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クローン  作者: 久乃☆
12/14

12、クローンか幸菜か(3)

 階下でチャイムが鳴った。


 また、新しい良品の私でも来たのか?


 なんて、最近では当たり前になっている異常事態に驚きもせず、そんなことを考えていたら。



「○○です」



 と言う声が聞こえてきた。


 階下からの声だし、相手の声が鮮明に聞こえる音質でなかったせいか、『です』以外は聞き取れなかったのが事実だ。


 母の困ったような声が、階下から聞こえてきたので、私は何があったのかと部屋から出てみた。階段を何段か下り、下の様子を伺う。



「木下尚吾さんは、こちらのご主人様ですか?」



 そう言いながら、声の主はなにやら母に見せてる様子。



「はい、そうですが」


「ご主人から、こちらにクローンがいると通報がありまして」


「主人から?」


「はい。ご主人はご在宅でしょうか?」


「主人は、仕事へ……」



 そんな会話が成立しそうな時に、父親が玄関に立つその人たちの後ろに現れた。この見事なタイミング! あるんだね~、こんな偶然。


 とはいっても、父親は大体決まった時間に帰ってくる。そういう仕事らしい。

 

 らしいとかって、知らないのかって言われそうだけど。はっきり言って、知らない。



「どちらさん?」



 さすがに、興味が湧いてきて、階段を一段ずつ音がしないように下りることにした。


 すると、父親がいつものユルキャラ的な父親ではなく、どこか威厳のある風で立っていた。



「あら、お帰りなさい」



 そう言った母親の声に反応したのか、奥からできの良い私が三人、玄関先に出てきた。


 それを見て、ちょっとは驚くかと思ったら、客人は驚く風でもなく、納得したように頷いていた。



「私、クローンポリスより参りました、長谷川と申します」



 そう言うと、名詞を父親に出している。父親はそれを見て、合点がいったのか、静かに頷き自己紹介なんぞをしてる。



「ご主人からご連絡をいただきまして、遅くなりましたが、本日参りました」



 そう言うと、丁寧に頭を下げた。


 その頭は、見事に光り輝いている。どうやら、天辺だけが光っているらしい。


 それにしても、クローンポリスってなに?



「警察……とは、違うんですか」



 そう! そこそこ!


 さすがだね。私もそこを思ったんだよね。



「警察ですが、今までの警察とは多少分類が異なります」



 どう異なるんだろう?

 

 悪い人を捕まえることが仕事なのが警察だと思うんだけど、それ以外にも警察の仕事ってあるわけ?



「クローン法に準じた事項だけを扱う、と考えていただけば、分かりやすいでしょう」


「はぁ……」


「それで、そちらに並んでいる三人がクローンですね」


「まぁ、クローンだと言い切るのもどうかと思いますが、他人のお子さんであることは間違いないです」



 確かに、私にそっくりだけど、私じゃないわけだし。


 私以外の私そっくりさんなんだから、この家の娘じゃないことは確かだ。


 となると、他所の子となる。


 でも、何でクローンだと断定しないんだろう。



「このオリジナルの娘さんは、ご在宅でしょうか?」


「あ、はい」


 

 そう返事をして、階段に目を向ける母親と私の目が合った。


 しょうがないから、階段を下りて、そっと会釈をしたけど、下りる私の後ろからぞろぞろとできの悪い私が次々と下りて来て、あっという間に玄関はいっぱいになり、居間の方まで溢れかえった。



「……」



 さすがに長谷川さんもびっくりしたらしい。目を丸くしてる。


 本当に驚くと、眼って丸くなるものなんだね。



「え……と。一番最初に下りてこられた方が、オリジナルでしょうか?」



 オリジナル、オリジナルって失礼だね。



「はぁ……多分」



 おい、こら!


 多分ってなんだ! 多分って!



「オリジナルはあなたですか?」



 長谷川のオジサンが私に向かって言ったけど、面白そうなので



「はぁ……多分……」



って、言ってみた。



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