6.無謀な挑戦
毎度読んでくださりありがとうございます。
感謝感激雨嵐でございます…。
このデカブツ…絶王の小鬼の動きのパターンが少し読めてきた。
まず絶王の小鬼の特徴は体がでかい。その巨体から繰り出される攻撃は破壊力が凄まじい。一緒にいたモンスター達もお構いなしに巻き込んで攻撃している。
もし当たってしまえばペラッペラの紙装甲の僕ではひとたまりもない…。
こんな序盤の森でヒョイと出てくるようなモンスターではないことがわかる。
「グゥォォオ"ン"!!」
「まあまあ…残り時間あと14分…で狩ってやるからゲーマー舐めんなよ!」
とりあえず再使用時間を経て使用可能になった気配遮断を発動した。
「グルォ?」
絶王の小鬼は目の前にいたはずの獲物の姿が見えなくなっていき…いなくなった!
先ほどまでいた場所に巨大な手を振り下ろす。しかし手のひらに何かに当たる感触はない。
「へっ…そりゃ目の前から消えたら誰でも焦るよな!」
手を振り下ろした瞬間、当たるかもしれないと思ってヒヤヒヤしたが…横に回避。そのまま地面に振り下ろされた手に向かって走った。
素早さは序盤でも速い方だ!その地面に置いたままの手を足場に駆け上る。
姿、気配が分からなくとも…足音もあれば走られている感触はあるらしい。絶王の小鬼の顔が右腕の方を向いた。
反対側の左手が腕に止まった虫を叩こうとするかの如くこちらに向かって振りかざしている!?
「うわっと!」
間一髪、絶王の小鬼の暗殺者叩きもといハエ叩きを避ける。横には険しい顔がある…あら、意外とほり深いのね。
その直後、気配遮断が切れてしまった。ということはコイツに姿をはっきりと見せてしまう。
一瞬にして絶王の小鬼の眼がこちらを向く。
まずい!
巨大な相手の視線に、反射的に体が動きラピッドラッシュを発動させた。
2連撃はどちらも絶王の小鬼の右目にヒットし、片目を潰すことに成功した。
「グッウ!?」
巨体が揺らぎ潰された右目を抑え出した。絶王の小鬼から落ちそうになるが、尖った耳を足場にして頭に登った。
頭、首を攻めればこの巨体を倒せるはずだ…それに試してみたいこともある。
間髪入れず、絶王の小鬼の頭のてっぺんに短剣で切り込みを入れる。
コイツは王とか言ってるが結局は人型のモンスター、ゴブリンだ。皮膚も肉も切れるもんだ!!
「グガァ!???」
「痛いか!?痛いよな!頭のてっぺんだからなぁ!」
途切れる事がないように連続して切り刻んでいく!
頭ということもあってすこし硬くなってきた…多分骨だろう。
しかし、頭のてっぺんで攻撃をしたのは理由がある。
こういう類の奴は…こことかを重点的に攻撃していれば…きっと…
頭上にいるが、げんこつの形をした影が近づいてきた…これこれ!これを待ってた!さあ回避じゃ!
「ァグウガァァ!!」
地面を確認しながら体制を崩すことなく着地に成功。
そして…激しい唸り声と共に絶王の小鬼の拳が自身の頭に直撃!
ボコォッと鈍い音が響いた。
奴の頭蓋が割れる音だと思われる。あそこまでの力を持っているんだ、自分の骨くらい割れるだろう。
さっき右腕を叩いていたのを見て試してみたいと思ったこと。人間がコバエが周りで飛ぶのを鬱陶しく思うように…ちょっかいをかければその場所に攻撃を誘導できると考えた。
その思惑はドンピシャで的中したようだ!
「よしっ!あとは脳天切り刻むだけ…っ!?」
そう思った矢先…不穏な気配が絶王の小鬼を包む…。
「ゥ…ゥゥゥォン…」
「ヴヴヴァ"ァ"ァォォンンン!!!
ビリビリと響く絶王の小鬼の叫び!身体が…動かない!?これは…強制スタン効果!?
頭蓋を割ったことにキレたのか…絶王の小鬼の片目は真っ赤に染まってこちらを睨んでいる…だいぶお怒りのようだ。
残り時間は…3分…か。
雄叫びのおかげで身体が動かせないうちに、一歩。また一歩と絶王の小鬼が近づいてくる。
身体が動かないせいで回避もできそうに無い…。
「ここまでだっていうのか…?」
緊急クエスト、こんな幕引きはあまりにも味気なさすぎる。
ここで諦めたら聖女ちゃんに申し訳ない…。
対処法は…気配遮断…はあまり効果が無さそうだな…、叩かれて即死だ。
…即死?
