20.夢のクルーザー
俺とナギサちゃん・カズさんの3人は、マンゴーの箱詰めをしながら話していた。
「カズさん、私とタケルが出たから… お客さんいなくなってほんとごめんなさい」
「ええんやで、ここでこうしてバイトさせてもらって逆に助かるわ」
「カズさん、遅くまで手伝ってもらってすいません…」
時刻は深夜2時。まだ箱に詰めて無いマンゴーが大量にある。
意識ももうろうとしていた。
「そやタケル、マンゴー終わったらどないするんや?」
「そうですね、他にもマンゴーみたいなこの島の特産品を通販で売れるといいんですけど」
「あぁ、この島は結構変わったもん作っとるからな。ドラゴンフルーツとかパッションフルーツとか、あと海ぶどうなんかもいいかもしれんで」
「海ぶどう?なんか聞いたことあるけど食べた事ないな…」
「ナギサも一緒にやるんやろ?」
「私もやるけど、まずはマンゴー終わったら、タケルにクルーザー買ってもらって、しばらく海で遊びたいなぁー」
「クルーザー!? ムリムリ絶対買えないよナギサちゃん!」
クルーザーとかいくらするんだよ…、でもいいな、ナギサちゃんとクルーザーでデートとか…
「安い中古のクルーザーやったらたぶん500万くらいで買えるで。そんくらい買ってやりーな社長はん」
「500万!?絶対無理ですよそんなの…、ん?500万かぁ…。実はそんなに無理でもないのかな?」
「いよっ!社長!」
ナギサちゃんとカズさんによいしょされつつ、作業が一段落し、就業となった。
時刻は深夜3時を回っていた…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
注文はどんどん増え、睡眠時間3時間という日が続いた。
マンゴーの収穫はピークを迎え、上地さんの農園は、今日1日で600キロも収穫できたとナギサちゃんから聞いた。
「1日600キロとか…、もうなくなるんじゃないの?マンゴー」
「でもね、まだまだいっぱいあるのよ。今で収穫半分くらいだって」
「まだ半分も残ってるの?すごいなマンゴー…。通帳の口座残高がどんどん増えていってるよ…」
「クルーザー探さないとね!タケル?」
「いやいやいやいや、ちょっとちょっと…」
もはや、儲かる=クルーザーという図式ができあがっていた。
そんな時、テレビから聞きなれない警告音のようなものが聞こえた。
テレビに緊急警報が表示されていた。
【 非常に強い台風8号が 先島諸島に接近中 】
「台風だ…」
「ついに来たわね…」
強さ920ヘクトパスカルの台風が宮古島に近づいていた。




