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クローン  作者: 久乃☆
10/14

10、クローンか幸菜か(1)


 増殖を留めない勢いの、クローン(?)である私の話は、カンナにしてある。


 毎日、どうなった? と聞かれ続けるけど、他に相談できる相手もいないので、事細かに話してるんだけど、なんだか面白そうに聞いてくるカンナに多少の苛立ちを覚えてる私。


 でもやっぱり、しょうがないよね。こんなこと、むやみに友達だからって話せない……話ちゃいけないような気がするんだ。



「とうとう、二十人に達したか~」



 いつもの店で、読む気にもならないマンガを膝に置いて、私はカンナの声をぼんやりと聞いていた。



「まだ増えるのかね~」



 そんなことは製作者に聞いて欲しい。


 これが、私以下のできの悪さなら、誰かのいたずらでしょうからお返ししますって警察にでも言って、きっとニュースになって、テレビ局が取材に来て、私はこの件でメディアに登場して、あげくは芸能界デビューなんてこともあるだろうけど。



「あるわけないじゃん!」



 そんなに笑い転げるか?



「だって、あんたがそれほどの美少女ならさ、あるだろうけど。同じ美少女でも、美が少ない少女でしょ~」



 そこまで言うか?


 お互い様だと思うぞ。



「それに、単なる間抜けってことじゃない。自分のクローンを作られるなんてさ。自分の遺伝子をばら撒いてるってことなんだから、法律違反しちゃいましたってことじゃない」


「法律違反かどうかはわからないよ」


「なんでよ」


「法律が施行される前に、ばら撒いた遺伝子かもしれないじゃない」


「なるほど、考えるね~」



 そりゃぁ、捕まりたくないですからね。


 お縄になるなんて、冗談じゃないよ。



「お縄って、時代劇かよ」



 人事だと思って、大笑いしやがって!



「そんなに怒るなって。これでも、本気で心配してるんだから」


「心配してるというよりは、本気で楽しんでるんでしょ」


「あはは」



 やっぱりね。


 ここは嘘でも、そんなことはないと言って欲しかったね。



「それにしても、どこのどいつだろうね。先生が言っていたように、自分の技術力をひけらかしたい、愉快犯なんだろうけど」


「なんで私なんだろう」


「そこだよね」


「きっと、私がきれいだから。どうせやるなら、美しい人を増やした方がいいってことなんだろうけど」


「そう考えてる段階じゃ、まだまだ大丈夫だね」



 そうでも考えないと、先が心配で仕方がないだけだよ。



「これが一乃上なら分かるけどね」



 そうだよ。


 私だって、これが一乃上なら理解もできる。


 金持ちの一乃上を増やすなら、何がしかのメリットもあるだろうよ。


 それなのに、なんのメリットもない貧乏人の娘を増やしてどうする!



「それで、お父さんとお母さんはどう考えてるの?」


「あの人たちは普通じゃないから」


「普通じゃないのは、あんたを見ればわかるわよ」



 ありがたすぎて涙がでるお言葉です!



「そんな~。褒めてないのに、感謝されても~」



 知っとるわい!



「真面目に、何かは考えてるんじゃないの?」



 確かに何かは考えてるだろう。


 母親の口からは、『いくらクローンでもご飯は食べるから、食費がかさむのよね』という言葉が出てきてるよ。


 父親からは、『娘がこんなにたくさんいて、ハーレムみたいなだ』ってさ。



「娘がたくさんいて、ハーレムって。あんたのお父さん、やっぱり変だよね」



 母親が変なのは知ってたけど、父親まで変だとは思わなかったよ。



「やっぱり、警察に言うしかないんじゃないの?」


「なんて?」


「誰かが自分のクローンを作ったようですって」


「子供が言って信じてくれるかな」


「実際、見に来れば分かることじゃない」


「そうだけど、問題は来るかどうか」


「でも、親が捕まるかもしれないけど」


「なんで?」


「クローンだと推測がついていながら、知らせなかったんだから」


「あ!」


 

 考えてなかった。


 そりゃまずいよね。変な親でも、いてくれなかったら、学費が払えないばかりか、生活が困る。第一、ご飯は誰が作る!



「心配するところはそこ?」



 違うのは分かってるよ。でも、それが一番だと思うよ。



「マジで親不孝だよね。こうなると、親がどの幸菜を残すかが見ものだ」



 え?


 私に決まってるじゃない。私がオリジナルなんだから。



「そうとは言えないよね。親だって、お手伝いをしてくれて、勉強してくれて、バイトも頑張るような良質な子供のほうがいいわけだし」



 それって、一乃上勝利のような金持ちだけの問題じゃないか?


 やっぱり、オリジナルこそがわが子だろう?



「今のクローンはオリジナルと同じようなもんじゃない。どこが違うって? だとしたら、別にオリジナルじゃなくても、良質な子供のほうがいいじゃない」



 ……。


 やめてー!


 やめてあげてー!


 幸菜ちゃん、可哀相すぎる!



「そんなことを言ってるから」



 笑うカンナ。


 これが自分だったら、笑えるか?



「自分だったら、心を入れ替えるから、捨てないでってすがるわよ。それで、クローンを排除してくれたら、全てを水に流して、今の私を押し通す」



 最悪だ!


 最高の詐欺じゃん!



「それが子供でしょ~」



 将来は詐欺師だな。



「あるいは先生に相談するとか」


「そうも行かないような気がする」


「まぁね。相談しても、一般的な判断しかくださないだろうし。私たち若者の気持ちになって解決はしてくれないだろうね」



 結局、先生に言えば、他の先生にも分かっちゃって。生徒にも広がって、面白おかしくいじられて、生徒の親にも広がって……。



「一躍、有名人じゃん」



 そんな有名人にはなりたくないわぃ!



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