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当代最強の責任  作者: 嵐山田
第二章
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第四十話

結構間が空いてしまいましたが第二章です。


前回まではだいぶラブコメチックな展開でしたがここからファンタジーに向かっていきます。

 翌日、慌ただしい足音で目が覚める。


 自分で起きたのは久しぶりな気がする。

 改めて花凛にはしっかりお礼をしなければと感じさせられた。


「兄さん、おはようございます」

 花凛のことを考えていたら、ちょうど起こしに来てくれたようだ。

「おはよう花凛」

「兄さん、今朝はお早いですね。どうかされたんですか?」

「なんだか下が騒がしくないか?それで目が覚めてさ」

「それは先ほどお父様が帰ってきたせいですね。お母様が拗ねていましたので……」

 

 なるほど。母さんの機嫌を取らされてるのか親父。

 こういうことは家ではよくあるのだ。母さんの拗ね方が花凛とそっくりというか、花凛が母さんにそっくりな拗ね方をするというか……俺は親父の心情が痛いほど察せられた。


「兄さんが考えている理由とは今日はちょっと事情が違うみたいですよ」

 俺が親父の心情を察し、しみじみと同情しているとまるでその思考をすべて見ているかのような口調で花凛が否定する。

「え?どういうことだ?」

「どうも兄さんに話があるとかで、お母様に今日も構えないらしく……」

「俺に話?珍しいな……今日は雪乃もまだいるって言うのに。そういえば雪乃はどうしてる?」

「まだ寝ています。昨晩は緊張で私が寝てからも、なかなか寝付けていなかったようですから」

「そうか……厄介ごとの予感がするな。シャワー浴びてから行くって親父に伝えておいてくれるか」

「わかりました」


「昨晩の悪い予感が当たっていないといいんだが……」

 そんなことを考えながら浴室へ向かう。

「龍仁様、おはようございます。お召し物の用意、しておきますね」

「おはよう黒子。ありがとう頼むよ」

 俺が浴室に着くと扉の横で黒子が待機していた。

 いったいどうやってこんなに先回りをしているのか……。

 何度見ても魔法は感じられないし視えない。


「さて、日曜の朝から親父の呼び出しなんて……十中八九未開域かそれ関係の話だろうな」

 まさか青砥家と戦争になったとかではないよな……。

 どちらも当たってほしくない予感だが、それは叶わない願いだろう。

 さっとシャワーを浴び、あまり待たせるのも悪いと早々に浴室から出た。

 

「え、えっ!?龍仁さん!?」

 浴室を出た先で雪乃と鉢合わせてしまった。

「ゆ、雪乃!?……その、おはよう」

 完全に気を抜いていた。

 親父の話にばかり気が向いていて、雪乃が来ていることを忘れていた。

 でも、花凛がいたら鉢合わせないようにタイミングをずらしてくれると思ったのだが……。

 そう思って、思い出す。

 花凛には親父への伝言を頼んでいた、そのタイミングで起きてきた雪乃が顔を洗いにでも洗面所へ来てしまったのだろう。

「あ、あの、す、すみませんっ!」

 ものすごい勢いで振り返ると、目にもとまらぬ速さで洗面所を出て行ってしまった。

 ……悪いことをしたな。

 でも、腰にタオルを巻いていて良かった。

 

 この出来事のおかげで若干暗くなっていた気分が少し晴れたとは雪乃には言えない。


 黒子が準備してくれていた服は未開域開発部隊の隊服だった。

「やっぱり、未開域関連か……。まあ、唯香さんと話さなきゃとも思っていたし、ちょうどいいと捉えるしかないか」

 なるべく急いで隊服に着替えると、親父の下へ向かった。


「龍仁来たか。早朝から悪いが腰を据えて話している時間すら惜しい、出るぞ!」

「そんなに大事なのか?……分かった、行こう」

 玄関に向かうと花凛と雪乃が待っていた。


「兄さん……」

「龍仁さん……その恰好……」

「すまない、二人とも。少し野暮用だ。行ってくる」

「ま、待ってください龍仁さん!その恰好は……」

「雪乃ちゃん!」

 花凛が腕を引いて雪乃を止めてくれている。

「兄さん、雪乃ちゃんにも説明してしまっていいのですね?」

「すまない雪乃。花凛頼めるか?」

「分かりました。雪乃ちゃん詳しい話はあとでするね」


 後ろ髪を引かれる思いだが、仕方がない。

 親父がこんなに焦っているのだか……ら?


 そう思って親父を見ると、何故かとても悔しそうな表情の親父がいた。

「畜生!俺には一人も見送ってくれる人がいないのに、なんでお前は二人も……」

 ………………。

 そんなことかよ!

 親父が連絡を怠るのが悪い。メッセージを送る時間くらい作れないはずはないだろうに。


 だがこのままの親父と同じ魔装車に乗って行くのは、精神衛生的にもよろしくない。

 はあ……なんて面倒な親なんだ。

「母さん、隠れてないでちゃんと見送ってあげたら?」

 誰もいないように見えている方を向いて声をかける。


「……」

 何も言わずに姿を隠していた魔法を解き、姿を現す母さん。

「千穂……その、すまない。今後は必ず一件はメッセージを送れるようにするから」

「……メッセージとかどうでもいいから、早く帰ってきて」

 それだけ言うと家の方へ戻っていく。

「おおぉぉぉ!千穂ぉ!愛してるぞぉ!」


 ふう……まあこれで俺の精神が余計なことで浪費される心配はなくなった。


 と思っていたのだが、そこから機関の未開域統括庁に着くまでの間、永遠と母さんと親父の惚気話を聞かされることになり、結局精神を浪費させられる羽目になった。


「親父、そろそろ本題に入ってくれないか?何も知らないままなんだが……」

 魔装車を降りてからも続く、長すぎる惚気にさすがに嫌気がさし、俺の方から切り上げさせる。

「……ああ、そうだな。簡単に言うとブレイクが起きた」

「ブレイク!?一体どこで!?」


 ブレイクとは未開域に存在しているコアが破壊された際に起きる可能性がある魔獣の大氾濫のことである。

 普段エリアC付近で生活している魔獣がコアを失なった場所から大移動を起こすというもので、コアの破壊に成功している国で何件か実際に起こっている。

 その被害は甚大であり、都市一つが文字通りなくなったという実例もある。

 日本ではコアの破壊が達成されたことはなかったため、今まで起きたことはない。


「旧北海道だ。大規模な移動が起ころうとしている」

「旧北海道!?あそこのコアは日本でも一二を争う大きさの魔力を放っているんじゃなかったか!?」

「いや、どうやら確認されていたコア以外のコアが存在していたようだ」

 ……一昨日の夜の思考が蘇る。

 やはり、日本のコアは現在の観測箇所以外にもあるのだ。


「とりあえずはブレイクへの対処だが、コアの観測にもより一層力を入れないとならないな」

 

 そんな話をしていると、ようやく目的地である未開域統括庁本部のコア観測を担う、観測所と呼ばれる部屋に着いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


次話以降もぜひ読んでいただけると嬉しいです!


評価等いただけると大変励みになりますのでよろしくお願いいたします!

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