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学園の戦夜

四時間後、

風呂の湯船に浸かって疲れた顔をしている緋路実がいる。

特研の校舎には、風呂場が有るのだ。

少し小さめの銭湯ぐらい、結構な広さの浴場だ。

訓練洞窟を造る際の掘削で温泉が沸いて出てきたのだ。

もったいないからとそのまま風呂の湯に使っている。

緋路実の横で俺(紫乃)も湯船に浸かっている。

「感想は?」

と、俺は緋路実に聞く、

「難しかった」

と、落ち込んだ顔をしている。

「自分の考えている一割も動けなかった」

「姫左羅祇流の想定外のシチュエーションだものね、向こうもこちらをうまく分断したし」

「あの女、松村っていう奴、古流の使い手か?」

「いいえ、ただ、そういう相手を想定した訓練を積んでるわ」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「貴方は今回のトレジャーハンティングでは自分の出来る事、出来ないことをよく理解して行動することが必要よ、なまじ古流をやって自信が付いていると、想定外のことに対応できないから」

「経験談、か?」

「まあね」

がらっ、

「おわっ!!」

鏑木が腰にタオルを巻いて入ってきて、驚いていた。

「わりい!、入ってたのか!」

混浴なのだ。

普通は水着なり湯浴みタオルを着るんだが、

今の俺(紫乃)と緋路実はすっぽんぽんだ。

脱衣所の服じゃ戦闘服だから、男が入っているのか女が入っているのか、

解からなかったんだろう。

「ああ、気にしないで、もうすぐ出るから」

「いや、しかしあんたは良くてもその娘が‥‥‥‥‥」

「あ、いやオレも気にしない‥‥‥その‥‥田舎の風呂が混浴だったから」

と、緋路実が言う。

確かにあまり恥ずかしがっていない様子だ。

「そ、そうか‥‥‥‥」

こういうときに動揺するのはどっちかと言うと男のほうである。

俺(紫乃)達の方を気にしながら、向こうの湯船に入っていく鏑木、

こういうチャンスなんだから、堂々と同じ湯船に入りゃあ良いのに‥‥‥

‥‥‥そういや、なんでかな?、

男が入ってきたときにあまり気にならない。

女の時もムラっと来なくて残念だったが、

男が入ってきても別段平気だ‥‥‥‥‥‥‥‥

自分のに慣れてるせいか?

それとも元々女ってのはそういう生物なのか?

考えてみりゃあ、オバタリアンなんぞ平気で下着姿で人前に出てくるが、

これってば普通の女の恥じらいを無くした状態なのだろうか?

まあいい、

俺は、これから、緋路実をミッションにある程度使えるように訓練をつけなきゃならんから。

ミッションまで二週間、放課後は毎日訓練だ、と言われたら、

彼女はうええ、とうんざりした顔をした。



二週間後、


作戦当日

藤崎学園の深夜----

俺(紫乃)と、緋路実、

影鮫早月、鞍馬実耶子、

菱摘恵美奈、

エルナティス・ゼロイア、

棚橋瑞恵、

倉田悠乃、

これだけが揃っていた。

「結局、みんな参加するのね‥‥‥‥」

と、俺(紫乃)が言う。

俺と緋路実は特研の戦闘服、

早月と実耶子は、影鮫家特有の戦闘装束(くノ一を色っぽくした様な格好をイメージして戴きたい)

恵美奈は大体俺(紫乃)と同じような格好、(ただし何やらでかい火器と怪しげな機器を持っている)

エルナティスは、普段着のまま、

瑞恵はメイドの格好、

悠乃は日本の武道家といった装いである。

まったく、色とりどりというか、まとまりが無いと言うか‥‥‥

「それでは、行きましょう」

と俺(紫乃)が言うと、

「どこへ?」

と、緋路実が聞き返す。

まだ彼女には告げていなかったのである。

「この学校には、ある条件を満たさないと行くことの出来ない、『世界』があるの、例えば越智苑学園の特研には、見つけだした『お宝』を保管し、研究する広大な秘密基地があるけど、おそらくこの学校の『世界』もそういった場所につながっていると考えられるわ」

