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もう一度仲間と始める冒険生活  作者: 四月一日
5/8

第5話魔物の群れ

なんだかホタルの様子がおかしい。

俺はそう感じながら雪道を進む。

何というか大事なことを隠しているようなそんな気がしてならない。


だが、問い詰めようにも何を隠しているのか分からないから聞きようがない。

(正直に何を隠しているのか聞いても、はぐらかされるだけだしなぁ)


そんなことを考えていた瞬間

「な!?」

俺は声を上げ後ろを振り向いた。


それはスキル生命探知が発動したからだ。

驚いたのは感知した魔物の数。

およそ30体。


「どうしたの?」

ホタルが驚いた顔で聞いてくる。

「向かってきている!」

「何が?」

「群れだ!数は30を超える!!」


俺はアオイのもとへ向かう。

「ちょっと失礼するぞ」

「へ?」

そういうと俺はアオイをお姫様抱っこした。


「え?ええ?」

アオイが困惑している中俺はホタルに指示を出した。

「ホタル!走れるか!?」


「大丈夫!」

ホタルはうなずき答える。


そして俺達は雪道を滑るように駆け出した。

「な、何が起こっているんですか?」

動揺しながらアオイが尋ねてくる。

「魔物の群れだ!」

短く俺はそう答えた。


魔物の群れ、魔物はスノーラビットのように一体づつで行動する種族もいれば、群れをなして襲ってくる種族もいる。


恐らくだが追いかけてきているのはシュネードウルフだろう。

この山にいる中で群れで襲ってくるのはこの魔物しかいない。


「イツキ!魔物の群れはどんな感じ?」

「追ってきている!恐らくだが匂いでばれたんだ!」


シュネードウルフは鼻がいい。

この雪山で嗅いだことのない二人の匂いを感じ取り向かってきているんだ。


特に今の時期は食べ物が極端に少ない。

だから少しでも獲物の匂いを嗅ぎつけたら、全力で追いかけてくる。

こうなったらとにかく逃げるしかない。


「やばい!足跡をたどられてる!」

俺は生命探知で感じ取った状況をホタルに伝える。

「急がないと!」

ホタルも懸命に俺が進んだ道をたどりながら走る。


「た、倒せないんですか?」

不安そうにアオイが俺に聞いてくる。

「無理だ!あの数だと君を守り切れない!」

「私の、せい…?」


「あ…」

しまった!この子には言わないほうがよかったのに!

