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ムゲンセン  作者: 涼風岬
3/4

第3話 迷惑な二人

 あれから2か月程が経過した。今、彼はカフェの入口に立って時間を潰している。とある人物から絶対に来るように念押しされたからだ。


 あと10分で約束の時間だ。彼は20分も前から待っている。それは約束の時間内であっても呼び出された人物よりも遅れたら何を言われるかわからないと思ったからだ。


 あの二人に会って以来、二人から迷惑をこうむっている。彼にはソウセイ調査分析官から毎日欠かさず電話が掛かってきている。初めの数回は間違えて掛けてきたと思って彼は無視していた。


 その後も何度か掛かってきたので気は乗らなかったが彼は出てみた。そうしたら、開口一番に彼女は非常識だと彼は罵倒された。


 出なかった理由を゙間違い電話かと思ったと彼は言った。そうしたら、彼女はけてるわけでもないのに何度も間違い電話するわけ無いだろうと更に彼を罵倒したのである。そして、彼女は彼に私が何歳に見えてるんだとキレ散らかした。


 彼が謝ると彼女はこれからは絶対に出ろと念押しされた。しかし、彼女は彼の事情などおかまいなしに時間構わず掛けてきたのである。それで、彼は取れないことが何度かあった。そのつど、彼女は彼を罵倒したのだ。


 彼はソウセイこそ非常識だと言い返したかった。しかし、何倍にもなって返ってきそうだったので、その言葉を呑み込んだ。そして、彼が寝る前の時間帯とお願いしたのである。


 翌日、彼女から土日はどうするんだと電話が掛かってきた。彼が寝る前にって言いませんでしたかと言った。そしたら、土日は平日よりは時間にゆとりがあるだろとキレられたのである。


 彼は理不尽だと思いながらも、どうすれば良いのかと聞いた。そうしたら、そんなのは自分で決めろと更にキレられたのである。それなので彼か土日は遠慮して欲しいと言ったら数分間に及び罵倒し続けられた。


 彼は電話越しに頭を深く下げ落胆した。そして彼は彼女の目の前ならどうなっていたのだろうとふと思った。彼は想像するのとすぐに止めたのである。電話越しですら高圧的なのだ。どんな罵詈雑言を浴びせられるか想像したくもなかったからだ。


 彼は自分の意見を述べるのを放棄した。彼女には言うだけ無駄だと悟ったからである。彼は、ただただ頷きながら聞いていた。


 彼女は、しばらくすると無視してるのかと怒鳴ってきた。彼は思わず溜め息をついた。彼は失礼じゃないかと更に怒鳴られたのである。なので、彼は彼女の話にはハイとお答えし続けたのだ。


 その結果、彼は土日は朝から晩まで電話対応しなくてはならなくなった。初めは1日中だったのだが、幸いなことに折り返しの電話が掛かってきて眠っている時間は免除して下さるとのお許しが出たのである。それに彼は感謝した。


 もう一方、ミナミ刑事は彼のバイト先のコンビニに翌日からほぼ毎日訪れている。辰巳は毎日シフトが入っているわけではない。二人に会った翌日はシフトが入っていたので缶コーヒーを買いにミナミが来た。


 翌日、彼ははシフトは入っていなかった。買い物しようと自宅と目と鼻の先のバイト先のコンビニに向かったら前にミナミが缶コーヒー片手に立っていたのである。彼は会釈して入っていた。買い物を済ませて出たら立ち去っていたのである。なので、彼は捜査でもしていて偶然だろうと思った。


 その翌日もミナミはいた。その日からは彼は辰巳に声を掛けてきた。しかし、この間の件にはいっさい触れて来なかったのである。ただの世間話であった。


 それからも、彼はほぼ毎日とミナミに会うがあの件には一切触れてこず世間話しかしてこない。最近、彼は辰巳の家族について聞いてきた。当たり障りなく彼は答えていたのである。しかし、彼は絶対に口に出したくない事が一つだけあった。


 ミナミは刑事の勘で察してくれたのか、それ以降は辰巳の家族には触れなくなった。それからは彼は話題のニュースとか彼の大学生活等を聞いている。辰巳は鬱陶しく思ってるが受け入れている状態だ。


 彼はスマホで時間をチェックする。すると約束の時間まで3分を切っている。ふと彼は土日の免除の件の後のソウセイとのやり取りを思い出す。そして、彼は憂鬱ゆううつになってしまう。


 その理由は彼は土日に彼女に暇な時は合う約束を強制、いやお願いされた。彼が暇な時で良いんですよねと念押しした。そうしたら、彼は彼女から君は土日は眠る以外は暇だろと言われたのである。反論しようとしたが事実なので断念した。


 という理由で彼は彼女を待っているのだ。もう一度、彼はスマホの時間をチェックする。するともう1分を切っている。


 彼は彼女が来ないのを祈る。なぜなら一秒でも遅れたら帰っていいと言われたからである。30秒を切った。彼は祈りながら顔を上げる。すると、彼は後退りして扉に背中を打つ。