「条件?」

「早月様?」

彼女は俺に向かって頷くと、

「他の娘達には、条件を伝えたわ」

「どうなさるおつもりで?」

彼女は、おおよそこの場所と雰囲気にそぐわない『にかっ』という笑いを浮かべると、

「準備よろしい?」

と、彼女達に言う。

「では、私から」

と、菱摘恵美奈は、戦闘服の電子装置を操作する。

ブン!、

と、振動が走ると、彼女の外見に、

まるで被さるように別の映像が被さっていく。

あっという間に、彼女の外見は男のそれになった。

「光学迷彩服の技術の応用による外見操作」

説明する彼女の声も、電子変声機で男のものになる。

つぎは、と倉田悠乃が出てくる、

彼女は懐から一枚の大葉を取り出した。

その葉っぱには、なにやら墨で呪文が書き込んである。

彼女は、それを自分の頭に乗せた。

手で印を組み、

「オン・マハー・ダーキニー・スウァーハー」

と、言った瞬間、

彼女の姿が薄れ、

再び、像がはっきりした時、

それは男のものになっていた。

貴恒三郎きつねさぶろう派密法・変化の術」

「僕はもう終わっている」

振り向くと、

何時の間にか男の姿になった姿のエルナティスがいた。

「もともと、外見の性別は自由に変えられるんだ」

「あたしは-----」

実耶子は

「そっちの術は、得意じゃないから、私はこうさせてもらうわ」

早月が懐中電灯をつける、

自分に向けて、

わずかに出来た影に、

するっ、

潜り込んでしまった。

--これで、私は早月様と同じということになる--

「なるほど」

「では、私」

瑞恵が、アルター・グロウズ派の符呪を幾束も取り出し、

ふわりと、放り投げる。

紙束が、くるくると、空中を舞い、

彼女に降りつもり、彼女の体に、次々と張り付いて、

彼女のからだが符呪で完全に覆われると、

符呪が形を変え、人の姿に変わる、

それは、男の姿であった。

「なるほど、流派それぞれね」

「‥‥‥‥なあ、どういうことなんだ?」

さっぱりわからない、という表情の緋路実が俺(紫乃)に向けて聞いてくる。

「彼女達の術には驚かないのね」

「ああ、一応自分の家も『裏側』とは少しだけ関係があるから、知識としては知ってるんだ‥‥‥それより、これと条件とどういう関係があるんだ?」

さて、俺の正念場がやってきた。

「条件は、外見の性別と、自分の魂の性別が逆転している、ということよ」

「‥‥‥えっ」

さっ、と緋路実の顔が変わる。

「貴方は、仮性半陰陽‥‥‥生まれつき外見の性別は男だったけれど、中学卒業間近に、検査で女性である事が判明、本来の性別に戻す事になり、学校も遠くの藤咲に入学、人生のやり直しを図っている‥‥‥違う?」

