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 ー宮廷魔術団・研究室。


 成績優秀、容姿端麗、完璧主義の宮廷魔術団の召喚士、シード・アンバーズは召喚魔法研究に没頭していた。

 十五歳にして魔法学校首席で卒業。通常は六歳から十八歳まで就学。

 そこから王室設立、宮廷魔術団施設に勤務して八年。来月には魔術団筆頭の位を継承する。

 そんな中、シードははるか昔に召喚した『知識の女神』と呼ばれる、召喚物を調べていた。あらゆる、言語。あらゆる、図面、絵画。あらゆる、知識の入った遺物。

 これを生涯の研究とし、解明することに使命を感じている。


 しかし、魔法の量や質のバランスを崩し誤作動を起こしてしまった。

 シードは突如異界にトリップしていた。


「…なんてことだ。」


 奈落の底に落とされて、上も下も分からない。暗闇の中に、沢山の銀の流星が現れる。

そのうち、意識が遠のき手足から血の気が引く。そのまま、目を閉じ闇に消えるー。




「く、くるしい…。な、に…。」

 何か、気持ち悪いし重いし…。

 森蒼子もりそうこー27歳、食品メーカー勤務。週末金曜日、宅飲み中。

 最近、恋愛する気も無く、同僚や後輩からの合コンの誘いも断り家でテレビと晩酌するのが日課になっている。

 気分良く、日本酒を飲んでいたらいきなり背後が重くなる。誰かに寄っかかられ、邪魔なんだけど。

 もしかして、これ、背後霊?!

 以外と質感があるけど…何?

 そっと、脇から見ると、なんか人が寄っかかっている。頭が見えるけど、髪の色が明るい灰色。よく見ると、変な服。

 ちょっと、身体をズラすと完全に仰向け状態です。

 持っていた箸で頭を突く。

 生きてる。

 おばけじゃないのね。

「あのーもしもしー。」

 仰向けの人に声を掛けるも、反応無し。そっと、手を返し脈をみる。規則正しく脈打っている。

 てか、窓もベランダも開いてないのに何処から入ってきたんだろう。

 

「…っく…。」


 仰向けの人が、顔を歪ませ静かに目を開ける。

 不思議な瞳の色ー右がクリアブルーで左が濃紺。色白で、しっかり結ばれた唇は形良い。


「…ここは?」


「あの…帰る部屋、間違ってませんかー?」


 コスプレイヤーがマンションの階を間違えて、私の部屋に入ってきたんだろうな。しょーがないなぁ。

 その人はムクッと起き上がり、周りを見渡す。

「…ここは、何処だ?」

 なんだか睨まれてるけど、ここ私の部屋なんだよね…警察よびますか?

「あのさー。勝手に入ってきて、逆ギレっすか?」

「…失敗したんだ。」

 意味わからん。ケータイを鞄から取り出し、警察に連絡を取る。通話をタッチする寸前、この男にケータイを奪われる。

「…なにすんのよ!!」

「…こ、これは…。」

 ケータイを持って、ふるふる身体を震わす。なんなんだろ、この男。


 歳は、二十代前半?日本人…ではなさそうだけど、日本語だし。

 あれ、結構かっこいい。


「あながち、間違った方向ではないみたいだな。女、ここを拠点にこの世界を調査する。協力しろ。」

「はっ?!意味わかんない。」

「それなりの、報酬は払う。」

「ふ、ふざけないでよ。とりあえず、出て行って!!」

 かなり、長身で押すのに苦労したがなんとか玄関に到達。

 ドアを開け、渾身の蹴りを膝裏に当て崩れた所に背中に再度蹴りを入れ、外に出す。

「二度と来るな!!」

 鍵とチェーンロックをする。


 あ、ありえない。

 ケータイ持たせたまま、追い出しちゃった。覗き穴を見るけど、もういない。

 はぁ…。

 仕方ない。外に探しに行くか。まだ遠くに行ってないだろうし、目立つ格好だしね。

 十二時過ぎ、マンション周りは住宅街で流石に閑散としている。

 薄着でうろつくには、秋の風がかなり冷たい。とっとと、見つけてケータイ取り返さないと。

 

 しばらく彷徨って、遠くに不思議な光が見える。虹色の輝き。

 あの先は小さな公園だけど…行ってみようか。

 足早に向かうと、公園の中心にあの男が立っていた。足元に奇妙な絵や文字が書かれていてそれが虹色の光を発している。

 その光が男の持つ、私のケータイに吸い込まれていく。

「ち、ちょっと!私のケータイ、返してよ!!」

 冗談じゃない。私の個人情報や前の彼氏とのラブラブな時のメールや、その前の彼氏とのちょっとエッチな画像がぁぁぁ。

「なっ。来るな!!」

 足元の光の輪を蹴散らし、勢いよく突っ込み男を押し倒す。

「ぐっ。」

 男に馬乗りになり、手を掴み地面に抑えつける。怯んだ隙にケータイを奪う。

「け、警察!警察よぶからねっ!!」

 私の下で延びている男を見る。

 顔を真っ赤にして、困った顔をして眉をよせている。

 ん???

 なんか、下半身に違和感を感じますが。

「…どいて…下さい。」

 あ、あれ?威圧的な態度が無くなって、なんだか…可愛い。

 視線を外し、バツが悪そうにしている。

 青少年の事情を察し、言葉が出てこない。

「…最近、研究室に…篭っていたので…。クッ…。」

「ケータイ取り返せたから、警察には行かない。とりあえず、彼女にでも慰めてもらってよ。あと、同じマンションなら今後、階を間違わないでね。中で会っても挨拶とかいらないからねっ!」

 帰って飲みなおそう…立ち上がり、元来た道を帰る。

「待って。」

 男に手を取られ、胸元に引き寄せられる。

「…逢いたかった…。」

 はい?

「僕の女神。」

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