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【一攫千金?】 宮古島移住生活 -南の島のネットショップ屋さん-  作者: 神道タケル
第1章:旅立ちと出会い
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2.旅立ちはタコ部屋から

 思い立ってから、到着するまであっという間だった。

 飛行機に乗り、たったの1時間半で沖縄の那覇空港に到着していた。


 囚人のような毎日を送っていた俺は「ジャバの空気はうまいぜぇ」と、不敵な笑みを浮かべ、解放感からウキウキしていた。


 まずは、泊まるところを探さなくてはいけない。

 沖縄といえばココ!と呼べるくらい有名であろう国際通りに、バスで向かうことにした。


 バスから見える景色は、良くある都会の景色だった。


(なんだココは…、キレイな海は?ビキニギャルは?永遠と広がるサトウキビ畑は?)


 那覇は想像とはまったくかけ離れた、大都会に見えた。

 ビル・ビル・ビル。どこを見回してもビル。まさにコンクリートジャングルだ。


 予想では、国際通りとは、タイのバックパッカーの聖地「カオサン」のような騒然とした通りをイメージしてたのだが、キレイに整地された都会の一角だった。


 五越デパート……


「なんだなんだ、どういうことだ。俺の地元よりはるかに都会じゃないか!」


 大きなバックパックを背負った俺は、なぜか急に恥ずかしくなってきていた。

 

 一通り国際通りを歩いてみたが、土産物屋が立ち並ぶだけで、なんの感動もない。

 途方にくれていたそんな中、ひとつの看板が目に入った。


【ゲストハウス THE アジア 1泊素泊まり 980円 ↑この先100m】


 ほう…、1泊980円 いいじゃないか。ここで情報を集めよう。

 1カ月泊まったとしても、月3万円なんて、安い。タイ並だな。


 国際通りの路地裏を1分程歩いたところの、せまい雑居ビルの4階にそのゲストハウスはあった。


 人一人しか通れないようなせまい階段を登り、4階までたどり着くと、ロビーというか、商店のレジみたいなとこがあり、スタッフであろうおっさんが立っていた。


 そのおっさんに、簡単な挨拶をすませ、客室を案内してもらった。


 おっさんのいう客室とは、とても客室と呼べるようなしろものではなかった。

 20畳くらいある部屋に、ベニア板で囲ったシングルベットくらいのスペースが2段重ねで、20個くらい並んでおりその狭い空間の一つ一つが客室だというのだ。


 かろうじて、前面に薄いカーテンのような布が掛けてあり、寝顔までは見れないようにはなっている。

 そのカーテンの隙間から、住人の足がチラチラ見えていた。


 まさに、強制労働施設のタコ部屋という感じだ。いやもっと劣悪かもしれない。


 980円。されど980円。

 このタコ部屋、意外にも人気のようで、ほとんど客で埋まってるとのことだった。


 とりあえず、情報の欲しかった俺は、そこに1泊することにし、その狭い空間に潜り込み、バックパックを置いた。


 美しい海に、やさしい人たち。常夏のリゾートに、ビキニギャル…

 ウキウキだった俺の心は、強制労働施設のようなタコ部屋の一室で「もう帰りたいな…」と思う程げんなりしていた。


 いや、ここはここ。とにかく海を見なくちゃ始まらない。

 受付のおっさんに聞くことにした。


「あのーすいません、今日初めて沖縄にきて…。海に行きたいんですけど…」


「はいはい、レンタルバイクがあるよ。1日1000円ね。免許ある?」


 おっさんは、なにか面倒くさそうに言い放ち、はいっコレ鍵ね、っとボロイ原付を貸してくれた。

 くさいヘルメットの中に、那覇の地図が入っていた。


 もうとにかく、1秒でも早く海に行きたかった。


 一番近くに「波の上ビーチ」という、海があるようで、原付でそこに向かうことにした。

 道路は大渋滞。あたりはビル・ビル・ビル。サトウキビ畑はおろか、土すらも見えなかった。

 大渋滞の車の間をすり抜け、20分程走らせたところで到着した。

 波の上ビーチは、怪しいラブホテル街に面したところにひっそりとあった。


 500メートルくらいの長さのビーチに、小じんまりとした池のような海。

 海の上には橋のようなものが架かっており、車がびゅんびゅん走っている。

 後を見れば、怪しいラブホテルが無数に立ち並んでいる。

 しばらくその小じんまりとした海を、ビーチから眺めていた。


 なんだか、理想と現実とのギャップに、目に涙を浮かべていた。

 はたから見れば、もしかするとキレイな海に感動して泣いてるように見えたかもしれない。


(なにやってるんだ俺は……)


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