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街へ

啓が馬車らしき人影を見てから約一時間程で街道らしき道にたどり着いた。


ちなみにこの一時間というのはかなり適当である。

誰ともなしに「そろそろ一時間ぐらいは経ったんじゃね?」といった呟きを、周囲が多分それぐらいだろうと同意しただけのことである。


この一時間という推定が正しいのであれば、成人男性の歩行速度が時速にして約5キロ。

とすると、啓は5キロ先の物体を馬車だと断じれる程度には視力が高く、それは相当に視力がいいということになる。

もっとも、四人は周囲を警戒しながら歩いていたし、それほど長くはないとはいえ草地を歩いていたのだから、通常よりは速度が低下していたことも確かなので、実際は半分程度の2キロぐらいか。


(いや、それでも2キロ先のシマウマを見つけることができる視力が5とかそんなレベルだったような・・・・・・)


そんな特にこの場では役に立つことのない仮定を繰り返しながら武蔵の頭の上にちょこんと乗っている薫。


まともに身動きもとれず、意識が覚醒した当初に比べれば半分程度の大きさになってしまった薫。

サイズダウンに関しては薫の完全なる自業自得でしかなかったが、薫を窮地に陥らせたペナルティとして身動きの取れない薫を運搬する役目を武蔵は押し付けられ、結果として薫は武蔵の頭の上に乗せられていた。


薫は、歩かないでいいのは楽だなと思う反面、動けないことに不満も感じていた。

『動かない』ということと、『動けない』ということの間には薄氷と南極大陸の氷ほどの差があると思う。

だからこそ先程からずっと、どうすれば体を動かせるかを試行錯誤していた。


どうやら、首を回すのと同じ感覚で体を水平方向に回転できることがわかったが、そもそもこのスライムの体、視界が360度ある。

正面を向いていても真後ろが見えるし、上を見ていても下も同時に見えているので、首を回すのは現状ほぼ無意味な行動である。

上下方向にも動かせるので、ゴロゴロ縦回転しながら移動しようとしたが、残念ながら視界がぐるぐる回っただけだった。

首を上下に揺さぶるようにして跳ねて移動しようともしたが、ぷるぷると揺れるばかりで、武蔵の頭の上から転がり落ちただけだった。


そんな薫の努力を、というよりもぷるぷる揺れる非現実的な物体の挙動を生ぬるい笑顔で見つつ、一行は道を進み、そしてとうとう念願の街を見つけることができた。


ようやく最初の街です。

こんなに時間をかけるはずでは・・・・・・

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