9.金の成る木
翌日、照りつける眩しい太陽の光で目が覚めた。
真ん中のフスマは開いており、キラキラ光るナギサちゃんの姿が見えた。
起きた俺に気づいて、まるで天使のような笑顔で言った。
「あっ!おはよう!今日も良い天気よ。遊びに行くわよー」
その日から、俺とナギサちゃんは毎日遊んだ。
シュノーケル・釣り・ダイビング・シーカッヤックにボディーボードなど。
自転車で宮古島一周したりもし、毎日が楽しかった。
ハッピーゲストには、途中、仕事で宮古に来たというおじさんが1人1泊しただけで、他にお客さんは無く、ほとんど2人きりだった。
宮古島に来て、楽しい日々はあっという間に過ぎ、1カ月が経とうとしていた…
そんなある日、カズさんがパンパンに膨らんだ大きなビニール袋を持って帰ってきた。
「マンゴー大量に貰ってきたでー!さっき収穫したばっかのマンゴーやて」
マンゴー、聞いたことはあったが生で見るのは初めてかもしれない。
真っ赤な実で、表面がテカテカ光ってるマンゴーが20玉くらいあった。
「うわーマンゴーだぁ、おいしそう!どうしたんですかコレ?」
「近所にマンゴー作ってるおじさんがおってな、これ規格外やからみんなで食べーってくれたんや。早速食べよ」
一気に部屋全体が、マンゴーの独特の香りに包まれた。
カズさんは、手慣れた手つきで、マンゴーの皮を剥いてくれた。
皮を剥くと、中は濃いオレンジ色で、美味しそうな果汁がジュワーっと溢れ出た。
食べやすいようにクシ型にカットしてくれ、3人でワイワイいいながら頬張った。
「う、うんめぇぇぇええ!!」
「いや~んおいしい~、幸せー」
「甘いでコレ!やっぱ宮古のマンゴーは最高やな」
とろけるよう果肉、濃厚な甘みに絶妙な酸味、そして芳醇な香り。
最高だ。究極の果物、まさにフルーツ界の女王だ。
3人は、しばらくおいしさの余因に浸っていた。
食べ終わったマンゴーの皮を見ながらカズさんに聞いた。
「いや~、宮古のマンゴーっておいしいね!感動ですよ。
規格外って、この皮の表面にあるキズのコトですかね?」
「だぶん、それのコトやろなー。こんなん中身に関係あらへんのになぁ。
まだいっぱい残ってたで。明日も貰いに行こか?」
「へーいっぱいあるんだ。これならお金出しても食べたいですね」
「そやな、でもマンゴーはお中元とかの贈答用に使われるらしくてキズもんは売れへんっていいよったなぁ。
今年は大豊作で三万玉あるって言っとたで」
「さ、三万玉!?想像できないな……」
実家のおとうさんとおかあさんにも食べさせたいな。
「コレっていくらくらいするんですかね?」
「知らん、ぜんぜん分からへん。でも高いんちゃうかなー」
値段の想像がまったくできなかった。
分かんない時はグ-グル先生に聞こう。
相棒のレッツノートを取り出し、宮古島マンゴー 値段 で検索してみた。
売ってるお店が、ズラーっと並んだ。
一番上にあった、五越デパートのページを開いてみた。
宮古島産完熟アップルマンゴー 1玉・・・1万円
んん、1玉1万円……??
「た、たっけぇぇぇぇっぇぇええー!!コレ一個1万円で売ってますよカズさん!マンゴーってそんな高いのかよ… 誰が買うんだよこんなの…」
「こんなんが1万やて?ほんまかいなー。コレ20玉貰うたから…20万やな…」
「アラブの石油王くらいしか買えないわね」
グーグル先生は、衝撃的な事実を教えてくれた…
おとうさん、おかあさん、ごめん!買ってやれそうにないよ…