますか?」


「もちろん。じゃあ、クロ、エリカ、明日からは二人で柵の方、進めといてくれるか」


「分かりました」


「フン、ま、やっておいてあげるわ」


 翌日、クレアと一緒に、結界の配置ポイントをまず探る。

 地脈の交わる地点、地中のマナの流れの合流場所が良いという話だが、小難しい事は置いといて、探知(ディテクト)の呪文だ。

 もう万能魔法だよな。ルザリック先生には敬服するわぁ。


「我が呼びかけに応じよ、探し物はいずこや、ディテクト!」

 

 少しでも感度や精度を上げようと、詠唱する。

 ぼうっと、点では無く、エリアで赤く光った。


「向こうだ」


「はい」


 クレアも、感覚で結界の場所は探れると言うが、俺に探してくれと言うので、探している。


「あ、ここが良いですね」


「そうか。じゃ、マーキングしておこう」


 メモの呪文で、×を地面にでかでかと描く。

 それを四カ所ほど、探り当てたが。


「クレア、範囲がちょっと、広すぎないか?」


 村の端っこで良いと思っていたのだが、ずっと離れたところまで来ている。


「そうかも知れませんが、村より狭くてはあまり意味が無いですから」


「まあ、そうだけど…」


「こうやって、村人がカップルで、森をお散歩できる方が良いと思いません?」


 そう言って俺の手を握ってくる積極的過ぎるクレア。


「お、おう、そうだな…」


 え? ひょっとして俺と一緒にお散歩したかったから、わざわざ遠くまで?


「では、次ですけど、ここに祭壇を作りましょう」


「祭壇か。石造り?」


「はい。とーっても、大きいのが良いです。うふふ」


 そう言って、俺から手を離すと、両手いっぱいに円を描いてみせるクレア。


「む、むう、そうか。じゃあ、まず、大きな石を探して、後はゴーレムにやらせるか」


「できれば、形を整えて欲しいのですが…」


「ええ? それはちょっと無理の気が」


「お願いします、ユーイチさん。ダメですか?」


 そんな両手を握って上目遣いとかやられたら。あと、顔がやたら近いです。もう十五センチでキスされそうな距離なんだけど。

 う、うあああー!!!


「よ、よし! なんとかしてみよう!」


「はい、お願いしますね。や、く、そ、く、です」


「えっ、お、おう…」


 安請け合いしてしまった…。


 石の材質は硬ければ何でも良いというので、それを条件に探知の呪文で探し、ちょっと地中深くだが、地下五メートルくらいのところに、二メートル強の石というか岩が四つ、埋まっているのを発見した。

 日が暮れてきたので、今日はここまでとする。


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