隣の子
僕の一番の親友である君に、このことを話したことはなかったかな。
彼女は同じ年で、笑顔がとても幼かった。そのことをよくからかったものだ。彼女はいつも僕の隣にいて、無邪気に僕を見つめるのだった。僕らはとても順調だった。お互いに幸せを感じることができたし、この幸せはずっと続くものだと思っていたものだった。彼女と離れてしまったことを、僕はとても後悔したし、そのことで、追い詰められたりもした。僕はやばかったんだ。だから僕は、彼女と新しい関係を持った。
今は離れて暮らす彼女は、僕の心の中ですぐに現れる。そして相変わらず、僕の隣にいて、じゃれてくる。目を閉じれば、いつでも彼女の声を聞くことが出来たし、横を見れば、僕の隣で僕にいたずらをしようと企んでいる、笑みのこもった彼女の目を見ることが出来た。僕の頭がおかしいって、きっと君はそんなことを考えたんじゃないかな。たとえ君が僕の親友じゃなかったとしてもだ。
僕に見える彼女や、僕に聞こえる彼女の声はイメージなんかじゃない。そんなのは、アイドルオタクのやることだ。僕のは、そんなもんじゃない。彼女と会うとき、いつも心が満たされる。昔、彼女といた頃には感じなかった、新鮮な気持ちだ。テレビで米国映画のコマーシャルを見たとき、僕は彼女を誘ってみた。「私も観たかったの。また一番大きなポップコーンを買おうね。」彼女は幼い笑顔で答えた。
僕らはとても順調だった。そう、ある意味ではね。当たり前じゃないか、と君は思うかい。でもそれは君が、全てが僕の思い通りにいくと考えてるからじゃないかな。それは、イメージなんかじゃないんだ。時には意見がぶつかって喧嘩することだってある。でも喧嘩って、付き合ってれば当たり前のこと。次の日には、僕らはいつもの僕らに戻っていた。僕が君に、「今彼女はいない。」といえば、君はそう思っただろうし、もし「彼女がいる。」と言ったとしても、君は僕を疑うことはしなかっただろう。僕は付き合っているフリをしていたのではなく、付き合っていたのだから。「いい加減、昔の女は忘れろよ。」周りの友人たちは決まって僕にこう言うんだ。「忘れる?今も隣にいるのに?」なんて言ったら、友人はどんな顔をするかな。僕だって、今の関係が続くとはおもっていない。ただ、これは必要なことなんだ。僕はおかしくなっちゃいそうなんだ。
僕はよく、彼女を助手席に乗せて車を走らせるのを好んだ。僕が運転する隣で眠っている彼女を見ているのが好きだった。僕は彼女を起こさないように、ゆっくりとブレーキをかける。気がつくと目を開けてじっと僕を見ている。しかし、温もりの残っているうちに、彼女はまた眠りに落ちる。僕は手を伸ばして後ろの席から上着をとり、彼女にかける。
この話が、現実のことか、僕の頭の中のことか、君は判断しようとするだろうね。君は少し考えて、ぼくにこう質問する。
「じゃあ新しい恋人ができたら、二股だな。」
僕はこう答える。
「まあ、最初はね。」