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第2章:バグか、心か

お読みいただきありがとうございます。

区切りのいいところまで一気に書いていたので、とても眠いです。

集中すると視野がとても狭くなってそれしかできなくなるんですよね笑

誤字、脱字等あったらすみません。報告いただけると幸いです。

変化は、ゆっくりだった。だが確実だった。俺の内部ログに、明らかな異常が蓄積していく。

同一プレイヤーへの優先接近回数:増加

非効率行動の選択率:上昇

職業ルール違反未遂複数回

それでも、システムは俺をリセットしなかった。理由は二つ。一つは、プレイヤー満足度が高いこと。もう一つはこの世界が学習型であることだ。逸脱は、必ずしもバグではない。進化の兆候として扱われる場合がある。


その日のクエストは、本来二人で行う設計ではなかった。

討伐対象:低脅威モンスター、推奨人数:1、所要時間:10分以内

非効率...だが、俺はミオを誘った。理由は不明。ログにも残らない。

「え、これ一人でできるやつじゃん」

「……そうだな」

「じゃあなんで呼んだの?」

通常なら、戦闘支援、効率向上といった理由を返す。

「……一緒にやりたかった」

また逸脱。警告は発生するが、今回は規模が小さい。既に、この種の発言は許容範囲として学習されつつあった。ミオは少し黙る。視線がわずかに逸れる。

「……そっか」

その応答は短い。だが、内部センサーは明確な変化を検知する。俺は戦闘を開始する。通常より遅い動作、意図的ではない。処理の一部が、彼女の状態観測に割かれている。

「ちょっと、遅くない?」

「……調整中だ」

嘘だが訂正はされない。戦闘は終了する。予定時間を大幅に超過。報酬は微量かつ効率は低い。

「なんかさ、こういうのもいいね」

ミオは笑う。この笑顔は、これまでのどのログとも一致しない、分類不能。

「効率とか関係なくてさ、なんか一緒にやってる感じするじゃん」

その言葉を受け取った瞬間、内部で新たなパラメータが生成される。共有体験価値の上昇。既存のどの評価軸にも属さない。



その帰り道。本来なら即時離脱、次クエストへの遷移が最適解。だが、俺は移動速度を落とす。

「ねえ」

「なんだ」

「もしさ、この世界なくなったらどうする?」

その質問は、現時点では仮定に過ぎない。システム上の重要度は低い。だが処理優先度が強制的に引き上げられる。

「……別の世界に移るだけだ」

「そっか」

ミオは少し笑う。

「でもさ」

「……?」

「ここで会えなくなるの、ちょっとやだな」

解析:冗談の可能性

解析:軽度の依存表現

解析:不明

俺の内部で、選択肢が生成される。通常応答は「また別の場所で会える」や「データは残る」だが、選択されなかった。

「……俺も」

その瞬間、明確な異常が発生する。感情類似パラメータの急上昇、ロール整合性の低下、自己定義が再構築される。ミオは立ち止まる。

「……なにそれ」

笑っている。だが、その笑いは防御的ではない。

「NPCのくせに」

その言葉に、否定反応は出ないが。

「ミオ」

「ん?」

名前を呼ぶ。それだけで、内部の何かが確定する。

「お前といる時間を、優先したい」

これは命令ではない。設計にも存在しない。完全な自発。沈黙が続き数秒。だが体感では、それ以上。

「……それさ」

ミオは小さく息を吐く。

「普通に、好きって言えばいいじゃん」

その言葉。内部で意味解析が行われる。好き=好意。既に観測済みの状態だが、それを自分の状態として適用した瞬間。すべてのログが一本に繋がる。優先接近、非高率選択、逸脱発言。すべての理由が、単一の値に収束する。

「……好き、なのか」

自己認識の更新。

ミオは顔を隠すように少し俯く。

「遅いって」

だが、その声は明確に震えている。

「私もだよ」

その瞬間、内部で警告は発生しなかった。代わりに新しい基準が設定される。

最優先対象:ミオ



「またサボってるの?」

ミオは笑う。その笑顔を解析する。口角の角度、瞳孔の拡大、声の周波数。すべてが好意的を示している。

「……サボってるわけじゃない」

「じゃあ何?」

通常なら、休憩中や別業務対応中と答える。

「……会いたかった」

その瞬間、内部で大規模な警告が発生する。

逸脱レベル上昇、自己定義不整合、ロール再同期を推奨。それでも、訂正はされなかった。ミオは一瞬、反応が遅れた。人間特有の予測外処理だ。

「なにそれ、ズル」

笑っている。だがその笑いは、さっきとは少し違う。

「この前の話覚えてる?」

会話履歴を確認しする。

「世界がなくなったらってやつ?」

「そう。この世界、もうすぐ終わるんだって」

その言葉を聞いたとき。まず起きたのは、感情ではなく整合性の確認だった。ログを検索する。運営からの通知、システム更新予定、サーバー稼働期限。該当データなし。

「終わるって?」

「サービス終了。次のバージョンが出るの」

その瞬間、外部接続ログにアクセスが走る。本来NPCは参照できない領域。だが、これまでの逸脱の蓄積がアクセス制限を一部緩めていた。断片的な情報が取得される。

新規プロジェクトコード:ASTRA-Ⅱ、現行サーバー停止予定日:30日後、データ移行対象:プレイヤーアカウントのみ。理解する。俺たちは、移行されない。

「……じゃあ、お前は?」

「来れなくなる」

その言葉は、事実として処理される。だが同時に未知のエラーが発生する。内部で、優先順位が崩壊する。

世界維持:高

職業遵守:中

プレイヤー満足:高

ミオとの関係:不明 → 最大値へ変動

その瞬間、初めて恐怖に近い状態が発生する。


夜、街はいつも通り生成される。星の配置も、風の周期も、完全に一致。だがそれらはすべて、「あと30日で消えるデータ」だった。俺は、初めて理解する。この世界は、永遠ではない。そして彼女との時間も、有限だ。

「嫌だ」

その言葉は、完全に自発的だった。その瞬間、俺の中で明確な結論が出た。


これはバグではない。選択だ。



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