そういえば!聖女ちゃんから掛けてもらったバフの効果で…そう!即死ダメージを防ぐ!
僕元々のHPの少なさならこの巨大な絶王の小鬼からの攻撃は即死ダメージになる…はずだ。
相変わらずスタンが続いて動けないが…奴も自身の自傷ダメージでみるからにフラフラ…これは賭けだ。
「ゥ…ヴゥォゥ…」
「ヴア"ア"ア"ァァァゥ!!」
絶王の小鬼が叫びと共に思いっきり手を振り下ろした。
ゲーム内であるから倒され、殺されたりすることはかなり経験してきた方だ。
しかし…システムを通じてこのナイトリーパという身体が感じる恐怖…これは仮想の世界だとしても本物だと思えた。
絶王の小鬼の拳が当たる寸前…バチィィッ!と光が弾けた!聖女の慈愛が発動したようだ!
振り降ろすしたはずの拳を弾かれ絶王の小鬼は困惑している。
そしてもう一度僕めがけて拳を振り降ろした。
ようやくスタンが解除され、絶王の小鬼の拳をひらりとかわした。
「聖女ちゃんのおかげだ!さて残り時間も少ないからな…ここからは時間との戦いだ!」
良いところに拳を落としてくれた!
絶王の小鬼の拳を足場として先ほどと同じ登り方をしていく。先ほどよりフラフラしているため足元がぐらつくがそこは経験でカバーだ。
奴の体力も残り少ないはず。
耳から頭に上がろうとした瞬間、絶王の小鬼がブンブンと体を振り回した。
短剣を刺してなんとかしがみつく。
「…ゥゥゥ…ギガァァ…」
頭のダメージがかなり大きいようで動きが鈍くなる。
やっと頭上に登り、短剣を握る手に力を入れる。
損傷が激しく…ちょっとグロいが…連続で攻撃を入れていく!
「ウガッガァァ!!」
「まだまだ!」
攻撃を加えていくにつれ…ヒビが入っていき…「暗殺者の短剣」が壊れてしまった!耐久値が限界に達したのだ。
インベントリを素早く操作、予備で買っておいた「血塗りの毒牙」を装備し実体化させる。
残り時間1分をきった。
絶王の小鬼のHPはあと少し!
「これでトドメッ!?」
渾身の力を込めてラピッドラッシュを脳天に発動!
素早い連撃はクリティカル判定ッ!
絶王の小鬼のHPがついにゼロになった。
凄まじい攻撃力をもつゴブリンの王が力無く倒れる。
倒れる寸前、体から離れて着地をした。
「たおせた…なぁ…はぁぁ〜つかれたぁぁ…。」
絶王の小鬼の身体が少しずつ光の粒になって消えていく…。
ぼんやり眺めていると…目の前にウィンドウが表示される。
『緊急クエスト、聖女との邂逅をクリアしました!EXクエストが解放されます!』
クエストクリア…?EXクエスト?色々ありすぎて頭が回らないよぉ。
へへぇ…ドロップ品は何かあるのかなぁ…。
牙…骨…目玉!?いるのかなぁ…それ…。
後は…?
・絶王の短剣
ゴブリンの王が隠し持っていた煌びやかな装飾が施された短剣。
どこかの王国を襲った金目のものに目がないゴブリンが奪った貴重品。
その刃は宝石よりも光り…鉄も切り裂く。
絶王の短剣!攻撃力が+100!?めちゃくちゃ強いじゃないか!?
…必要ステータスはVIT【耐久値】200…?
ま、まぁ頑張ってよかったカナ…。
ドロップ品が労力に比例することが本当にあるんだなぁ〜。
ホクホクしてドロップ品欄を眺めているとガタッ!っと音が鳴った!
音の鳴った方を向くと…教会のドアが開いていた。
少し警戒をして短剣に手をかけた。
開いたドアから金色の髪の毛をたなびかせたシスターがあらわれた!
「…て…」
「て?」
金髪のシスターはドアを勢いよく開き、僕に抱きついた!…!?
「天使さまっ!!」
「…!?天使さま!?」
緊急クエストクリアの行き先は…どうなることやら…
お読みいただきありがとうございます。
流石の強敵!
しかしレベル差があっても中からぐっちゃにされたらたまりませんよ…それも頭とか…。
部位破壊、ましてや内部破壊は大ダメージの判定となります。それはモンスター自信の攻撃が当たったとしてもです。
モンスターの動きをよく観察するのはボスモンスターと戦う時の立ち回りとして必須です。
次回は聖女ちゃんが出てきます!