「‥‥‥な、なんで‥‥‥‥」

よろ、と、緋路実がよろける、

「一応、私も、そして早月様も同類だから」

「同類?」

「他の四人が男に外見を偽装したのは、自分の魂が女だから、だけど、私と早月様は必要ない、それが答え」

驚愕の表情で俺(紫乃)と早月を見る緋路実

「本当に‥‥‥‥俺と同じなのか?」

緋路実が、他の人間に軽々しく『特研』の秘密をばらさないと俺が踏んだのも、

そして、足を踏み入れたら引き返せない『冒険』を前にして、

まるで少年のように目を輝かせたのも、

俺(紫乃)の着替えで顔を赤らめたのも、

鏑木が風呂に入ってきても、顔色を変えなかったのも。

全てそのせいだ。

「早月様の『思い人』の写真を見たわね‥‥影鮫龍鬼‥‥‥実はそれが早月様の本来の姿」

「‥‥‥行方不明、というのは偽情報だったのか」

「‥‥‥え~と、その執事の格好は、瑞恵さん?、そういうことよ」

「私は現在早月というバイオドールの中に魂を入れて生きているわ」

早月の方を見て驚いた顔をする緋路実、

「バイオドール!?、血肉をもった『人形』は、もう作れる人間も、稼動する機体も、動かせる人形遣いも、殆どないって聞いたのに?」

なに?、

「早月様、それは私も初耳ですが?、それに以前、影鮫以外で作られた機体を見ましたが」

「調査したらね、最近、表のクローン技術を人形造りに転用して、血肉を使ったものを研究し出した組織が出てきたらしいの」

なるほど、この前のバイオドールはそれか。

「話を戻すわ、私の魂も、女性型バイオドールに入った男のものよ」

俺(紫乃)の言葉に彼女の驚愕はさらに大きくなった。

「じゃ、ここには最高レベルの『人形使い』が二人もいるって事か‥‥‥」

「実はね、私や紫乃だけじゃ少し心許なかったの」

と、早月が言う。

「私や紫乃の身体は、あらゆるメディカルチェックをすり抜けるけど、天然物じゃないし、あとの連中は一種の幻でそれをやっている、完全な天然はあなただけなのよ」

「俺が首を突っ込むのは最初から仕組んでいたのか?」

早月は首を横に振る。

「いいえ、この学校には貴方と同じ種類の人間が何人かいるのよ、どれも特殊な経歴、才能の持ち主ばかりね、その中の冒険好きな一人が首を突っ込んでくれれば幸い、でなければ手持ちのカードでなんとかするつもりだったわ」

「‥‥‥俺と、同類?」

「紹介は出来ないわ、私も誰がそうなのか、解からないから。」

「唯一特定出来たのが、貴方なの」

「‥‥‥‥まいった」

「さあ、行くわよ」

と、俺(紫乃)は、校門の鍵を出す。

「どうやって手に入れたんだ?、それ」

「あ、ちゃんと校長の黙認もらってるから」

「‥‥‥‥校長も、グル?」

俺はにっこりと緋路実に笑うと、校門の鍵を開ける。

ごごごごご、と重々しい音がして校門の扉が開く。

「さあ、ダンジョンへの道が開いたわ」

踏み込む、

「ね、なんかさ、夜の学校って、昼間とは全然違う感じがしない?」

と、緋路実が漏らす。

「今夜は特別よ、良く校舎を見てごらんなさい」

「え‥‥‥?」

あっ、と緋路実が声を出した。

ようやく気がついたようだ。

「鉄筋コンクリートの校舎が大理石製に変わってるわ」

「お、大きさも違ってみえるけど。」

「そうね、隣の時計塔と比較して‥‥‥いつもの7倍(当社比)って所かしら?」

「‥‥なんで‥‥‥」

「これが、『条件に適合した人間に開かれる世界』ってやつだと思うけど」

校舎の扉に到達する。

大理石製の、巨大な扉が立ちはだかっている。

「小人になった気分ね‥‥‥」

「重そうだな」

棚橋(男バージョン)と菱摘(男バージョン)がつぶやく。

「こう言うときこそ最新のバイオドールの性能の見せ所よ」

早月の言葉に頷いて、俺(紫乃)は扉に手を掛ける。

ず‥‥‥‥‥ずずずずっ、

「すっげ~馬鹿力」

と、緋路実がつぶやく。

正面入り口の扉が開いた。

中は真暗、

「さて、鬼が出るか蛇が出るか‥‥‥‥」

目が慣れると、まるで古代のギリシャ神殿のような造りになっていた。

その暗がりの中を、もそ、と蠢く黒い影。

「あら残念、黒巫女でした」

と、早月が言った。




がた、がたがた、

ばんっ!、

と、棺桶を開いて、俺は起き上がった。

げほ、ぐ、ぐほっ、

息苦しさで咳き込む、

首には、すさまじい激痛---の、記憶、

「お目覚めですかな?、鬼太君」

静かな、しかし、緊張感を伴わせた、越智園校長の声。

声のほうを向くと、

校長と、藤咲学園の校長、碑瑠乃津紀代がいた、

「‥‥‥‥あんた、なんでここにいる?」

「政道さんから、今夜は藤崎に居ると危ないと教えてもらったの」

ぱん!、ぱぱぱぱぱっ!

