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4.ついに

翌々日の土曜日、夕方。


バイトの日がやって来た。あれから、高瀬さんとは、電話やメールで毎日のように、やり取りし合って、気まずいのは、なくなっている。だけど、大学の方が忙しいらしくて、会う事は出来ないまま、1週間経ってしまった。


今日は、やっと、会えるよ!!!らんらんら〜ん。


でも、勤務に入った直後、


「高瀬には、辞めてもらった。」


と、店長に言われた。驚き!桃の木。山椒の木。ブリキに。タヌキに・・・!!


「何でですか??だいたい、店長どうしているんですか。


私は今日、高瀬さんと2人勤務のはずですよね。


土曜日のこの時間に、店長がいるなんて、珍しくないですか?」


「・・高瀬が、急に体調を崩したから、休みたいって言い出したものだから、急遽、出勤になったんだよ。


このまま明日の午後まで、ぶっ通しだよ。」


「え〜!!高瀬さん、具合が悪いんですか??」


「あいつは、いつも急に休んだり、バックで女の子に電話をしたりしていて、他の夜勤連中からも、苦情が多かったんだよ。


次に突然休んだら、辞めてもらうって約束だったから、本人も、しょうがないってわかってると思うよ。」


高瀬さんが、辞めちゃったなんて!!ショック大き過ぎ!!!


でも、お昼位のメールでは、全然そんなこと言ってなかった。それに、休んだり、辞めることになったりしたのなら、教えてくれればいいのに。


・・・急に体調が悪くなって、私に連絡出来ないのかな??


私は、何より、高瀬さんのことが心配だった。メールしてみようかと思ったけど、向こうから何にも送って来ないって事は、眠ってるのかも。下手に今起こすより、後で、差し入れを持って、部屋に直接行ってみよう。


そして、その日は、店長のぼやきを聞かされながらの夕勤になった。


「はあああ、また、今日も寝れないよ。最近、心臓がぎゅっとなるんだよ。


この生活、命を縮めてるんじゃないかと思うよ。」


「そんなこと、ないですよ、店長。


お金を儲ける為には、それなりの努力も必要だって、テレビで言ってましたよ。


でも、心臓は、恐いから、一度、診てもらった方がいいですよ。」


「そうだなあ、病院行ってみるかな。


だいたい、高瀬の事も、本来は、こちらから、無理やり辞めさせる事はできないんだよ。


話をちらつかせたら、あいつから、辞めるって言ったんだ。


他の夜勤連中の手前、休んでばかりで居ずらいのもあったんだろうな。」


「・・・。」


私には、夜勤の男衆の世界はわからないので、何とも言えなかった。


それより、ともかく、高瀬さんから、話を聞きたい。出来れば、店長や土曜の夜勤のお兄さんに謝って、辞めたくないって言って欲しい。私は、早く終わんないかなあ、と時計ばかり気にしていた。


夜9時半頃。この時間にしては珍しく、お客さんが誰も居なくなり、店長は、発注の為、バックヤードに入って行った。


あと、15分だなあと、ぼんやり思っていたら、谷川が、肩を上下させて、はあはあと、荒い呼吸をしながら入ってきた。


「どうしたの?谷川??


何かあったの??」


谷川は、私を見て、ほっとしたように、


「何でもない。」


と、脱力しながら言った。


「どうしたのよ。」


「本当、何でもない。」


そして、私を見て、にこにこしている。谷川、変なの〜。


私が首をかしげていたら、無糖コーヒーを持って、つかつかとカウンターへ来た。


「珍しいじゃん、立ち読みしないの??」


「急いで来たから、喉が渇いた。立ち読みは、どうしようかな。」


勝手にお金を置いて、缶を開けて、ごくごく飲み始める。


「店内で、飲食するな。店長に怒られちゃうじゃん。」


「もう飲んだ。」


しれっと言い、空缶を私に手渡す。


「早っ!もお、外のゴミ箱まで持ってきなさいよ!!」


と、言いつつ、私は受け取った。なんか、今日の谷川の様子が、変だったから。


「谷川、本当にどうしたの??」


なんだか、調子狂う。いつも、何を考えてるのか分からない所のある谷川だけど、今日は一段と訳が分からない。


「篠田、この後、時間ある?」


「ごめん、今日、高瀬さんがお休みしてて、心配だから、行って見ようと思って。」


私は、谷川の事が気になったけど、今は、高瀬さんが倒れてないかの方が、更に心配だった。


「そっか・・。」


谷川が、何とも言えない微笑で答えた。


「ごめん、来週、学校で聞くよ。谷川、あんまり思い詰めない方がいいよ。


山下君とかに聞いてもらってる??」


「山下には話した・・。」


その時、ピンポーン、との、いつもの音とともに、団体のお兄さん達が、がやがややって来て、話は中断した。


「・・やっぱ、読みたいマンガを立ち読みしてから帰る。」


谷川は、雑誌コーナーへ行ってしまった。


ごめん、谷川。月曜に、教室へ行くから。


心の中で、手を合わせた。それから、私が退勤するまで、怒涛のようにお客さんが続き、店長と、勤務入りの夜勤のお兄さんとで、わたわたと対応した。


帰りまで、谷川とは話すチャンスはなく、私は立ち読み中の谷川に、


「じゃ、月曜にね!」


と、声を掛けて、お店を出た。





それから、急ぎ、高瀬さんのマンションに向かった。一応、お店を出る時に、おかゆと、栄養ドリンクと、ポカリスウェットを買ったので、それを持って、マンションの階段を上がって行った。


そして、チャイムを鳴らす。


高瀬さん、大丈夫かな??と、思っていると、がちゃっと扉が開き、私より年上の、髪の長い、きれいな、女の人が出て来た。


・・・あれ??


女の人は、私を見ると、眼を怒りで燃え上がらせ、ぎっ、と睨みつけてから、部屋の方に向かって怒鳴りつけた。


「弘樹!!あの子の他にも女がいたのね!!」


はい???目をぱちくり。


それから女の人は、何か喚きながら、どずどすと、奥へ行った。


ピン!ちょっと、高瀬!!どういう事なんだよ!!私も、遠慮せず、どしんどしん、と入って行った。


「高瀬!こら、どういうことなんだよ!!」


更新できました。

開いて下さり、ありがとうございます。

次話は、「涙の河」です。

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