8.それぞれの想い
ナギサちゃんは真っ赤な顔で語り出した。
「もうすぐ龍の門が開いて、アセンションが始まるのよ。
今、時間の流れが、昔に比べて早く感じるでしょ?これはね、
時間の流れが、アセンションが近づくにつれ、飲みこまれていって
そのスピードがどんどんどんどん速くなっていってるの。
そして、遂に次元が上昇し、私たちは次のステージに向かうのよ。
かわいそうだけど次元の上昇に付いていけない人たちは、
息苦しくて、振り落とされてしまうのよ……」
ところどころ、専門用語のような言葉が出てきて難しかったが不思議な説得力があった。
俺は俺で、語り出していた…
「今の内地の人達って、見栄を張りすぎな気がするな。
お隣さんが高い車を買ったから、うちも新しい車を買ったりだとか、
よそのおかあさんがブランドのバックを持ってるから私も買うとか、
回りの目や、評価を、異常に気にしてる。
いいお家に住んで、高い車に乗り、ブランド物の服で着飾り、高級料理を食べる、きっとこういうのが幸せなんでしょ?
でもココじゃ、Tシャツにハーパンにサンダルで、軽トラに乗って、釣った魚を食べる。
こっちの方が絶対幸せだよ。
見栄やお金に支配されすぎな気がする……よく分かんないけど…」
カズさんはハイペースで泡盛を飲み、一番酔っぱらっていた。
「そやで、タケル。よう気付いた!金なんかいらんねん。
食うのに困らんくらいあるのが丁度ええ。
畑でジャガイモ育てて、その辺で魚獲っとたらそれで暮らしていけるわ。
まぁ、でも畑買えるくらいの金はいるなぁ。
ん、畑っていくらくらいするんやろか?
あぁ、結局金がいるなぁ。どないなっとんのやこの世の中は!」
3人は、酔っ払いながら、それぞれの想いを語る。
精神世界の良く分からないことを語っているナギサちゃんは置いといて、俺とカズさんは、人生について結論を出した。
「一生食うに困らないくらい稼いだら、残りの人生を遊んで暮らす…、こういうコトですかね?」
「そうやな、それができたら一番ええけどなぁ。いや、なにが一番ええかは人それぞれやろうけどやっぱお金は必要ってこっちゃなぁ~」
宮古島に来た初日から深い話してるなぁーと思っていた。
「まぁ、そんな話は今日はもうええよ。
とにかくあんたは宮古に来たばっかなんやから、思いっきり遊んで宮古島ライフを満喫しい」
「そうね。タケル、明日は釣りよ釣り。大物釣るわよー」
夜も更け楽しい宴会はお開きとなった。
カズさんは、ハッピーゲストハウスの敷地内の離れにある、小さい小屋に住んでいた。
俺とナギサちゃんは、真ん中のフスマを閉め、男部屋と女部屋に分かれ就寝となった。
寝息が聞こえる程静まりかえった部屋で、今日の楽しい一日を振り返り思う。
2日前まで班長に怒られながら囚人のような生活してたのに、不思議なもんだな。
那覇に着いた時はどうなることかと思ったけど、宮古に来て、宿をココに決めてよかったな、と…