「銃声?」

「黒巫女がこちらにも攻撃を仕掛けてきましてな、まさか、こちらにも来るとは思いませんでした」

校長が、厳しい顔で答える。

彼の手には、サブマシンガンが握られている。

碑瑠乃の手にもだ。

「生徒は?」

「特研の生徒のみです、一般生徒は全て帰宅しています。部活もクラブも含めて。」

「大事をとって、校内ワックスがけを業者を呼んで行なうという題目で、とうぜん藤咲もですわ」

「それより、鬼太君は何故目覚めたのですかな?」

そう、本当なら俺は、紫乃の身体に入って藤咲学園の別世界で宝捜しの真っ最中のはずだった、

ぎり、と俺は唇を噛み、搾り出すように言った。

「紫乃が‥‥‥殺された」

「‥‥‥‥殺された?」

「赤松美冴だ、あいつの技量、紫乃や実耶子を超えてる、」

「闇鮫の人形がですかな?」

「人形の身体はすぐに再生されるが、コントロールしてる魂は外れっちまう。、俺の油断も、そして紫乃を使い切れない部分もあったと思う」

ずき、

むう、と呻いて首を押さえる俺、

「首を切り放された」

「完全に、切り落とされたと?」

「完全に分断されることは無い、特殊な『鎖』が体内に埋め込んであるからな、しかし、一時的に命を断つには十分だ」

俺(鬼太)は少し脚をふらつかせながら立ち上がる。

「君の武器はロッカーです」

「ラジャー」

俺(鬼太)はロッカーまでふらつきながら向かい、

自分の銃ホルダーと、強化銀製のナイフを身に付ける。

「一つ尋ねますが、今、紫乃はどうなっていますか?」

「‥‥‥‥駄目だな、完全にリンクが切れちまった」

「ということは、眠りに着いたバイオドールが一体、というわけですか?」

「ああ、それも、闇鮫家特性の超高性能のが、だ。」

「それを、敵が操ったらどうなりますか?」

「考えたくねえな、しかし俺が操っても、影鮫の中級の『使い手』と互角以上にやりあえる、本来の使い方である『浮遊霊の詰め込み』やられたら、とんでもねえ事になる」

「対策は?」

「俺がもう一度、紫乃を操り返す」

「出来るのですかな?」

紫乃の性能を押さえ込んで、俺がもう一度乗り移る、

「俺だけだったら、まず、無理だわな‥‥‥早月がいれば、なんとか」

「では、お行きなさい」

碑瑠乃がドアの前でサブマシンガンを構えて言う。

「お宅らはどうする?」

「学園と生徒を守るのも、私達の仕事です」

「同じ蟻江音学園都市の生徒ですからね‥‥‥貴方が目覚めれば、ここを守る必要はありません」

そうか、俺を守っていたのか。

「すまない、行かせてもらう!」

俺はこの部屋のダストシュートの横にあるスイッチを押すと、

穴に向けてに身を踊らせる、

万が一のための、リフト装置も兼ねているんだ。

ごうっ!、

強烈なモーターの力で、ダストシュートから一気に地上へ出る。

ばんっ!、

校庭の端の煙突ダミーから、一気に空中へ飛び出す俺、

「黒鮫っ!!」

知っている声が俺の耳に飛び込んでくる。

「鏑木さん!!」

彼は黒巫女に押さえ込まれ、剣を突き立てられようとする寸前で、

必死に相手の手を押し返している所だった。

そっちにむけて、両手のサブマシンガンの銃口を向ける、

ダダダッ!

三点バーストで、黒巫女が吹っ飛ぶ、

じゅう、と黒巫女の顔の肉が溶け、

中から、醜悪な魔族の顔が出てくる。

「なんだあこりゃあ!!」

と、鏑木さんが驚いた声を出す。

「美人だからって、躊躇してたんだが、中身はこんなんか!!、畜生!!、だましやがって!!」

「相変わらずですね、師匠」

ひょい、と片っぽうのサブマシンガンを、我がサバイバル術の『師匠』に向けて放る。

彼はそれを軽くキャッチして、後ろに向ける。

ダダダッ、

三点バーストで、三人(?)の黒巫女を簡単に打ち抜く、

普通、一人に三発、後の二発を外しても一発が当たれば良いはずのやり方で、

きっちり一発で一殺する腕は、俺にはとても真似できない。

「まあな、呪文弾のカネはいいのか?、弟子。」

「一応、今回のスポンサーは影鮫家です」

予備弾倉も二つ、投げる。

「んじゃ、遠慮はいらねえな」

「ナイフは?」

「破魔の効果のある奴なら自前のを持ってきてる」

「了解」

彼はサポートが必要なら言う、

言わないってことは、俺は別に行動して良いってことだ、

さっさと彼に背を向けて走る、

ダダダッ、

ぎゃうっ!、

ぐぎゃあっ!、

びぎいっ!、

俺の真横に飛んできた三つの黒い影が、吹っ飛ぶ、

俺がサポートするどころかサポートされたか。

死んでも敵に回したくない相手だ。

そのまま、俺は、校門の出口に向かって全力疾走する、

くそ、いつもよりスピードが遅い、

紫乃の時に首を斬られたショックが効いてるらしい、

走っていく方向に、わらわらと、黒巫女が立ち塞がる。

サブマシンガンを乱射する、

乱射する、

乱射する、

くそ、きりがねえ!!

