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クローン  作者: 久乃☆
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1. 流れる時代

「時代の移り変わりを感じるわね~」



 テレビのニュースを見ながら母が言う。その声は楽しそうに聞こえた。



「なんで?」



 テレビでは、今騒がれているクローンについてを報道している。


 高校生の私たちにとっては、別段目新しい話題でもなく、クローンなんてどこにでもある話だ。


 クローンの牛や豚なんて、普通にスーパーに並んでいるのだから。


 ということで、私はそんな母に聞いてみた。一体、ニュースのどの部分に時代の移り変わりを感じたのか、妙に興味をそそられたからだ。

 

 なんでそんなに興味をそそられたか。それは、母という人が元々変な人だからだ。人が思うようなところでは何も感じないのに、人がスルーするところでやたらと感じ入る。


 例えば、木に登ってネコの世界を共感するのだと、真面目に語り、真面目に木に登る。


 庭に咲いている花を切って花瓶に生けるなんて可哀相だと言いながら、花屋で切花を買ってくる。


 飼っている鶏を殺すなんて残酷だといいながら、焼き鳥をほおばる。しかも、やたらと旨そうに食べるのだから、何も言えなくなる。



「ん~? だって、お母さんが若い頃もクローンってあったけど、クローンの牛を作っても体が弱かったりして、量産にはむかなかったものよ~。ところが、今の技術はすごいわよね。ほんの少しの遺伝子で、クローンを量産できるばかりか、作れば作るほど良質なクローンを作ることができるなんて。しかも増産できちゃうわけだから。どんどん、お肉が安くなるわね~」



 最終的には肉が安くなるからいいという。この辺が母の母たるところだろう。


 父は、そんな母の言動を笑顔で聞いている。読んでいる新聞から顔を上げて、母を見てはニッコリと笑っているのだ。


 こんな間の抜けたような女のどこが良くて結婚したのだろうと、父の頭の中を調べたくなる。


 以前、父に『お母さんのどこが良かったの?』と聞いたことがあった。


 応えはいたって簡単で『見ていて飽きない』だった。


 確かにね。どんなお笑い芸人だって、母には負けるだろう。



「牛や豚を量産できるのはいいが、最近の技術では人間も作れてしまうから怖いね」


「そうねぇ。でも、作ろうと思っても高くて作れないから~」



 え? そこ?


 今の会話の中心的部分って、そこじゃないんじゃないの?



「そうだねぇ。貧乏人には作れないだろうなぁ」



 はぃ?


 そんな返事でいいの?


 毎度のことだけど、うちの両親の会話ってぶっ飛んでる。



「ねぇ、お父さん。もし、私が死んだらクローンを作って、また私と結婚してね」


「そうだなぁ、じゃぁ宝くじを買ってみるか」


「そうか~。まずはそこからになるのよね。死ねないわ~」



 いやいや、死ねないとかって事じゃなくて。死んじゃダメでしょ。


 死なれたら、私は誰にご飯を作ってもらったらいいのよ。



「でも、簡単に良質の人間が作れる技術は、いいようで悪いからな。政府はそこを危惧して法律の整備をしているらしいね」



 あぁ、知ってる!


 簡単に作れるって言っても、もちろん頭の良い技術者じゃないと作れないけど、逆に言えば頭の良い人なら作れるわけで。


 で、そういう人がお金目当てとかで、クローン人間を作り出しちゃったらどうなるか?


 例えば死んでしまった子供の代わりなら、気持ち的には分かるけど。ぐれちゃった子供とか、病弱な子供の変わりに、良質なクローンが欲しいから作ってください。なんてことになったら、日本は終わりだろうって話。


 それって、神への冒涜だとかって政治家が言ってる。


 ここ大事ね。


 政治家が言ってるわけよ。


『神への冒涜』って。


 別に宗教を信じるのは構わないけどね。神様だしてくるのってずるくない?


 まぁ、そんなこんなで簡単に人間を作ったらダメですよって法律をつくろうって事だよね。


 当たり前すぎる話なんだけど。



「クローンねぇ。家でも簡単に作れるようになるといいわね」


「え! なんで?」



 真面目に驚いた。


 そんなことしたら、政府がダメって言ってる事を、やっちゃうことになるじゃない。



「だってぇ。そしたら、お肉のパック買わずに豚を丸ごと一頭買って、それでクローンを作れば、もう肉は買わなくてもすむじゃない。経済的よね~」



 ちょっと待て!


 お母さんは、飼ってる鶏を殺せないって言ってましたよね。


 それなのに、豚は殺せるの?



「え? あら~ そうよね」



 そう言って笑ってる。


 やっぱり、天然過ぎる。



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