「馬鹿な考えはするなよ!」

俺はアオイに釘を刺した。

「は、はい」


移動を続けるもシュネードウルフはどんどん近づいてくる。


後ろを見るとホタルとかなり距離が開いていた。

この雪道では逃げ切るのは不可能のようだ。


こうなると方法は…

「イツキ!私のリュックに干し肉がある!」

「それだ!」


ここで食料を置いておけばシュネードウルフの群れは止まるだろう。

その間に距離を稼げるはずだ。


俺はアオイを下してリュックを開ける。

こうなったら仕方がない。人間は二日くらいなら食事をしなくても生きていける。

祝福<ギフト>を持っている俺は最高で7日絶食したくらいだ。


リュックの中から食料を出している中、生命探知は状況を逐一伝えてくる。

群れは一直線に走って向かってきている。

よほど食べ物に飢えているのだろう。


「思ったより近いな…祝福<ギフト>ガンナー」

俺は拳銃を取り出した。

「バレットチェンジ、スナイパーライフル」


「イツキ!?どうする気なの?」

「威嚇射撃で群れの移動速度を落とす」

見るとおぼろげににシュネードウルフの群れが見えた、ここまで近いなら音が伝わるだろう。


「ホタルは今のうちに食料をばらまいてくれ」

「分かった!」

そして俺はスナイパーライフルを放った。


放った弾丸はシュネードウルフの先頭の目の前の雪に着弾させた。

当ててしまえば群れの怒りを買ってしまうからだ。

これはあくまで威嚇射撃だ。


先頭にいたシュネードウルフが歩みを緩め、一列に並んでいた群れは団子状態になった。

警戒している様子だ。

これなら時間が稼げる。


「ちっ!」

だが、その瞬間生命探知が嫌なものを検知した。

スノーラビットが雪道を勢いよく登ってきている。


「音を聞きつけたか」

そういえばスノーラビットは耳がいいんだった。

意図せず挟まれてしまった。


俺は振り返りそのまま、スノーラビットに銃弾を撃ち込む。

「イツキ!群れが来るよ!」

「ああ、くそ!」


俺はいらだち交じりにスノーラビットに銃弾を撃ち込む。

そして、スコープ越しで絶命をしたことを確認し群れのほうを見た。

群れは俺たちを囲もうと広がり始めていた。


「仕方ない、ホタルはアオイを連れて逃げろ!」

ここは俺が囮になるしかない。


「分かった!ってアオイちゃん!?」

ホタルの驚きに俺もつられて彼女を見た。

「な!馬鹿!」

見るとアオイは滑るように雪道を下っていた。


「アオイちゃん!待って!」

ホタルは急いでアオイを追いかけた。


「まずい…!」

シュネードウルフは頭がいい魔物だ。

奴らは自分たちより弱い獲物を狙う習性がある。


そのせいで下手に戦うとアオイが狙われてしまう危険性があった。

だから俺は戦う選択を回避したかった。

今のアオイの行動は群れが二手に分かれて、襲ってしまう危険性がある。


ホタル一人では守り切るのは難しいだろう。

(おそらく、自分が離れれば俺達だけで戦えると考えたんだろう)

だがそれは逆効果だ。

こうなればやることは一つ、俺は腹をくくった。


「やるしかないか…!」

俺は気合を入れ、スナイパーライフルから散弾銃に変えた。

そして群れに向かって一気に迫った。


シュネードウルフの群れが来た瞬間、俺は散弾銃を連射し続ける。

拡散した小さい弾丸を受けたシュネードウルフ達がひるんだ。


そしてシュネードウルフ達が俺を囲んだ。

俺を獲物とみなしたようだ。

「よし!お前らの相手は俺だ!」


次の瞬間、背後に回っていたシュネードウルフが俺に噛みつこうと一直線に来た。


即座に散弾銃の銃口を背後に回し発射。

生命探知のスキルがあれば背後を振り向かずとも銃弾をあてられる。

後ろにいた個体が絶命したことを感知し周りを警戒する。


そして立て続けに、振り返らず背後にいるシュネードウルフを撃ち続ける。

すると目の前にいた個体が向かってきた。

俺は噛みつこうとしてきた頭めがけて全力で蹴り上げた。


鈍い音と共に蹴られたシュネードウルフは、吹き飛び後ろにいた個体を巻き込み滑り落ちて行った。


祝福<ギフト>によって強化された肉体なら、スキルを使わずとも仕留めることもできる。


俺は周りを警戒しながら肩で担ぐように散弾銃を構え、背後のシュネードウルフを仕留め続ける。


「背後にさえ気を付ければなんてことはないな」

流石に肉弾戦では、背後から襲われると少しだけ対処に時間がかかる。

だから背後にいる個体は近づく前に散弾銃で仕留める。


「アオーーーン」

俺から距離を取っていた、ひときわ大きい個体のシュネードウルフが鳴いた。

それを合図に俺から離れていく。


「なんだ?引くのか?」

思ったよりあっさりと俺から離れていく。

何か嫌な予感がしてみると、群れは雪道を下り始めた。


そして、その先にはアオイとホタルがいた。


「嘘だろ!?」

俺は慌てて群れを追いかけた。


(まさかこいつら、俺をあきらめてあの二人を餌にしようって気かよ!)