「どうした? 君。そんなに驚いて。立ったまま眠っていて悪夢から覚めたのか?」


「ちょっと驚いただけです」


「何にだ?」


「あな…………何かにです、はい」


「まさか私にじゃないよな?」


「ちっ、違いますよ」


「まっ、そういうことにしておこうか」


「…………」


「待たせたようだな? 君」


「待ってません、はい」


「正しい返答だ、君」


「えっ…………」


「私は約束時間の前に着いていた。もう過ぎてしまったけど。だから、待たせたことにはならない。1秒でも過ぎていたら待たせたことになる。なので君の返答は正しい」


 ――理屈っぽい人だな〜


「どうした? 君」


「いえ、仰るとおりだなと思いまして」


「そうだろ?」


「はい」


「入ろう、君」


「はい、ただいま」


 そう彼は言うと彼は彼女に背を向けカフェの扉を開ける。しかし、彼女は入る素振りを見せない。怖くて彼女の顔は見れず首元から下を見ている。


 15秒ほど経っただろうか、急に彼は彼女がキレるのではないかと不安に駆られる。それで、彼は考えを巡らせる。そして、彼は閃き扉を更に開く。それは、きっと彼女は入るスペースに余裕がないのが気に入らないと思い付いたからだ。


 彼は安堵しながら彼女が入るのを待っている。しかし、彼女は一向いっこうに入る素振りを見せない。彼は彼女の足下を見るが動いていない。また、彼は考えを巡らせる。そして、彼は思い付いた。


 彼は手で入るように合図する。それでも、彼女の足は動きを見せない。これ以上、彼には思い付かない。この場から一刻も彼は立ち去りたい気分になってしまう。


 彼は彼女の表情が気になって仕方がない。彼は恐ろしいが意を決して恐る恐る徐々に顔を上げていく。そして彼は彼女と視線が合う。すると、彼女は首をかしげる。


「どうしたんだ? 君。入らないのか?」


「えっ…………入っていいんですか?」


「何を言っているんだ? 君は。君が開けたんだろ? 君から入るといい」


「あっ……でも先にお入り下さい」


「いいのか?」


「はい」


「気が効くんだな。ありがとう」


 そう言った彼女はカフェの中へと入っていく。まさか彼女からお礼を言われると期待すらしてなかった彼は嬉しい。彼は彼女の後に続く。


 中に入ると店員が彼女を席に案内する。そして彼女は座る。彼も対面に座る。


「お決まりでしたら注文承りますが?」


「決まってるか? 君」


「いえ、まだです」


「じゃぁ、アイスコーヒーを二つ下さい」


 ――えっ!


「畏まりました」


 そう言うと店員は席から離れていく。彼は彼女を目の前にして緊張している。それに彼は二人っきりで気まずい。なので、彼は店内を見回す。すぐに見終えたが彼は繰り返し行う。


「どうしたんだ? 見回してばかりして。カフェは初めてでもあるまいし」


「初めてです、はい」


「そうなのか? 落ち着かないんだな?」


「あっ……はい」


「そうか」


 アイスコーヒーが運ばれてきて二人の前に置かれる。店員は一礼して去って行く。


「飲まないのか?」


 その彼女の言葉に彼はストローに口を付け一気に吸い込む。あっという間に飲み干した。


「喉乾いていたんだな?」


「あっ……はい」


 そう彼が言うと彼女も飲み始める。一気に飲み干したせいか、彼はトイレに行きたくなる。


「申し訳ないのですが手洗いに行っても宜しいですか?」


「私は君の生理現象には干渉するつもりはない」


 その言葉に彼は立ち上がりトイレに行く。済ませると彼は手を洗いながら鏡を見る。それに映る自分が、やつれているように見える。彼は溜め息をついた後に席へと戻り座る。


「君?」


「はい、何でしょうか?」


「あの映像について何か思い出したかな?」


「いえ」


「そうか。よしっ、出ようか?」


「もう終わりですか?」


「もっと私と一緒にいたいのか?」


「……」


「それが返事みたいだな。出ようか?」


「あっ、はい。本当にいいんですよね?」


「もちろん。君が嘘ついてないか確かめる為に呼んだんだ。嘘はついてないようだ。今日はこれで良しだ」


「あぁ〜、そういう事でお呼びしたんですね。んっ? もしかして、また呼ばれるんですか?」


「同然だ。君が嘘ついてないか確かめる為にな。どうせ暇だろ?」


「あっ……はい」


 そう彼女は言うと立ち上がる。彼は伝票を探すが見当たらない。それに彼女が気付く。


「支払いなら済ませだぞ、君。君が手洗いに行っている間に」


「あっ、そうだったんですね。自分の分は払います」


「結構だ。私が呼んだのだから私が支払うのが筋だ」


「でも……」


「話は以上だ」


 そう彼女は言うと店を出て行った。慌てて彼は追いかける。


「ソウセイさん?」


「何だ?」


「ご馳走様でした」


「構わんさ。言われると気分が良いもんだ」


「そっ、そうですよね」


「じゃあ、私は行くぞ」


「あっ、はい」


 そう彼が言うと彼女は歩き出し遠ざかって行く。彼は彼女の背中を見送る。


「辰巳?」


 その言葉に彼は言葉の聞こえた方向を見る。すると、ミナミが立っている。そして彼は近づいてくる。


「辰巳さん?」


「はい」


「妹さん行方不明なんですってね?」


 その言葉に辰巳は怒りが込み上げてくる。そして、彼はミナミに背を向け立ち去ろうとする。すると、彼は腕を掴まれる。彼は振りほどこうとするが力が強くて出来ない。なので彼は振り向く。


「その話は本当か?」


 その声の主はソウセイた。彼女が力強く彼の手首を掴んでいるのだ。


「本当なのか!」


「あっ…………はい」


「その話、詳しく聞かせてくれないか!」


 そう言った彼女は真剣な眼差しを彼に向けている。そして、しばらくして彼女は彼から手を放した。

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