あぶれた黒巫女が一人、俺に斬りかかる、

左手で破魔呪文を刻んだ強化銀のナイフを抜き、

ぶしゃっ!、

斬り飛ばす、

黒巫女の、緑色の粘液が服にかかる、

「うえ!、くっせーっ!!」

どん!、

「ぐっ!」

右脇腹に、重たいブローが来た!、

瞬間的に、呼吸法で辛くも受け切る。

「‥‥‥おい、てめえ、頭身が変なバランスになってるぞ?」

目の前に立っている黒巫女は、

既に表面の偽装が溶け、手長のゴリラみたいな格好になっている、

「どうでもいいが、その醜悪な容姿で巫女さんの衣装はやめてくれ」

ぎしゃあっ!

ゴリラ巫女さんの連撃を避け、

ダダダダダッ!、

と、撃った呪文弾は‥‥‥‥全部よけちまった!!、

くっそ~、人間の形を止めると、本来のスピードに戻るのか!

ぶん!、

あぶねっ!!

俺は地面を転がって避ける、

きしゃーっ!!

なんの!、人間型なら!!

じゃがっ、とドラム弾倉を入れ替え、

サブマシンガンを連発する、

更に十数体の黒巫女を倒す、

よっしゃ、あとは‥‥‥‥‥‥‥‥

回りを見回すと、のそり、と動く4つのでか黒い影

ぐるるる、と、いや~な唸り声を発してやがる。

「‥‥‥‥冗談だろ、人間型を解除したのが4体もいやがんのか‥‥‥」

サブマシンガンの残弾は‥‥‥‥ゼロ、

いや、どっちこっち俺の腕じゃあ、こいつらには当てられねえ、

覚悟を‥‥‥‥決めるか!

だっ、

気力を溜め、瞬間的に、開放、

一気に、足長の股下をスライディングで抜ける。

ふんっ!、

閃光弾を後ろに投げる、

一瞬の景色を頭にたたき込んで、目を閉じて一気に走る。

追いつかれて背中をやられるかもしれんが、

一気に学校の外に逃げてやる!、

おそらく校内と外は結界で隔絶しているだろうが、

内ポケットに隠している魔術師ウォーレンの特製『守護水晶』があれば、抜け出られる、

そうすれば、逆に外には黒巫女どもは追いかけてこねえ、

閃光の燃える時間を計算して、目を開ける、

校門まで、あと10メートルっ!!

ごがっ!、

「うぐっ!!!」

背中に、強烈な衝撃を感じて吹っ飛ぶ、

そのまま地面を転がって、

土まみれになって上げた顔の上には、

足長野郎(黒巫女だから女郎?)が静かに、

しかし、獰猛な笑いを浮かべている、

なろお!、邪魔すんな!!、

踏みつけてくる足を、地面を転がりながら足を旋回、

逆立ちするようにして、更に足を振り回し、

片方の足をは地面に付けて、

もう片足を、突き刺す槍のように、長足に向けて放つ!

俺がぱくった、42式格闘術の技!、

がんっ!!

痛てーーーーーっ!!!

こ、こいつ、同じ術を返しやがった!!

ぼぐっ!、

「ぐあっ!」

さっき打たれた右脇腹を、思いっきり蹴られた、

再び、ごろごろと、地面を転がされる俺、

なんとか、手を付き、立ち上がる‥‥‥‥‥‥

‥‥‥‥‥‥‥‥‥

あちゃー、こりゃあ、肋骨の5~6本いっちまったか‥‥‥‥

蹴り返された右足にも、ヒビが入ってるらしい‥‥‥‥

もう校門まであと少し‥‥‥‥‥、

ここから、外に出られるか‥‥‥‥‥

ぞくっ、

「‥‥‥‥なんだ?」

殺気だ、

急激に大きくなっていく、

一体誰だ?、新しい敵か?

殺気の出所は校門の方だ、

その殺気に、長足の黒巫女も、

後を追いかけてきた、残りの人外の形と化した黒巫女も、

そして、俺も、

完全に動けなくなった、

殺気の主は、実耶子だった。




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