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啓の考察

序盤のプロットを初期構想から大幅に変更したので更新が大幅に遅れてしまいました。

次の投稿もしばらくかかると思いますが、長い目で見守ってもらえると助かります。

武蔵の殺スライムキックの衝撃は他の二人にも伝播した。

「ちょ・・・・・・大丈夫か薫!!」

「!!・・・・・・」

慌てて駆け寄るドワーフ、高取陣(たかとり じん

それとは対照的にじっと薫の様子を見つめるエルフ、啓。


人情に厚い人物である陣にとって友人のピンチとは見過ごせない問題である。

まして、今回は命に直結するピンチだ。

もっとも、薫はすぐさま普段と変わらない調子で武蔵に返していたので、見た目ほどのダメージはなかったのだろうとひとまず安心した。


そして啓のほうはと言えば、一見冷静なようでいて実は焦ってはいた。

とはいえ、仲間内から時折『除湿機』と言われる程にドライな性格をしているので、感情を分かりやすく表に出すことは少ない。

他者に対する警戒心や不信感、緊張感といったような感覚が無意識的に働いて心の壁を作ってしまっているためだ。

もちろん例外はあって、薫や陣逹四人でいるときには笑いもするし、笑わせようと冗談を言うこともある。

しかしながら今は非常事態だ。信頼している友人たちも、そしてどうやら自分自身も三十年近く共にあり続けた自らの体がファンタジーな肉体に変化しているらしい。

それゆえに警戒心は普段とは比較にならないほどはね上がり、現状を正しく把握すべく仲間や周囲の状況を観察していた。その結果として状況に対するリアクションが薄くなってしまっていたのだった。

それはともかく、冷静に状況把握を努めた結果、『全員』の身体スペックが向上していることをが推測された。


武蔵だけでなく『全員』だと思ったのにはもちろん理由がある。

武蔵はスライムを一撃で半殺しにしたという分かりやすい結果がでているが、その結果だけでは武蔵が強くなったのか、薫が見た目通りのスライム耐久力だったからなのかはわからない。

啓が見たのは両者の動き。

元々の武道の経験のある武蔵の攻撃動作が素人よりはよほど滑らかなのは当然と言えるが、地を踏みしめて繰り出された前蹴りに乗せられたエネルギーは『武道の経験者だから』では説明がつかないほどのものだった。

人外、とまでは言わないが、一流の格闘家にひけをとらないだろう。本気の武蔵を見たことはないが、おそらくはそれ以上だ。

しかも、それがまるで本気ではないという事実が武蔵の身体能力向上を顕著に示しているだろう。


一方の薫の方も、やられるまでの一瞬の間に見せたあの動きを見るものが見れば、たかがスライムと侮れないのではないだろうか。

あの瞬間、正確に体の中心、すなわち核のある部分目掛けて蹴り込んだ武蔵の足を『核』は確かに回避した。

それはその体が人だった頃に何度か見た、武蔵の顔狙いの容赦のない突き-もちろん加減はしている-を、首の動きだけで避けているときの状況と被るものがあった。

もっとも、うまく回避できたのは核だけで体は半分程吹き飛ばされるという結果になったが。

しかしながら、プロの格闘家さながらの武蔵の攻撃を急所から逸らした反応速度は十分に能力向上を示唆するものだと言える。


陣については.・・・・・・正直なところ、まだ未知数だ。

武蔵や薫ほど明確なものはない。

しかし、背の高さを除けばその姿はまさしくドワーフであり、そう断じる根拠のひとつである筋肉量は、元々ある程度鍛えていた人間の頃の陣と比べるべくもない程に多い。

それでいて、薫にすぐさま駆け寄ったように敏捷性が落ちた訳でもない。むしろ上がっているようにさえ思う。


そして自分自身はといえば、運動能力は武蔵や陣のように格段に上がっている訳ではなさそうだった。

が、『眼』だけは別格だった。

目の前で繰り広げられる光景からいくつもの情報を短時間で見つけ出す力。

素早く繰り出される攻撃を見切る動体視力。

そこから情報をまとめる思考力、ということを考えれば頭の回転も速くなっているのかもしれない。


「ひとまずここを移動しよう。」


そんなことをわずかな間に考えながらも、遠くに-他の三人には見つけられない程遠くに-見える黒い点のようにしか見えない馬車らしきものに向かって

一行を引き連れていくのだった。

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