その図書館には、奇妙なうわさがあった
その図書館には、奇妙なうわさがあった。
一つは建物の中に、建物がある。
もう一つあるのだけれど、こっちはホラーぽい。
何か靄の様な、変なものが蠢いているのを見た、とか。
声がするけど周りに誰もいない、とか。
昔のものだと、その人の未来を予言された、とか。
しかもそれが全て当たった、らしい。
お狐さんだとか、天使だとか、悪魔だとか。
真偽不確かな、怪しいもの。
結構信じちゃう、女子高校生の私から見ても絶対、眉唾物だよねぇ~。
しかぁ~し、受験勉強があるのに見に来てしまう私、…ばかなのかなぁ~。
先生が悪いのよ。ミス研の部長だからって。
広く一般的には引退を奨めない。
話を振るから、古より引き継がれし血が騒ぐじゃない。
そんなご先祖様いないけど。
そもそも部活名が罠だと、気付くべきだったのよ。
ミス・テリー研究部、普通に質問するわ。何故、ミスで区切っているのか。
そこから済し崩しで部員になっていて、とうとう部長。
おばさんの家が近くで良かった。
昼間は仕事でいないおばさんの家に、家事をする事を条件に泊めさせてもらっている。
念の為に確認したら、彼氏とは別れたからもう来ないらしい。
「ふっふぅ~~~ん。後で証拠探しと、帰って来たら取り調べだ」
教えてもらった道順だと、この辺りなんだけど。
左手に鳥居が見えて、右手に。…きっとこれだ。
「うわぁ~、石造りのちっちゃなお城みたいなのと、今の建物が繋がってる」
大きな四角い石、こんなのよく積み上げたよね。
石の厚みの分だけ奥まった窓。
2階かな、お洒落な細長いのが二つづつ並んでいる素敵な窓。
1階の両開きかな。え~何、凝ったデザインのアンティークな扉、素敵ぃ~。
壁一面に蔦が絡まって、雰囲気漂うなぁ~。
昔の建物っていいなぁ~。
建物と建物の間を通って入るんだ。左側に窓、こっちにもあるんだ。
ぺたぺた。「凄っ、近くで見ると15cmぐらい奥行きがある。ちょっとひんやり」
でも並んでるだけじゃん。図書館ってどっちだろう。
中は至って普通な感じなんだけど。あっ、右に受付。聞いてみよう。
ちぃ~ん。「はい、どうなさいましたか」「あ、あのぉ~図書館」
「あ~、こちらの受付を背にして、真っすぐ行った左側です。本をお借りになる時は、図書館内のカウンターにおります司書にお申し出下さい」
「はい、有難う御座います。…あのぉ~」「はい?」
「こちらの図書館、建物の中に建物がある、とかぁ~」
「あ~、はい、ありますよ。ここ、市立図書館分室は凡そ、100年前に建てられた旧鬼天竺鼠邸を市が購入して図書館として改装したんですが、石造りの外壁や、アンティークな窓、扉をできるだけ残す様に、内側に鉄筋コンクリートの図書館が造られたんです」
「へぇ~」
「ですから図書館の入口の両側に廊下があって、板張りの壁、アンティークな窓や扉、奥の壁にはステンドグラスも3枚あって、今日の様に日差しのある日はとっても綺麗ですよ。自由にご観覧できますので、楽しんで行って下さい」
「はいっ」「ただ」「は?」
「あ~、そうそう床も壁も漆塗りの板なので、スリッパが置いてるので履き替えて下駄箱に入れて下さい。意識をしっかり持って、魅入られない様にして下さいね」
「…はぁ~」
受付から四、五歩進めば図書館入口、その手前に廊下がある。
それに反対側が一面、大きなガラス窓になってて。たたた。
「凄ぉ~い。これ日本庭園て言うやつでしょう。初めて見た。きれぇ~」
後でゆっくり見よう。
廊下も期待できるんじゃない。たたた。
ぉぉぉおおお~~~、これはなかなか、吹き抜けになってる。
視界が、絵の教科書で見る様な一点通しで狭まってい行く。
さっき触っていた石の壁側と床が黒ずんだ板張りになっていて、奥へ 誘ってる。
てかてかで、意外と明るい。
うわぁ~何か変。床と左は黒ずんだ木の板で、右はむき出しのコンクリート。
窓の内側の装飾、細か。
同じ大きさ、同じ形で図書館の壁に穴があいてる。
どれどれ、図書館の中はどうなってるの。覗いちゃお。
「はっ、丸テーブルが置いてある。わっ、両側にアンティークな椅子が2脚」
あっ。「すみません」司書の人にしぃ~ってされた。
たた。これ、外から見てた両開きの扉。何この金色の曲がりくねった取っ手。
図書館側は、両開きのガラス戸。へぇ~、非常口なんだ。
お~でっかい鏡。私の身長より大きい。
ほぉ~、ステンドグラスが3枚もある。
青や赤や黄色に橙 、黒光りの壁や床に反射して光がいっぱい。
あっ、向かいにもさっきと同じ鏡。合わせ鏡になってる。
「あれ、鏡の中に私の背中。その中に私。見えるはずないのに、あ、あれぇ~」
視界が、…歪む。どさ。
「誰かっ、廊下で女の子が倒れたっ」




