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Trillion of Labyrinth 一生懸命癒やします!  作者: 魚介貌
第2話【】
54/69

萌香のアバターメイキング③

インフルでちにそう……

 気絶からモエが目覚めたのは誘拐された小屋ではなかった。

 そして時代も違った。


 先ず時間がやや進み、12歳となった頃である。

 場所は西洋風に良く似たデザインの聖堂風の建物の中。何列も並んで配置される木のベンチの一つに座り、都市国家間を移動布教する巡回司祭の“有り難い”説教途中で爆睡。そして起床。というシチュエーションであった。


 10歳の波乱から今までの流れは、またもダイジェストの記憶として覚えさせられている。


 モエが気絶して後、詳細は分からないままモエは無事助けられ、生家のある街の修道院に預けられていた。『Trillion of Labyrinth』の修道院は宗教色の強い孤児院と同義である。

 そして基本的に教会や修道院は世間の権力からは切り離された“力ある勢力”でもある。なのでモエは両親が他界した後も商売に関係する以外の財産はほぼ失わずに済んだ。

 逆に商館関係の財産の全ては失ったのだが、別に誰かに搾取された、というわけでない。

 これは商売、特に貿易系の商売は動き続けるのが最大の資産であるからだ。設定上大商人であるモエの家は、街全体の利益貢献に多少ならず関わっていた。なので、度重なる襲撃から生き残った番頭や現場行商人を後釜に、街の領主の判断で別の商館として再生させたのである。

 モエの選択の仕方によっては、若き美少女商人としてスタートを切れたかもしれないが、残念ながら冒険者の能力を高め過ぎた結果としては、このようになったらしい。


 が、この処置により、モエは一修道女でありながら初期所持金が10万Gという破格の所持金を得る事となる。


 更に2年の修道院暮らしという事で、神術師ジョブとしてのレベルは1のままなのだが、〈ヒール〉がLv1→3へ。〈ディ・ポイズン〉と〈ディ・モーブ〉がLv1→2へ。とジョブスキルのみは成長した形となっている。

 因みに〈ヒール〉の場合はHPの回復量の増加。〈ディ・ポイズン〉は“毒消去”に加えて“麻痺消去”の効果が。〈ディ・モーブ〉は“スロウ消去”に“バインディ消去”が追加だ。


 神術師に限らず、神の代行者的なジョブの基本は、魔法の種類は少ないが付属される効果がレベルアップ毎に増えていく。という流れとなる。一見便利とも思えるが、同じ魔法は一度使用すると一定時間使えなくなるペナルティーがある。なので、使用のタイミングは案外シビアなジョブと言えるのだ。


 最も、レベルを上げれば同じ魔法を同時複数使える魔法ジョブ必須のスキルが手軽に覚えられる。要はそれまでに“魔法の重要性を学べ”というサービス側の意地わ……配慮なのである。


 他には何故か野盗経由で得た〈影走り〉と〈軽業〉がLv4へと上がっていた。しかもモエの中では最高レベル。そこらへんの成長度合いが腑に落ちないモエである。


(というか、スキル習得した覚えが無いのに……?)


 そんな疑問にまたもヘルプウィンドウか? と思えば、今回はダイジェスト記憶からピックアップ再現される形でモエへと伝えられた。

 それによると、この2年のモエの修道院暮らしは、修道女というよりは下働きに近いものであった。しかし農家育ちでもない子供にできる雑用である。力仕事は不可能に近い。モエの場合は街での知名度が高いのを活用し、修道院と他の機関との連絡要員。つまり“小間使い”として街中を移動する生活だったのだ。


 誘拐、そして人身売買からギリギリ助かったモエがそんな単身行動をして平気かという話だが、街中に限るなら最底辺のスラムであっても安全と言える。


 生成りではあれ見た目は白地の修道衣は目立つ。しかもベールやローブに縁取りされる藍の刺繍は、着る者に対する様々な魔法効果を持っているのだ。公言されているのは、着用者が街中の何時何処に居るかを常時伝えている事。万が一でも誰かに害される対象となった場合は、その犯罪者の特徴を教会に映像として残すというもの。

 そこからは国の施政に関係無く、全国の教会からの報復が始まるので犯罪者には未来が無い事と同然になる。

 しかも非公開の内容を含むと、着用者自身は危険になると同時に近くの教会へと魔法で転送されるのである。犯罪者は襲う対象を得られ無い上に一生を追われ、ほぼ殺される。

 地元に深く根付く犯罪者は非公開部分までを当然知っており、そのリスクから教会関係者を襲うのは禁忌扱いしているわけである。


 とは言え、逆に突発的に発生する犯罪者は知らないのが当然でもある。故にモエも最低レベルの人攫いとは何度か対峙する状況もあり、援護や応援が来るまで逃げ続ける事が経験値となってスキルとして習得する流れになっていたのだ。

 という、過去設定である。


 モエとしては釈然としない過去設定であるが、こうも言い切られるとどうしようもない。


 ともかく。今回は一応平穏なスタートができたと思うモエであった。

 “そんな事無いのに”と、何処かの誰某かに哀れまれているのにも気づかず。


 さて孤児院と言っても、テンプレであるような大勢の万年欠食児童がたった1人のシスターの世話でその日暮らしに明け暮れる。といった街中サバイバルの舞台では全く無い。

 少なくとも複数の都市国家を股に掛ける程度の勢力は持つ教会施設である。座学や基本生活技術を総合的に教え、後に教会勢力の一員として活動できるような、エリート教育機関のようなものである。

