5.涙の河
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こいつう、騙したな!!めらめらと怒りが、込み上げてくる。私は、女を押しのけて、高瀬の襟元を掴みながら、睨みつけた。
高瀬は狼狽して、眼を泳がせている。しどろもどろにへげへげ何かを言おうとしていた所、私は、女に突き飛ばされた。
「痛っ!何すんのよ。」
今度は、女が、高瀬を締め上げている。
「弘樹、一体どうなってるのよ。」
「・・どうなってるも、こうなってるも、こんな奴、知らないよ。
俺は、あゆか一筋だぞ。この前の女だって、ストーカーだって言っただろ。
この人も、ストーカーじゃなのか??」
はあああああ??!!!
女は、私を振り返った。
「あんた、ストーカーなの??弘樹につきまとったって、無駄よ。
弘樹は、あゆかの物なんだから。
警察を呼ぶわよ。」
「あゆか・・。愛してるのは、おまえだけだ。」
私はと言うと、あったまにきすぎて、体がわなわなと震え出した。
「ふざけんじゃねえよ!!ばかにすんな!」
私は、ポカリのペットボトル等が入った袋を、思いっきり高瀬に投げつけた。
「っぶっ!!」
よっしゃあ、顔面ヒットオオオ!!
そして、日本語だかなんだかわかんない言葉を散々わめき、高瀬の部屋を出た。高瀬は一度も私と目を合わさなかった。
マンションを出たら、急に涙が込み上げてきた。
浮かれて。
はしゃいで。
・・・私、ばかだ。
通りに、バイト先の明かりが見えた。
混んでる。店長達、がんばってる。
あ!!谷川。まだいた。私は、店に近づき、外から、立ち読みしてる谷川の目の前に立った。誰かと話したかった。
谷川に気付いてもらえるように、そっと、窓を叩いた。
谷川は、私の存在にすぐ気付いたようで、驚いて、外へ出て来てくれた。幸い、店長達には気付かれなかったみたい。
「・・・どうしたんだよ。」
泣いてる私を見て、谷川は、驚いていた。
「谷川・・、聞いてよおおお。」
うえ〜ん、と、泣き出しそうになる私を押し止めて、谷川が、ここじゃ目立つから、あっちへ行こう、と、近くの公園を指した。
そして、谷川は、私をなだめながら、自分の自転車を引いて、公園へ向かった。
私は、涙ぼろぼろになりながら話した。谷川は、私と一緒になって、高瀬のばかのことを、怒ってくれた。
「実はさ、篠田が帰った後、マンガを読んでたら、店長と、夜勤の人の話が聞こえちゃって・・。
高瀬は、女の子を漁る為にあそこのコンビニでバイトをしていたみたいだ。あいつは、金持ちの本命の子がいて、住むとこも世話してもらってるみたいで、金には不自由してないらしい。
本当は、バイトなんてしなくてもいいんだって。どうも、他からも貢がせてるようだぞ。
今日も女の子の事で、きっと仮病を使ったに違いないって・・・。」
私は、少し冷静になり、あんな男を見抜けなかった、ヘボい自分が情けなくなった。心底落ち込み、下を向いて、大きくため息をついた。
「そういえば、篠田、電車だろ??そろそろ帰らないと、やばいぞ。」
「そだね・・。」
私は、抜け殻のようになって、歩き出した。魂は、夜空のお星様になってしまったわ。あそこで輝いてるお星様かしら。
・・・疲れた。こんな時でもこのテンションの篠田美来。17歳。O型。
谷川も付いて来てくれた。谷川、今日は、やさしいな。いい所ある。いつも、憎まれ口ばっかで、ごめんね。こんな時に一人にしないでくれて本当にありがとう。
私は、気が抜けて、ぼ〜っとしてしまった。魂は、まだどこかへお戯れになっているらしい。お〜い、はよ、帰ってこおい。
高瀬の下衆のせいではなく、自分のばかさ加減に、ほとほと呆れ返ってしまった。あんな男に騙されて、有頂天になっていた自分がナサケナヤ・・。
暗い夜道、星もあまり見えない。とぼとぼ歩いている内に、駅に辿り着いた。
「谷川、送ってくれて、本当にありがとう。
あんた、実は、いい奴だったんだね。」
谷川は、穏やかに笑った。
「気付くの遅えよ。こんないい男、他にいないぜ。」
私も笑った。
「調子に乗り過ぎ。」
それから、谷川は、真剣な眼差しになった。
「・・・俺にしときなって。」
「またあ!!!何、冗談言ってるのよ。」
私は、更に笑った。
それにつられて、谷川もふっ、と笑う。
「ははは、やっぱ、ひっかからねえか。」
谷川は、頭をかいた。それから、
「じゃあな、・・・さよならだ。」
と、私をじっと見た。
「うん、今日は、本当にありがとう。あ、谷川!!谷川の話って何だったの?」
「ああ・・、ま、それはもう、いいや。」
もう、深夜0時近い。
「本当?私の話ばっかりごめんね。また、月曜に話そう。」
「そうだな・・。月曜に・・。」
谷川は、一瞬、ものすごく、寂しそうな眼をした。
「谷川?」
「何でもない。おやすみ!!」
そして、自転車にまたがり、立ち去った。
私は、谷川のお陰で、気持ちがすっと楽になった。もし、あのまま一人で居たら、泣いて泣いて、泣きまくっていたかもしれない。
谷川に、俺にしときなって、と言われた時、本当は、どきっとした。でも、笑いで隠した。きっと、精神が不安定だから、あんな冗談を真に受けそうになってしまったに違いない。でも、冗談でも、有り難かった。
なんか、お礼をしたい、と思い、私が思いついたのは、『蒼天のドラゴンと孤高の魔法剣士』を、日曜中に読んじゃって、月曜の朝一で、図書室に返却するぞ、ということだった。
谷川に早く渡さなきゃ。それに、布団に入ったら、いろいろ考えちゃいそう。物語に没頭しよう、何にも考えたくない。
私は、家に帰り、時々居眠りしながら、物語の、残り3分の2を、読破した。
次話で、多分最後となります。
そして、谷川目線のお話を1話投稿したら、完結となります。




