表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クローン  作者: 久乃☆
11/14

11、クローンか幸菜か(2)

 重い足取りで家に帰る。


 希望としては、今までのことが全て夢で、私のそっくりさん達は全て消えている。


 なんて、あるはずないよね。


 あるいは、今までのは長い長い夢でした。玄関を開けた途端に、夢から覚めて、今までの生活が戻ってくる。


 なんてね。


 はいはい、希望です。希望、希望。



 そんなことを思いながら、玄関を開ける。


 開けたくない―――。


 開けると、最近では当たり前の光景が飛び込んでくる。


 狭い玄関に、できの良い私が二人ほど並んでいるのだ。


 もう、出来がいいのもうっとおしくなるほどで、私を見ると眉を寄せて、口々に



「学校はとっくに終わってるはずでしょ」


「どこを道草食ってるのよ!」



 なんて言われるんだ。


 私は意を決して玄関のドアを開けた。


 そこには、想像通り三人の……。


 え? 三人?


 三人?


 昨日までは二人だったけど、また増えたのか……。



「学校はとっくに終わってるはずでしょ」


「どこを道草食ってるのよ!」


 やっぱりね。言うことは同じだよね。



「そんなことばかりしてるなら、あんたの代わりに私が学校へ行くわよ!」


「いーえ! 私が行くわ!」


「何を言ってるのよ。あなた達よりも、今日来た私が一番できがいいんだから、私が学校へ行くのが正当だわ」


「大体、なんであんたみたいにできの悪い子が学校へいって、私達みたいに勉強したい人が家にいるのよ」


「そうよ、おかしいじゃない」


 

 そんなこと言われても、私がオリジナルなんだから、しょうがないじゃない。



「あなたは、二階にいる不出来なあなたたちと同じじゃない。みっともないと思わないの?」



 二階にいる不出来なあなたたち、とは、言わずと知れた、最初の頃に来た私のクローンだ。


 そして、その不出来たちは、私の日常同様、ベッドで寝転び、寝てばかりか、起きていてもゲームをしているか、マンガを読んでいるか。あるいは、太りたくないと言いながら、お菓子を食べているかだろう。


 それにしても、できの悪い私が学校に行って、申し訳ないですね!


 私だって、学校へ行きたくて行ってる訳じゃなんだから。


 これも人間だし、オリジナルだから、しょうがないのよ。


 悔しかったら、オリジナルになればいいじゃない。できればだけどね。



「できる分けないことをそう言う。まさに、子供ね」



 あー! 悔しい!


 そうやって、上からものを言って、バカにするんだから。


 最近では、毎日が苦痛で仕方がない。



「あらあら、お帰りなさい。さぁ、三人とも台所を手伝ってちょうだい。それに、洗濯物をたたむのと、お風呂掃除もね」


「はい、じゃぁ、私が洗濯物をやるわ」


「私はお風呂ね」


「私は台所ですね」



 それぞれが、勝手に分担を決めてるけど。頭のいい連中は、どこが一番楽かとかって考えないらしい。


 もし、手伝いを上の連中にやらせたら、どれが一番楽かを考えて、分担なんて決まらないだろう。


 なぜそう思うかって?


 もちろん、私がそうだからだ。


 でも、おかげで私は何もしなくても、文句を言われなくなったから、その点は感謝してる。




 もしも、私の分身がいてくれたら―――そう考えていた頃、私のやるべき仕事を全部やる人、勉強や宿題をする人がいてくれたらよいと思っていた。


 まさに、今がその状態。


 ただ、思っていたのと違うのは、分身は二人ぐらいじゃまかなえ切れないということ。


 つまり、手伝うことも多いから、手伝い担当だけでも、三人は必要で、その他に勉強担当が欲しいところだから、計四人かな。


 今はできの良いのが三人だから、勉強までは回らない。


 でも、これで勉強まで分担したとして、できの良いそっくりさんはきっと『勉強はじぶんでやるか、もしくは、私が学校へ行くから、あなたは家でダラダラしてなさいよ』となるだろう。


 その言葉を鵜呑みにして、私の学生ライフを分担させたら、どうなるだろう。


 多分、もう私の居場所はなくなり、私のいる必要性は皆無になるだろう。


 なんて、ちょっとかっこよく考えてみた。


 あはは、私らしくない。これも、あの良品幸菜の影響かもね。


 なんてことを考えながら、自分の部屋のドアを開けると、十八人の私が所狭しとダラダラしている。


 見るだけで、うんざりする。


 さすがに、これが日頃の自分だと分かっていても、いい加減許せない。


 ダラダラするのは、一人だから許せるのだ。


 しかも、十八人が六畳一間にいるのだから、その狭さはいまや恐ろしいくらいだ。



「ちょっと! 狭いんだから、あんたたちどこかに行きなさいよ!」



 と言うと、一斉にムッとした顔の私がこっちへ視線を投げる。


 これが毎日だ。


 もう、嫌だ。


 良品の幸菜の態度も頭にくるけど、できの悪いヤツラの態度も腹が立つ。


 出て行け!


 って、思うけど……むやみに放り出すわけにもいかない現状。だって、コイツラは私そっくりで、十八人もの私が外にいたら、それだけでクローンだって分かってしまうじゃない。


 最近じゃぁ、買い物の手伝いまでしてるらしくて、近所じゃ評判の良い子になってる。


 外を歩いていると、『偉いわね~』と言われるけど、何が偉いんだか分からないくて、とりあえず『そんなことないですよ~』と返事を返したけど、後日母親に聞いたらそういうことだった。


 徐々に住みづらくなってきてるように感じるんだけど。


 でも、やってくれるんだから、しょうがないよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