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ムゲンセン  作者: 涼風岬
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第1話 予期せぬ訪問者

 夢を見ていた大学生の男は体の痛みで目を覚ます。彼は変な夢を見たなとは思うが不思議と内容を覚えていない。でも、ムゲンセンという言葉だけは何故か覚えている。しかし、彼は意味が分からないので気にしないことにする。


 体の痛みは数ヶ月前にベットから落ちたのが原因だろうと彼は思っている。それにしても、なかなか痛みが取れない。


 同様の痛みに襲われることがある。痛める部位は同じだったり違ったりする。しかし、眠っている時に壁に打ちつけたのだろうと彼は取り分け気にしていない。


 洗面所に向かい、鏡の中の自分は眠そうに映る。欠伸あくびをしながら蛇口をひねる。水が冷たくて思わず手を引っ込めてしまう。


 インターフォンが鳴り蛇口を閉める。ゆっくりドアを少しだけ開けると30代くらいの顎髭を生やし男性が視線に入ってきた。その背後には女性の顔が見える。


「はい、何でしょうか-」


辰巳たつみかなたさんですよね?」


「そうですが」


「私たちは警察の者です。少しお話を伺いたいんですが?」


「はいぃ?」


「お話よろしいですかね? 辰巳さん」


「…………あぁっ」


「人目が気になるでしょう? 差し支えなければ中でお話出来ませんか? 玄関で構いませんから」


「ああっ」


「ではドアガード外していただいても?」


「あぁ……後ろの方も警察ですか?」


「この方は国防省の調査分析官です」


「あのぅ、大変失礼ですが身分証明書? 警察手帳? 見せていただいても?」


「もちろん」


 それらしき物を取り出し男性は提示する。それをマジマジと辰巳を見る。


「警部補、ミナミさんで宜しいですか?」


「そうです」


「分かりました。少々お待ち下さい」


「ご協力ありがとうございます」


 ゆっくりとドアを辰巳は閉めとサムターンを回し鍵を閉める。そして、テーブルの上にあるスマホを取り電話する。その後、歯磨きを済ませ再びスマホを取り動画鑑賞にふける。ドアを叩く音するが無視を決め込む。


 そうしているとインターホンが鳴った。彼はドアに近づいて聞き耳を立てる。自分を呼ぶ名前を確認しドアを開ける。制服警官が2人いる。


「通報した田中さんですよね?」


 そのうちの1人が彼には対応する。


 彼は通報で事情を説明し本名と住所を伝えていた。そのうえで警察を名乗った先程の者たちの仲間が再び来る可能性もあるので、到着したら自分を田中と呼ぶよう願い出たのだ。そういう事ならと了承してくれたのだ。


「はい。まだ、いますか?」


「確か、30代の男性と20代の女性ですよね? この階には、いないようです。来るときも、それらしき人物は見かけませんでしたよ」


「あっ、そうですか? ありがとうございます。なんか、すみません」


「いえいえ、通報を受けたら対応するのが警察の仕事ですから」


「また来たりしないですかね? あの詐欺師たち」


「その時は、すぐ通報をして今回のような対応をして下さい。ドアを強く叩かれたとしても絶対に開けないで下さい。まぁ、田中さんなら大丈夫だと思いますが」


「はい。ドアガードしたまま対応して申し訳ないです」


「いえいえ、お気になさらすに。びっくりしたでしょう? 用心深いに越したことないですよ」


「怒られるんじゃないかと内心ビクビクしてました」


「通報する機会なんて滅多にないでしょうから。危険だと感じたら躊躇わずに通報をして下さい」


「そう言っていただいて安心しました。ご苦労様です。本当にありがとうごさいました。最近、ニュースで警察を騙る詐欺師が横行してるのを見たんで。思い切って通報したんです」


「そうでしたか。他の階を見回って帰ります。また報告しますね。一旦、失礼します」


「はい、ご苦労様です」


 その後、再び制服警官から異状なしとの報告を受けた。辰巳は身支度を整えると、ゆっくりとドアを開け周囲を見回す。そして、廊下の手すりから身を乗り出して周辺を見渡す。


 先程の者たちは見当たらない。それで、彼は階段を下り道路へ出る。車の横を通る。すると、パワーウィンドウが開いた。関係ないと通り過ぎようとする。


「辰巳さん、酷いな。通報するなんて。今日は諦めて帰ろうとしてたのに」


 辰巳は立ち止まったが歩き出そうとする。するとドアが開く音がする。出て来た男が進路を塞ぐ。


「何のつもりです!」


「お話よろしいですかね?」


「お断りします」


「そこをなんとか」


「通報しますよ」


「どうぞ」


 辰巳はスマホを取り出し躊躇わずに通報した。彼は男と距離を取り待っている。しばらくすると、パトカーが到着した。制服警官が2人降りてきた。先程の2人だ。


 彼は事情を話し、2人が男に対応する。彼は遠巻きに見ている。先程の対応に当たってくれた制服警官が近づいてきた。


「田中さん?」


「……あっ、はい」


「あの方は警察官です。本庁に照会したので確かです」


「えっ…………」


「驚かれますよね?」


「あっ、はい」


「お話を聞きたいそうです。出来れば御協力下さい。それでは」


 彼は敬礼して去って行く。辰巳は呆然として立ち尽くしている。すると、男性が近づいてきた。


「信じてもらえましたよね。辰巳さん」


「あっ……はい」


「お話よろしいですかね?」


「ああっ……」


「人目もありますし立ち話も何ですからね。車でどうですかね?」


「心当たりありません。何の罪ですか?」


「そういうとではないですよ。ちょっと捜査の協力をお願いしたいなと」


「心当たりありませんよ?」


「十分承知してます。一つ確認して欲しいことが」


「何してる! 早く乗れ! 君と違って暇じゃない、こっちは」


 後部座席の女が窓から身を乗り出している。あまりの迫力に辰巳は圧倒される。彼には彼女が20代中盤くらいに見える。


「だそうです、辰巳さん」


「…………」


「ひとまず乗りましょうか?」


 そう言うと男性が扉を開ける。すると、女性一旦車から降りる。辰巳は乗るように進められる。そう彼がすると女性が乗り込んできて扉を乱暴に閉める。その途端、車が動き出す。

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