 まあ、モエがダイジェスト記憶で得ているのは少女漫画的なローティーンミッション系寄宿学校……といった印象のものであった。


 今日までの2年間は主に座学、算術や近隣諸国の歴史や勢力図を知識として学び、本日から神術師(プリトン)の基礎を学ぶ実技に入る。という状況設定である。

 モエにしてみればようやく始まる本格的なジョブ訓練であり、ゲームらしい展開であった。


「よし、全員揃ったな。では改めてだが、本日よりお前たちは、神術師となるべく本格的な技能と魔法を習得していく。先ずは座学において神術師の何を学んだか、各々思い浮かべよ! いちいち言葉にしての復習はしないぞ!」


 朝の説教の後、一度部屋に戻ったモエ達は、修道女としての制服である無地のローブやベールから麻地のチュニックへと着替えて、修道院裏手の実技用広場へ集合していた。

 聖職者としてはやや筋肉の割合が多くない? な疑問を抱かせるゴツい男性助祭が登場し、モエを含めて平均12~14歳程の修道女達を見下ろして言う。


 何か、何処か? 変だぞ。

 そんな違和感を感じつつも、言われたとおり、だが習った記憶の無い座学を日々を思い浮かべる。するとそれに反応して、現在のモエのステータス欄が展開された。




【キャラネーム】モエ

【種族】ワラビット(小型有袋類系獣人)

【ジョブ】神術師(プリトン):Lv1

【職能】-未習得-


【アバタースキル】(一覧)

 ┣【アクティブ】

 ┃ ・尻尾無双(Lv1)

 ┣【パッシブ】

 ┃ ・複々武装装備可能

 ┗【オプション】

   ・人害補填(新人キャンペーン):Lv-MAX


【ジョブスキル】(一覧)

 ┣【アクティブ】

 ┃ ・神さま助けて(必殺技):Lv1(接・遠)

 ┃ ・ヒール(魔法):Lv3(接・遠)

 ┃ ・ディ-ポイズン(魔法):Lv2(接・遠)〈毒〉〈麻痺〉

 ┃ ・ディ-モーブ(魔法):Lv2(接・遠)〈スロウ〉〈バインディ〉

 ┃ ・晶盾(魔法):Lv1(自)〈D減+1〉

 ┣【パッシブ】

 ┃ ・信仰:Lv2

 ┃ ・献身:Lv1

 ┃ ・影走り:Lv4

 ┃ ・軽業:Lv4

 ┃ ・晶肌:Lv1

 ┗【オプション】

   ・習得経験値5倍(グレード特典):Lv-50制限(1stジョブ)


【装備】(一覧)

 ┣【武器(主)】-無し-

 ┣【武器(副)】-無し-

 ┃

 ┣【防具】┳【頭】見習いのベール(防+1/MP+5)

 ┃    ┣【胴】見習いのローブ(防+2/MP+5)

 ┃    ┣【腕】ウールグローブ(防+1)

 ┃    ┣【腰】-無し-

 ┃    ┣【脚】見習いのサンダル(移+1)

 ┃    ┗【背】見習いのケープ(防+1/MP+5)

 ┃

 ┗【装飾】━【首】手作りのシンボル(信仰+1)




 思ったより変な聖職者にはなってない?

 そんな風に思う事はできるステータスである。


(後衛だって素早く動けるに越したことはない……よね)


 そう考えかけたモエであるが、ふと、知らない間に習得していた魔法とスキルに気づいてしまう。

 〈晶盾〉という魔法は、半透明のスモールシールドを複数個、身の回りに発生させる物でえる。およそ3分間、受けるダメージをジョブレベルと魔法レベルの数値を掛け合わせた分、減少させる効果がある。現状、神術師と魔法のレベルが1なので減少も1となるが、将来的には有益となる魔法である。


 〈晶肌〉スキルは戦闘時において体表面に薄く透明なウロコ状の皮膜を生成していくようになるものだ。この皮膜が1秒間に1枚生成され、ダメージを受けなければ戦闘終了まで累積していく。皮膜一枚でのダメージ軽減はスキルレベルの数値分であり、現状は1軽減できる事となる。このスキルも上手く積層化すれば自分のレベルを遥かに越える大ダメージも無効化できる性能があり、現状から将来にかけて、かなり有用なものと言える。


 親切過ぎるヘルプが勝手に立ち上がって説明されたが、有用や便利以前に、なんでこんな“ダメージ軽減”系の、しかも自分にしか効果がないものを習得していたのかが気になるモエだ。


 が、それも直ぐ納得できた。


「では実技に入る。神術師は献身的な身体が基本! 立派な『肉盾』と成るよう、午前中は“受け身習練”に入る! 全員、拙僧を相手に戦闘状態(かまえっ)!」


(あれ? なんか人間サンドバックですか?)


 そんなモエの疑問のとおり、助祭が拳を振り上げる度に、『グエッ!』とか『ガヒッ!』やらのくぐもった悲鳴が起きて仲間がバッタリと倒れていく。

 間もなくモエ自身も綺麗に鳩尾へと拳を貰い、どんな悲鳴をあげたかも分からない内に、僅かに宙を舞っていたのであった。


 微妙~に、暗転。




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