現代版パラレル魔女狩り
どうも、お久しぶりです。林羽夢と申します。現在、pixivやツイッターで細々と活動中です。
今回は、ツイッターで書いた魔女狩りのお話をそのまま修正なしで転載してきました。そのため三点リーダーの使い方が間違ってますが、そこを許せる心の広いお方がいらしたらお読みください。
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さて、そろそろ始めましょうか。少しだけ残酷描写あるので、苦手な方はご注意を。
立ち上る黒煙と、夜空を切り裂くような甲高い悲鳴。磔にされた親友のつま先が熱によって変形していく様を、ミハルは黙って見つめていた。
「許して!許して!お願い!」
親友の口から溢れ出す、乾き切った謝罪の言葉。何度も、何度も、彼女は声を枯らした。自分は無実だと。魔女ではないと。
燃え盛る女の周りに集まった村人達は、平然とした様子で携帯を取り出し、カシャリとシャッター音を鳴らしては、ネットへ画像を載せている。ミハルも自分の携帯電話を取り出した。
カシャリ。軽い音が鳴った。慣れた手つきで画像を保存し、他の人同様、一文とともに世間へそれを公開した。
『アイツが処刑されてるなうw』
軽いな。ミハルは自分で書いた文を眺めてそう思った。それでも、そこに寄せられるたくさんのコメントとお気に入り登録の通知に、思わず顔が綻んでいく。
今この国では、これは日常的な儀式である。何か悪いことをした人間は、魔女として処刑される。当然だ。
ミハルはコメントへの対応に追われる指を一度止め、もう声もなく泣き出した親友を見据えた。
いい気味だ。あんたが悪いんだ。私の男を盗んだ、あんたが。
ミハルは独り言のようにつぶやくと、もう一度携帯電話を親友へ向けた。けむりでぼやける画面の中で、拡大した親友の顔を切り取る。
いつまでも見ている時間はない。ミハルは鼻の曲がるような腐臭に背を向けて歩き出した。
「ミハ…ル…ミ…ハ……ル…」
刹那聞こえた低く恐ろしい声に、ミハルは歩みを止めて振り返る。炎の中から、親友が虚ろにこちらを見つめている気がした。
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昨日までは綺麗に晴れていたのに、その日は分厚い雲が空にかかっていた。昨日、村の広場で見た光景が、未だにカズヤの頭から離れない。
チトセの滑らかな肌が地面へしたたり落ちていく。整理された顔が、次第に散らかっていく。
シャッター音、笑う声。カズヤは一人で耳を塞いだ。
あの優しいチトセが、魔女狩りの対象になるとは。あの地獄絵図を目にしたカズヤは、焼かれている魔女が自分の彼女であることを、最初のうちは肯定することができなかった。よく似た誰かだろう。そう思っていた。いや、思いたかった。
カズヤはベッドから身体を起こすと、SNSを起動した。
昨日の魔女狩りについて、たくさんの意見が飛び交っている。どれもみな面白がっていて、カズヤは携帯電話の画面を叩き割りたい衝動に駆られた。この画面の向こうの人達も、魔女狩りと無関係ではないはずなのに、なぜこうも平然としていられるのだろう。
一週間前に同じような書き込みをしていた自分を棚に上げ、カズヤは腹立たしさを抑えきれないでいた。
こんなものを見ていても仕方が無い。チトセの遺体を埋めに行こうか。と、携帯電話をしまおうとした時。昨晩に投稿されたらしい、散らかった彼女の泣き顔の画像が目に入った。
カズヤは携帯電話を両手で持ち直し、画面に鼻を付けるようにしてその画像の出元を辿る。
『ミハル』という人物に辿り着き、カズヤは肩を震わせた。ミハル…この名は、偶然か、チトセの前に付き合っていた女の名と一致している。
カズヤは貪るようにして『ミハル』の書き込みを読み始めた。
「ああ、ああ…」
その声は、自然と漏れたものだった。驚愕とも、落胆とも、はたまた安堵ともとれる声。『ミハル』の書き込みには、チトセに対する多大な嫉妬が込められていた。
カズヤはベッドから飛び出すと、魔女申告所へと走った。
ミハル、お前だったのか。チトセを俺から奪った魔女は!
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立ち上る黒煙と、夜空を切り裂くような甲高い悲鳴。磔にされた自分のつま先が熱によって変形していく様を、ミハルはじわじわと感じていた。
「なんで!私が!違う!」
開いた口から溢れ出す、乾き切った免罪の言葉。何度も、何度も、ミハルは声を枯らした。自分は無実だと。魔女ではないと。
視界が悪い。煙のせいか、涙のせいか、夜の闇のせいか。断定する思考力など残っていなかった。ミハルはただ叫び続けた。声がなくなっても叫び続けた。
カシャリ。重苦しい音が鳴り響いた。見ると、ぼんやりとした人影が、ミハルへ携帯電話を向けているようだ。一人じゃない。何人も。
その中で、ミハルは彼の姿を見つけることができた。一瞬視界が回復し、カズヤの姿が鮮明に映る。
カズヤ…カズ…ヤ…。大好きだよカズヤ…。あなたなら私をわかってくれる…私が魔女じゃないと証明してくれるはずだよね…。なんで携帯電話を私へ向けるの?カズヤ…?カ…ズ…ヤ…?
ミハルの呼びかけも虚しく、カズヤは携帯電話をしまうと、くるりとこちらに背を向けた。
「カズヤ…!カズ…ヤ…待っ…て…」
ガラガラの、醜い声が口から漏れた。その声が届いたのか、おもむろにこちらを振り向くカズヤ。
その目には、微小な笑みが称えられていた。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
今後も時々こういう形で投稿したいと思いますので、よろしくお願いします。




