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裏切られた令嬢と謎の商人

アッシュベリー伯爵家の令嬢エステルは、熱を出したという婚約者の家に見舞いに行った。

が、そこで見たのは婚約者の不貞行為だった。

見舞い品を投げつけて泣きながら逃げ出した彼女は助けも呼べなさそうな場所でごろつきに囲まれるが、謎の商人に助けられ──




 あの日の夜。

 私は、婚約者が熱を出していると聞き、体に良いとされる果物を持って出かけました。 馬車から下りると、連絡を既に聞いていた将来義父と義母になる婚約者のご両親が待っておりました。





「いらっしゃい、エステルちゃん」

「お邪魔します、バートランド様」

「息子なら自室で寝込んでいるはずだ。案内を」

「はい」

 侍女さんに案内されて、婚約者を心配しながら部屋へと向かいます。


「エリオット様」


 ノックをしますが返事がありませんでした。

「きっと寝込んでいるのでしょう、枕元に置いて少しだけ様子をみたいのです」

「それが良いでしょう」

 と侍女さんが微笑んで扉を開けると――



 盛る獣のように、まぐわっている婚約者と幼馴染の令嬢がいました。



 思わず全員硬直します。



 私は、信頼している二人に裏切られたと理解しました。

 目から涙が溢れましたが、そのままにして、果物の入った籠を二人に投げつけました。


「不潔!! 最低!!」


 そのまま私は駆け足で屋敷を飛び出し、乗ってきたはずの馬車にも乗らずに歩いて家への道を歩いていました。


 惨めでしょうがなかったです。


 歩き続けて足が痛くて仕方なくて、持っていたハンカチを広げてその上に座りぐすぐすと泣きました。


 立場上私の家が低いから、きっと悪いことがあるだろうな、とか色々考えてしまいます。


 我慢することになるし、お父様やお母様もそうせざる得ないこともわかっています。


 だから悔しくて、悲しかったのです。

 今回の裏切りは――



「そこのお嬢さん、こんな夜に一人は危ないよ?」

「俺達が安全な場所に連れて行ってあげようか?」

 下品な笑いを浮かべた男達が近寄ってきました。

 最悪でした。


 今更ながら、馬車に飛び乗って帰ればよかったと思いました。


 逃げようにも、周囲を囲まれて逃げる術もない。


――ああ、本当、最悪です……――


「そこの御令嬢は私のお得意様なのだが、何の用かね?」

 そんなとき、商人の恰好をして、鍔広の帽子をかぶった男性がこちらに近づいてきました。

 とても美しい顔立ちで、でも何処か見覚えがある顔をした御方でした。

「なんだ、色男さんよ? 痛い目……いでででで?!?!」

 近づいた男の腕を商人らしき方がねじっていました。


「や、やっちまえ!!」

 お芝居で良く聞く悪役の台詞を初めて聞きました。

 そしてお芝居のように、全員商人らしき方に叩きのめされて逃げていきました。


「あ、有難うございます」

「何礼には及ばないよ。それよりもこんな夜に御令嬢が一人で歩くのは危険すぎる。迎えの馬車を呼びますのでそれまでここに居ましょう」

「あ、有難うございます。で、でも持ち合わせが今は……これしか……」

 金貨が1枚しかありませんでした。

「いえいえ、これで十分です。そうだついでに私の商品を御一つどうでしょうか?」

「は、はぁ……」

 広げられた商品の中に、色々なものがありました。

 明かりにともされたそれらの中に、水色の綺麗な花のアクセサリーがありました。

 指輪でした。

「綺麗……」

「お目が高い! そいつは災難避けの呪いを施されているのですよ、特に恋愛関係の」

「これにします」

 即答しました。

 今まさにそんな状況にあるからです。

 藁にも縋る思いでした。

「有難うございます」

 私はそれを指にはめます、婚約指輪を本来はめる場所に。


「ところで、どうしてこんなところに?」

「……」


 私はもう投げやりになって喋りました。

 婚約者の不貞の事を、幼馴染に裏切られた事を。


「それは……辛かったでしょうに……」


 そう言われてまた涙が止まらなくなりました。

 辛いのです。

 でもこれからもっと辛くなるのが見えてて辛いのです。


 私はどうせ、泣き寝入りしなければ家が危なくなる恐れがあります。



「ご安心をお嬢様、私、こう見えて顔が広いのです、ですから――」


「貴方が泣き寝入りしないように少し頑張らせていただきますね?」


 普通の商人の方が何を頑張るのでしょうか?

 いえ、普通の商人には見えませんが……

 先ほどの腕といい、一体この方はどんな御方なのでしょうか。


「おや、馬車が来ましたよ」

 馬車が一台近づいてきて、商人らしい方は、何かを言って御者が頷くと商人の方は私を馬車の中に案内しました。

「家まで同行させていただきますね」

 そう言って私を乗せてから、乗り込みました。


 家に着き、お礼をしようとお父様の顔が引きつりました。

 何故引きつったかは分かりませんでした。


 とりあえず、事情を話したところ、お父様は「お前をきっと守れるはずだ、安心しなさい」とだけ言ってくださいました。



 翌日、お父様は城に呼び出されました。

 私は不安でたまりませんでした。


 お父様に何かあったらどうしようと。



 お父様は何もなく帰宅されました。

「エリオットとの婚約は向こうの不義で解消、この原因を作ったエリオット・オルコットとアデル・ガーネット二名は家を追放ということになった」


 私はあっけにとられます。

 向こうの方が立場が上ですから、きっと私達にあまりよくない状態になるのではないかと危惧していたからです。


「……とりあえず、二名の追放処分が終わるまでお前は家に居なさい」


 お父様は少しだけ渋い顔をしてそうおっしゃられました。


 何かほかにもあったのでしょうか?



 その日、エリオットとアデルが家を訪ねて、私に取りなしてくれと頼んできましたが、侍女や執事たちが追い返しました。



 夜、寝ようとすると窓辺をコンコンと叩く音がしました。

 小さな小鳥がいました。


 私は何事かと思って窓を開けると、青い小鳥が二羽入ってきて一羽が口に咥えていた、何かを私の手に落としました。


 綺麗な青い花形をした宝石の指輪でした。



「婚約解消おめでとう、お嬢さん。それと婚約おめでとう。祝いの品だ、受け取ってくれ」



 下から声が聞こえました。

 窓から顔を出すと、昨日の商人の方でした。


 婚約解消を何処で聞いたのでしょう?

 でも、婚約はしてません。


「婚約は解消できましたけど、婚約はしていません」


「おや?」


「?」


「んー……まぁ、明日御父上に聞いてみると良い」


 その方はそう言って立ち去ってしまいました。


――婚約とは、誰と、なのでしょう?――







新規作品です。

タグの部分に寝取られとか入れなかったのは寝取られてないからです。

どういうことだってばよ?

と思う方もいるかもしれませんが読んでいただければわかりますと!


では、ここまで読んでくださりありがとうございました!

次も読んでくだされば幸いです!

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