俺が群れを追いかけると、近くにいたシュネードウルフが俺にタックルをかましてきた。


すぐに散弾を浴びせ仕留めるも、また走り出すとまたも別の個体が俺にタックルをしてくる。


「足止めしようって気か…」

俺は三度目にタックルをしてきた個体を全力で踏みつけ一気に跳躍する。

「そう、うまくいくと思うなよ」


「バレットチェンジ、アサルトライフル!」

空中で俺は武器をアサルトライフルに変えた。


そして走っているシュネードウルフの背に着地、同時に再度跳躍。

踏みつけた個体の背骨の折れる音が足から伝わった。

そして空中で先頭の集団に向かって一気に掃射。


銃弾の雨を受け先頭集団はその場で転びまわった。

だが、その集団を抜かし数体がアオイたちのもとへたどり着いた。


俺は雪道に着地しアオイたちに襲い掛かるシュネードウルフを撃った。

だが、他の個体が肉の壁となり弾丸が届かない。


「ホタル!!」

俺は声を上げて名前を叫んだ。


「がってん!」

すると次の瞬間、アオイのもとに来たシュネードウルフが半分に分かれた。

見ればホタルはコートの中に隠していた短剣を振りかざしていた。


その短剣は氷のように透き通っており、振るった短剣からは斬撃が飛び出していた。

(よかった!、まだ持っていたのか!)

俺は安堵した。


あの短剣は昔一緒に冒険していた時に得た思い出の品だ。

氷で閉ざされたダンジョンの、最奥にある何千年と解けない氷で作られている。


売ればかなりの値段で売れる短剣だ。

てっきりもう売ってしまったと思っていたがどうやら売らなかったらしい。


特殊効果は氷の斬撃を飛ばす、先ほどのシュネードウルフはその斬撃によって斬られた。


(あの短剣を持っているならあの技が使える!)

俺は一気にホタルとアオイのもとへ向かう。


道中にシュネードウルフが俺に噛みつこうとするが、最小限の動きで回避し二人のもとへ駆け寄る。


「ホタル!あの技を頼めるか!?」

何とか二人のもとにたどり着き、アオイを守ろうと戦っているホタルに聞く。

「できる!けどアオイちゃんが!」

「俺が抱えて飛ぶ!」

そう言って俺はアオイを抱きかかえる。


「ごめんなさい…ごめんなさい」

抱きかかえられたアオイは何度も謝罪を繰り返していた。

「大丈夫だ、それと口を閉じて舌を噛むかもしれない」


と話した瞬間、シュネードウルフが背後から俺の肩に噛みついた。

「イツキ!」

「すまん、頼んでいいか?」


ホタルが腕に取り付けてあるクロスボウで、俺に噛みついているシュネードウルフの頭を射抜いた。

「ホタル、俺がタイミングを言うからあの技を頼む!」

「分かった!」


ホタルの返事と共に俺はしゃがみ込んだ。

そして全力で跳んだがすぐに着地した。

「雪のせいで、高く飛べないな…」


なら方法は一つ、俺はもう一度しゃがみ込んだ。

そしてその場で待つ、意識は生命探知に集中し周囲の状況を探る。

「来た!」


俺に向かってシュネードウルフが迫ってきた。

「ふっ」

そして噛みつく前にジャンプ。


「ホタル!頼んだ!」

俺は叫びシュネードウルフの背に着地。

思いっきり膝を曲げ、一気に跳躍。


「行くよ!」

俺が空高く飛んだと同時にホタルは短剣を踊るように振り回した。

幾数もの氷の斬撃がホタルを中心に広がる。


それはまるで雫を垂らした波紋のように広がっていく、そして斬撃の波に触れたものから肉の塊へと変貌していった。


「ブレイドダンス…久々に見たな」


ホタルの必殺技。

氷の斬撃を舞うように辺りに振りまく。

元盗賊稼業で鍛えられた体幹は足場の悪い雪の中でも舞い続けた。


雪原の中で一人の踊り子が舞う姿はどこか幻想的だった。

「きれい…」

見ると腕の中でアオイが息を飲んで見入っていた。


読んでいただきありがとうございました。

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