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当代最強の責任  作者: 嵐山田
第一章
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第二十四話

 翌日は朝から夏葉と二人で気分のいい目覚め……にはならなかった。

 いや、気分がいいことには間違いはないのだが。


「お兄様、おはようございます」

 まぁ、なんとなくそんなことだろうとは思ってたよ。

「おはよう花凛、夏葉」

「はぁ、龍仁より先に起きてちょっと身支度しているうちに花凛ちゃんいるんだもん。邪魔しないんじゃなかったの?」

 さすがの夏葉も呆れた表情をしている。

「邪魔をしないというのは夜の話です。それも昨晩限定です。そしてこれは邪魔ではありません。お兄様を起こすのは私にとって重要な務めです」

 だんだんと早口になっていく花凛。

 いつからこんな妹になってしまったのだろうか……。

 いや、最初からかもしれない。


「それよりもお兄様」

「なんだ?」

「本日の放課後は待っていてよろしいのですね?」

「ああ、今日こそ迎えに行くよ。待たせて悪かったな」

「はい!ではお待ちしています」

 昨日からずっと不機嫌だった花凛がようやく笑顔を見せる。

「はぁ、目の前で浮気されるこっちの身にもなってよね」

「夏葉さんは二人きりで一晩過ごしたんですから文句言わないでほしいです」

「まぁ、夏葉これは元々俺が言い出したことなんだ。こうなった以上、俺ももっと自分の責任について考えて立場にあった行動をするようにするよ」

 握る右手に力が入る。

 昨日の花凛の涙、夏葉の想いを受け止めたうえで俺は一歩大人になることを決めた。

 いつまでも力があるだけの子供ではいられない。


「それもいいけど、言いたいのは私をないがしろにしないでねってこと」

「それはもちろんだよ。夏葉も花凛も二人とも大切だ」

「ならいいよ。花凛ちゃんもそれでいいよね?」

「不服ですがお兄様の決断でしたら私は口をはさみません。どこまでもついていきます」

 茶化すことなく大真面目な態度の花凛。

 そうだ、いついかなる時もこうやって慕ってくれる彼女たちのことを忘れてはならない。


「改めてよろしく頼む。二人とも」

「ええ」「はい」

「それで花凛、起こしに来てくれたのはありがたいけど機関の方は間に合うのか?ここからだと結構かかるぞ」

「そうですね、惜しいですが朝はこのくらいで行かなければならないようです」

「そうだな、気を付けて行けよ。帰りは魔装車を帰して二館の中で待っていてくれればいいから」

「はいお兄様、それでは行ってまいります」

「おう、行ってこい」

 花凛が優雅なしぐさで一礼し、部屋を出ていこうとしたところで夏葉が花凛に声をかけた。


「あーそうそう、花凛ちゃん?」

「なんでしょう、夏葉さん」

「もう私の前ではお兄様じゃなくてお兄ちゃんでいいよ?」

 夏葉がそう言った瞬間、花凛の魔法力が爆発的に溢れ出す。左目の魔眼が隠せなくなっている。

「忘れてください」

 振り返った花凛の顔はこれでもかと紅潮していた。

 あぁ、地雷踏んだかぁ。

 幸い、夏葉は魔眼を気にしていないようだ。

 一般人には魔眼を向けるだけでも魔法力を過敏に感じ取って体調を崩してしまう人もいるため、人に向けて魔眼を使うときは大きな魔力を込めてはならないのが鉄則である。


「花凛、もう行きなさい」

「ですが、お兄様!」

「花凛にもプライドがあるのはよくわかる。だけど言っただろ?俺もお前のお兄ちゃん呼び、好きだって」

 俺がそう言うと花凛は複雑そうな表情で身を震わせている。

 しかし意を決したのかもう一度きれいな一礼をするとこう言った。

「改めて、行ってきます。……お兄ちゃん」

 少しあどけなさも現れたその表情は嫉妬や怒りの感情のこもらない、いつもの花凛だった。

 ふと横目に夏葉を見ると、一本取ったと言わんばかりの満足げな表情をしていた。

「夏葉も大人げないぞ」

「私たちと花凛ちゃん一歳しか変わらないし、大人げないとかないもん」

 はぁ、朝から騒がしい日だ。

 それでもこんな些細な日を大切にするために俺は決意を固めるのだった。

お読みいただきありがとうございます。


次回もよろしくお願いいたします!

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